都内某所にて
数ある建物の中で下の階を指す看板がある。
その目印が指す看板に沿って一人の少年が地下へ続く階段で降りていった。
辿り着いた先は何十人もの柄の悪い若者と酒やドラッグの臭いが漂うゲームセンターである。
「なんだテメェ?ここはガキが来ていいとこじゃねぇぞ?」
一人の不良がその少年を見つけると睨み威嚇する。するとその少年は表情を変えずに問う。
「突然で申し訳ありませんが…あなた達のボスに会わせていただきませんか?
「あぁ?誰だテメェ?見た限り中学生だがよぅ。ここはテメェが来るとこじゃねぇんだぞ?」
「そうですか。では失礼します」
そう言い少年が出て行こうとすると出口を数人の男女が塞いだ。すると人ごみを掻き分けリーダー格の男が姿を現した。
「このまま帰れると思ってたのか?タダで返す訳ねぇだろ」
その言葉と共に周りからもヤジが飛ぶ
「勝手にウチらの島に入り込んできやがってよぉ!」
「覚悟できてんのか!あぁん!?」
するとその少年は頭をかく。
「困りましたね…どうすれば帰してくれるのですか?」
「有り金全部置いてけや」
「それは勘弁していただきたい。私は独り暮らしの身 故にお金は命の次に大事なものです」
「知ったことかよ。おいお前ら!やっちまいな!」
「「「おうよ!」」」
すると数人の男がその少年に向かってきた。
「やれやれ…ただふつうに帰してくれるかボスに会わせてくれれば痛い目に遭わずに済んだものを…」
その瞬間 少年の雰囲気が変わった。取り出したワックスで髪を全て後ろに流し結んだ。そしてその少年の顔が明らかになった時 不良達の目が変わった。
「お…おい見ろよ!額の傷!」
周りの皆はもちろん向かってきた男達も後退りした。リーダー格の男は冷汗を流しながら推測した。
「額の傷に鷹のような鋭い目…間違いねぇ!コイツは『帝王』だ!!」
その瞬間 不良の皆は一斉に騒ぎ出した。
「マジかよ!?あの帝王だと!?」
「たった二週間で関東甲信越を制圧したと言われているあの……!?」
すると不良のリーダー格が一喝した。
「やかましいぞテメェら!相手は一人だ!ここでやっちまえば関東は俺らのもんだ!」
その言葉に周りの不良達は皆 冷静になると花瓶や金属バッドを持ち始めた。
「やっちまぇぇぇ!!!!」
その言葉と共に一斉に不良達は少年へと向かった。するとその少年は不敵に笑った。
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数十分後 不良のリーダーである男の前では壮絶な景色が広がっていた。
あれだけいた仲間が一瞬でたった一人の子供にぶちのめされた。その子供は自分とは別の尻を抜かしている女子の元へと歩み寄っていた。
「ま…まてお前!女だぞ!殴るのか!?」
「…は?」
「殴れねぇだろ!?殴ったとしたら相当のクソやろ…ガバァッ!」
少年は最後まで言おうとした女子の顔に横から蹴りをいれ吹き飛ばした。
不良の目は恐怖で埋め尽くされた。目の前にいる『帝王』は女であろうと容赦しない絶対的な者であるということ。
「『女はか弱いから殴られない』そういう考えを持つ女が1番嫌いなんだよ。俺は女であろうと容赦はしないよ」
そう言い少年はその女子の顔に再び蹴りを入れた。命に別状はないが鼻はへし折れ歯は何本も折れていた。
その女子が気絶し意識を失うと少年は倒れ伏しているリーダー格の男へと目を向けた。
「元々俺はお前に用があるんだ。この辺りで結構暴れているようだが…いいか?関東は俺のナワバリだ。勝手に荒らしてんじゃねぇ」
「す…すいません!!」
そう言い少年は出口の階段を上っていった。
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
リーダー格の男は息を切らしていた。自分が行けば確実にやられていたと。男はすぐさま携帯を取り出し救急車を呼んだ。
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人が皆 仕事を終え家へと帰る帰省ラッシュ。中でも渋谷のスクランブル交差点は特に混んでいた。その中を一人の少年と少女が歩いていた。
「帰省ラッシュはやっぱりすごいですね父さん」
「ふむ…やはり都心は違うのぅ」
「まぁ、東京はそれが当たり前だしね」
鬼太郎と父親である目玉おやじ そして猫娘はゲゲゲの森の入り口である場所まで歩いていた。
そんな中 多くの救急車が車道を通った。その数は何と5車体以上だった。
「珍しいのう…こんなに救急車が通るなんて…」
「恐らく喧嘩よ。ゲームセンターで溜まった不良たちが他校同士で大喧嘩したんじゃない?」
「物騒ですね父さん」
そう言いまた歩き始めた。
その時
人混みですれ違う中 ある声が耳に聞こえた。
「次に会ったら…もっと楽しませてくれよ」
『ッ!?』
鬼太郎は勿論 猫娘も気づき背後へ体を向けた。だがそこに声の主らしき者はいなくただのサラリーマンや学生だけであった。
「猫娘…今のは…」
「えぇアイツよ…アイツはまた必ず…私達の前に姿を現わす…!」
猫娘はかつて鬼太郎やたんたん坊を追い詰めた人型妖怪 『龍崎 忍』を思い出す。そして、彼が再び自分たちの前に姿を現わす事を予測した。