ゲゲゲの鬼太郎 天翔の少年   作:狂骨

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境港へ

動物園のバイトから翌日

 

龍崎は現在 まな がいると言われている境港へと来ていた。その理由は炎谷に呼ばれたからである。東京から幾つもの山を越え、およそ5時間を掛けて境港へと着いた。

 

来るように指摘された港へと着くと、Tシャツにボンタン、そして頭にタオルを巻いた炎谷が現れた。

「よう龍崎。久しぶりだな!」

「あぁ。んで?呼び出した理由はなんだ?」

「あ?そりゃあ花火だよ花火。境港の花火は結構すげぇからな。礼も兼ねてビールとか蟹食いながら見ようぜっと誘った訳だ。“他の奴ら”にも声を掛けたが3人全員忙しいっていう理由で断られてな」

「それでか…まぁいい。久しぶりに休むのもありか」

溜息をつくも、最近 東京の不良や、幽霊を相手にして少し疲れていたので、休暇としては丁度いいと思い了承した。

 

「よし!ほんじゃ、まずなんだが…地引網のてつだ___ぶべぇらッ!?」

喋ろうとした炎谷の頬に龍崎のパンチが炸裂する。

 

「はぁ?まさか用意されてねぇのか?準備段階で呼んだのか?もしかして手伝わせる為に呼んだんじゃねぇだろうな?だとしたら断った奴らに大体 察しがつくぞ?」

そう言い第2発目を放とうとする。

「待て待て待て待て!?それは謝るから!取り敢えず話を聞け!」

 

ーーー説明中ーーーー

 

「なに?この 昨日から漁に出かけた奴らが行方不明だと?」

「あぁ。なんでも、網を仕掛けに出かけた漁船の人達が全員 な。だから、調査に手伝ってほしいんだよ」

結局またもや依頼かと龍崎は舌打ちをする。

 

「休めると思ったのにこれかよ」

「頼むって!お詫びに取れた海の幸は無料で食い放題にするから!な!?」

無料という言葉に龍崎はアッサリと惹かれてしまう。無料で食い放題と言われては乗らない訳にはいかない。そう思い依頼を受ける事にした。

それに炎谷は強大な力は持っているものの、水の中だと無力と化してしまう。それ故に仕方ないと思っていた。

 

「まぁいいだろう。取り敢えず案内しろ」

「おぅ」

 

ーーーーーーーー

 

龍崎は炎谷の案内の元、 浜辺に繋がる高台を歩いていた。見ると海は黒く濁っており、濃い妖気が感じ取れる。

 

「汚ねえな」

「元は綺麗だよ。取り敢えず ここから船を出して調査するぞ」

そう言い浜辺に着くと、遠くに少数であるが、十人程 人が集まっていた。その中にはなんと、旅行中のまな もいたのだ。

 

ーーーーーー

 

「大丈夫?まなちゃん。何があったの?」

海面から這い上がってきたまな を伯母であるリエが上半身を抱き上げ、安否を確認していた。まな は何とか息を整えると話し出した。

 

「妖怪が…妖怪が現れたの!」

「妖怪?」

「うん」

まな は起こった事を話し出した。船へ乗り、行方不明の皆を見つけようと辺りを見渡していた時 突如 辺りから白装束を着た謎の幽霊の集団が現れ船へと乗ってきたのだ。同伴していた者たちは皆 海へ引きずり込まれ、自分も引きずり込まれそうになっていた時、その中の1人に抱き抱えられ、浜辺側へと放り出されたのだ。そのお陰で、幽霊達に気付かれず、浜辺へと戻ってくる事ができたのだ。

 

「ッ!」

そして、 まな はもう一つ気づいたのだ。自分の服の中に野球ボールが入っており、それは伯父である庄司が肩見放さず持っていたボールだった。

 

「(まさか逃してくれた妖怪は…庄司おじさんだったの…!?)」

そう思った時

 

 

「お〜い。皆さんお揃いでどうしたんですか?」

遠くから手を振りながら2人の男性が歩いてきた。

 

「あれ?炎谷さんじゃない」

「へ?誰?」

「最近 越して来た人でね。漁業をやってる人なのよ」

「へえ…そうなん……ん!?」

まな は炎谷の他にもう1人の男性を見た瞬間 驚いた。なぜなら、そのもう1人いた男性はクラスメイトであら龍崎だからだ。

 

「り…龍崎君!?」

「ん?なんだ、お前もいたのか」

龍崎はもうめんどくさいのか、敬語ではなくタメ口で話し出した。

 

「あれまぁ。こりゃ酷いな。真っ黒じゃないですか。何があったんですか?」

すると、まなは炎谷にあった事を話し出した。

話が終えると炎谷は龍崎を連れ漁船がある方へと向かった。

「ちょいと俺達 も調査してくるんで漁船 一隻貸してもらいますよ」

「だ…ダメ!行ったら炎谷さんも引きずり込まれちゃいますよ!?」

「ハハ。大丈夫だよ嬢ちゃん。こう見えてお兄さん 強いから」

そう言うと浜辺から姿を消していった。

 

「どうしよ…また1人犠牲者が出ちゃうよ!」

その時 空からカラスの鳴き声が聞こえ、見上げると大勢のカラス達が引っ張る 紐に捕まりながら降りてくる鬼太郎の姿があった。

 

ーーーーーー

 

一方で、船場へと着いた2人は一隻の漁船に乗るとエンジンをかけた。

 

「いくぜ?」

「あぁ」

そして船は発進し、黒く濁る地点へと向かった。

 

「どうだ?何か見えたか?」

操縦席から炎谷が聞いてくる。甲板で海を見渡している龍崎はまだ何も見えないといい 捜索を続けた。

 

しばらく捜索をしていると、遂に目的の地点へと着いた。

 

「さて、ここいらで俺も調査開始するか」

炎谷もエンジンを停止させると辺りを見回した。

 

その時

 

「柄杓をくれぇ」

「柄杓をくれぇ」

地の底から響いてくる不気味な声が辺りから聞こえてきた。

 

「なんだ?遭難者か?」

「違ぇよバカタレ。コイツらは『船幽霊』だ。言われた通りに柄杓をやると海水を掬って沈没させようとしてくるんだ」

「はぁ。なんとも傍迷惑な奴だな。んで?どうする」

すると炎谷は何かを取り出した。

「そこで、これだ。底の抜けた柄杓を渡すんだよ」

そう言い伸びてくる無数の手にそれぞれ用意した柄杓を渡した。すると、船幽霊達は水を掬い漁船を沈めようとするが、渡された柄杓が底抜けなため、沈める事が出来なかった。

 

「なるほどな」

すると船幽霊達がだんだんと海の中へ消えていった。

「んで、去っていくと。いやぁ海の妖怪 調べておいてよかったぜ〜」

 

その時、 不気味な琵琶の音がその場に響き渡った。

 

 

ーーーーーー

 

「なに!?龍崎が!?」

まな から事情を聞いた鬼太郎は驚く。

 

「うん。炎谷っていう人と一緒に…」

すると

 

ブゥゥゥゥン

漁船のエンジン音がし、皆が目を向けるとそこには黒い海へ一隻の漁船が出ていた。

 

「どうしよ…一緒に乗ってる炎谷さんって人 一般人だよ!?」

その時

 

ドォオオンッ!!

 

龍崎の乗っていた漁船が巨大な水柱を吹き上げながら海の底へと飲み込まれていった。

 

「うわぁぁ!炎さんの乗ってる船が飲み込まれたぞ!?」

「大変だ!また犠牲者が出ちまった!」

皆が慌てふためく中、鬼太郎は自身も行くと言い 筏(いかだ)を見つけるとそれに乗り込んだ。

 

「まな 達は危険だから絶対に来ないでくれ!」

「ちょ!?」

止めようにも既に手の届かない地点へと出ていってしまった。

 

「どうすれば…」

その時

 

「ぶばぁ!」

『うわぁぁ!?』

海面からダイバー服を纏った謎の男が現れた。

 

「やれやれ、マジで最悪だぜ。数時間も探索したのに1円一枚もねぇや」

そう落胆しながら男は被っていたマスクを外す。なんと、ねずみ男だったのだ。恐らくだが、海の中で金目の物を探していたのだろう。

 

「ねずみ男さん!?」

「お?まなちゃんじゃねぇか」

 

 

 


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