ゲゲゲの鬼太郎 天翔の少年   作:狂骨

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龍の通り道

ある夏の日

龍崎は半袖学生ズボンというラフな格好で長野県のとある山岳へと来ていた。

目当ては釣りである。本人曰く少しでも食費を減らすのが目的である。

「東京と違って空気や水が美味いな」

そう言い釣り糸を垂らしている湖の水を手ですくい口に運んだ。

すると糸が震えすぐさまリールを巻き引き上げた。するとイキのいいニジマスがピチャピチャと音を立てながら姿を現した。

「これで40匹目くらいか」

そう言い釣れた魚を持ってきた袋の中へといれる。中は釣れたニジマスでギチギチになっていた。

 

「さて、もう帰るか」

そう言い龍崎はまだ昼だというのにカバンを持つと山を下る。因みに徒歩で来たらしい。

 

ーーーーーーーー

 

「取り敢えず夜までにはつけるといいかな。こんだけあれば二週間は持つだろ」

大きな空洞のあいた木の根元を通り過ぎながら言った。

 

その時その空洞から何かが姿を現した。

 

「ようお若いの。ここら辺じゃ見ねぇ顔でねぇか。どこから来たんだい?」

突然後ろから声を掛けられた龍崎は振り向いた。そこにはふとましい体型をしたおばさんが立っていた。

「東京から来て今帰るところです」

「東京か?なんで都会っ子かい。それでよ都会っ子。オメェのカバンからいい匂いがするなぁ。もしかしてニジマスか?」

「はい。でしたらなんでしょう?」

「1匹オラにくれねぇか?」

その問いに龍崎は無理ですと断る。すると相手はとんでも無いことを言い出した。

「なんならお前喰わせろ!若くてうまそうだな〜」

そう言い汚らしくヨダレをたらす。龍崎は正体を悟った。このおばさんは『山姥』という妖怪だということを。

だが龍崎は動じず断る。

「それもダメです。魚ならご自分でお願いします」

そう言い龍崎は去る。だが山姥は引き下がらず後をついてくる。

「頼むよ〜!3日も何も食べてねぇだ!魚恵んでくれよ〜!」

「だったらバイトでお金を稼いでください。今日初めて会った人に物など与えませんよ」

「ならお前を喰わせろや」

「それもダメです。私はまだ生きたいので」

「だったらニジマス喰わせろや!」

何度断っても山姥は引き下がらずだんだん言葉に感情が強張っていた。すると山姥は龍崎の肩を掴む。

 

「捕まえた。さぁ選ぶだ。魚を渡すか自分を食わすか!」

その傲慢言わざるを得ない態度に龍崎の首筋に青筋がたつ。

 

「お前…いい加減にしろよ…?」

「…!?」

言葉と共に発せられた威圧に山姥は冷や汗を流し手を離した。

 

「さっきから偉そうに…初対面の上に恵んでもらう相手には普通敬語だろ?何普通にタメ口叩いたんだ。そのうえ選べだ?傲慢にも程があるだろ」

そう言い龍崎は手の筋肉に力を入れ握りしめた。

 

「な…な!オメェまさか妖怪か!?」

「だから何だ?知る必要ねぇだろ。今死ぬんだからな」

そう言い首を掴む。山姥は引き剥がそうとするも力に勝てず引き剥がせなかった。

 

「待つだ!頼むやめてくれ!殺すのはやめてくれ!」

山姥は涙を出しながら必死に命乞いをする。だが怒った龍崎にその言葉は届くことはなかった。そして龍崎は指に力を込めた。

 

「しね」

 

グシャ

その音と共に指が食い込み山姥の肌を引きちぎり骨を砕いた。血が吹き出すと山姥は糸人形のように首を垂れ下げ絶命した。

 

「さて、早く帰るか。魂までは壊してないからすぐに生き返るだろ」

そう言い龍崎はその場から東京へ向かっていった。

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 

「ようやく着いた」

あれから一時間経ち龍崎は東京へと戻ってきた。現在は夕方であり、帰宅する学生達で溢れていた。

 

「さて、家に戻って焼くか」

そう言いそこから跳躍するとビルからビルへと飛んで行った。

 

ーーーーーーー

 

パチパチ……パチパチパチパチ

大通りから離れた誰もいないボロいアパートの外で龍崎は火を起こしその近くに串刺しにしたニジマスを置いた。

そして龍崎は近くにある岩に腰を掛けた。

 

「ふぅ…少し疲れたな…」

そう言い目を薄めながら火を見た。置いてあるニジマスから少しずつ脂が滲み出てきて香ばしい匂いを漂わせる。

 

「そろそろだな」

そう言い手に取りかぶりつく。

咀嚼しながら龍崎は頭の中で今後の学費の事を思い浮かべた。

今のバイトでも十分に稼げているが高校が私立となると話が変わってくる。やはり都立か国立にするべきか。

 

「ま、いっか。今は自分のやりたいことやろ」

そう言い二本目に手を出そうとした時

 

「……まずい囲まれた…」

そう言い辺りを見渡す。見ると魚の匂いで10匹の野良猫達が龍崎の周りに座りマジマジと焼かれているニジマスに目を向けていた。

龍崎はため息をつくと皿の上に魚を数匹乗せ野良猫達の前に出した。

すると猫達はすぐさまニジマスにかぶりついた。相当お腹が減っていたらしい。

「食ったら早く帰れよ。流石に宿は提供してやれねぇからな」

そう言い龍崎は2本目のニジマスにかぶりつく。因みに内臓や骨も食べる。

 

「ニャ〜!」

全ての魚を食べ終えると魚を貰った猫達が龍崎へと擦り寄ってきた。御礼の意味を表しているのだろう。

「はいはい。美味かったのか?」

そう言い猫達の頭を撫でる。撫でられ目を細める猫達はとても可愛らしく無理矢理には引き剥がせなかった。

「はぁ…そら、もう暗いから帰りな」

「ニャ〜」

そう言われると小猫達は近くの塀や道へと走っていった。

「ふわぁ…そろそろ俺も寝るか…」

欠伸をすると龍崎は部屋へと入っていった。

 

そして週明け

 

新たなる週の始まりとなる月曜日となり、朝から通学路である駅は混雑していた。

しかも今日は郊外ボランティア活動の掃除がある。そのため早く登校しなければいけないのだ

学校へ着くと龍崎はすぐに着替え皆と共にバスへと乗る。

バスの中 皆は子供らしくワイワイ騒いでいる中 龍崎は1人読書をしていた。

「おいおい龍崎、少しは楽しもうぜ?」

「そうだそうだ!トランプ持ってきたけどやるか?」

そう言い龍崎に話しかけてくる人物はクラスメイトの『そうま』とその取り巻きである。彼らは他の皆とは違い物静かな龍崎にフレンドリーに話しかけてくる数少ない友人のような存在であった。

龍崎は悪いと思いつつも雰囲気についていける気がしないので

「すいません。英検がもうすぐなので遠慮しておきます」

そう言い断る。彼らは「相変わらず勤勉だな〜」と笑いながら了承した。

 

ーーーーーーー

 

 

東京から約 数時間 目的地へと到着した一行は班に分かれて掃除する事となった。因みに犬山が同じである。

龍崎達が掃除をする場所はとある老婆の宅である。木造の昔ながらの雰囲気を出す家であった。

「ちょっと!そうま達ちゃんと掃除しなさい!」

「ちゃんと掃除しなさ〜い!だってよ?」

「犬山らしいわ!」

「何ですって〜!?待ちなさぁい!!」

そう言い犬山はサボる2人の男子と追いかけっこを始める。その様子を龍崎は家の主人らしき老婆から出された茶を飲みながら眺めていた。

「ほほほ。元気だね若い子は」

「まだ中学生ですからね」

すると 1人の男子が祠へと足をぶつけてしまい倒れてしまった。そしてその衝撃で祠も横へゆっくり倒れた。

 

「あ〜あ」

そう呟き龍崎は祠へ目を向ける。倒れた祠からは大量の妖気が感じ取れた。

だが龍崎にとっては関係ないので放っておく。ソッと湯のみを置くと立ち上がりまた1人で掃除を再開する。

そして清掃が終わるとまた東京への長時間移動となった。

 

数時間後

東京へと帰ってきた皆はそれぞれ下校する。

龍崎はいつものようにスクランブル交差点を抜けスーパーへ立ち寄り街はずれへと戻ってくる。

 

「さて、特売で買った肉でも焼くか」

使われていないアパートへと戻ってきた龍崎は部屋へと入っていった。

 

ーーーー

 

ある日の 午後

私は暇なのでまな に何処かでお茶でもしようかと連絡してみた。

 

 

『今日どっかいかない?』

それから数時間経っても返信が来なかった。よくスマホをいじる まな がこんなにも返信が遅いとは考えられない…。

おかしいと思った私は外に出てまなを探してみた。

 

私は近所の野良猫達に聞いてみた。

 

「(ねぇここら辺で『犬山まな』っていう女子中学生は見かけなかった?)」

「(さぁ…見てないなぁ…あ!そんな事よりも聞いてよ猫娘さん!この前 凄い人に会ったんですよ!)」

「(凄い人?)」

「(そうそう!すぐ近くの使われていないアパートに住んでる男性なんですけどもニジマスをたくさんくれて仕舞いには私達の毛を整えてくれたんですよ!)」

「(そ…それは凄いわね…じゃ、私はいくから。ありがとね)」

私はおばさんのように口々に話し出す猫から逃げるようにすぐに話を終わらせた。

というかあの猫の言っていた『凄い人』って…誰?

私は少々気になっていたけども今はまなが先なので無視する事にした。

 

というか…本当にまなはどこにいったんだ…

 

 

 

ーーーーーーー

 

「ん?なんだ?強い妖気が微かに感じる」

読書をしていた龍崎は突然感じた妖気に耳を鳴らした。その方角は街に設置してある鏡から感じ取れた。

 

「鏡からか……だとすると正体は『鏡じじい』か?」

そう言い龍崎は鏡を睨む。

「まぁいいや。それより勉強しねぇと」

そう言いまた読書へと戻った。

すると

 

ガタガタガタガタガタ!

家が突然震えだし小規模の地震が起きた。だが龍崎は慌てずにドアを開けた。

 

「ったく。普通にノックしろよ。八尺」

そこに立っていたのは身長が呼び名の通り八尺[240㎝]程のスーツを着たポニーテールの女性が立っていた。

「だって玄関は入りづらいのよ。少しは私の身長の事も気遣って」

その女性は不満そうな表情を浮かべた。

 

彼女の妖怪としての名は『八尺様』 田舎に住んでいる巨大な女の妖怪であり 魅入られてしまうと呪い殺されると噂されているのだ。

以前 というより一ヶ月前に田舎を訪れた龍崎を気に入り 呪い殺そうと仕掛けたが逆にボコボコにやられてしまい その時 龍崎から無差別な殺生よりも世界を見てみないかと提案され東京へ上京し 『八神 沢子』という名前で社会へと溶け込んでいた。因みにこう見えて知能が高く パソコンの『word』や『PowerPoint』といったアプリケーションソフトやスマートフォンの使い方を一日でマスターしたのだ。その知能をとある大手の商業会社より買われて以来その会社で働いているのだ。

話を戻し 八尺は部屋へと入ってくると巨大なパソコンを取り出し常人以上の速さで文字を打っていた。

 

「ったく。オフィスでやれよそんくらい」

「しょうがないじゃない!社員が仕事に集中できないって部長に言われたんだから!それにこの書類今日中に終わらせないといけないのよ!」

「そうかいそうかい。……で、どうだ?一ヶ月間 人間の職についてみて」

龍崎は本を読みながら聞いた。ハ尺もパソコンのキーボードを打ちながら答える。

「中々 面白いわね。生まれてずっと田舎で生きてたから知らなかったわ。まさか人間の技術がここまで進んでいたとは思いもしなかったわ」

「同じ感想だな。どうだ?このままここで仕事を続けるか?それともまた田舎に戻るか?」

「いや。田舎に戻るよりもこのままここに居続けてもっと学びたいわね。そして外国にも行ってみたいわ」

「そりゃよかった」

キーボードを打ち終えると八尺は龍崎を抱き上げた。

「なんだ?」

「少し付き合いなさいよ」

そう言い八尺は龍崎と共に家を出た。

 

 

沢山の人が帰る中 2人は渋谷のとあるグルメタワーへと来ていた。

「ここは?」

「イタリア料理の専門店よ。私をここまで導いてくれたお礼がしたくてね。ここのラクレットチーズが凄く美味しいのよ?」

「ラクレットか…新宿のテレビで見た事があるな」

そう言いながら龍崎は出された水を飲む。その間に八尺が注文し数十分後

鉄板の上で焼かれたハンバーグとウインナーやポテトが届いた。

「すげぇな…で?どこにチーズがあるんだ?」

「それはね…あ、普通の量でお願いします」

「かしこまりました」

すると巨大な固形チーズが現れ店員はその切れ目の側面からナイフで切り落とすように滑らせた。するとその側面がトロッと溶け出しゆっくりとハンバーグへ流れた。

「おぉ…これは美味そうだな」

「でしょ?」

実物を目の当たりにした龍崎は舌を鳴らした。

 

「ハグッ…!」

あまりの絶品さに龍崎は涙を流した。食べたと同時にチーズの臭さとハンバーグの香ばしさが合わさりジューシーな肉汁が口の中を満たした。

 

「上手いな…こんな料理食べた事がねぇ…」

「でしょでしょ!いやぁ気に入ってもらえてよかった!」

それから龍崎はゆっくりと味わいながらチーズを堪能した。

 

ーーーーーー

 

「ふぅ…ご馳走さま」

「どういたしまして」

帰り道 2人は並んで歩きながら暗い住宅街を歩いていた。すると何かに気づいた八尺が龍崎へ伝えた。

 

「確かこの辺り最近 通り魔が出てるらしいよ?」

「通り魔?」

「えぇ。主に小学生を狙って 殺してるらしいの」

「お前と同類だな」

「それは昔でしょ!?確かに悪い事したとは思ってるけど…」

「どうだか」

そう言い歩いていると

 

「ねぇ」

後ろから声を掛けられた。見てみると赤いコートを纏った女性が立っていた。見てみると美しい女性で 顔の下半分はマスクで覆われていた。

 

「はい?どうしました?」

龍崎は突然声を掛けられ理由を尋ねた。すると相手の女は龍崎へ近づくと聞いてきた。

 

「ワタシ…きれい?」

「「?」」

その質問に2人はカクンと首を傾げた。

 

「きれい?っていわれても…どう思う?」

「まぁあんまり綺麗とは言えないわね。でも初対面だから気を遣わないと。はい綺麗です」

その言葉に女はマスクを掛けている耳へ手をかけた。

「だったら……これでもかぉぁぁ!!!!」

マスクが外され出てきたのは耳まで裂けている大きな口だった。

 

「これでも綺麗かぁぁぁぁ!!!!」

そう言うとその女性は刃物を取り出し2人に向かって襲い掛かってきた。

 

『………』

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

「あの…すいません。これで全部なんです」

あの後 女性の正体は口裂け女という妖怪である事が分かり 襲ってきた口裂け女を2人はボコボコにすると、土下座をさせて財布の中身を抜き取っていた。

 

「へえ。万札2枚に千円札3枚か。もっとあるだろ?」

「ジャンプしてみなさいよ?」

「 いや!本当に無いんです!勘弁してください!」

因みに、その後 口裂け女は何とか解放されたが、一生に残るトラウマを抱えたのだった。

 

 

 


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