ゲゲゲの鬼太郎 天翔の少年   作:狂骨

21 / 44
共闘

「龍崎を呼ぶ…!」

猫娘の思いついた策に皆はすぐさま反対の声を出した。

 

「猫娘!よせ!あんな奴に頼るなぞ!」

「そうじゃ!奴と協力しても裏切るかもしれんぞ!」

だが、猫娘が考えた策はこれしかなかった。

 

「けど…鬼太郎を助けるにはアイツの手を借りるしかない…」

すると砂かけ婆達は黙ってしまった。

猫娘は送られた龍崎の連絡先を追加するとすぐさま 電話を掛けた。

 

ーーーーーー

 

「ほら、吐けよ?お前達の根城はどこだ?」

人 一人もいない真夜中、龍崎は見回りをしている1匹の狸の首を掴んでいた。だが、狸は未だに自分達の住処の場所を話さなかった。

 

「ぐぎがか……誰が人間…ごときに…!」

「話すもんか…か?なら死ね」

 

グキャ

 

骨と肉が握りつぶされる音がすると狸の身体が力が抜けたかのように地面に崩れた。

 

「はぁ…口が固いな。これで8体目か…」

 

そう言い空を見上げた。あれから刑部狸について調べた後、龍崎は街へ出て手当たり次第に狸を縛り上げ場所を聞き出そうとしていたのだ。だが、誰も場所を吐かず、かれこれ2時間が経過した。

 

すると突然携帯が鳴り響いた。

 

「ん?」(猫…?どうやって俺のアカウントを…?)

掛かってきた相手 に疑問に思いながらも龍崎は通話ボタンを押し電話へ出た。

 

『…龍崎で合ってるかしら?』

「何だいきなり。というかどうやって俺の連絡先を知った?」

『まな に送ってもらったわ。それで追加した』

「そうか。で?何の用だ?前に自分達を襲った相手に」

『……単刀直入に言うわ…私達に…協力してほしい…』

 

いきなりすぎる要求に龍崎は首を傾げた。

 

「単刀直入すぎるな。内容を言え。それ次第だ」

そう言い理由を尋ねた。万が一 狸の事と関係がない場合 すぐに切ろうとした。

そう思いながら耳を傾けていると

 

『…狸達の…要石の破壊を…手伝ってほしい』

「……ほぅ?」

狙いが同じだという事に龍崎は驚いた。

 

「なぜお前らが要石を?」

『……鬼太郎が要石に触れて石になった。だから助ける』

「そうか」

龍崎は理由が違えど同じ要石を破壊するとなると猫娘達と行動した方が何かと効率が良いと考え了承した。

 

 

「いいだろう。だが、タダでは動かん」

『…勿論承知の上よ。だから…要石を壊した暁には……私の魂を貴方にあげるわ』

ーーーーーーーー

 

猫娘の突然すぎる言葉に皆は血相を変えた。

 

「猫娘!何を言っておるんじゃ!?」

砂かけ婆はすぐさま携帯を取り上げようとしたが猫娘は軽快な動きで躱し屋根の上へと登った。

 

『そこまでして狸供を殺したいとはな。そんなに鬼太郎を助けたいのか?」

「えぇ。だからお願い…私達に力を貸してほしい…」

『……一つ聞く』

「…何かしら?」

『お前ら狸供の住む地下世界の入り口って分かるか?」

その質問に猫娘は頷いた。

 

『そうか。じゃあ問題ないな』

「えぇ」

そう言い電話を切ろうとした。だが、寸前のところで龍崎は呼び止めた。

『その前に条件がある』

「?」

『俺が良いというまで要石は破壊するな』

猫娘は龍崎の条件の意味が分からなかった。だが、協力してくれるならば何だっていい。

そう思い猫娘は了承した。

 

「分かったわ」

『それだけだ。あと、テメェの魂なんざ興味ねぇからいらん。対価としては何か奢れ』

それだけ言うと通話は切れた。

 

「ッ…//////」

猫娘はホッと胸をなで下ろすと同時にアッサリと魂を拒否られ、先程の自分の発言に赤面すると下へと降りた。

降りると皆は目に涙を溜めていた。

 

「猫娘…お主…自分の命を犠牲にしてまで…」

「猫姐さん…やだよ…そんなの…」

まな は泣きながら猫娘へと抱きついた。目玉親父も大量の涙を流していた。

 

「お…落ち着いて。実は…」

 

それに対して猫娘は皆を落ち着かせると交渉の件を話した。

すると皆の涙が一気に引っ込んだ。

 

「驚かせおって!」

「全くじゃ!」

 

「ご…ごめん…」

 

猫娘は謝るとすぐさま 指定した場所へと向かった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

誰もいない神社にて、龍崎は一人タバコを吸っていた。

 

「ふぅ…」

その時 ハイヒールやわらじの足音が聞こえてきた。

 

「……来たか」

そう言い龍崎は顔を上げた。神社の鳥居の下には猫娘達の姿があった。だが、皆は既に警戒するかの様な表情を浮かべていた。

 

「やっぱり警戒はするか。まぁ当たり前だよな」

 

龍崎はタバコを握りつぶすと立ち上がる。

 

「さて、案内してもらおうか」

「いや…その…入り口なんだけど…」

猫娘は行く前に自ら入った入り口が塞がれている事を教えた。だが、龍崎は構わないと言った。

 

ーーーーーーー

 

神社から少し離れた民家の近くにて、そこには巨大な岩が置かれていた。

 

「ここよ。ぬりかべ お願い」

「ぬりかべ!」

猫娘に頼まれ ぬりかべ は張り手で岩を退かした。見てみると元は入り口があったかのような穴の跡があり、その中に岩が敷き詰められていた。

 

「へぇ。これぐらいなら問題はない」

そう言った瞬間 龍崎は手に妖力を集中させ握り締めた。すると手が青く燃え上がり腕を包み込むと辺りを照らし始めた。

「離れてろ」

龍崎は両腕を振り上げると一気に穴の中へと振り下ろした。

 

ーーーーーーー

 

ドオンッ!

 

「ん…?」

突然地下世界に鳴り響いた音に刑部狸は目を覚ました。

 

 

「どうなされましたか?」

「…塞いだ筈の場所から何者かが侵入した…。団一郎、直ちに見つけ出して捕縛しろ」

「お任せを」

『オオオオッ!!』

狸達は雄叫びを上げあると直ぐ様音のする方向へと向かった。

 

ーーーーーー

 

入り口を壊した龍崎はその先に広がる空洞に少し驚いていた。

 

「へぇ。地下にこんな物があったとわな…」

そう言うと龍崎は後ろからついてくる猫娘達を見た。綺麗に空いた穴に猫娘はもちろん まなは腰を抜かしていた。

全員が地下世界へと入ると皆は先へ進んだ。

 

「ところで目玉、要石の場所は分かるか?」

「あぁ。このまま真っ直ぐじゃ!」

目玉親父の案内の元で皆は要石を目指した。

 

「となると、刑部狸も近くにいるな。だったら好都合だ」

 

「おぬし…何をするつもりじゃ…?」

目玉親父 は未だ不明の龍崎の目的に関して質問する。すると龍崎は口角をつり上がらせ答えた。

 

「殺すんだよ。俺の縄張りを荒らしたからな」

 

『!?』

 

「縄張り!?どういう事!?」

訳の分からない残酷な言動に猫娘は質問するが龍崎はめんどくさいといい答える気は無かった。

 

その時、後ろから太鼓のような音が聞こえてきた。

「いたぞッ!」 

「捕まえろッ!」

皆は振り返ると、そこには大勢の狸達が自分達の後を追いかけてきていたのだ。

 

「狸じゃ!」

「ぐぬぬ…バレてしもうたか…」

 

 

そんな中、龍崎は狸の軍団の中に見覚えのある顔を見つけた。その者は狸達に自身らが敵かつ、鬼太郎の仲間である事を示唆した。

 

「皆さん!アイツです!アイツらが鬼太郎の仲間ですよ〜!!」

『ねずみ男!?』

「へぇ。アイツねずみ男って言うんだ」

そこにはねずみ男の姿があった。見る限り完全に寝返っているようだ。

「アンタ後でとっちめてやるからねッ!」

「その後があったらな〜♪」

 

ねずみ男が猫娘へベロベロバーと小馬鹿にしていると、団一郎は高く飛んだ。

「セイヤッ!」

そして被っていたハットをまるでブーメランのように投げてきた。そのハットはまるで鈍器のように急降下し、皆の頭上へと向かってきた。

 

「危ない!」

砂かけ婆の声に皆はハットに気づきすぐさま二手に分かれるように避けた。そのハットは近くの岩へと着弾し、岩に亀裂を走らせた。

 

「ほぉ?面白い技を使う狸がいたもんだな」

 

皆は立ち上がると再び脚を進めた。だが、狸達も逃すまいと走り出した。皆との差が次々と縮まり逃げていては捕まると考えた砂かけ婆は龍崎へ伝えた。

 

「ここわ儂が食い止める。お主は…猫娘達を頼んだぞ」

 

先程まで龍崎を全く信用していなかった砂かけ婆の意外な言葉に龍崎は一瞬驚き間を置くも、すぐに答えた。

「あぁ」

 

砂かけ婆は立ち止まり、狸達に向かっていった。

 

「儂もいくばい!」

「オババを一人にさせないわい!」

 

「子泣き爺!一反木綿!オババ!」

猫娘は向かっていった皆を呼び戻そうとした。だが、それには誰も応じなかった。砂かけ婆は振り返り猫娘達へと叫んだ。

 

「止まってはいかんッ!!鬼太郎はすぐそこにいるんじゃ!進めッ!!」

「ッ!」

 

砂かけ婆に叱咤された猫娘は涙を拭くとすぐさま後を振り返らず 再び走った。

 

 

「このジジイがぁぁッ!!」

「おんぎゃぁぁぁぁッ!!」

 

ガァァァンッ!!

筋骨隆々な体格を持つ団三郎と子泣き爺の石化した腕がぶつかり合った。その場に耳を塞ぐほどの金属音が響き渡り発生した衝撃波によって団一郎 団二郎以外の狸達は四方八方へ吹っ飛ばされた。

 

「やるな」

「お前もな」

 

一方で砂かけ婆はお召し物をした雌の狸 団二郎と対峙した。

 

「いっさ出陣ッ!」

「ばーさん、やろうってのかい?」

 

その瞬間 団二郎の鋭い簪と砂かけ婆の持つ扇子がぶつかり合った。

 

「へぇ?老人にしてはやるじゃない」

「ハッ!青二才なんぞにまだまだ遅れはとらんわい」

「いってくれるわね!」

 

ーーーーーーー

 

一方で龍崎達は目玉親父の案内を元に道を進み 崖のような地点へと着いた。そこには巨大な妖気が溢れ出ている岩 すなわち『要石』が設置されており、その付近には石と化した鬼太郎の姿があった。

 

「鬼太郎!」

猫娘とまな はすぐさま駆け寄り鬼太郎へ手を伸ばした。

 

だが、猫娘の手を龍崎が掴んだ。

 

「何するのよ!」

「騒ぐな。見て分からねぇのか?」

そう言い龍崎は岩を指差した。

 

「あそこから湧き出てる妖気と同じ質の妖気がコイツの表面に覆われている。つまり、今のコイツに触れればお前も石になる」

「…!だったら早く要石を!」

そう言い猫娘はまな と共に要石へと向かおうとした。その時

 

「やっと追いついたぞ」

『!』

後ろから声が聞こえた。3人は振り返る。そこには全身から他の狸とは全く違う妖気を纏った団一郎か立っていた。

 

「ヴァァァァァァァァッ!!」

突然 団一郎が雄叫びをあげると身体が膨張し始め着こなしていたスーツが破れ 2メートルを越す巨体へと変化した。

 

変化した団一郎は目を血走らせ歯を剥き出しにすると猫娘達へ向けて鋭い爪を振り下ろそうと襲い掛かってきた。

 

「死ねぇぇぇッ!!!」

 

 

だが、その行動はすぐさま阻止された。

 

「な…なに!?」

団一郎の剛腕がその4分の一ほどの大きさの龍崎の手によって掴まれていたのだ。

「!?貴様は!?」

そんな中 団一郎は龍崎の顔を見た瞬間 何かを思い出した。

 

 

 

ーーーーーーー

それは政権を乗っ取った翌日の真夜中だった。

 

 

『団一郎、よくやってくれた。だが、政権を取ったからといって油断はできん』

『何故でしょう?我らは日本を手に入れたのですよ?それに妖怪獣様もいます。人間であろうと妖怪であろうと我らに刃向かう心配はないと思いますが』

政権を手に入れたというのに 何か不安気な刑部狸に団一郎は疑問に思った。

 

『お前は[六将(りくしょう)]を知っているか?』

『[六将]…ですか?いえ…耳にした事がないですね』

団一郎が知らないというと刑部狸は説明した。

 

『[六将]とは 妖怪の中でも群を抜く程の力を身に付けている六体の妖怪だ。それぞれ北海道、東北、関東甲信越、近畿、中国・四国、九州と 日本を六分割し、一つの地をナワバリとしている。我等は今東京を占拠している。となるとナワバリを荒らされたと気付いた六将がすぐに我等を討とうと姿を現わすだろう。

奴を討ってこそ本当の支配となる。万が一 そのような者が現れたらすぐに知らせろ。よいな?』

『……御意』

 

ーーーーーー

 

「(この妖力の量と質…そこらにいる奴じゃねぇ…。まさかコイツが『六将』!?)」

そう思った瞬間 自分の手が握り潰された。

 

「ウギャァァァ!!!」

感じた事もない痛みに団一郎は悲鳴を上げながら手を抑えその場に崩れ落ちた。

 

「ハハッ。どうだ?痛いだろ?俺のナワバリを荒らしたんだ。これぐらいの罰は受けてもらわねぇとな」

「!?」

団一郎は『ナワバリ』という言葉を聞いて確信した。今 自分を見下しているオールバックの少年こそが自分の主人である刑部狸の話していた『六将』である事を。

 

理解した時にはもう遅かった。

 

「消えろ」

 

その一言共に自分に向かって視界を埋め尽くす程の炎が放たれた。

 

「ヴァァァァァァァァ!!!!」

炎に飲み込まれた団一郎の身体は次々と炎に焼かれていった。

 

 

「クソがァァァァッ!!!」

断末魔を上げながら団一郎の身体は炎へ消えていった。

 

 

ーーーーーーー

 

「ん?団一郎の妖気が消えた…。奴が倒されたとなると…やはり現れたか 『六将』め…!」

その目には炎が揺らめいており、それと共に身体から妖気が溢れ出た。

 

その時

 

遠くの暗闇から何かが迫ってくる音がした。

 

「何だ…あれは!?」

それはとてつもなく巨大な砂の洪水だった。その砂は刑部狸を飲み込むと同時に辺りに四散した。

 

目を開けてみれば辺りには団三郎や団二郎が気を失っており、中には自分に媚びを売ってきたねずみ男も混ざっていた。

 

「どうしたお前達」

 

「あ…アイツらメチャクチャ強いんですよ!特にあの人間の『まな』ていう奴も一緒で!」

「何だと!?」

ねずみ男の報告に刑部狸は焦る。要石の呪いは人間 及び半妖には効果が無いのだ。となると、要石を破壊されるのは時間の問題だろう。

 

「いや…待てよ…?」

 

だが刑部狸はある事を思い出した。

 

まなに“呪い”が掛けてある事を

 

「はぁぁ…!」

 

ーーーーーーーー

 

「さて、邪魔者は片付けた。俺は刑部狸の所に行ってくるよ。合図はバイブで知らせる」

「えぇ。分かったわ」

団一郎を片付けた龍崎は漂ってくる刑部狸の妖気を感知すると暗闇の奥へと消えていった。

 

「猫姉さん…龍崎君とどんな取引をしたんですか?」

まな は先程から気になっていたのだ。猫娘はどんな条件で龍崎の手を借りる事が出来たのかを。

それに対して猫娘は述べた。

 

「要石の破壊は自分が合図した時、あと ご飯奢り で交渉成立したわ」

「えぇ…軽いような重いような…」

「別に大した事ではないわ…。それより…」

猫娘は数十分前の龍崎の発言に疑問に思う点があった。

 

『ナワバリを荒らされたからな』

 

「どういう意味なのかしら…」

その時

 

「うぅ!?」

まな の身体から巨大な鼓動が聞こえた。それと同時にまな の身体から毛が生え 眼光が鋭く 牙が鋭利に尖るように伸びていった。

 

「まな!?」

「まさか呪いが発動してしまったのか!?」

猫娘は咄嗟に止めようとした時 何かに首を掴まれた。

 

「ガァッ…ま…まだ残っていたの…!?」

そこには血走った目を剥けながら満身創痍の団三郎が立っていた。

 

「へへ。惜しかったな。だがもうこれで終わりだぁ!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

「妖怪に変化したな。これで要石はもう破壊できまい」

刑部狸はまな を妖怪へ変貌させた事により 要石の破壊はもう不可能だと確信した。

 

「さて、妖怪獣様を再び動かすとしようか」

そう言い刑部狸は念を送ろうとした。

 

その時

 

カツ…カツ…カツ…

 

 

暗闇の奥から足音が聞こえ何かがこちらへ向かってきた。

 

「何者だッ!」

刑部狸は怒りを交えた声を発した。 足音は次第に近づき、周りにある結晶の反射する光によってその正体がゆっくりと露わになった。

 

「お前が刑部狸か」

「!?」

そこには学生服を着用したオールバックの少年が立っていた。

 

「誰だお前は?」

突然の訪問者に刑部狸は睨みながらとう。それに対して少年は龍のような鋭い目を向けながら口を三日月のように釣り上げた。

 

「俺が誰かなんてどうでもいい。それより、よくも俺のナワバリを荒らしてくれたな?」

「ッ!?」

『ナワバリ』という単語に刑部狸は反応したと同時に身体中の毛がまるで怯えるかのようにそそり立った。

 

「まさか…貴様が…『六将』…!?」

 

 

 

今、龍の裁きが下される。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。