「……」
「……」
車内にはとても緊迫した空気がながれていた。龍崎はいつもと変わらず真顔 それに対して猫娘は少し頬を染め上がらせていた。
その原因は現在の体勢である。
先に乗った龍崎は窓側におり、 長身の猫娘がそれを正面に立つ形でいた。それに満員の為、猫娘の顔が自分より背の低い龍崎の頭部へと当たろうとしているのだ。
「…どけ」
「どけるなら最初からどいているわよ…!」
小声で話す二人組 周りからすればもはや姉弟だ。 龍崎はどくように促すが一歩も動けない状態である。
その時
「きゃ!」
「!?」
電車が急停止し、車内中が揺れた。猫娘は突然の揺れに驚き 前のめりに倒れてしまった。
『ただいま車両に不手際が発生したため 急停止いたしました。点検のため しばらく停車いたします。ご乗車のお客様に多大なるご迷惑をおかけします。しばらくお待ちください』
車内放送を聞くと辺りからは落胆の声が上がる。
そんな中 猫娘は頬をもうリンゴのように真っ赤に染めていた。その理由は電車が急停止した事で、揺れが生じ猫娘の身体が龍崎の方へ倒れてしまい 結果 抱きつく形となってしまったからだ。態勢を直そうとしたものの満員なのでほぼ不可能であった。
「……苦しい。首がしまる」
「…!う…うるさいわね!満員なんだからしょうがないでしょ…!?」
離れたくとも離れられなくなり猫娘の顔はますます赤く染まった。
そしてこの気まずい態勢が何十分も続いた。
数十分後
『運行を再開いたします。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした』
アナウンスが入ったと同時に電車は動き出した。けれども態勢はそのまんま。
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ーーー
『次は目黒 目黒です。お降りのお客様は左側へ』
「お、そろそろか」
龍崎は目黒駅に着いたと知ると自分の前で態勢を直し顔を反らしながら乗っている猫娘の横を通る。
「俺はここで降りる。じゃあな」
「ち…ちょっと待ちなさい…!」
猫娘は車両から降りると龍崎の肩を掴んだ。
「なんだよ。まだ何かあるのか?」
そう言い龍崎はめんどくさそうな表情を浮かべた。対して猫娘は携帯を取り出すとある写真を見せた。それは巷で噂になっている『人体発火現象』だ。
「この写真…アンタ 何か知らない?」
その写真を見せると龍崎の表情が変わった。
「あ〜あ。また失敗か」
「ッ!」
その時
猫娘のうなじに衝撃が走った。
「がぁ…」
どんどん意識が遠のいていき、視界が少しずつ暗くなってきた。
「俺もバカだなぁ。よりにもよって自分でバラしちまったなんてな」
「ぐ……りゆ…ざ…き…」
ドサッ
猫娘の目は完全に閉じられ意識がなくなり その場に倒れた。龍崎は溜息をつきながら猫娘の身体を肩に担いだ。
「ま、休憩スペースくらいには運んどいてやるよ。ったく、これから大岡山の大学のオーキャンに行かなきゃなんねぇのに…めんどくせぇな」
一人でブツブツと愚痴をこぼしながらも龍崎は駅内の休憩用スペースに猫娘を寝かせるとそのまま立ち去った。
「さてと。急ぐか」
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「……ん」
「大丈夫かいお嬢ちゃん」
目を覚ますと目の前に50代くらいの清掃員のおばちゃんがいた。
「私は…何でここに…」
「あー。二時間くらい前にね、若い兄ちゃんがここに運んできてくれたんだよ。覚えてないかい?」
「兄ちゃん……そうだ!」
私は全てを思い出した。龍崎を見つけ質問をした途端 気絶させられた事を。
すぐさま私は駅から飛び出した。
「まずい…!すぐに何とかしないと…次の犠牲者が…!」
ーーーーー
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ー
「ギャァァァァ!!」
「あ…アンタぁぁ!!しっかりしてよ!なんなのよこの炎!」
夜の新宿歌舞伎町の路地裏にて一人の男性の身体が燃えていた。付き添いらしき女性はその火を服で仰いだりして消そうとしたがいくら仰いでも炎の威力は弱まらなかった。
その目の前ではその光景に笑みを浮かべている少年がいた。目は青白く輝き瞳は炎のように揺れていた。
「アンタ…!私の恋人になにしてくれてんのさ!」
女性はその少年を睨みつけた。対する少年は笑いながら答える。
「何って、そちらが先にやってきたじゃないですか。お前が落し物を探して欲しいと言ってきて俺がここまでついてきてやったのに結局 金目当ての美人局。それでいきなり出てきた男が金を出せと言い始め突っかかってきた。ハッハ自業自得だろ」
少年は見下すように笑いながら答えた。それに対し女性は涙を流しながら醜く歪んだ表情を表し発狂した。
「何よ!学生ごときが偉そうに!私たちは大人なのよ!年下が年上に金を払うのは当然でしょ!」
「え?どこから生まれたんですか?そんな理論。年上のために年下が金を出す?ましてや何の関わりもない赤の他人に?笑えますね」
そう言うと同時にその少年の顔が少しずつ変化して、最終的には殺意を剥き出しにした表情へと変わっていった。
「取り敢えず お前は生きる価値がない」
「ぐぁ!?」
そう言うと少年は女性の首を掴みあげた。
「ぐ…苦し……い…!だ…だれ…か…」
助けを呼ぼうとしたが喉仏を強く押さえられており声を張りあげる事はできなかった。
「死ね」
パァン
そう言い放った瞬間 女性の身体が青く光ると同時に爆発した。周りには血や肉片そして骨や臓器が飛び散り悲惨な光景が広がる。
「はぁ。やっぱ手でやらないと上手くいかないな」
少年はつまんなそうな表情を浮かべるとその場から去っていった。
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あれから猫娘は目黒区を探し回ったが、龍崎らしき妖気は感じられず、見つけることが出来なかった。気づいた時にはもう夜となっていて渋々 戻る事にした。
『あ〜あ。また失敗か』
あの時の龍崎の言葉で猫娘は確信した。この件は彼が深く関わっていることを。
ゲゲゲの森に戻るとすぐさま鬼太郎と目玉親父にこの事を伝えた。
「なんだって…!?あの事件にアイツが!?」
「えぇ。深く関わっているのは確かよ」
それを聞いた瞬間 鬼太郎はどうするべきか考えた。真正面からかかっても勝てる相手じゃない。かと言ってこのままにしておく 次々に被害者が出てくる可能性がある。
「く…どうすれば…」
鬼太郎や親父たちは頭を絞り考えたが、一向に打開する策は浮かばなかった。
「…一旦…奴について調べてみるか…」
そう言い目玉親父は家を飛び出すと書籍のある巨木へと走っていった。