ゲゲゲの鬼太郎 天翔の少年   作:狂骨

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河童の逆襲

「じゃあ仕事行ってくるわね」

「あぁ」

その言葉と共にビジネススーツを着こなした八尺は龍崎に手を振るとアパートを出て行きその姿を龍崎は見送った。

 

「さて、俺も行くか」

そう言い龍崎も鞄を持ち学校へと向かった。

 

ーーーーー

 

教室に入るや否や 龍崎の頭が突然真っ白になった。

 

「……ケホ…ケホ…」

手に付着した粉を見る限りチョークの粉だろう。しかも真っ白ではなく赤や黄色も混じっており学ランも黒色の筈が他の色が混じった事により酷く汚れてしまった。

龍崎は汚れをはらい落とすと辺りを見渡す。見ると何人かの男女がニヤニヤしながらこちらを見ており目が合うと同時に顔を逸らした。

 

「はぁ…」

ため息をつき嫌がらせだと認識した龍崎は何も言わずに席へ向かった。

 

「…?」

だが、同じような光景が自分の席でも広がっていた。

コンパスや焼きごてで『死ね』 『学校やめろ』 『貧乏神』等の誹謗中傷等のメッセージが彫られていた。常人ならここで鞄を捨てて帰る程のショックを受けるが龍崎は意に介す事なくその上に教科書等を並べた。

 

ガラガラガラ

 

「はい席に着いて。HR始めるわよ」

それからは誰も手を出してくる事は無かった。だが時折 まなが此方へ顔を向けてくる事があったが龍崎は顔を逸らす形で目を合わさないようにしていた。

 

ーーーー

 

「ではこれにてHRを終わります。気をつけて帰ってください」

ガラガラ

 

 

 

「よしゲーセンいこうぜ!」

「いいねぇ〜!その後ステーキいこうぜ!お前奢りな!」

「は?ふざけんなし笑」

帰りのHRが終わると同時に何人かの男女は走り去るように教室から出て行った。

龍崎も荷物をまとめ椅子から立ち上がり教室をでた。

 

「あ、今日バイトだったの忘れてた」

中学ではあまり許可されていないのだが龍崎は家庭の事情と言う事で了承してもらっている。

 

ーーーーーー

 

私は今日の夕食の材料を買うためにいつもの八百屋に来ていた。

 

「あら猫ちゃん。今日もいいの揃ってるよ」

店長のおばちゃんとは結構長く付き合ってるのでもう顔見知りだ。

 

「取り敢えず今日はキュウリの塩漬けにでもしようかしら。キュウリ キュウリっと…あれ?」

よく見るといつも大量に置かれているキュウリが一本も無かった。今日だけでない。先週からずっとだ。

 

「おばちゃんキュウリどうしたの?」

「あぁすまないね。なんでも都内の会社が東京中のキュウリを買い占めて。ウチも先週からずっと買い占められてるんだよ」

「うそ!?。しょうがない…ナスの味噌漬けでいっか」

「毎度あり〜」

 

先週からキュウリを買い占める会社……何かありそうね…。

 

ーーーーーー

 

都内某社にて

 

2人の帽子を被った配達員が暗い廊下を荷車を押しながら歩いていた。

「まったくこれで一週間連続だぜ?きゅうり数百本。ここの会社どうなってんだ?」

「さぁな。取り敢えずいつものように置いてすぐ帰ろうぜ」

「だな」

そう言いながら2人は大量に積み重ねられたきゅうりの箱を指定されたオフィスの入り口へ置いた。

すると、その扉が少し開いているようで中から声や光が見えてきた。

 

「なんだ?……!?」

その瞬間 見た片方の男性は固まった。

 

「どうした?…!?」

もう片方の男性も固まった。

 

そこには頭に皿を乗せ背中に甲羅を背負った不気味な生命体の集団がスーツを着用して業務作業を行なっていた。

 

 

「な…なんなんだよこれ…!?あれって河童だよな!?」

「河童!?ンなもんいるわけねぇだろ!?あれだよ!池に潜んでる尻子玉が好物の変質者だよ!」

「モロ河童じゃねぇか!河童確定じゃねぇか!河童+河童じゃねぇか!!」

「ンなこと言ってる場合か!早く逃げるぞ!」

その時

 

「見たな?」

『ヒィ!?』

2人の背中に水掻きがついた手が置かれた。

恐る恐る振り返るとそこには見たものと同じ生物が3匹立っていた。

 

「お…お助け…!」

「見られたからにはただじゃおかん。やれ!」

1人の生物の合図と同時に他の2匹は人間とは思えない手の速さで男達の尻へ手を伸ばした。

 

『アッフゥゥゥゥンッ♡』

 

ーーーーーーー

 

その夜

 

龍崎はいつものバイト先で荷物分けをしていた。

 

「よっと」

軽く10kgはある箱を片手にに10個づつ積みながら次々に荷分けする姿は働いている職員も目を丸くする程であった。

 

「最近の中学生はすごいね。あんなに持つなんて…今の子供達はやっぱちがうね〜」

「ンな訳ないでしょ」

 

龍崎は荷物を運び終え一休みし近くの台へ腰を下ろした。

「ふぅ。いい汗かくな。ん?なんだ?」

その時 その職場に設置してある小型テレビに映っているものに目がいった。

 

「ご覧ください!突然大勢の人々が力が抜けたかのように倒れております!」

そこに映し出されていたのは噴水のある公園だった。

見ると辺りにスーツを着た社会人達がまるでフニャフニャになったかのように倒れ伏していた。

 

「何だありゃ?」

その時 レポーターの後ろに黒い影が現れた。

 

「ケケケッ!」

「ぎゃぁぁぁ!!」

すると同時にそのレポーターは叫び出し黒い影が消えるとその場に倒れた。

 

「面白そうだな。行ってみるか。店長。俺はもう上がります」

「はいよ〜」

龍崎は衣服を着替え学ランを着用するとすぐさまその場へ向かった。

 

ーーーーーー

 

一方で、その目的地では

 

『ケケーッ!!』

多くの河童達が辺りにいる人達へ襲いかかり次々と尻子玉を抜き去っていた。

この現場を撮影していたニュースキャスターも容赦なく襲いたちまちに人は逃げていった。

 

「逃すな!全員の尻子玉を抜き取れッ!!」

『ケケーッ!!』

リーダー格らしき河童が支持すると他の河童達も雄叫びをあげ次々と人を襲った。

 

その時

 

「やめろ!」

辺りに響き渡る声と共に近くの建物から何かがこの場へと飛び降りてきた。

 

「これ以上 人間に手を出すな!」

その正体は小柄な少年であった。河童達はその少年の姿を見ると驚きの声を上げた。

 

「鬼太郎だ!」

「なに!?鬼太郎だと!?」

そんな中 リーダー格の河童が前に出た。

 

「太郎丸!なぜこういう事をする!やっても何の意味もないぞ!」

鬼太郎はリーダー格らしき河童へ制止を促した。すると太郎丸と呼ばれた河童は下を向きながら答えた。

 

「鬼太郎さん…これは私達が生きるための事です…いくら友達の貴方でも…邪魔するなら容赦はしません!」

そう言いうと太郎丸や他の河童達は一斉に戦闘態勢を取る。それに対し鬼太郎も話は通じないと判断したのか構えた。

 

その時

「ケケケッ!!」

「きょぽ!?」

突如背後から別の河童が現れ鬼太郎の尻子玉を抜き取った。

 

「鬼太郎!!しっかりせい!」

目玉親父が気を確かに持つように促すも鬼太郎はふにゃふにゃになってしまい立ち上がる事すら出来なくなっていた。

 

「鬼太郎!大丈夫!?」

「応援に来たばい!ってあんれ〜!?」

後から駆けつけた猫娘達も鬼太郎の姿を見た瞬間に絶句した。

 

「一足遅かったか…既に尻子玉を抜かれておる…!」

「嘘でしょ!?…こうなったら私達がやるしかないわね!」

猫娘は鬼太郎が戦えない状態と判断して自分達で河童を止める事を決める。だが、河童達は勢いを崩さず猫娘達へ目を向けた。

 

「女だからと言って容赦はしないぞ?」

『ケケケッ!』

「ッ!?」

河童のいやらしい手つきに猫娘はすぐさま尻に手を当てながら逃走した。それに対し河童達は手を向けながら後を追った。

 

「来るな〜ッ!!!」

『ケケケッ!』

「変態〜ッ!!!』

『ケケケッ!』

ドドンッ!

「ぬりかべ!」

「ケケッ!」

「ぬっ!?」

猫娘を守ろうと立ち塞がったぬりかべもすぐさま餌食となり倒れてしまった。

 

「もうやめよ太郎丸!」

砂かけ婆も太郎丸へ制止を呼びかける。だが太郎丸は止まる意思を見せなかった。

 

「砂かけ婆さん…貴方は傷つけたくない…ですが邪魔するなら…!」

『ケケケッ!』

「…え!?」

砂かけ婆も標的とされてしまい河童達は一斉に砂かけ婆を追いかけ始めた。

 

「うぎゃぁぁぁ!?レディに対して何たる破廉恥な〜!!」

 

ーーーーーーー

 

一方で鬼太郎は未だに力を出すことが出来ずふにゃふにゃとなっていた。

するとそこへ

 

「ハハッ。久しぶりに儂の出番みてぇだな」

「おお!?いそがし!?」

そこへ現れたのは一つ目の『いそがし』という妖怪だった。

 

「ちょいと取り憑くぜ」

そう言うといそがしは鬼太郎の身体へ自分の身体を半透明化させると吸い込まれるようにして消えていった。

 

ーーーーーー

 

一方で猫娘と砂かけ婆は河童達に回りを包囲されていた。

 

「くっ…こんなにいると流石に厄介ね…」

「さてどうしたものか…」

2人は打開策を考える。だが一向にその案は出ずこの場を脱するのは不可能と確信し始めた。

 

その時

 

コツ コツ コツ

 

 

聞き慣れない足音と共に奥の暗い道から1人の学生服を着た少年がその場に現れた。

 

「人間か!?ハッわざわざ来るなんて馬鹿なもんだぜ!」

「お前ら!コイツらよりも先に人間をやっちまえ!」

『ケケケッ!』

太郎丸の合図と共に猫娘達を囲んでいた河童達は一斉にその少年へと向かっていった。

 

「ぬぉ!?逃げよ!尻子玉を抜き取られるぞ!」

砂かけ婆はその少年へ逃げるよう促した。だが横にいる猫娘は戦慄の表情を浮かべすぐさま河童達へ声をかけた。

 

「ダメ!ソイツに手をだしたら!」

だが河童達にその声は届かなかった。

 

その瞬間

少年の口角が吊り上がった。

 

それと同時に辺りに鮮血が飛び散った。

その少年に向かっていった河童達 全ては手や足が引き千切れ無残な状態となり辺りに散らばっていた。

 

「邪魔だよお前ら」

そう言いながらその少年は自分の目の前に落ちた河童の手を蹴ってどかすと猫娘達を見た。

 

「久しぶりだな」

 

その瞬間 猫娘の目から殺意が溢れ出た。

「なんで…アンタがここにいるよ…

 

 

 

 

 

“龍崎”ッ!!!!!

 

 

 


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