~怪生の徒花~ フィアスコ実卓リプレイ   作:林檎丞二

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週末は仕事が忙しいので更新できませんでした。


斯くして関係は明かされる

 

 時はほんの少し遡り、レミリアと公男が別れてからの事だった。

 

(レミリアお嬢様がただの人間ごときに遅れを取るとは到底思えないが、果たして別れて良かったのだか)

 

 レミリアを帝国ホテルのロビーへと送り出した後、公男は、訝しげにこちらを見るドアマンのことなど眼中にないとばかりにロビー入口の近くに仁王立ちする。その威圧的な風貌に腰が引けながらも声を掛けるドアマン。

 

「も、申し訳ありません、貴方は入店しないのですか?」

「……お嬢様のご希望だ。護衛も兼ねているのでしばらくはここにいさせてもらう」

「さ、左様でございますか……」

 

 ジロリと鋭い目つきで睨まれたドアマンはおずおずと自分の持ち場へと戻っていく。

 

「……」

「……」

 

 暫くの間、ドアマンと公男の間に奇妙な静寂が訪れる。ロビーへと続く扉からは微かに声が漏れてくるものの、それは明瞭としたものではない。

 公男は泰然とした様子だったが、いつもとは違い他人が常にいる環境にどこか座りが悪いのか、ドアマンが公男に話しかけようとしたときだった。

 

「――――― 苛つかせるっ!」

 

 そんな悲鳴じみた声が聞こえてきたのだ。

 

 ドアマンはこの帝国ホテルに似つかわしくない叫びと、今まさに話しかけようとした瞬間だったのもあって一瞬固まる。

 一方の公男はその声の主が誰だか瞬時に判断すると身を翻してドアまで走り、大きく開け放とうとした。それに気がついたドアマンは自分の職務を全うしようと公男の侵入を阻めるべく止めに入る。

 

「ちょ、お客様!無断での入店はお断りしております!!」

「……」

 

 ドアマンの必死の制止により一旦は動きを止めたものの、それがどうしたとばかりに気にせずドアを開け放つ。

 

「お嬢様!ご無事ですか!?何やら悲鳴じみた声が聞こえたのだですが!?」

 

 公男が見たのは自分の雇い主を突き放した、自らの主の姿だった。

 

「「公男……」」

 

 金と銀の姫は彼の侵入を見つけると、名前を小さく呼んだ。

 

「お嬢様、ご無事でしたか。……それと白雪様、お久しぶりでございます」

 

 ザッと見たところ、自らの雇い主には特に怪我が見られなかった。それに内心ホッとしつつも対外的には知人である白雪へと挨拶をする。

 

「お二人は大層仲がよろしかったと記憶しておりますが、一体どうしたというのだですか?」

 

 自らの腰にしがみつくドアマンや、女性二人の争いに新たな火種が現れたのかと興味津々な周りの視線などどこ吹く風で二人に問いかける公男。

 

「……っ!」

 

 公男の登場に苦虫を噛み潰したかのような顔になる白雪。一方のレミリアは公男の事など眼中にないと白雪を見つめる。公男はレミリアのことが心配なのかしきりに気にしている。

 

「公男が……レミリア、貴女とよろしくやっているというのは知っているのよ!」

 

 その態度が更に白雪の怒りに火を注ぐ。

 

「どういうことよ!公男はただの運転手でしょ!貴女と私の間には何も関係ないじゃない!そうやって話をそらさないでよ!」

 

 レミリアは自分に一向に目を向けようとしない白雪に苛ついたのか声を荒げる。

 

「何よ!そうやって白を切り続ける気なのね!!」

「言ってることがよくわからないよ!」

 

 お互いにヒートアップしていく怪生の女二人。このまま興奮し続け妖怪としての力を振るわれるとマズイと感じた公男は、未だ腰にしがみつくドアマンを容易く退けると、二人の間に入ろうとする。

 しかし、その頃にはもうすでにホテル側の用心棒が、互いに掴みかからんとする様相の二人を引き剥がしにかかっていた。

 

「お二人ともお止めくださいなのだ!ここば冷静になって……」

 

 そのまま用心棒たちを伸してしまわないか心配になった公男は必死に止めようとする。然しながら、その制止の言葉を聞いた白雪はついに噴火する。

 

「黙りなさい!!!私の使い魔風情のくせして主の私に指図するなんて烏滸がましいわよ!!!」

「し、白雪様!」

 

 その言葉を聞いた公男は白雪を諌めるものの、時すでに遅かった。白雪の『使い魔』発言をしっかりときいていたレミリア。用心棒を振り解いてまで白雪に詰め寄ろうとしてい

たのをピタリと止めた。俯いたことによってその顔は確認することができないが、細かく震えているのを見れば、激情を堪えているのがわかる。

 

「公男。今の白雪さんの発言はどういうことなの?」

 

 俯きながらもはっきりとした声で問いかけるレミリア。公男はしまったという顔をしながらも、ここまで来ていしまえば誤魔化しきれないと腹をくくり真実を語る。

 

「……私はお嬢様の運転手である前に、白雪様の使い魔、要は下僕なのだです。ヘケッ……」

 

 いつもは元気のいい掛け声もこのときばかりは沈んだ声色だった。

 

「……私の白雪さんへの想いは知っていたでしょう!!使い魔なら白雪さんの居場所だって伝言だってできたじゃない!それすら教えてくれなかったなんて。なぜ黙っていたの!?答えて!!」

「……」

「公男!そんな女の言うことなんて無視しなさい!私のもとへ戻ってくるのよ!そいつのところにいたらいけないわ!」

 

 用心棒たちに引きづられながらも叫び続ける二人の怪生。それを見ながら一瞬迷ったような顔をするものの、吸血姫へと向かいながら宣言する。

 

「申し訳ありません、白雪様!私は貴女に付いていゆくことができない!!」

「公男……あなた……レミリアに誑かされたわね!!!」

 

 まさに鬼の形相というような顔でレミリアを睨みつける白雪。それをどこか申し訳なさそうに見るが、すぐさま視線を外す。そして自らの雇い主のもとへと駆けつけようとする公男。

 

「来ないで!!私の白雪さんへの想いも知っていたくせに、影で嘲笑っていたんでしょう!!私と白雪さんを逢わせないようにしていたんでしょう!!」

 

 そんな拒絶の言葉を投げかけられた彼は、その言葉を認識するのに数瞬を要した。彼が想いを寄せている雇い主の言葉を理解するまでに時間をかけ過ぎたのか。彼が気づいたときには愛する雇い主も、自らを使役する主の姿さえなかったのだった。

 




セッション中、激流に身を任せどうかしていたら三角関係に発展しました。キマシタワーを建設したかっただけだったのに……。セッション時、この時点ではまだ三角関係だとはなっていなかったはずですが、ここで明かしたほうが分かりやすかと思い改変。
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