お時間とご相談のうえ、視力を気にしてながらお読み下さい。
[part:???]
一目見た瞬間思った。
俺は、コイツを好きになれない。
可愛い、とは思った。
穢れを知らない綺麗な顔に、何者にも染まっていない白い髪。
打算の一つもない心地良い声。
大体の奴らなら、一目見た瞬間に好きになるだろう、とは思う。
だが、俺にとってはその姿は毒にしか見えなかった。
穢れを知らない綺麗な顔?
(そんなに俺は愛されなかった)
何者にも染まっていない白い髪?
(それは、『個』というものが無いだけじゃないのか)
打算の一つもない心地良い声?
(皆が隠し事をしている箱庭の中で育っただけだろう)
まあ、そんな訳でイリの第一印象は最悪だった。
だが、直ぐに理解した。
コイツは人一倍自分に縛られている、って。
[part:???:end]
羞恥心?
イリは純粋に疑問に思った。
何を恥ずかしがる事があるのか、と。
だから、問い返す。
「あなたは、何が恥ずかしいんですか?」
「はぁ?」
「…伝わりませんでしたか?もう一度言います。あなたは、何が恥ずかしいんですか?」
イリの問い掛けに、少年は気味の悪そうな顔をして、返答した。
「何がって。テメエは裸を見せて恥ずかしくねえのか?」
何を訊いているのだ?という顔をしてイリは返答する。
「ええ。恥ずかしがる道理はないです」
「…成る程。テメエの年は?」
「12ですけど…」
「ふーん」
そう呟いて、少年は思考に没頭してしまった。
どうやらイリの事より、気になることができたらしい。
手持ち無沙汰になったイリは、体を洗うという目的は達成できたので、体を拭いて服を着る。
その際、肩の怪我に細心の注意を払う事は忘れない。
注意を払わなかった結果が、先程の痛みだということを学んだ。
ワンピースしか服を持っていないのは悲しいと思っていたが、ワンピースは肩の怪我には優しい服だということに気付き、複雑な気持ちになる。
その際、何か気になることが出来たような気がした。
「うーん?何か忘れているような気がします…?」
首を捻って数秒考えるが、何も思い出せないので諦める。
思い出せないならたいしたことの無い事なのだろう、と結論付けたイリは、目下最大の興味の対象である少年を見つめる。
どうやら、家を抜け出したことは忘れているようだ。
先程は上半身しか見ていなかったので、次は下半身を見ようと思ったので、目線を下げていく。
頭、首、胸、腹、と順調に目線を下げていたが、足の間までいったところで驚愕に晒される。
「な、なんか、ついてますっー―――!!!」
「テ、テメエ!!見やがったな!!死ね!!」
イリが叫んだ瞬間、少年は顔を一瞬で赤くさせて、その勢いでイリの意識を刈り取った。
あの後、気絶させたイリを振り回しながら、彼はイリの住んでいる村にやってきた。
途中で木の幹にぶつけたが、いい気味だと思うので気にしない。
何故か村は閑散としていて、人一人住んでいなそうな様相を醸し出していた。
「おい。誰かコイツをちゃんと管理しろ」
少年の苦情に反応して、誰もいなかったはずの村に、人が何人も現れる。
その中の一人が、緊張した面持ちで一歩踏み出す。
「まだ、約束の時は早いと思いますが、如何様ですか?」
その人物は、イリがおばさまと呼んでいる女性であった。
その言葉に嘲笑して、彼は返答する。
「ボケたか?コイツは世界を知っちまっただろ」
イリを振り回しながら返事をしている所為か、気絶しているイリの顔が苦しそうになっている。
少年はそれに気付いていないフリをしつつ、振り回し続ける。
「…それは……そうですが…」
辛そうに顔を歪めながら、肯定するしか出来ない女性はそう言った後、押し黙った。
とりあえず、回されているイリは放っておかれる定めにあるらしい。
彼は、それが当然だと言わんばかりに、表情を浮かべずに言った。
「幸せな箱庭生活は終わりだ。これからは…コイツ次第だ」
そして、イリをぶん投げた。
ズシャアァァァァァァ!!と痛そうな音を上げながら転がったイリは、当然の如く目を覚ました。
「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!イタッ!滅茶苦茶に痛いですー―――!!!」
痛みに慣れていない少女は、周りの空気を読む余裕も無く、悲鳴を上げる。
それも当然なことだろう。
目が覚めたら痛みが襲い掛かってくるなど、考えたこともないだろうから。
「うっせえ」
彼は、そんなイリに容赦無く追撃を仕掛ける。
具体的に言うと、顔を踏んだ。
「ぶぎゅっ。…って、何するんですか!!」
顔を踏まれて憤慨しているイリを、冷ややかな目で見つつ彼は告げた。
「一週間…一週間だけ猶予はやる。だから、お前なりに【ここ】と別れを告げる覚悟を決めとけ」
「え…?」
イリの破滅への道を―――
ご読了ありがとうございました。
クロスの発言に従うか否か。
これがイリのターニングポイントとなります。
イリはどちらを選ぶのでしょうか?