Happy Wedding ー1番辛くて1番幸せな時間ー   作:ゆりかご5735

1 / 3
ふたりの気持ち、母の気持ち

えええええええぇ!?

 

と、叫びそうになるのを我慢して

 

音を立てずにドアを閉める

 

どうやら私は見てはいけないものを見てしまったようだ

 

途端に閉めたドアが勢いよく開かれる

 

「み、みた!?」

 

と、娘の『桜』が部屋から飛び出して

 

身を乗り出して聞いてきた

 

「み、みてない…みてないよ」

 

と、目を両手で隠して言う

 

「見たよね絶対みたよね」

 

「みてないったら」

 

「ほんと??ほんとにみてない!?」

 

かなり焦ってる

 

当然だ

 

母親に『姉妹同士でキス』してるところを見られてしまったのだから

 

当の本人であるもうひとりの娘

 

『瑠璃』はさっきから固まったままで動けずにいる

 

こう…私はどうも、タイミングというのが非常に悪いらしい

 

「瑠璃?だ、大丈夫、見てないから、姉妹同士でキスしてるとこなんて見てないから」

 

「ぐはぁっ」

 

会心の一撃!

 

瑠璃は倒れてしまった

 

「あっ!ごめん、つい口が」

 

「わざとだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉「…」カチャカチャ

 

妹「…」パクパク

 

母「…」ムシャムシャ

 

き、気まずい…

 

見られてしまった…親に…

 

最悪だ…

 

 

 

その日の夕飯は終始無言かと思われたが

 

母「さっき何してたの?」

 

ぶはぁっ!

 

私とお姉は顔を真っ赤にして盛大に吹き出した

 

母「うわっ、ちょっと!」

 

妹「だ、だって…それ聞いちゃう?」

 

母「当たり前でしょ…だからさ、もし…ね、2人がそういう関係なら…親としては止めなきゃだし?」

 

妹「ばっ!////そ、そんなわけないだろ!私達姉妹だぞ!なぁお姉」

 

私は同意を求めるようにお姉に視線を流した

 

 

姉「ひ、ひどい…」ウルウル

 

なぜか涙目のお姉

 

姉「私は本気だったのに…」

 

妹「えぇ…」

 

姉「私は本気で好きだったのに…桜は遊びだったの!?」

 

妹「ばか姉!もう黙れよ!」 

 

 

母「ほ、本気って…?え?え?嘘でしょ」

 

妹「う、嘘に決まってんじゃん」

 

 

姉「桜のバカーっ!」ドタドタドタ

 

 

母妹「「…」」シーン

 

 

妹「か、母さん…ちょっといい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉「…ぐすん」

 

いきなり怒って泣いて、そのまま部屋に来てしまった

 

 

お母さんに桜との関係を知られるのは怖かった

 

でもそれ以上に、桜との関係を隠し通すのも嫌だった

 

お母さんを裏切るような…後ろめたい気持ちが気持ち悪かった

 

だからお母さんに話そうって、桜によく提案はしてたけど…かたくなに否定された

 

今回の件はお母さんに話すいいきっかけだと思ったけど…

 

 

『ばっ!////そ、そんなわけないだろ!私達姉妹だぞ!なぁお姉』

 

 

あれは…ちょっと傷ついた

 

本音じゃないって分かってるけど

 

それでついカッとなって…

 

あーもう…ばかばかばかばか私のばかー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹「…つまり、私達…付き合ってんの」

 

母「…」

 

信じられない…って顔してる

 

まぁ、分かるよ

 

自分の娘が2人とも同性愛者なんて知ったらそんな顔にもなる

 

しかも姉妹同士で

 

母さんほんとごめん

 

妹「で…その、認めてほしいんだ…私たちの」

 

母「だめ」

 

妹「…!…っ……」

 

いつもふにゃふにゃしてる母さんが今はやけに強気だった

 

その真剣な眼差しに圧倒される

 

母「ちょっと、瑠璃呼んでくるから、待ってて」

 

妹「…う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母「瑠璃、入るよ」

 

姉「わっ…ど、どうぞ」

 

ガチャ

 

母「話があるから、ちょっと来てくれる?」

 

姉「う、うん…わかった」

 

なんだろ…いやまぁ、さっきの続きなんだろうけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉「桜…」

 

妹「お姉…」

 

姉妹「「…」」

 

姉妹「「さっきはごめん!」」

 

姉「桜…さっき、本音じゃないって分かってたのに…私、ついカッとなって…桜の気持ち…全然尊重できなかった…本当にごめんなさい!」

 

妹「わ、私も…!いつもこのままじゃ駄目だって思ってて、お姉がいつも背中押してくれてたのに…さっきだって…いつもズルズル引きづって…こうなったのは私のせいだよ、本当にごめんなさい!」

 

 

 

 

誇らしい

 

私は素直にそう思った

 

自分たちの将来を真剣に悩み、お互いのことを心から想っている

 

いつの間にか、私の娘達はこんなに立派に成長してくれていた

 

私は、この子達のことをとても誇らしく思う

 

この2人は…お互いのことを心の底から愛している

 

家族としても

 

恋人としても

 

 

私はこの2人のことを愛している

 

幸せになってほしいと思っている

 

だからこそ…これから言わなきゃいけないと思うと辛い

 

 

 

母「桜…瑠璃…」

 

姉「うん…」

 

母「2人は…これからどうしたい」

 

姉「も、もちろん…」

 

妹「うん…」

 

2人の気持ちは同じようだ

 

 

姉「認めてほしいよ、お母さんに」

 

母「うん、わかった…桜、瑠璃…」

 

もう一度、2人の名前を呼んだ

 

母「よく聞いて」

 

母「私はあなた達のこと…愛してる」

 

妹「うん…わかってる」

 

母「2人の幸せをなによりも願ってる…」

 

姉「…」

 

母「だからこそ……2人のことは認められない」

 

姉「…!な、なんで!」

 

声を荒らげたのは瑠璃だった

 

桜にはさっき言ったから大人しかった

 

姉「やだ…やだよ…」ポロポロ

 

 

瑠璃が泣き出した時にはさすがに心が傷んだ

 

桜が瑠璃の手を繋いで落ち着かせた

 

姉「さっ、桜はっ、なんでそんなに落ち着いでるのっ…!なんでっ、何も言わないの…」

 

妹「お姉…いいから、まずは聞こう…母さんの話」

 

姉「う…っ…」ポロポロ

 

 

母「2人はさ…私が認めたとして…これからどうしたいの?」

 

妹「え…」

 

母「辛いよ…同性恋愛は…私が認めても…周りは?社会は簡単には認めてくれないよ…結婚できないよ…子供だって産めないよ…女同士で、家族で、恋人で…そんな中途半端な関係でいつまでやってけるの?…いつか苦しい思いをするのは…」

 

妹「行こう!お姉!」

 

姉「ぇ…行くって」

 

妹「いいから!」

 

桜は瑠璃の手を引っ張って玄関に向かった

 

母「桜!どこへ…」

 

妹「着いてくんな!」

 

母「…!」

 

なんで…そんな顔するのさ…

 

私は…私は…2人のことを…

 

 

母「ちゃんとした恋愛して!ちゃんとした結婚しないと幸せになんかなれないんだよっ!」

 

妹「なんだよちゃんとした恋愛って!母さんさっきから自分の理屈押し付けてるだけじゃん!幸せなんて私達で探すし幸せかどうかなんて私達が決める!母さんが決めることじゃない!」

 

ガチャ…バタン!

 

母「…」

 

私は…追いかけることができなかった

 

その場に座り込む

 

 

 

母「文也くん…」

 

ポツリ…と

 

ため息のような掠れた声が

 

冷たい廊下に落ちて消えた

 

 

母「文也くんがいてくれたら…」ポロポロ




続きます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。