謹慎が開けてからの3日後の土曜日
龍崎は四国を訪れていた。なぜかというと本場の讃岐うどんが食べたいと唐突に思ったからである。
その他にももう一つ理由がある。それは、ある妖怪と会うためである。
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「お待たせしました」
とあるうどん専門店にて、頼んだうどんを龍崎は勢いよく啜っていた。そして目の前には、半袖と頭にタオルを巻いた少年がその様子を見ながらジト目を向けていた。
「相変わらずよく食うなお前」
「そうか?」
この少年は獅子という妖怪であり、その中でも最も強い妖力を秘めた部類である『炎獅子』という妖怪の子孫である。因みに彼も妖怪と普通の人間との間から生まれた混血児だ。
名を『炎谷 貫九郎』
彼は中国四国地方を住処にしており勉強大嫌いな現 社会人である。
「…で?話って何だ?」
最後のうどんを飲み込むと龍崎は質問をする。実は四国地方に来たのは炎谷から呼び出されたからである。
それに対して炎谷は顔をしかめつらせながら小声で話し始めた。
「実はな。四国の『刑部狸』が何者かによって目覚めさせられたらしいんだ」
そういい炎谷は水をすする。『刑部狸』とは、かつて四国を支配していた狸であり、『八百八狸』という808匹の狸達を眷属に持つ凶悪な妖怪だ。
「で?目覚めたからなんだ?」
「それでな。お前にソイツらを倒してきてもらいたいんだ」
「はぁ?」
炎谷は要するに龍崎へ刑部狸及び八百八狸の討伐を依頼したいらしい。それを聞くと龍崎は嫌そうな顔を浮かべる。
「いいだろ?闘い好きなお前にとっちゃ吉報じゃねぇか」
「何で俺が。四国はお前のナワバリだろ?」
龍崎は資格試験が近い為に面倒事は起こしたくないと思い普通に拒否をした。だが、炎谷はとんでもない事を告白した。
「だってソイツらお前のナワバリである東京に行っちまったんだもん」
その言葉を聞いた瞬間 龍崎の手に筋が立ち持っていた割り箸が粉々に割れた。
「ッ…分かったよ。引き受ける。これは一つ貸しだからな」
「はいよ」
それから炎谷と別れた龍崎は宿を借り、二泊してから東京へと戻る事にした。
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その一方で、龍崎がいなくなった東京ではとんでもない事態が起きていた。
帰りの帰省ラッシュで混み合う渋谷や新宿にて、歩く人々は皆 空を見上げていた。
「お…おい…何だありゃ…」
「こんな事があんのか…!?」
そこには
“月が二つあった”
本来ならば存在するはずのない物がそこに存在していたのだ。だが、大きさは同じに見えるが実際に宇宙にあるのではない。地上から数百メートル離れた地点に浮いていたのだ。だが、その大きさは計り知れなかった。半径だけでも数百メートルはくだらない程の大きさがあり、今にも落ちてきそうだった。
しかも、色が白ではなく、赤く染まっており、中から何やら胎動らしき音が鳴り響いていた。
そしてその月の事は当然に 首相の元にも届いていた。
「これはいったい…」
初めて見る超常現象に総理や他の議員達も驚いていた。その時
ザザザザ……
目の前に映っていたモニターの画面がブレ出したかと思いきや突然画面が切り替わった。
そこには、無数の狸とその真ん中の玉座に居座る1匹の巨大な狸が映っていた。
『人間供よ。我らは四国の妖怪『八百八狸』だ。単刀直入に言う。今すぐ政権を我らに譲渡せよ』
『!?』
突然の発言に周りの議員達は慌てふためいた。
「な…何だこれは!?誰のイタズラだ!?」
「しかも電波を妨害するなど…法律違反だぞ!」
『誰かが作った映像だと思っている奴が多いと思うが これは本物だ。我らは実在する』
「!?」
そんな中 テレビに映っている映像がこちらが言っていることが聞こえているかのように答えると皆は固まった。
『第2の月は警告にすぎん。今の要求を呑まずに我々に歯向かえば更に恐ろしい災厄が訪れるぞ…』
ジジジ…
それだけ言い残すと電波が途切れ元の映像へと戻った。
静かな空間の中 1人の議員が真っ先に提案をする。
「総理!先手必勝です!今すぐ撃ち落としましょう!」
だが、その提案を総理は受け取らなかった。
「そんな事をしたら…誰が責任を取るのですか?」
「だったらどうするんですか!」
総理は『責任』が回る事を恐れ撃ち落とす計画を受理しなかった。
「まずは第2の月半径5キロ圏内にいる市民達に緊急避難命令を。その他の地区には外出禁止令を出してください」
総理は撃ち落とす事よりも市民の避難を優先させた。
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「…う〜ん繋がらない…」
第2の月と狸の警告。まなはヤバイと思いすぐさま猫娘へと連絡をしたが電波が妨害されており連絡が取れなかった。するとまな はある方法を思いついた。
「そうだ!妖怪ポストに書けば!」
確かに妖怪ポストならば時間がかかるが確実に届く。そう思いすぐさま手紙を書きポストへ入れる為 外へと出た。
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「ふぅ…極楽じゃ〜」
一方で、ゲゲゲの森では目玉親父が湯船に浸かり鬼太郎はそれを見ていた、
「父さん…猫娘から聴いたのですが…また“あの妖怪”と遭遇したらしいです」
「ふむ…あの少年か…」
鬼太郎は旅行から帰ってきた後 猫娘から再び姿を現した事を聞いたのだ。だが、今回は何もしてこない上に妖気から全く殺気や闘気が感じられなかったらしく、疑問に思っていたのだ。
「確か『龍崎 忍』と言ったな。猫娘によると『龍』の子孫らしい…」
「龍…の子孫…?どういう事でしょうか?」
「ふむ」
目玉親父は湯船から上がると頭を拭きながら話し始めた。
「龍とは本来 世界中に存在するんじゃよ。例えばケルト神話によく出てくる『ドラゴン』 西遊記に出てくる『玉龍』。つまり『龍』とは言わば種族みたいなものじゃ。皆それぞれ多種多様な力を持っていて弱い龍もいれば強い龍もいる」
「へぇ…知りませんでした。てっきり龍って…1匹の生物だと思ってましたよ」
「まぁ一般的にそう伝わっているじゃろう。話を戻すぞ。つまりあの少年がその数ある中の龍の子孫という事じゃ」
「成る程…」
鬼太郎が納得する。すると何故か目玉親父はふと疑問に思った。
「じゃが龍とはいえ…あれ程の妖力は備えて無い筈…なぜじゃ…?」
すると
カァーッ!
突然 窓からカラスの声が聞こえ、見てみると何かを加えていた。
「お?手紙か?」
「そのようですね。差出人は…まな からです」
「ほほぅ。どれ、読んでみてくれ」
「はい」
目玉親父に言われ読み上げていくと
「ッ!?」
鬼太郎の目が変わった。
「どうした?」
「…『刑部狸』が…政権を奪おうとしているらしいです…」
「何じゃと!?」
鬼太郎はまな からの手紙を読み終えるとすぐさま支度をし、人間界へと向かった。
新キャラ
炎谷 貫九郎 (えんや かんくろう)
見た目 べるぜバブの赤星
歳
龍崎より10歳年上
身長は龍崎より少し高く。いつもタオルを頭に巻いている。獅子と人との間に生まれた半妖であり、炎を自在に操る事ができ戦闘力が高い。因みに両親は2人とも他界している。
勉強が大嫌いで、小学校に通わず学歴がない。けれども一般常識だけは覚えようと思い 12年掛けて中学卒業レベルまでの学力を身につけた。 今では大工の仕事をしており、力仕事だけはできる。
中国・四国をナワバリに持っているが、あまり表に力を見せない為に妖怪達はその正体を知らない。
最近では稼いだ金と技術で家を改築したらしい。