ゲゲゲの鬼太郎 天翔の少年   作:狂骨

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猫と龍

ガタン

 

「どうぞ」

「あ…ありがと…」

差し出された飲み物を受け取ると蓋を開け口に流した。

 

「ふぅ……」

これは一体どういう状況…?昨日までムシャクシャしてた原因の奴とこんなに早く再会するなんて…しかも隣合わせ。

 

「ていうか…何でアンタがここに…?」

私が聞くとソイツは普通に答えた。

 

「唯の気分転換です」

「それだけ……(私も同じだけど…)」

何故だろう……隣にいるだけで不思議な感覚にみまわれる。しかも前と違って今のコイツから発せられる妖気は凄く鮮やかだった。

取り敢えず私は今まで気になっていた奴の名前を聞いてみた。

 

「前々から気になってたんだけど………アンタ……何者なの…?」

そう聞くとソイツはすぐに答えた。

 

「? あ…まだ名乗っていませんでしたね。俺は『龍崎 忍』 龍の妖怪です」

「龍…!?」

私は少し距離を置いた。昔 本で読んだことがある。『龍』とは妖怪の中でもかなり希少な部類であり、個体数は少ないがとてつもない妖力を兼ね備えていると言われている妖怪…。まさかコイツが……

襲われる前に逃げた方が……

 

「ま、正確には龍と人間の間に生まれた混血児 今で言うハーフと言ったところでしょうか。大丈夫ですよ。襲ったりしませんから警戒を解いてください」

…!?こ…心読んでる…!?

 

「で?貴方の名は?」

そう言うとソイツは私に名を聞いてきた。向こうが名乗ったならこっちも名乗るべきか…

私は答えた。

「私は…『猫娘』…猫の妖怪よ」

「『猫娘』ですね…ズズズ……」

 

 

 

「で?『猫娘』さん、他に何か言いたい事があるんじゃないですか?」

「ッ…!?」

ま…また心読んでる…!?

「読んでませんよ」

「いや読んでるでしょ!?」

うぅ…取り敢えず言いたいことは言おう…。

 

「……この前は……助けてくれてありがとう……」

言いたい事は言えたが少し恥ずかしく小声になってしまった。すると覚えていたのかソイツは飲みながら応えた。

「あーあの時ですか。別にいいですよ。俺はただアイツと戦ってみたかっただけですから。それに貴方を助けたのはただ単に邪魔だっただけです」

「う……」

何かグサっと来たけどまぁいいか…。

取り敢えず私はもう一つ気になっている事を話した。

「もう一つ質問させて…アンタ…どうしてこの前はたんたん坊達についていたの?」

私はどうもコイツのことがよく分からなかった。ある時は助けてくれ 、またある時は敵として対偶する。何の目的でコイツは私たちの前に現れるのだろう…。

 

「あぁ あの時は……ん?」

そいつが口を開こうとした時 ソイツの頭に一本の空き缶が飛んできた。ソイツは避けなかったため その空き缶はソイツの頭に直撃した。

 

「よう龍崎 こんなとこで女とデートか?」

その声がした方向を見ると見た目からしてチャラそうな男子達が7人いた。

 

「斎藤さんですか…なぜこんなところに?」

「いや~偶然ここに来たらお前を見つけてよ~」

 

すると斎藤と呼ばれたオールバックで髪を後ろに縛ったリーダー格の男が笑いながらこちらへ近づいて来ると私へ目を向けた。

「可愛い娘じゃねぇか。お前にもようやく春が来たようだな?」

この男は私を龍崎の彼女と思い込んでいた。私はすぐに訂正するため口を開こうとした時

その斎藤と呼ばれた男が龍崎の頭を無理やり掴みだした。

 

「ちょっとこっち来いよ!」

そう言いながらソイツは掴みながら龍崎を後ろの仲間のいるところへ連れて行った。

私は動かず連れていかれる姿を見ていることしかできなかった。

 

すると龍崎は仲間のいる場所へ連れられると突然斎藤と呼ばれた男に殴りとばされた。

殴られた龍崎は近くにある木まで吹っ飛ばされ斎藤に続くようにその取り巻き達が倒れている龍崎に向かってキックやパンチなどを何発も繰り返した。

 

「ちょっと 待ちなさい!」

もう見ていられなくなった私は止めるため龍崎と男子達の間に入ると龍崎から引きはがした。

 

「アンタ達さっきから何やってんのよ。一人に対して多勢なんてクズにも程があるわよ!」

すると引き剥がされた男子達は私を睨んできた。

「あ?何すんだテメェ。俺にこんな事していいと思ってんのかよ?謝るなら今のうちだぞ?」

「なによアンタ。随分な物言いね。富豪の息子とでもいうの?」

私がそう言うと取り巻きの中で小柄な奴がヤクザのように突っかかってきた。

「おうおうおうおう姉ちゃんよぅ。この人を誰だと思ってんだ?この人は関東の名のある高校をすべて制圧した最強の不良 『帝王』斎藤さんだぜ?」

『帝王』?聞いたことない。脅してるようだけど私にとってはただ子犬が吠えてるようなもの。というか…なんで妖怪である龍崎がこんな奴らからいじめを…?

私はそこがどうも腑に落ちなかった。

すると私の肩が叩かれ 振り向くと土まみれの龍崎がいた。

「彼らには関わらない方がいいです…早く謝罪を…」

「は!?何言ってんのアンタ!こんな奴らなんてアンタ程なら威嚇一つで…「いいですから!」…く…」

確かに…下手に手を出したら大騒ぎになる…。私は龍崎に言われた通り頭を下げた。

 

「…邪魔して…すいませんでした…」

そう言うとソイツらは笑いながら私を突き飛ばし再び龍崎へ暴行を加えた。

龍崎がボロボロになるとソイツらはそのまま去っていった。

男子達が見えなくなると私は龍崎を睨んだ。

「何で私が謝んなきゃいけなかったのよ。幾ら何でもおかしいでしょ。それに、妖怪であるアンタが何でやられっぱなしなのよ」

そう言い私は龍崎を責めた。すると、先程まで物静かな龍崎の雰囲気が一変した。

 

「悪いな。アイツらにはまだ正体バレる訳にはいかねぇからよ」

その喋り方は先程までとは真逆であり、目も鋭くなっていた。それに『まだ』…コイツは一体何を企んでいるんだ…?

 

「因みに何故俺がたんたん坊についていたか教えてやる。『ゲゲゲの鬼太郎』と戦いたかったからさ」

 

…!?

鬼太郎の名が出た瞬間 私は爪を伸ばしながら奴の目の前に瞬時に移動し首元に爪を突きつけた。

 

「アンタ…鬼太郎に何したの…?」

「なぁに。ちょっといたぶっただけさ。たんたん坊供と戦った為か妖力がかなり減ってたからまた今度って形で見逃してやったよ」

私は爪を下す事が出来なかった。やはりコイツは敵だ。狂っている。己の欲で人に害をなす者に味方をする…明らかに異常者だ…!

 

「なんだ?やるのか?幸いもう人っ子一人いないからやりやすいかもな」

ソイツの言う通りもう辺りには誰もいない。だがいまここでやりあえば確実に私が負ける…コイツの妖力は一目見るだけでも分かるほど強大だ。

結果、私は爪を下した。するとソイツはつまんなそうなため息をついた。

 

「まぁいい。今回はこっちに合わせてくれて感謝する。じゃあな 猫」

そう言うとソイツは私の横を通り過ぎそのまま去っていった。私は咄嗟に振り返ったが、そこにはもう奴の姿は無かった。

 

「私…猫娘なんだけど……」

 

 

 


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