残虐で優しい聖女   作:オミズ

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第四話です。
お時間とご相談のうえ、視力を気にしてながらお読み下さい。


第四話 少女と運命

[part:???]

 

一目見た瞬間思った。

俺は、コイツを好きになれない。

 

可愛い、とは思った。

 

穢れを知らない綺麗な顔に、何者にも染まっていない白い髪。

打算の一つもない心地良い声。

 

大体の奴らなら、一目見た瞬間に好きになるだろう、とは思う。

だが、俺にとってはその姿は毒にしか見えなかった。

 

穢れを知らない綺麗な顔?

(そんなに俺は愛されなかった)

 

何者にも染まっていない白い髪?

(それは、『個』というものが無いだけじゃないのか)

 

打算の一つもない心地良い声?

(皆が隠し事をしている箱庭の中で育っただけだろう)

 

まあ、そんな訳でイリの第一印象は最悪だった。

だが、直ぐに理解した。

コイツは人一倍自分に縛られている、って。

 

[part:???:end]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羞恥心?

イリは純粋に疑問に思った。

何を恥ずかしがる事があるのか、と。

だから、問い返す。

 

「あなたは、何が恥ずかしいんですか?」

 

「はぁ?」

 

「…伝わりませんでしたか?もう一度言います。あなたは、何が恥ずかしいんですか?」

 

イリの問い掛けに、少年は気味の悪そうな顔をして、返答した。

 

「何がって。テメエは裸を見せて恥ずかしくねえのか?」

 

何を訊いているのだ?という顔をしてイリは返答する。

 

「ええ。恥ずかしがる道理はないです」

 

「…成る程。テメエの年は?」

 

「12ですけど…」

 

「ふーん」

 

そう呟いて、少年は思考に没頭してしまった。

どうやらイリの事より、気になることができたらしい。

 

手持ち無沙汰になったイリは、体を洗うという目的は達成できたので、体を拭いて服を着る。

その際、肩の怪我に細心の注意を払う事は忘れない。

注意を払わなかった結果が、先程の痛みだということを学んだ。

 

ワンピースしか服を持っていないのは悲しいと思っていたが、ワンピースは肩の怪我には優しい服だということに気付き、複雑な気持ちになる。

その際、何か気になることが出来たような気がした。

 

「うーん?何か忘れているような気がします…?」

 

首を捻って数秒考えるが、何も思い出せないので諦める。

思い出せないならたいしたことの無い事なのだろう、と結論付けたイリは、目下最大の興味の対象である少年を見つめる。

 

どうやら、家を抜け出したことは忘れているようだ。

 

先程は上半身しか見ていなかったので、次は下半身を見ようと思ったので、目線を下げていく。

頭、首、胸、腹、と順調に目線を下げていたが、足の間までいったところで驚愕に晒される。

 

「な、なんか、ついてますっー―――!!!」

 

「テ、テメエ!!見やがったな!!死ね!!」

 

イリが叫んだ瞬間、少年は顔を一瞬で赤くさせて、その勢いでイリの意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、気絶させたイリを振り回しながら、彼はイリの住んでいる村にやってきた。

途中で木の幹にぶつけたが、いい気味だと思うので気にしない。

 

何故か村は閑散としていて、人一人住んでいなそうな様相を醸し出していた。

 

「おい。誰かコイツをちゃんと管理しろ」

 

少年の苦情に反応して、誰もいなかったはずの村に、人が何人も現れる。

その中の一人が、緊張した面持ちで一歩踏み出す。

 

「まだ、約束の時は早いと思いますが、如何様ですか?」

 

その人物は、イリがおばさまと呼んでいる女性であった。

その言葉に嘲笑して、彼は返答する。

 

「ボケたか?コイツは世界を知っちまっただろ」

 

イリを振り回しながら返事をしている所為か、気絶しているイリの顔が苦しそうになっている。

少年はそれに気付いていないフリをしつつ、振り回し続ける。

 

「…それは……そうですが…」

 

辛そうに顔を歪めながら、肯定するしか出来ない女性はそう言った後、押し黙った。

 

とりあえず、回されているイリは放っておかれる定めにあるらしい。

彼は、それが当然だと言わんばかりに、表情を浮かべずに言った。

 

「幸せな箱庭生活は終わりだ。これからは…コイツ次第だ」

 

そして、イリをぶん投げた。

 

ズシャアァァァァァァ!!と痛そうな音を上げながら転がったイリは、当然の如く目を覚ました。

 

「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!イタッ!滅茶苦茶に痛いですー―――!!!」

 

痛みに慣れていない少女は、周りの空気を読む余裕も無く、悲鳴を上げる。

それも当然なことだろう。

目が覚めたら痛みが襲い掛かってくるなど、考えたこともないだろうから。

 

「うっせえ」

 

彼は、そんなイリに容赦無く追撃を仕掛ける。

具体的に言うと、顔を踏んだ。

 

「ぶぎゅっ。…って、何するんですか!!」

 

顔を踏まれて憤慨しているイリを、冷ややかな目で見つつ彼は告げた。

 

「一週間…一週間だけ猶予はやる。だから、お前なりに【ここ】と別れを告げる覚悟を決めとけ」

 

「え…?」

 

イリの破滅への道を―――




ご読了ありがとうございました。

クロスの発言に従うか否か。
これがイリのターニングポイントとなります。
イリはどちらを選ぶのでしょうか?

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