龍崎と再び合間見えた猫娘達は咄嗟に戦闘態勢を取った。それに対して龍崎は手を上げ戦う意思がない事を示した。
「まてまて。俺はお前らと戦うつもりはない」
今回の目的は達成されたし今は運動する気分ではない。そういう心情であった。だが、先日対峙した相手に構えを解くほど彼女達は甘くはなかった。
猫娘や皆はまなを守るように態勢をとる。
「そんな言葉…信用できると思ってるの…?」
「怪しいのぅ…」
信じないのも無理はないが少々疲れている為 顔を手で覆ってしまう。
「と言うか…何で停学中の龍崎君がここに…?」
「俺はただノートを取りに来ただけだよ。んで体育館にやたらと妖気が集まっていたから来てみたらあんな感じだ」
そう言い龍崎は天井を指差す。砂かけ婆は知り合いである二宮金次郎を見て絶句した。一方でまな も最近起こらなくなっていた七不思議の原因はこれだと言う事に確信した。
「まさか…アンタがやったの?」
「ハッ。何故俺がこんな事を。やったのはそこに転がってる奴だよ」
皆は龍崎の指差す方を見た。そこには先程自分達の前でねずみ男を攫ったヨースケが腹を抑えうずくまっていた。
「確かあのヒゲを生やした男が花子に手を出したとか言って吊るし上げてたな」
「はぁ!?」
その言葉に猫娘は青筋を立て猫の目になるとねずみ男を睨んだ。
「ちょっと!まさかアンタが犯人だったの!?」
「し…知らねぇよ!俺が愛してるのは『まなちゃん』だっつーの!」
「え…」
ねずみ男の唐突な発言に猫娘は腑抜けた声を出す。一方で龍崎はそうなのか?という表情を浮かべる。
「アイツってお前の彼氏だったのか?」
「え?いや…ただの知り合いだけど」
龍崎は普通に質問をするとまな はアッサリと否定した。それに対してねずみ男は絶望的な表情になりグッタリとした。
ねずみ男が喋らなくなると龍崎は話を戻した。
「話を戻すが、そこに転がってる奴は俺に喧嘩をふっかけてきたから返り討ちにしてやったんだよ。ほら。これで分かっただろ?分かったらそこ開けろ」
「…」
龍崎は殺気を出さずに追い払う仕草をする。信じ難いが彼がこれまでの事を起こしたという確証や殺気がない為 渋々と信じ道を開けた。
そしてゆっくりと皆の横を通り過ぎると扉を開けこの場から去っていった。
「アイツ…前と雰囲気が全く違ったわね…」
「うむ…殺気などは全くない上に激しかった妖気も穏やかになっていたのぅ…」
龍崎がいなくなると皆はねずみ男たちを降ろそうと正面を向いた。だが、先程と少し風景が変わっていた。
「あ…あれ?ヨースケは…!?」
見るとそこにはヨースケの姿がなかった。
「逃げられたか!?」
「くぅ…取り敢えず金次郎達を助けましょう」
ヨースケを追うのを後にし、猫娘達は金次郎達の救出を優先した。
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「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
一方で体育館から少し離れた二階の男子トイレでは姿を消したヨースケがトイレに顔を隠しながら身体を震わせていた。あの後すぐに姿を眩ましトイレへと戻ってきていたのだ。だが、その顔は何かに怯えるようで額からは大量の汗が流れていた。
「な…何なんだアイツは…!この学校にあんなドス黒い妖気を纏った奴がいたなんて…!」
そう言い頭の中で全身から黒い妖気を放つ龍崎を思い浮かべる。
「ここにいたら確実に殺される…!急いで離れないとッ!」
ヨースケの異常な花子への執着心は龍崎に対する恐怖感に負け すぐさま逃走という選択肢を選んだ。
そして夜が明けると同時にヨースケはこの中学校を去っていった。
ーーーーーーー
それから数日後
龍崎の謹慎期間はすぎ、久しぶりの登校となった。
「ふわぁ…?」
あの件以来 周りの生徒達はあまり近づかなくなり龍崎の横を通ろうとする者はいなず、通り抜ける時は目を下に向け逃げるようにしていった。
「(流石に暴れすぎたか…これはしばらく目立つな…)」
自分の仕返しに少々 後悔しながらも教室を目指した。
ーーーーーー
自分の教室に入ると同時に皆の視線が龍崎に向けられる。
「…」
皆から視線を向けられると龍崎は穏やかな目ではなく鋭い目で辺りを見回す。
それから数秒経つと自分の席へとついた。外見から見ればクラスの雰囲気は賑わっておらず、ガラガラだった。
その原因は10人の欠員。
欠員した10人は全て龍崎を虐めながら盛り上がっていたので、それが無くなった事でクラスの賑やかさは消えていった。
皆は座った龍崎へと視線を向けたままだった。その中には前の夜中に会ったまな も一緒である。
それからしばらくして、授業が始まった。授業はいつもよりも静かでどの教科もスムーズに終わった。
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「では、今日はこれで終わりです。気をつけて下校するように」
担任のSHRが終わると龍崎は鞄を持ち教室を出た。
「ふわぁ…」
これからあるアルバイトに少々気が向かず欠伸しかできなかった。
すると
「りゅ…龍崎君…」
「…?」
突然名前を呼ばれ背後を振り返った。そこには背が龍崎と同じで髪をV字に分けたロングヘアの女子が立っていた。
「貴方は確か……『雅』さんでしたっけ?」
この少女の名は『桃山 雅』 と言い、以前 水泳の授業で龍崎に下着を取られてしまった生徒である。雅はモジモジとしており、何かを話そうとしていた。
「どうしました?」
すると
「ごめんなさい…!」
突然頭を下げられた。龍崎は何が何だか分からず首を傾けた。
「あの…今まで龍崎君の事…ずっと犯人だと思ってて…」
「あぁ〜」
龍崎は思い出した。実はプールの件での犯人は龍崎ではなく、斎藤達の策略である。仕返しの際に事実が発覚した事で雅は凄く根に持ってしまったらしい。
「別にいいですよ。俺は気にしていません」
軽く返すが相手は応じなかった。龍崎からしてみれば軽い事なのだが、彼女にとっては馴染みが無いにしても龍崎は大切なクラスメイトであり、彼を犯人だとずっと疑っていた自分を許さなかったのだ。
「でも…その所為で龍崎君はずっと…」
「だから大丈夫ですって」
龍崎は手で何度も大丈夫だという意思表示をした。
「分かった…ありがとね」
「えぇ」
雅は手を振ると龍崎から離れていった。彼女の顔がこちらを向かなくなると歩き始めた。
「さて、アルバイトにいくか…」
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ここは東京から何百キロも離れた四国地方のとある土地である。
緑が多く 山は野生の動物達の住処となっていた。
そんな森の中に一つの巨大な岩が祠に祀られていた。その石には一枚の札が貼られており、その札からは不思議な力が発せられ、それ故か誰も近づこうとはしなかった。
そんな中、1人の黒衣の男がその祠の前へ現れた。
その男は何かを憎むかのように言葉を唱えた。
すると、その石に貼り付けられていた札が突然燃え上がり、燃え尽きた瞬間 その石から強大な妖気が溢れ出た。
「憎き妖気集いし妖…何とも甘美なることか…」
そう言うと同時にその男はまるで靄のように消えていった。
そして
「ヴォォオオ!!」
邪悪な妖怪が石の中から姿を現しその怒声を発すると共に周りの草木が枯れていった。
「今こそ日本を我らのモノにッ!!」
『おおおおおおッ!!!!!』