死んだものが行く場所『あの世』
『天国』と『地獄』で別れており、生前、悪行の限りを尽くした者は地獄へ落とされる。
そんな中 死んだ者全てが必ず通る最初の場所 地獄の『閻魔殿』にて、1人の獄卒が息を切らしながら駆けつけてきていた。
「大王ッ!!」
「ん?牛頭か。どうした?」
牛の頭を持つ地獄の門番の1人 牛頭は汗を垂らしながら報告をする。その表情は深刻だった。
「報告します…。現世にて『六将』の活動を確認。中でも二位の『天龍』が活発な模様です…!」
「ほう?」
大王は顔をしかめる。最近 亡者の量が時々増えており、その中の殆どは生前、悪行を成した人間達であり、全員が地獄行きとなっていた。もしやと大王は疑っていたのだ。
「奴め…随分と調子に乗っておるな…。“一位”はどうなっている?」
「現在も封印されている模様です」
「ならよい。他の『茨木童子』『鈴鹿御前』『炎獅子』『麒麟』は?」
「ハッ!4名とも目立った動きはありません!」
「そうか。引き続き監視を続けろ」
牛頭が閻魔殿を出ると大王は地獄の炎で赤く燃え上がる空を見上げた。
「何か…よからぬ事が起きるやもしれぬな…」
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夕暮れの東京にて、大通りから外れた人っ子1人いない墓地に、2人の少年が歩いていた。
「ホントにここでいいんだよな?」
「うん。確か、提示板にもそう書いてあったよ」
2人は小学生だ。彼らはネットのある情報を頼りにここまで来たのだ。
「ここで呪文を唱えれば…」
「うん。四丁目の入り口ができて…お化けの学校に行けるって…」
「でもなんか嘘臭いな…」
「でもやってみないと分かんないよ」
そう言うと1人の少年は前に出て呪文を口ずさんだ。
「『サンマイダーラーナギダーラーモウジャノヨコネニキモツイタ。サンマイダーラーナギダーラーモウジャノヨコネニキモツイタ』」
すると、目の前の空間が歪みだし、巨大な入り口が現れた。
「開いた…嘘じゃなかったんだ!」」
「行こう!!」
2人は実話であった事に興奮すると、何のためらいもなく、一気に駆け出していき、その暗い入り口の中へと消えていった。
その瞬間 ドアはゆっくりと閉ざされ、消えた。
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境港で、蟹坊主の事件を解決した鬼太郎やまな達は東京へと戻り、それぞれの日常を過ごしていた。
ただ、そんなある日、ゲゲゲの森に一通の手紙が届く。
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「ふんふふ〜ん♪」
夕暮れの帰路を歩いていたまなは、ふと公園のブランコで見覚えのある影を見つける。
「裕太君」
「まな姉ちゃん?」
そこに座っていたのは自身の家の隣に住んでいる裕太だった。
「どうしたの?一人でこんなところに」
聞くと裕太は少しうつむく。何か悩みを抱えているようだった。
「実はね……ある噂が僕の小学校で流行ってるんだ」
「噂?」
「うん。お化けの学校っていう…」
「お化けの学校?」
「うん。それでね、大翔くん…、いっちゃったんだ…」
大翔とは、まなのクラスメイトの蒼馬の弟である。
すると、後ろから誰かが声を掛けてきた。
「その話 詳しく聞かせてもらえるかい?僕のところにも同じような手紙が届いたんだ」
鬼太郎だ。面識のある裕太は驚く事なく何があったのかを話した。
夜中の3時に三丁目の墓地にいき、呪文を唱えると本来存在しない四丁目への扉が開き、お化けの学校に行けるという噂話が流行っているのだ。自身の小学校でも試した者がいるらしく、その子達は一向に帰ってこないという事なのだ。
「…お化けの学校…か…」
話を聞いた鬼太郎は早速試す事を決める。
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「ふむ。四丁目……とは…」
「変ですよね。この街は三丁目までですよ」
そんな事を言いながら鬼太郎は墓地にやってくる。夜中の墓地はやはり不気味だ。
目的の場所まで来ると、鬼太郎は裕太から教えてもらった呪文を唱え始めた。
「サンマイダーラーナギダーラーモウジャノヨコネニキモツイタ。サンマイダーラーナギダーラーモウジャノヨコネニキモツイタ」
すると、目の前の空間が歪み始め、扉のような形になると引き戸のように開いた。
「これが…四丁目の入り口…」
「とにかく行ってみるのじゃ」
「はい」
鬼太郎は噂が真実であった事に驚き、ゆっくりとその扉の中へと入っていった。