〈DIN〉局長のお仕事   作:Ringo

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一人称は楽や……
アニメのPV見ました? というか迅羽ちゃんがキャスト来てる時点で発狂モノ(三章確定)

リアタイ視聴したい(無理)(不可能)(諦めろ)





file.5 天使の里

 レジェンダリアには『天使の里』という比較的新しい()()()()がある。

 里の住人は皆が見た目麗しい天使であり、息を呑む絶景を拝む事が出来る山中の秘境であるという。

 

 ただの秘境であるならば、これはそこまでの話で終わる。だがこれはあくまで都市伝説。その理由は、〈DIN〉支部局長たちの反応のせいだ。

 

 もしもマスターがその里について知りたがるのならば、厳重な契約の末に伝授される。

 だがティアンが里の位置を求めても、支部局長たちは誰一人として首を立てに振らない。賭博都市に居座る人間マニアも、船上より全てを見渡す少年も、永劫的刹那主義とまで呼ばれる狂人でさえ首を横に振るのだ。

 それは否定(しらない)ではなく拒絶(おしえない)

 

 ある時マスターがティアンを伴って尋ねた時もあったが、その時も拒否されてしまった。何故教えないのか、その理由を尋ねても誰も口を割らない。

 

 故に都市伝説。存在するかどうかすらあやふやな土地。何故局長たちが教えないのか、その理由は──

 

 

□ 【疾風槍士】フューロ・ハルクロア

 

「……ここは」

「お目覚めですか?」

 

 目を開けると、目の前に知らない美女が。そして遠くに知らない天井が。なんだかズキズキと頭が痛い……確か近くの森にモンスターの群れが出来たとかで、クエストを受けてくれたマスターの人と出かけたんだっけ。それで……。

 

「わっ」

「思い出した、〈アクシデントサークル〉! ここは何処の国だ!?」

「落ち着いて。ここはレジェンダリア国内ですから」

 

 思わずベッドから飛び起きてしまったが、よかった。天地にでも飛ばされていたらどうしようかと。それにしても、レジェンダリアでもここはどこだろうか? 首都から離れてなければいいが。

 

「ここの名は?」

「エンジェリック。外部の人からはそう呼ばれますね」

「聞いたことないな……」

「『天使の里』、といえば伝わるでしょうか」

 

 都市伝説で聞いたことがある。俺みたいなティアンには、絶対に辿り着けない秘境だと。マスターの人から聞いた推論だと「【天兵(ヘヴン・ソルジャー)】のようなレアなジョブクリスタルを保有しているのではないか」なんてあったが、目の前の女性は美人ではあるが普通の人間に見える。 

 

「あっ、自己紹介がまだでしたね。私は()()()・ラズウェイ。まだ幼い妹が奥にいますが、それでも良ければうちでしばらく休んでいってください」

「丁寧にどうも……」

 

 難しい顔で考えこんでしまったのがいけなかったらしい。妹がいるのか。姉が美人なら妹も可愛いのかもしれない、なんて俗っぽい事で頭を占めていると、ドアの隙間から覗く小さな横顔がチラリと見えた。

 

「君が妹かい?」

「ええ。アタシはコルソーン。あなたは?」

「フューロ。これでも【疾風槍士】だ」

「上級職なんてすごいわ!」

 

 妬みの一切ない褒め言葉はやっぱり気持ちいいものだ。最近はマスターが増えて、上級職も珍しくないが、一昔前なら嫉み僻みが酷かったらしい。

 さて、と重い腰を上げる。

 

「いていいと言ってくれてありがたいが、俺はもう行くよ。長居するのはさすがに申し訳ない」

「……違うのです」

 

 何が?

 

「ここは秘境。マスターの方もごく稀にいらっしゃいますが、周囲を純竜の巣が取り囲んでいるせいで全員もれなく一度は道中で死の危険に瀕したと聞きます」

「じゃあ俺はここから出られないのか?!」

「いえ、秘密の抜け道があるにはあるのですが……」

「教えられないのか」

「…………はい」

 

 外敵の来ない安全圏を捨てたくはないよな。里の保安のためなら仕方ない。だが口にしたということは、規則の方の抜け道もあるに違いない、というか頼むからあってくれ。

 

「ラフィル・ルティル様、この里の〈DIN〉支部局長さんで実質的な里の長でもあるマスターの方なんですが、彼女の許可が取れれば外への道が使えます」

「そのラフィルさんは今どこへ?」

「それが、りあるの都合でしばらく居なくて……。今日明日には帰ってくる予定なんですが」

「なるほど……じゃあそれまでお世話になろうかな」

 

 一日くらいなら、まだ良心も痛まないし、自制心も保つだろう。こんな美人さんとずっと一つ屋根の下、というのはちょっと危ない。最近は他の国、主にカルディナからの行商人や旅するマスターからの評判だが、「レジェンダリアは変態の国」なんて呼ばれているらしい。確かに【妖精女王】様は魅力的だが、特殊なマスターたちと同じように変態と括られるのは心外だ。名誉回復の為にも微力でも意識を変えなくては。

 

「外には出てもいいのか?」

「ええ。ですが森の深い場所までは行きませんよう。最近では何やらモンスターの動きも活発ですので、お気を付けて」

「わかった」

「あ、アタシもいいかしら?」

「あなたは」

「俺が注意払っておくから、ダメか?」

 

 サービスな。さっき褒めてくれたお礼だ。安い男と思われるかもしれないが、高慢な野郎と思われて敬遠されるよりよっぽどいい。

 姉の方も渋々ながら許可してくれたところで、とっとと出発しよう。散策を含めても日没までには戻りたい。

 

「よう、コルソーンの嬢ちゃんはデートかい?」

「羨ましいでしょう? 彼がアタシを森までエスコートしてくれるのよ」

「おいおい……」

 

 里を歩いていると、割と人とすれ違う。噂では見目麗しい天使ばかりって脚色されていたが、普通の村だな。下世話な中年がいて、ませた少女がいる。想像していた『天使の里』よりも俗っぽい。

 

「さっ、行きましょ!」

「分かってるって」

 

 にやける男性に手を振り、森へと入る。まだ浅いからな、出てくるのは精々【パシラビット】といった初心者向けモンスターの類くらいだ。自慢の槍を振り回せば、容易く切り抜けられる。正直なところ、モンスターを相手するよりも子供の前で変な恰好はできないというプレッシャーの方が、負担として大きい。

 

「強いのね」

「これでも上級職だしな」

 

 まだまだ余裕はある。亜竜クラスが出てき始めると危ないが、引き際は弁えてるつもりだ。少女一人の重荷なら、最悪純竜が相手でも抱えて逃げ切れるだろう。

 

 よほどの事がなければ大丈夫。そんな甘えや不確かな推定を、マスターたちは“フラグ”と呼ぶのだったか。そしてそれは、得てして回収されるものだったのを、完全に失念していたのを悔やむことになる。

 

「「「「「gigigigi」」」」」

「なんだこいつら? 虫……いや機械か」

 

 一体いつ境界線を超えたのか、カマキリや蝶を模した機械の群れが襲い掛かってくる。幸い強さ自体はそこまでのものでもなく、軸にクリティカルすれば一発だ。しかしドライフのダンジョンでも無いのに、野良の機械敵とは面妖な……。

 

「どうする、戻るか?」

「それは難しそうね」

 

 背後の固い声に振り向けば、既に結構な数に回り込まれていた。クソったれめ、装甲が迷彩だから見えにくい! だが姉のラズウェイから責任を持って妹を連れ出した以上、大怪我なぞさせるわけにはいかない。

 

「マジか……強行突破になりそうだ」

「手伝いはいる?」

 

 もちろん有効なアシストならありがたいが、お気持ち程度の言葉ならやめてくれ。変な期待を抱いちまう。ただでさえ後ろに回り込んでいる連中はさっきまでのカマキリ共なんかとは異なる、カブトムシみたいな重量級ばっかだ。中途半端な意識だと死ぬ可能性も──

 

「里の人以外には見せちゃいけないのだけど……。非常時だし、許してくれるわよね」

 

 バサリ。

 羽毛が何枚も重なった翼を羽ばたかしたら、きっとこんな音がするんだろうなという想像通りの音。そして、想像を超える光景。

 

 ああ、そういえばあそこは『天使の里』だったな。今さらすぎる確認だが、ようやくその意味を知る。そのまんまだ。

 

「《クリエイト・セイクリッドウェポン》」

 

 住人が、【天使】なのだ。

 庇っていた少女は背中から巨大な翼を生やし、頭上には光輪を戴いて。子供が絵本の中で思い描く天使が、光の剣を手にしてそこにいた。マスターの与太話かと思ってたが、本当に【天兵】があるのかもしれない。

 

「さ、帰りましょう。姉様に怒られないうちに」

「お、おう」

 

 笑顔の形は数分前と変わらない。神々しさが付与されたくらいだな。だが、俺の背に隠れていた時とは頼り甲斐が段違う。振るった光剣は俺が複数回貫いて倒していた機虫を一刀両断、四方の逃げ道を潰されても上へと飛んで包囲を突き破る。参ったな、これじゃあ形無しじゃないか。あの子一人で帰れそうだぞ?

 

「それにしても多いな……名前も分からないし、こいつら一体なんなんだ?」

「その辺りはラフィル様に調べてもらいましょう」

 

 そういや里長は〈DIN〉のマスターでもあるってラズウェイも言っていた。確かにあいつらの情報量なら、何かあるかもしれない。レジェンダリアの政争でも何やらこそこそ調べ回ってるみたいだし。まぁ俺みたいな木っ端には生涯無関係な世界だ。

 

 こういうのをマスターは“覚醒イベント”って呼ぶんだったか、コルソーンの真の実力が明らかになり、俺たち二人の間にも余裕が生まれる。

 

 そのまたの名を、油断。

 

 

「──ぅえ?」

 

 死闘からほど遠い、間抜けた声が聞こえた。それは俺の喉からか、はたまた腹部を蜂の毒針に貫かれた天使(コルソーン)の細い喉からか。

 

「うそ」

 

 何故予測できなかった! カマキリからカブトムシへの戦力の偏り。もうあっちは露骨に対策を立ててきてたってのに! であるなら次は隠密行動に特化して、確実に一発は致命傷を刻む敵が出てきたっておかしくはなかった。

 蜂の一刺しをきっかけに、機械虫が俺ではなくコルソーンへと殺到する。何度光剣が振るわれ、何体もの味方が倒れても、機械はその(がらくた)を乗り越えて前進を続行。

 

 カマキリが殺意に塗れた鎌を振り下ろす。カブトムシが味方を挽き潰しながら突進する。蜂が更に群れながら殲滅網の密度を高めていく。

 もう俺の側から、天使の姿は拝めない。

 

「《ストーム・スティンガー》ァァァ!!」

 

 邪魔だ邪魔だ邪魔だ! 強引に楔を打ち込むように、鉄壁の包囲網を突き抜ける。超音速の槍先に機虫が入れ食いに串刺されていくが止まらない。

 

「………あぁ」

 

 やっとコルソーンの下まで辿り着いたのは、ちょうど()()()()()()()()()()()()()()()時だった。ふと、無惨な姿を見なくてよかったなんて馬鹿な事を思った。いや馬鹿なのは俺か。注意しとくって姉に大見得切って、その結果がこれ。どんな顔して信頼してくれたラズウェイに会えばいいんだ。

 

「そもそも俺も帰れねえか」

 

 ははっ。我ながら酷いな、どれだけの重荷をあの姉に背負わせるんだ。妹を見殺しにした恨みの相手も既に死んだ? 俺ならこの世界に絶望するね。

 天使を殺めた機械虫は、勝手に死地へと飛び込んできた俺も逃がしてはくれないだろう。せめて遺体だけでも回収して持ち帰ってやりたいが無理……

 

「……ん?」

 

 待て何が引っかかった? 何か、とんでもない前提条件から間違っていたような背筋が凍る感覚。しかし答えを出そうと思考の海に沈む俺を見逃してくれるほど、機械は融通が利かなければ甘くもない。俺は直面した死に諦め、鎌は頸を刎ねようと閃いて。

 

「《ホーリー・スフィア》」

「コルソーンは死にましたか……」

 

 逆にカマキリの方が上空からの爆撃に爆ぜた。そして爆発の中でしゃらんしゃらんと鈴の音が軽やかに通る。白煙を掻き分けて降臨したのは妹と同じ翼を羽ばたかせる姉と、その腕に丁重に抱えられる若い貴婦人。

 

「誰だ?」

「私は〈DIN〉エンジェリック支部局長、ラフィル・ルティル。あなたは見ない顔ね?」

「ラフィル様、彼が〈アクシデント・サークル〉に巻き込まれた【疾風槍士】です」

「あら」

 

 この人がラフィル様か……。コルソーンたちの慕う長。ラズウェイもそうだが彼女にも、里の人たちには申し訳なさすぎて直視できない。

 

「それよりも先にこちらを片付けなくてはね? ラズウェイ。あなたが部隊を率いてこの虫を掃討しなさい」

「了解」

 

 天から次々と天使が降りてくる。なんで俺だけ助かっちまうかなぁ……。あの場で死なせてくれた方がずっと楽だった。これもコルソーンを死なせた罰か。……そういえば、()()()()()()

 

「私はやることがありますので」

 

 機械虫に食われた、なんてはずがない。風に飛ばされるほど粉砕されたわけでもない。彼女は、()()()()()()()

 超常のマスターと違って、ティアンが死ねば遺体は残る。【大死霊】のように人間を辞めていてもこれは同じだ。ってことはつまり、彼女は……

 

「上級職持ちとはこれまた上玉だこと」

 

 彼女が()()なのだとすれば、まさか里の人全員同じなのか? だとすればあそこには『一人』もいない……? いや、違う。

 

「ラフィルさん、あなただけが里で唯一の人げ」

「《マインド・ブレイク》」

 




散々ヤバい奴扱いされてきた洗脳貴婦人、降臨
他の局長達がグレーゾーン歩いてるのに対して、ベールの下で真っ黒な事やってるからヤバい。なお誰も止めないのは一応有能だし、バラすと〈DIN〉自体がイメージダウンするから。〈蜃気楼〉とちょっと似てる。

まぁ今回の事件は完璧なアウト。故に──
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