東京の上空にて、1人の仮面を付け、黒いマントを着用した不気味な男が 歩道を歩く社会人や学生達を見下ろしていた。
その人間一人一人から、黒いモヤが身体から滲み出ていた。
「ふ…ひひひひ…」
男は奇妙な声を上げながら笑うと、一人一人の人間から滲み出る黒いモヤを舐めとるように舌を震わせる。
誰もこの男の正体を知らない。誰も見た事がない。何もかもが不明なこの男は『謎』の塊であり、『妖怪』そのものでもある。
「ん…」
だが、そんな彼は地上をふと見た瞬間 一瞬にして姿を消した。
「ほぅ…?妖気を一瞬出しただけなのにすぐに気付きやがったのか。面白そうな奴だな。アイツ」
この男は気付いていた。誰も直視した事がない得体の知れない彼でもこの男の驚異的な視力と感知能力からは逃げられない。
龍崎はスクランブル交差点の中心から先程男がいた場所を見つめていた。
彼の鷹をも超える驚異的な視力は誰も逃さない。例えそれが液体の妖怪であろうと、透明なモノであろうと、彼の目は全てが見える千里眼のようなモノであるため逃れられない。
ーーーーーーーーーー
一旦木綿が石化された姿を見た鬼太郎達は言葉を失っていた。
「いったい誰が…」
見渡してみても。妖気を感知しようとするもそれらしき妖怪はどこにも見当たらなかった。
すると、
「あ〜あ。あの泡に当たるとこうなっちまうのか」
「!?アンタは!?」
後ろから声が聞こえ、見ると頭にタオルを巻いた青年がじろじろと一反木綿を観察していた。 猫娘は驚きの声をあげる。そこには龍崎と一緒にいた青年である炎谷が立っていた。
「貴方は確か…祭りで司会をしていた…」
「おぉ。ゲゲゲの鬼太郎か。初めましてか?」
鬼太郎に初めて会う炎谷は気さくに声を掛けると手を差し出す。
「俺の名前は炎谷 貫九郎。よろしくな?」
「あ…どうも…」
鬼太郎は 最初は警戒しようとはしていたものの、妖気が穏やかな事や殺気が全く出ていないので今は解いていた。
手を差し出し握手すると鬼太郎は何か知っているのかと思い尋ねてみる。
「炎谷さん…貴方は…何か知っているんですか?」
「おぅ。確か昨日、でかい坊さんがいてな。ソイツに問答みたいなの掛けられて答えたら泡出してきたんだよ。まぁ、すぐ逃げれたけどな」
「むむ?問答に泡じゃと?」
『泡』そして『問答』に鬼太郎の頭に隠れていた目玉親父は何かを思いついた。
「まさか其奴……」
「おぉ?何か知ってんのか?」
「あぁ。確か…」
その時だった。
_____チリン
鈴の音が聞こえた。
「!?」
「お?」
鬼太郎や炎谷は振り返る。そこには、見上げる程の大男が立っていた。身長は目測で2メートル後半はある。
それを見た炎谷は面倒臭そうなため息をつく。
「はぁ〜。またアイツか」
「また!?じゃあ奴が!?」
「あぁ。問答かけてくる奴だ。間違いねぇ」
鬼太郎達はすぐさま臨戦態勢を取る。すると、僧侶は噂通りの問答をかけてきた。
「大足二足 小足八足 横行自在にて目は天をつく。これいかに」
その問答の後の結末を知っていた炎谷は鬼太郎達へ注意を促す。
「気を付けろよ?間違えでもしたら泡吹かれるからよ」
炎谷は避難の為に後ろへ少し下がる。
「答えるしかないってことね…」
「よっしゃ!ワシが答えてやる!」
すると夜泣きジジイが名乗りをあげ、僧侶へと近づくと指を刺しながら答える。
「答えは蜘蛛じゃ!」
「(俺とおんなじ間違えしやがった…)」
活き活きと答える子泣きじじい。その瞬間 巨大な僧侶は叫ぶ。
「否ッ!!!」
「へ…?」
ブクブクブクブクブクブクブクブク
「ほんぎゃぁぁぁぁ!!!???」
子泣き爺は絶叫する。その叫びを最後に子泣き爺は泡に塗れてしまった。
「子泣き爺!」
泡が晴れるとそこには石化した子泣き爺が佇んでいた。本来の能力ではなく、完全なる石化だった。
「く…正解しなければ石にされるというのか…」
「だったら今度は私がいくわ!!」
そう言うと今度は猫娘が名乗りを挙げて向かっていく。
「大足が二つに小足が八つ!左右に動いて目は上向き!答えは『蟹』よっ!!!」
「…!!」
その答えを聞いた瞬間、僧侶の身体が硬直した。
「あれ…?もしかして…正解…?」
猫娘は雰囲気からそう思う。だが、次の瞬間 僧侶の目つきが再び戻る。
「否ッ!!」
「にゃ!?」
その叫びと同時に先程の子泣き爺と同様に僧侶は猫娘へ泡を吹きかける。吐き出された泡は俊敏な猫娘でさえも逃がさないようにすぐさま包み石と化した。
「猫娘!」
「次は貴様らだ!」
「!」
僧侶の目が後ろにいる鬼太郎と炎谷へ向けられた。
「ハァッ!!」
「な!?」
すると今度は問答をかけずにいきなり泡を噴射した。その動きを予測できなかった鬼太郎はすぐさま泡に飲み込まれてしまった。
「ぐぁぁ…!!」
ガタン
石となった鬼太郎は猫娘と同様にその場に金属音を立てながら倒れてしまった。
残されたのは…炎谷ただ1人。
「あらら。やられちまったか。今のって確か『初見殺し』って言うんだっけか?」
鬼太郎の石像を見ながら1人見解する。
「残るは貴様だッ!」
「お?」
だが、僧侶はまたない。次の標的にされた炎谷は僧侶を見上げる。
「はぁ…しょうがねぇ。来いよ?相手してやるよ…!」
「!」
その瞬間 僧侶は一歩後ろへ後退する。
炎谷の目に炎が現れると同時に辺りに超高温の妖気が漂い始めた。
「見せてやるよ…鉄鉱石でさえも軽く溶かす俺の炎をッ…!!」
そう言うと炎谷の手に紅蓮の炎が灯される。
その時だった。
「ぬぉ!?皆!!」
神社の入り口から砂かけ婆が走ってきた。
「鬼太郎!!猫娘に子泣きや!」
「あ?誰だあの婆さん」
砂かけ婆を初めて見る炎谷は炎を止めると、僧侶とともに砂かけ婆を見る。
すると
「ッ…!!」
僧侶の身体が硬直した。
「ひ……姫さま…?」
そう呟くとその僧侶は砂かけ婆の方へと身体を向ける。
一方で砂かけ婆は次の標的にされたと思いすぐさま境内から逃げ、外で待機していたトラックの荷台に飛び乗った。
「すまぬ!出してくれ!!」
「お?おぅ!」
その走り去っていくトラックを僧侶はすぐさま追っていった。
「何なんだ?今のは」
その場に取り残された炎谷は首を傾げると、この場を去った。