「さてと…で?まずは俺の目的か?」
「それもそうだ…だけど、まずお前は何者なのか、教えてもらおうか」
「そうだったな」
鬼太郎の言葉に頷きながら龍崎は明かした。自身の正体を。
「改めて、俺の名は龍崎忍。“六将”が一人、第二位【天龍】の称号を持つ半妖怪だよ」
「「「「…ッ!!!!」」」」
その言葉に鬼太郎達に衝撃が走る。その中でも特に龍崎と接点や交流が多い猫娘は額から冷や汗を流していた。
「『獄界ノ六将星』通称“六将”……やっぱりアンタが…」
「まぁ俺は2代目だがな。第一位以外の初代は何十年か前に死んでる。さて、今度は俺がお前らに会いにきた目的だったかな?」
改めて龍崎は自身が鬼太郎へと接触した目的について語った。
「俺の目的は至ってシンプルだ。一位の鳳凰を殺すためだよ」
「鳳凰を!?」
またもや伝説の妖怪の名前に皆は強張る。鳳凰とは、地球上で唯一の不老不死の力を持つ伝説の鳥であり、妖怪よりも寧ろ神に近い生物とされている。
そしてなによりも、その鳳凰という妖怪こそ、六将の1人であり、最強の第1位であるのだ。
だが、それに猫娘が疑問の声を上げる。
「なんで…ソイツを…?同じ仲間じゃないの…!?」
「あ?仲間だぁ?」
同じ六将である仲間を殺すという目的に猫娘が疑問の声をあげると、それに頷くかのように砂かけ婆や子泣き爺も頷く。それに対して龍崎は首を傾げながら目玉親父に目を向ける。
「な訳ねぇだろ。それに殺す理由なんざそこにいる目玉が一番知ってるんだろ。なぁ?_____
______元統率者の“霊壱”」
「「「「!?」」」」
龍崎のその言葉は更に皆を驚かせ、目線を目玉親父へと注目させた。
「父さんが…六将!?それに『霊壱』って…父さんの古い名前じゃないか!」
「待って…六将って6人じゃないの!?それになんで親父さんが!?」
「……」
皆が次々と疑問と驚きの声を上げていく。それもそうだ。自身らを圧倒し数多の妖怪達を蹴散らしていった妖怪が、六将という大妖怪の1人であり、さらに目玉親父がその六将のリーダーであったのだから。
一方で、龍崎はその事実を知らない事に不思議と首を傾げながらも答えた。
「はぁ?そこも本人から聞いてないのかよ。六将は6人の妖怪に加えてそれを率いる統率者の計7名だ。数千年前に閻魔直属の実働部隊として結成された」
「7人!?いやそれよりも…閻魔大王も関係してんの!?」
「アイツが作ったからな。当時は妖怪どもが好き勝手暴れてた世界妖怪大戦の真っ最中だったから、あの世もこの世も滅茶苦茶。閻魔も手を焼いててな。それで全妖怪の中から選りすぐりの奴らを集めて結成したのさ。
それから、六将と霊壱によって、妖怪どもは統制られ、今のようになってる。大天狗が持ってる【妖怪界法律辞典】。あれはその時に作られたのさ」
その話に皆は頷くことも出来なかった。妖怪界の最初の戦争である世界妖怪大戦は確かに何冊もの本に記載されているほどの有名な話であり、妖怪と人との隔たりが作られたキッカケとなる出来事でもあったのだ。
それよりも、その戦いに目玉親父が参加していた事に皆は驚きを隠さずにいた。
「親父さんがこの戦いにいたなんて…それに六将の統率者…」
「あ〜」
猫娘や皆の驚く様子に龍崎も同じ反応なのか、目玉親父へと目を向ける。
「当時の霊壱の強さは異常だったらしいな。幽霊族の王家の末裔でありながらも、始祖を凌駕する巨大な霊力に加えてそれを応用する戦闘力。歴代最強と謳われ、閻魔が唯一同格と認めた相手だ」
「…」
その話は全て真実なのか、目玉親父は顔を俯かせる。
「昔の話よ…今は非力な目玉じゃ…」
「そうみたいだな。まぁ、話を戻すぞ」
改めて龍崎は鳳凰について語る。
「鳳凰は世界を憎んだ。人間の醜さも何もかもな。それでアイツは世界を変革するために再び妖怪大戦争を引き起こした。それが妖怪界の歴史上最大規模の戦い『第二次妖怪大戦』だ」
その戦争の名を聞いた途端、皆は震え上がった。第二次妖怪大戦とは、世界中の妖怪達を巻き込んだ戦役であり、規模は第一次との比較にならず、その当時の妖怪の数や規模、そして単体の強さも何もかもが現代とは桁違いであったという。
「それで…どうなったんだ…?」
「激戦の末、鳳凰は初代六将と霊壱、閻魔によって七千もの結界術で封印されて、伊勢神宮の奥深くに祀られてる。
けど、その封印が、1人の妖怪の手によって解かれようとしてるのさ。ソイツが酷く厄介な奴でな」
「封印を…?その妖怪の名は?」
龍崎でさえも“厄介”と記し、警戒しているその妖怪について、鬼太郎は尋ねると、龍崎は答えた。
「____『ぬらりひょん』幾千もの妖怪の群れ“百鬼夜行”を率いる魑魅魍魎の主だ」
「ぬらりひょん…だと…!?」
その名を聞いた一同は驚きのあまり硬直してしまう。
『ぬらりひょん』とは老人の姿をした妖怪であり、伝承としては勝手に家の中に転がり込んで食事をしてすぐに出ていくというイタズラ好きな妖怪として知られているが、それは違う。
「多くの本では、食い逃げや勝手に家に上がり込む太々しい爺として知られているが、それは妖力の殆どを失い老いた現在の姿から出来た話だ。本来の奴は全く違う。妖力は俺達に匹敵し、その高いカリスマ性から日本妖怪共をまとめ上げ、日本妖怪総大将とまで呼ばれてた。
そうだろ?霊壱」
そう言い龍崎が改めて目線を向けると、目玉親父はそれについても知っているのか頷いた。
「…そうじゃ。奴は“鳳仙”と手を組み、妖怪大戦を引き起こした」
「奴は巨大な妖力に加えて、完全に気配を消せる特性を持ってるからな。逃げる事なんて造作もないだろ。さて__」
改めて全てを話し終えた龍崎の目が鬼太郎達へと向けられた。
「以上の通りだ。鳳凰が目覚めて暴れられれば今度こそ日本どころか、世界___いや、この星は終わる。だから奴を完全に消さなきゃならねぇ。だが、奴を殺すには、同じ不死身でも、奴にとって有毒な血を持つ幽霊族の力が必要だ。そのために俺はお前らに接触したのさ」
「なるほどな…事情は分かった。だけど、僕は君らよりも強くない。そんな僕にどうしろと言うんだ?」
龍崎の説明を聞いた鬼太郎は改めて龍崎に対して尋ねると、龍崎は答えた。
「強くなってもらいたい。俺らと同じぐらいに」
「………」
そんな中であった。
「待て龍崎」
「…ん?」
目玉親父が机に登り、龍崎の前に立つ。
「なんだ?霊壱」
「頼む…儂の尻拭いに鬼太郎を巻き込まないでくれないか…」
「はぁ?何言ってんだ?幽霊族がいなきゃ奴は倒せねぇんだぞ?」
「…それでも…儂は親として…鬼太郎に危険ない橋を…!!」
その時であった。
「少し、時間をくれないか?」
鬼太郎が声を上げ、それを耳にした龍崎は目玉親父から鬼太郎へと目線を移す。
「理由は?」
「君の話は分かった。だけど、君はこれまで何度も僕達と衝突した。助けてくれたこともあったけど、それでもまだ完全に信用しきれてない。それに今は、アニエス達の件もあるんだ…話はそれからにしてくれないか」
「………なるほど」
理由を尋ねた龍崎は納得したのか、立ち上がる。
「じゃあまたしばらくしたら声を掛ける。良い返事を待ってるよ」
すると、龍崎の目が猫娘を捉える。
「それと猫、その力を使いこなしたいならいつでも来いよ。教えてやるからよ」
「…!!行くわけないでしょ!サッサと出ていきなさいよ!」
「お〜怖」
その言葉と共に龍崎はゲゲゲハウスを後にし、ゲゲゲの森から出て行ったのであった。