ゲゲゲの鬼太郎 天翔の少年   作:狂骨

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東京占拠 狸達の進撃

鬼太郎は猫娘と共に人間界へと出た。目の前には手紙通りの第2の月が浮かんでいた。

 

「月が…赤い」

「恐らくあれは月ではない。奴らが崇める妖怪獣の卵じゃ」

月を見ながら目玉親父は あれは本来月ではなく卵である事を伝えた。

 

「今は浮いているだけで危険ではない。じゃが…あれが万が一地上へ落ちればたちまち妖怪獣が復活してしまう…」

「その前に止めないとやばいわね」

その時 後ろの草むらが揺れ猫娘の友達である黒猫が現れた。

 

「クロ?どうしたの?」

「ニャー!」

その猫は何か慌てており鬼太郎では何を言っているのか分からなかった。だが、猫娘は猫の鳴き声を聞いた瞬間 血相を変えた。

 

「まなが…狸達に攫われたらしいわ!」

「なんだって!?」

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「刑部狸様〜!!」

「ん?」

地下世界にて、多くの狸達が集まっている広場で名前を呼ばれた巨大な狸は振り返った。そこには多数の狸と連れ去られたまな そして、ねずみ男が立っていた。

 

「この人間は『犬山 まな』と言って鬼太郎と結構仲がいいんですよ!」

 

ねずみ男の放った言葉の中で“鬼太郎”という単語に刑部狸は反応した。

「鬼太郎というのは前に話していた“正義の味方気取り”の妖怪の事か?」

「そうですよ!アイツらの所為で俺がどんなに痛い目に遭っているか〜!」

「いっつも助けてもらってる癖に…」

まるで泣き言のように話すねずみ男の様子をまな はジト目で睨んだ。するとねずみ男はやらしい笑みで耳打ちをした。

 

「まなちゃんよ?ここは妖怪の国だ♪人間の言葉と妖怪の言葉…場違いというものがあるだろ?」

「……」

どう考えてもおかしい言動にまな は更に腹を立てた。

その時

 

「ぎゃん!?」

暗闇の奥から一足の下駄が高速で向かってきた。その下駄は風を切る音を出しながらまな のすぐ近くにいるねずみ男の側頭部に向かってその身体を吹っ飛ばした。

 

『!?』

 

周りの狸達は驚きすぐさま下駄の向かってきた方向へ首を向けた。

そこには

 

「鬼太郎!猫姐さん!」

怒りの表情を浮かべた鬼太郎と猫娘が立っていた。周りの狸達は一斉に鬼太郎達に向けて戦闘態勢をとった。

 

「ほう?コイツが鬼太郎か」

「あら、いい男じゃない」

 

そんな中、刑部狸は2人を見つけると睨んだ。

 

「鬼太郎とやら。お前は『妖怪大辞典』の巻頭を読んだ事はあるか?」

「あぁ。『21世紀は妖怪の時代』と書かれていたな」

「その通り。つまり、我らの支配は予言されていた通りだ。お前も妖怪の端くれならなんの不満もなかろう」

その言葉に対し鬼太郎は吐き捨てた。

「そんなものに興味はない」

「フン。何と言おうと人間はいずれ我等が支配する。鬼太郎よ。お前は他の妖怪達に我等の支配下になるように説得するのだ」

「そんな事できるか!」

いきなりの要求に鬼太郎は更にトーンを低くし拒否した。

 

だが、向こうには人質がいた。

 

「嫌ならこの雌豚がどうなってもいいのかい?」

「誰が雌豚よ!?」

着物を着用した女狸は自分の簪の切先をまな の首元へと向けた。これでは流石に手が出せない。

 

「くっ…」

その時 耳元に目玉親父が小声で囁いた。

「鬼太郎…儂に考えがある…!………」

「……はい」

 

何かを伝えられた鬼太郎は返事を催促する狸達へ向かって返した。

 

「分かった。言う通りにしよう。その代わり まなを返してもらうぞ」

「ふん。いいだろう。だが…」

刑部狸はまな の身体を掴み上げた。

「へ?」

 

すると刑部狸はまな の手へと自分の鼻を擦り付けた。

「いやぁぁぁ!!」

「まな!」

 

鼻を離すと刑部狸は鬼太郎へ指を指した。

「此奴に呪いを掛けた。万が一 お前が約束を果たさなければ儂は念を掛ける。そうすれば此奴は我等と同じ狸となる」

「なんだと…!?」

呪いを掛けられた事を知った途端 まな は刑部狸の手の中でもがき始めた。

 

「そんなの嫌だぁぁ!!!」

「ならお前からもしっかりと鬼太郎に頼むんだなぁッ!」

もがくまな を刑部狸はそう言いつけながら鬼太郎達へと投げた。

 

投げつけられたまなを猫娘は受け止めると狸達を睨んだ。

 

「鬼太郎よ。ちゃんと約束は果たせよ?さもなくばその女は我等の仲間になるからな」

「…」

その後 鬼太郎と猫娘とまな は狸達に連れられ外の世界へと出された。

 

「2人は先に行ってくれ。僕は地下へ戻る。この事はオババ達にも伝えておいてほしい」

鬼太郎は地上へは戻らずまな と猫娘だけを出し自分は中へと戻っていった。

街道を走る中 2人はなぜ鬼太郎が戻ったのかは知るよしもなく、言われた通りにすぐに砂かけ婆達へと知らせに向かった。

 

ーーーーーーー

 

「総理!こ…これは一体…!」

「…」

その一方で国会では、皆は戦慄していた。軍艦を用いて撃墜をしたはずの月が無傷で湖へと墜落したのだ。

だが、問題はその後だった。撃ち落とした瞬間 その月が割れ始め 中から“何か”が姿を現したのだ。

 

それは異形な生物だった。巨大な体躯に鋭い牙 そして不気味な目 その怪物は姿を現わすと同時に港へと上陸し次々と建物を破壊し始めた。

 

「っ…これが…狸達が予告していた第2の災いだというの!?これで都民に被害があったら…私たち政府の責任じゃない!?」

未だに責任の事でしか考えていない総理は次々と破壊されていく景色に混乱していた。

何十機もの戦闘機がミサイルを放つも傷一つつけられず街の破壊は止むことはなかった。

 

その時

後ろの入り口が乱暴に開かれ 大勢の狸達が乗り込んできた。

 

「た…狸!?」

「どうやってここまで…!?警備はどうした!?」

皆が慌てふためく中 シルクハットを被った狸『団一郎』はタバコを吹きながら答えた。

 

「もちろん正面から。警備の方々には寝ていただいたよ。者共 すぐさま捕らえろ!」

『へいッ!』

 

団一郎に命令された狸達はすぐさま皆を縛り拘束した。

 

「さて、貴方方に問います。このまま政権を渡さなければ妖怪獣様によって東京は壊滅。都民の安全も保証できません。ですが、譲渡するならばすぐに止めましょう。如何かな?」

 

「……譲渡したら責任は…貴方方に移るんですよ!」

「勿論承知の上ですよ。さぁ…どうする?」

「……分かりました…そちらの言う通りにします」

アッサリと政権を譲渡した総理に皆は反論した。

 

「総理!?なぜアッサリと!」

「ふざけないでください!」

皆が次々と反感の声を上げる中 団一郎は一喝した。

 

「黙れッ!!」

気迫あるその叫びに皆は一斉に口を閉じた。

 

「総理が決めたんだ。もう無理さ。政権はもう…我々に譲渡されたのだからなぁ?」

その言葉に誰も歯向かう事は出来なかった。

 

 

深夜 12時 10分

 

総理は日本の政権を狸に譲渡し、新たに『刑部狸』が総理となった。

 

 

 

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