と、とりあえず前回までのとある大将の幻想殺し……。
諸事情により大本営へと赴いていた
そこで元帥に呼び出されある話を聞かされる。
「君、明日から舞鶴転属ね」
何の前触れもないこの転属…俺、いったいどうなっちまうんだ!?!?
side上条
「落ち着いたかい?」
絶叫をあげて驚いていた俺はただいまゼェゼェと息をついていた。
これが驚かないわけがない……。
重要書類の再発行のために大本営まできたら明日から舞鶴に転属とか……
心の準備とか移動の準備とか、色々と終わってねえよ!
けど、とりあえず話だけでも聞かなきゃなんねえし、一旦落ち着こう……。
「えっと…どうして俺なんすか?」
俺のその言葉に大将は小さく頷いて話し出した。
「実はね、そこは最近出来たばかりの真新しい鎮守府なんだよ、でもそこに行けるような人員がこちらで見つけられなくてね……」
「そこで俺に白羽の矢が立った…というわけですか」
俺の返答に元帥は満足そうに頷く。
「君ならば一度転属を経験しているし、ブラック鎮守府だった呉の建て直しもしてくれた実績もある。そんな優秀な君の腕を見込んでお願いしたいんだ」
お願いというより決定事項っぽいけどな……。
けど、こうまで言われちゃやるしかねえよな!
「はぁ、分かりました。俺で力になれるんでしたら喜んでやりますよ」
「本当かい!助かるよ、君に頼んで正解だった」
よく言うよこのクソジジイ、とんだ狸め……
あ、そういえば!
「今回は前の艦娘とか連れてっても良いんですか?」
「いや、以前は初めてだからと特例として許可を出したが、普通は駄目なんだ。だから今回は無しだ」
ってことは呉の誰も連れていけないってことになるのか……
……姉ちゃん達、納得してくれんのかな?
「用意もあるだろうし、挨拶も済ませなければならないだろうから今日はもう帰るといい。明日、また使いを出すのでそれに舞鶴まで送らせよう」
「うっす…失礼します」
こうして俺は呉へと帰っていった。
あ、再発行書類もって帰るの忘れてた……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そう、そんなことがあったのね…」
帰ってきた俺を出迎えてくれたのは秘書艦の加賀姉だった。
江ノ島からここに来るときに、共に着いてきてくれた一隻だ。
大本営での話をすると、加賀姉は何を言うでもなく静かに聞いてくれた。
「今回はあなたに着いていけないのね...」
そう話す加賀姉の顔はいつも通りの無表情。
だが、何処か落ち込んだような雰囲気が漂ってるように感じた。
「そういうわけだからさ、悪い加賀姉、俺はここを離れるけど、陸奥姉ちゃん達のこと、よろしく頼むな?」
「えぇ、分かっているわ......。ごめんなさい、少し失礼するわね...」
そう言うと加賀姉はそそくさと部屋を出ていってしまった。
「……他のやつにも話さなきゃな」
そう一人呟いて、俺は大淀を呼ぶと、加賀姉意外の艦娘達を呼び集め始めた。
sideout
◆◇◆◇◆◇
side三人称
大淀の号令に広場に呼び集められた艦娘達はガヤガヤと騒いでいた。
皆、何があったのかと不思議でならないというのが表情から伺える。
そこに上条が姿を表した。
即座に静かになり、綺麗に整列する艦娘達。
上条が艦娘達の前にある台座に乗り、集められた者達を見る。
「…敬礼!」
鳳翔が全員をチラリと見渡してから号令する。
ビシッと息の合った敬礼をする艦娘達に、上条も敬礼で返し、話し出す。
「悪いなお前達、急に呼び出しちまって…」
「いえ、それはNoProblemですけど、どうしたんです?」
サラトガが恐る恐るといった様子で問いを投げる。
「あぁ、実は大事な話があってさ…」
上条のその言葉に艦娘達が少しだけざわめく。
「落ち着けって、まだ何も話してないんだからさ…つっても、どこから話したもんか…」
少し考える素振りをして、上条はコホンッと咳払いを一つして話し出した。
自分は今日で呉から舞鶴へと転属するということ
以前のように艦娘を一人連れていく事も叶わないこと
加賀にはもう話してあること等々……。
「だから、こうしてお前達と話せるのはこれが最後になる」
そうして締めくくった上条は一つ息を尽き話を終える。
その話を聞いた艦娘達は様々な反応をしていた。
信じられないと首を振っている者
そんなことは嫌だと泣き出す者
これが現実なのかと俯いてしまうもの
気丈に振る舞い、泣いている者達を慰めている者
状況が飲み込めず首をかしげている者
それぞれが様々な反応を示すなか、声をあげる者がいた。
「待ってください、それはもう決定事項なのですか?」
「そうです!まだ決まってないんだったら私達が大本営に直談判して!」
「私達全員で掛け合えば変えられるかも!」
「ねえ、お願い提督!残ってよ!また私と夜戦してほしいし!」
「司令官様、お願い…行かないで……」
「admiral…居なくなっちゃ…イヤです…」
上から鳳翔、比叡、古鷹、川内、春風、U-511が言う。
「悪い、もう決定事項らしいんだ…」
ばつが悪そうに上条はそう謝るしかなかった……。
sideout
◆◇◆◇◆
side上条
翌日、艦娘達に挨拶を終えた俺は昨日のうちに纏めておいた荷物を持って門の前に立っていた。
見送りはいない、全員があの後塞ぎ込んだように自室に引っ込んで出てこなくなってしまったからだ……。
「……よかったのかな…これで…」
一人呟く……。
いや、良かったんだ。最後に顔なんか見たら決心が鈍っちまいそうだし……。
そうこうしているうちに大本営かららしき車が門の前に到着した。
「上条当麻大将ですね?元帥から聞いております。舞鶴までご案内致しますのでお乗りください」
「はい、お願いします」
荷物をトランクに載せ、呉鎮守府を見る。
こうして見るのも今日で最後になるんだな……。
加賀姉、せめて最後に会いたかったな。
「……上条様?」
そんなことに思いを馳せてると運転手の人が不思議そうに声をかけてきた。
「あ、すいません!すぐ乗ります」
後ろ髪引かれる思いを残しながら、俺は車へと乗り込み出発するのだった。
――――――――――――――
「……」
舞鶴に向かう道中、俺はただジッと外を眺めていた。
考えることはとにかく呉の艦娘達のことばかりだ……。
あれで良かったのか…もっと他にやり方があったんじゃないか……
そればかり頭をよぎる。
そんな時だった。ふと、車が海沿いの道を走っていると、ふと海面に見覚えのある影が複数……
まさかと思い目を凝らしてみると、そこには呉の艦娘達が勢揃いしていた。
「おいおい…あいつら、皆して何してんだよ…」
少し呆れてみていると、中央にいた加賀姉が、なにやら合図を出した始めた。
すると、空母達が一斉に艦載機を飛ばし始めた。
艦載機はそのまままるで舞いを舞うように旋回を始める。
続いて戦艦から駆逐艦までの全艦娘が一斉砲撃を空に向けて撃ち放った。
そこから撃ち放たれた砲弾は色取り取りの鮮やかな物でやがて空に消えるとまるで花火のように弾けた。
「ッ……!」
驚きで声がでない。
何か言おうとしても思ったように言葉がもう出てこなかった……。
すると、艦載機の一機が俺の近くに来ていたことに気がついた。
そこには俺宛に書かれた呉の艦娘達からの応援メッセージがビッシリ……!
頑張れやお元気でなど様々な事が書いてあったが、一際目を引いたのは加賀姉のメッセージだった。
『当麻、舞鶴でも頑張りなさい…私はずっとここであなたを想い続けます…また会いましょう、私の愛したただ一人の提督』
ここまで来たらもう我慢の限界だった。
俺は声にならない声で泣いた……。
あぁ、俺も大好きだったよ…元気でな、加賀姉……。
こうして俺は呉との別れを告げ、新たな気持ちで舞鶴へと向かっていったのだった。
――――――――――――――――
「お疲れ様でした。こちらが舞鶴鎮守府です」
しばらく車に揺られていると、不意に車が止まり、運転手がそう告げてきた。
そっか、着いたんだな。
「ありがとうございます。遠くまで送ってもらっちゃって…」
「構いません、これも仕事のうちですので、持ち運べない荷物などは後日、郵送させていただきます」
「そうなんすか?じゃあお願いします」
「いえ、それでは、頑張ってください」
運転手はそれだけ告げるとさっさと帰ってしまった……。
「さて…」
荷物を持ち振り返ろうとしたその時だった。
「あのぉ…もしかして、新しい司令官の方ですか?」
そこには黒い短髪の紺と白のセーラー服を纏った少女が不思議そうに立っていた。
舞鶴での初の艦娘、 吹雪と出会った上条。
とりあえずはどんな状況なのか教えてもらうため、自己紹介をしつつ鎮守府内の案内をお願いする。
次回、とある大将の幻想殺し
舞鶴の探索
幻想殺しと艦娘が交差するとき、物語は始まる。