魔術と白黒とCCC   作:那由多20

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~prologue~

 

 桜咲き乱れる街道を歩いた先に見られる大きな高校──文月学園。

 そこは科学とオカルトが交差する事によって偶然出来上がった試験召還システムを使った教育制度が導入されている。

 そんな世界的にも注目されている試験校で、生徒達は日常の日々を過ごしていた。

 

「待てぇ吉井に坂本ォォ!今朝木下と一緒に登校したってのは事実か!!」

「「「噂だけでも万死に価する!」」」

 

 ちょっと待ってくれ。 

 僕達は今まさにカッターやらボールペンやら定規やら釘バットやらが飛び交う修羅場を逃げ回っている。

 ──これの何処が日常なのか説明してほしい。

 

「──っていうか本当に人の話聞かないよね!?」

「それがFクラスだからな!」 

 

 正にその通り。

 秀吉は男だから別にいいじゃないって言おうとする前に彼らの行動は始まっていた。

 今僕らは長距離バトルを覚悟したペース配分で走っているが、やはりというか中々逃げ切ることが出来ない。嫉妬パワー恐るべし。

 とにかく追っ手を分断する必要があるようだ。

 

「二手に別れよう雄二。その方が逃げやすい!」

「それは俺も考えてはいたが……いいのか?」

 

 ちょいと視線だけを後方に向ける雄二。 

 

「アキ……やっばり木下を。──オシオキが必要ね」

「吉井君、少しオハナシシマショウネ?」

 

 ──そこには修羅場の中の阿修羅がいた。

 

 周囲から怒気をメラメラと発している島田さんに瞳からハイライトを消している姫路さん。

 彼女達は悪い人では無いのだろうけど、僕が他の女の子(秀吉は例外だけど)と仲良くする時だけ非常識極まりない人間になってしまう。

 ほんっっとっ!僕絡みでない時だけは良識的な良い人達なのにっ!

 ここ大切なので強調してみた。

 てなわけで僕は彼女達が少しだけ苦手ではある。

 

「──まあそれは雄二にも言えることだけどその方が得策でしょ」

「…そうだな。よし!ここからは別行動だ明久。幸運を祈る!」

「オッケー。グッドラック雄二!」

 

 互いの生還を交わしながら突き当たりの廊下で僕達は左右に別れる。

 計画通りにFクラスの面子は均等に別れて追いかけてくれた。

 ──これで残ることは。

 

「逃がすか吉井!地獄の果てまでも追いかけてやるゼ!」

「ヤッチャウヨーヤッチャウヨー!」

「アキーー!待ちなさい!」

「吉井君?止まらなければオシオキですからね?」

 

 この最後の難関をどう逃げ切るか……だ。

 ひとまずここは三階だ。

 上には屋上があるが、そこに行くのは自ら行き止まりに向かうものなので下に逃げるしかない。

 僕は階段を二階に向かって壁蹴りの要領で駆け下りていくとそのまま左右どちらでもいいので横に曲がって廊下を疾走する。

 途中で仲良く会話している女子生徒と出くわし、横に避けていてはアイツ等との距離が縮まるため、速度を落とさずに彼女達の足下をスライディングで通り抜け──そして何やら良い香りがして、ピンクと白が見え……って違うっ!

 

「「きゃぁああ!!??」」

「ごめん!後でちゃんと謝るから今は見逃して!」

 

 そして目の保養をありがとう。そのお詫びも兼ねて謝ろうではないか。

 ていうか今ので後ろから伝わる嫉妬と殺気が倍増した!?何かさっきより距離詰められてるんですけど!

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい────!!

 このままいけば何時か絶対に捕まる。どうすれば……………ん?

 

 全力で走ってる最中、右隅の方にふと視線が移る。廊下の右側には延々と窓が並んでいて、換気の為か奥の方の右隅の窓だけ開放されていて───ってシメた!

 

 僕は今日一番の速度でそこまで走り寄ると、助走をつけて一気に窓から下へと飛び出しアイツ等が着いて来れないように、反転して片足で窓を閉めた。そして地に足が着く瞬間に四肢を軽く曲げて衝撃を軽減させ無事に着地すると、息を整えずにそのまま走り出す。

 飛び降りている際に、何か身体に電流みたいな物が駆け巡ったような気がしたけど今はそれどころではない。

 嫉妬に狂ったFクラスの恐ろしさは身を持って知っている。だからこそ二階から飛び下りたくらいでは油断は出来ないのだ。

 

 今いる校舎は危険だと思い、今度は別校舎に向けて走り出しまたしても開放されたままの窓を飛び込んでくぐりぬける。

 そして警戒を怠ることなく周囲を見渡した。

 

 

 ───それにしてもここは一体何処なんだろう?

 

 周りには古ぼけた書物が納められている本棚と、高度の物と見られる科学の資料が積まれた本棚に高級そうなリクライニングシート。

 そして中央には立派な机とその椅子に座っている………古代から何千年も生きてきたような妖怪が──。

 

 妖怪が───。

 

 

 

 

 

「「………………」」

 

 

 ……うん最悪だ。

 

 

 

「──よりにもよってアイツ等よりももっと性質(タチ)の悪いババア……改め妖怪山姥が!?(ダッ!)」

「勝手に入ってきて随分なクソジャリだね!?──ちょいと待ちな!」

 

 後ろからババアが何か言ってるようだが聞こえない。

 どうやら今日一番のハズレ部屋を引いてしまったみたいだ。こんな事なら三階から飛び降りて距離を開けるか、多少の迷惑を覚悟してでも霧島さんや優子さん達がいるAクラスに逃げ込めば良かった。

 ──実際雄二もそこに匿って貰ってるんだろうし……。

 もういいや!こっからは適当に突き当たった教室に逃げ込もう!

 

 そう!例えばこの扉なんかを潜れば!

 左側の扉を開いて中に飛び込み一瞬で閉めて鍵を掛ける。

 

 そこで僕はようやくひと息つくことが出来た。

 彼らとて鉄人──もとい西村先生に追われてるはず。

 だったら流石にこの鍵を時間をかけてまでぶち破って押し入ろうとする事は無いはずだ。

 そんなことをすれば間違いなく鉄人に捕まり補習室(地獄)へと連行されるから。

 

 緊張が解けて身体中の力が抜けていたのか、僕は先程から向けられている視線に気づけなかったようだ。

 ──見たところ主に白色の壁に囲まれ、医薬品が納められている棚や清潔なベッドが設置されている辺り保健室で間違い無いだろう。

 

 そしてこの部屋に入った時から僕に向けられていた視線。

 そこには───。

 

「えっと………その、お怪我でもされたのですか?」

 

 ──白衣を着た太腿まで届く薄紫色の長髪の少女が、瞳を真ん丸にしてポカンと僕を見つめていた。

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