ゲゲゲの鬼太郎 天翔の少年   作:狂骨

25 / 43
学生の天敵

最初の発火現象から数週間が経った。未だに現象は治まる事はなく、それどころか2日に一回 は起きるようになった。

この怪事件はついに全国ニュースにも取り上げられ ミステリーな現象としてそれを題材とした番組まで放送されるようになった。

多くの番組がこの現象の謎を突き止めようとしたが、誰1人とも真相に辿り着くことはできなかった。

 

それもそうだ。誰も眼力で燃やしているなんて考えもしないのだから。

 

『続いてのニュースです。今朝 駅のホームにて また 女性の身体が発火する現象が起こりました』

渋谷や新宿のスクランブル交差点にて、ビルの画面にそのニュースが流れ人々は目を向けた。

 

周りからは次々に不安な声が上がってきていた。

 

『おいおいこれで何件目だよ…』

『怖いな…何であんな現象が起こるようになっだよ』

 

皆は祟りなのか、はたまた 新手のテロなのかという考えを出していたがどれも違う。

 

これはたった1人の中学生による単なる実験なのだ。

 

ーーーーーーー

 

「さて、10人目も失敗っと…」

新宿で皆が戸惑う様子をグルメタワーのガラス際の席から見ながら 龍崎はノートをまとめていた。

 

「中々 うまくいかないなぁ。示談金目当てで冤罪を吹っかけた女3人とそれに加担した男1人は焼死。あと勝手に絡んできた男2人も同じ結果…と。さて…次の実験台はどうしようか…」

そう言い龍崎は辺りを見回した。

 

「(まぁいい。取り敢えずこの技は後回しだ。テストが近い…)」

背伸びをしながらノートを閉じ 龍崎はその場から料金を支払うと出て行き自宅へと向かった。

 

ーーーーーー

 

次の日

 

誰もいない教室にて 2人の男女が向かい合っていた。

1人は龍崎 であり、もう1人は…

 

「じゃあ始めますよ」

「はい先生!」

桃山 雅である。

何故こうなったのかというと、帰ろうとした龍崎を雅が呼び止め 理数科目と英語をどうしても教えて欲しいと懇願されたからである。理由を聞いてみると今回 赤点があった場合 即 携帯没収という学生にとって厳しい約束を課せられたからである。

最初は断ろうと思っていたが、教えれば自分にとっても復習に繋がるので了承したのだ。

「分からないところは?」

「えぇとココなんだけど…」

「空間図形ですね。これはまず定理を覚えてからだと簡単に解けます。取り敢えず定理を読みながらこの問題を…

龍崎は雅が分からないところを黒板に書きながら説明していった。

対する雅も真剣なのか せっせとノートへ板書していった。途中何度も首を傾げてしまう時があったが、龍崎の説明を聞いているうちにだんだんと理解するようになってきた。

 

30分後

 

「できた!」

龍崎は雅の書いた答案をチェックすると赤ペンで丸を描いた。

 

「全問正解です。よくできました」

「やった!」

雅はピョンピョンと兎のように飛び跳ねながら喜んだ。

 

「さて…これで空間図形は問題なしと…次はどこですか?」

「次は理科の物理なんだけど……」

「ではまず力の向きを書いてみましょう。それから釣り合いを考えて……」

 

それから1時間 雅は自分の頭に物理の公式を叩き込み 基礎問題は解けるようになった。

 

「ふぅ。このくらいですかね?」

「うん!ありがと!」

時計を見てみると時刻は5時半となっており、沈みゆく夕日が教室を照らしていた。

 

「さて…帰りますか。途中まで送りますよ」

「うん!」

 

龍崎は雅を家へと送った。

 

「今日はありがとね」

「いいですよ。俺も復習できましたし。テスト 頑張ってください」

「うん!」

 

雅は龍崎と別れ家に入るとすぐさま 二階へと駆け上った。

 

「雅、夕飯できてるわよ?」

「ごめん!ちょっと勉強するから後にして!」

バタン!

 

部屋のドアが閉まる音がすると、雅の母親は口に手を当て驚いた。

 

「珍しい…あの子が勉強だなんて…何があったのかしら?」

 

ーーーーーーー

部屋へと入った雅はすぐさま 買っておきながらも手をつけなかった参考書を開いた。

「えぇと…この公式は………すごい…!分かる!」

 

スラスラと 復習した事や覚えた事などを思い出しながら 次々と迫り来る問題達を倒していった。

 

「あ…ここ分かんない…うぅ…解説みよ…」

数学からの物理のとある問題でつまづいた雅はすぐに付属の解答解説を開いた。

 

「なるほど…こうするのか…!」

読んでも分からなかった項目が 次々に理解できていた。

 

「いける!よしもう一回!」

雅は勉強をまるでゲームをプレイするかのように次々と問題を解き始め 何度もやり直した。

 

 

それから1週間後

 

 

いよいよ勝負の時は来た。

 

「始めてください」

試験管の合図と共に雅は問題用紙を裏返し向き合った。

 

「…!(分かる!)」

今まで暗号のように見えていた数式が今では 簡単なパズルのように見えていた。

 

「…(よし…!ここはこうして…!)」

1週間 みっちり覚えた事がスラスラと頭から湧き出てきた。

そして 時間があと10分の時 周りの皆はようやく全問を解き終わったのか見直しをしていた。

だが一方で、龍崎はもちろん 雅はもうペンを置いていた。なぜなら既に全て解き終わり 見直しも完了したからだ。

 

「終了です。ペンを置いてください」

監督の指示と共に皆はペンを置き答案を前へと渡した。

 

「最後の問題解けた?」

「難しかったなぁ。私 パスした」

「私も」

 

今回の数学の期末テストは中々 難しかったらしく、皆は落胆の声を次々にあげていた。

 

「ふぅ…」

「雅!どうだった?」

親友であるまな からの質問に雅は苦笑しながら答えた。

 

「分かんないなぁ…ボチボチってとこかな?」

「私も…」

 

その後 物理の問題も雅は先人を切る武将のように次々と問題達を倒していった。

 

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

そして 3日後

今日は一時限目からテスト返却であり、まずは数学からだった。

 

「では テストを返すぞ。市岡くん!」

「はい!」

「犬山さん!」

「はい!」

次々と名前が呼ばれる中 雅は内心 少し不安だったのだ。

 

「…(単位や符号はちゃんとチェックした…どうだろう…)」

 

「やった80点!」

「やるじゃんまな!」

まな が高得点だった事に耳を傾けていると少しずつ不安が募り出してきた。

 

「…うう…(どうなる…どうなる…!)」

 

「桃山 さん!」

自分の名前が呼ばれた瞬間 力強く返事をした。

 

「はい!」

そして 一歩ずつ一歩ずつ 力を込めて戦地へと赴くように教卓へと向かった。

 

そして前に立った時 先生が答案を取り出し差し出した。

それをゆっくり受け取ると心臓が激しく鼓動しながらもゆっくりと開いた。

 

「!」

 

その瞬間 雅は叫んだ。

 

「やったぁぁ!98点!」

その瞬間 教室の皆が驚きの声を上げた。

 

「「「おぉぉぉ!?」」」

 

「マジで!?数学がダメダメだった雅が!?」

「98点だとぉ!?」

皆は雅の机へと集まった。答案は表裏に問題が記されていた。表は全て正解 そして裏は最後の発展記述問題に三角がつけられており、4点中 2点が引かれていた。だが、それ以外は全て正解だ。

 

 

「はいはい席に戻りな。さて最後に龍崎くん」

「はい」

皆が席に戻るとすぐさま 龍崎の名前が呼ばれた。返事をした龍崎は普通に教卓へと向かっていった。

すると数学科の担任が切り出した。

「おめでとう100点だ!」

『おぉぉぉ!!』

その瞬間 またもや教室が騒ぎ出した。

 

「はい静かに!」

先生が強く言い静まらせると模範解答を見ながら解説をしだした。

 

「今回は最後の問いに躓いた人が多かったな。まずは解説していこう。ここはまずここの線分ADに目をつけて…」

皆は先生の解説を必死に書き写していた。雅も98点だからといって浮かれず 失点した2点の原因を探し出した。因みにだが、 今回の数学のテストのこのクラスの平均は全クラス中 下から3番目であった。

理由は簡単である。龍崎を虐めていた10人の男女の内 7人が30点台や20点台だからである。皆がテストで盛り上がっている中 その7人は教室の隅に固まりこちらを恨めしそうに睨んでいた。

 

そして 次の返却科目である物理や英語も雅は高得点を取っていった。物理は89点 そして英語に限っては作文から4点引かれただけであり、それ以外は全て正解していた。その結果 雅は学年でも10位というトップ圏内へと入った。

 

一方で、龍崎は国語以外の全ての科目で100点を獲得しておりアッサリと学年一位となった。

ーーー

ーー

帰りのSHRが終わると龍崎の席に雅が寄ってきた。

 

「龍崎君ありがと!お陰で高い点数が取れたよ!」

そう言われるが龍崎は否定する。

 

「俺はただ教えただけです。高い点が採れたのは貴方の実力ですよ」

それもそうだ。龍崎はただ教えただけであり、テスト中 教えたりという手伝いはしていない。しかも教えたとしてもたった2日だけだ。それ以外は彼女が自分自身でやったに過ぎない。

それでも雅は龍崎へとお礼をした。

 

そして自宅では…

 

「凄いじゃない!学年でトップ圏内に入るなんて!」

「へへ〜ん!私だってやればできるんだから!」

母親の目が飛び出しており 今にもスッ転げそうな勢いで驚いていた。父親も高笑いしながら雅の頭を撫でた。

「よくやった!ご褒美に今夜は回転寿司にいくぞ!」

「やった〜!!」

 

それから雅は勉強を通しての達成感を知り、毎日必ず2時間以上は勉学をする事に決めた。

 

 

因みにだが、龍崎が今回 学年で一位になれたのは実は彼女のお陰でもあるのだ。雅は元々 国語は十八番だったらしく、理数系を教えてもらう代わりに国語を教えてあげていたのだ。その結果 いつも50点台だった龍崎の点数は一気に80点へと跳ね上がったのだ。

 

 

「ふわぁ…もう今日は寝よ…」

いきなり頭をフル回転させた事で疲労がきた雅は食事を取らずゆっくりとベッドへ倒れ込んだ。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。