〈DIN〉局長のお仕事 作:Ringo
やると(きっと誰かに)喜ばれると聞いたんで
批判が少なかったので二回目を始めます
■□ ある〈UBM〉について
数千年前から今に至るまで残るモンスターの中に、【フレイムスピリット】と呼ばれる物がいる。外見は大体子供サイズの火の玉だが総じて好戦的な性格をしている上、火を食らって成長する特徴をもち、【紅蓮術士】たちからは大いに恐れられていた。
しかし反面、未成熟な個体は水に非常に弱く、水鉄砲で重傷、雨が降れば瀕死という軟弱さだった。
ところがある一体の【フレイムスピリット】だけは冷静だった。
『こんなところで燃え尽きて良いのか?』と。
果たしてそいつは燃え続ける決断をした。
無闇に相手を攻撃せず、それでもなお向かってくる敵にのみ対応をした。
度々起こる戦争の影で、文字通りの戦火を食らい続けた。その努力は実を結び、雨にも打ち勝つ熱量を手に入れ、やがて紆余曲折の果てに伝説級〈UBM〉にまで進化した。
ある時それは【龍帝】が参戦するほどの戦争に遭遇し、そして歓喜した。これでまた火が増える、と。
事実、戦争のおかげで更なる進化を遂げ、古代伝説級〈UBM〉にまで届いた。それは知り得ない事だったが、戦火がより苛烈になる後の“三強時代”まで生き抜けば神話級も夢ではなかっただろう。
しかしそれは叶わない。戦争を起こした張本人、【龍帝】紫龍人非によって発見されたがために、封印されることになった。
その〈UBM〉が【轟傑獅頭 マイエルン】。
何故討伐ではなく、封印されたのか?
封印した方が討伐するよりも
□ヘルマイネ 私営カジノ〈イコール・イコル〉
「……なんで今かなぁ」
「ぼやいても仕方ありません」
燻る煙から獅子に続いて姿を見せたのは、無傷の神父服の老人とスマートなボディの青い〈マジンギア〉。
「なんで爺さんの周りだけ被害ないの?」
「さあ?
テーブルは吹き飛び、ファイルは炭になっているのに老人だけは煤がついただけで無傷。これがスキルでもなく、ただの強運だというのだから恐ろしい。
窓ガラスも割れているのか、煙が晴れていく。
「もっと幸運なことにティアンの犠牲者はいないようですよ」
石の周りにいた2人組〈マスター〉が覆いとなったおかげで、被害が抑えられたらしい。意外にも高レベルだったのだろうか。光の粒子は散見するが、ティアンの無惨な手足や体は見つからない。
「ねえ、コイツをさっきの黄河マフィアのトコに放り込んできちゃ駄目?」
「民間人の被害を考えると許可できません。素直に町の外へ。南門が最も人が少ないはずです」
「融通利かないなぁ。ほら、付いてこい!」
『GUROOWOOOU!』
高らかに歌う〈マジンギア〉が超音速で窓から飛び出すと、猛々しく吼える獅子も天井を突き破る。
「大丈夫ですか!」
「キミは衛兵の詰め所に行って、避難誘導を頼みます。ワタシからの伝言ならば動くでしょう」
「はい!」
そう言っていつも首から下げているトランプの刺さった金の十字架を、身分証代わりにライモンドに渡す。
「さて。カノジョも〈超級〉なようですから容易くは死なないでしょうが、心配ですね……。ワタシ一人で何が変わるのか知りませんが、一応は向かいましょう」
青年が駆けていったのを見届け、一人呟くと大した武装も持たずにふらりと老人は店から去って行く。
□ヘルマイネ 南門外
ヘルマイネは広大な砂漠の中のオアシスのような立地である。逆に言えば、四方を砂漠に囲まれている。故に街から一歩出れば人影は格段に減る。それでも商人などが通ることも稀にはある。しかし南門の傍には【ドラグワーム】を筆頭に、比較的強いモンスターが闊歩するためまともな人間なら近づきたくはない場所だ。だからレプロブスはこの場所を指定した。
………割と重要な情報なのだが、時折知らないルーキーが【ワーム】に貪り食われる光景も見ることができる。
さて、そんな舞台でAR・I・CAと【マイエルン】は闘っていたのだが。
「ああもう相性が悪すぎ!」
予想外に苦戦していた。
〈超級〉と古代伝説級〈UBM〉。自力では〈超級〉の方が上回るはずだが、未だに活路を見出せずにいた。
彼女も理解しているとおり、理由は単純な相性の悪さ。AR・I・CAに【マイエルン】の攻撃は当たっていないが、【マイエルン】にもAR・I・CAの攻撃は
「こういう厄介な奴はマニゴルドあたりが相手すればいいのに!」
それは
だが、それだけならAR・I・CAも時間を掛ければ倒せるだろうが、【マイエルン】の持つスキルのせいでできない。
「本当にキリが無い!」
何発目かのライフルが火を噴く。弾丸は確実に【マイエルン】を捉え──
『GURURROOOOOOU!』
銃口を振り向いた体に、傷は微塵も見当たらない。
これこそが【轟傑獅頭 マイエルン】の真骨頂。本体が知覚しているかどうかに関わらず作動する、完璧なオートカウンターシステム。体に衝撃が加わると
向かってくる敵だけへの対応を極めたスキルであり、【龍帝】が封印を選んだのも納得だ。
そして何も防御だけのスキルではない。
『GURUWU』
攻撃の当たらない敵に業を煮やしたのか、その気高く波打つ
「あ、これヤバい……」
その瞳にかつてない範囲と規模の危機を視たAR・I・CAは即座に超音速で距離を取ろうとするが、無駄。
『GUROOOOOOOOOWU!』
轟ッ!!! と辺りが爆炎に包まれる。それが
が、結果は異なる。
〈ブルーオペラ〉は背後からの爆風に吹き飛ばされ、空を舞う。対して【マイエルン】にはさしたる痛痒も無かった。
「…………ハハッ、冗談。なんで
爆発の原因は【マイエルン】のスキルによる物。その名は《獅子粉塵》。僅かな体積から、火薬数十倍の爆発力を持つ粉末にするスキル。【マイエルン】の楯にして槍、正しく攻防一体。当然【マイエルン】自身も高い耐性を持っている。
だが《獅子粉塵》に追尾機能など備わっていない。今回が特殊例なのだ。
AR・I・CAが超音速で移動した為に空気は押し退けられ、AR・I・CAの〈マジンギア〉、〈ブルーオペラ〉が通った跡は瞬間的に真空となる。
問題なのは、この真空をいかにして埋めるか。
答えは
爆発の元は空気中に漂う粉塵。それが空気の流れによって〈ブルーオペラ〉の軌跡に沿って連鎖爆撃が発生する様は、あたかも追尾機能。
AR・I・CAが超音速で動かなければ追尾はされないだろうが、被爆地に入ってしまう。結局、いくら未来が見えていても回避のしようがない。避け続ける前提のAR・I・CAにとって【マイエルン】はとことん相性の悪い〈UBM〉だった。
『GArururu……GURUWU』
漸く敵にダメージを与えたことで調子に乗ったのか、再び《獅子粉塵》をばら撒く【マイエルン】。
次に起こるのはまたあの大爆発──
「《ホワイト・ランス》!」
──かと思われた。
「ちょ、何やってんの!」
慌てたAR・I・CAが街を見ると、外壁の上に何人かの人影がある。
「コイツがそっちに行っちゃうでしょ!」
そう、援護はありがたいのだが、街からの攻撃はよくなかった。せっかくAR・I・CAが気を逸らしていたのに水の泡だ。せめて砂漠に出てから撃って欲しかった。
『GURUGAAAAAAAAAA!』
ダメージはなくとも攻撃されたことは分かったのか、怒り狂った【マイエルン】は街目掛けて突進する。スピードこそないものの、所々体から発生する小爆発からも憤怒が窺える。
触れてはいけないモンスターをどうやって止めろと。
少なくともAR・I・CAには止められない。
だから、別の人間が止める。
「《
トランプの兵隊が、猛獣を取り押さえた。
□ 【遊神】R・レプロブス
「何をやっているのですか!」
「ああ、レプロブスさん。外で〈UBM〉と戦闘してる奴が居たんで援護したんすよ。そしたらいきなりこっちに向かってきて……」
久々に全力で走ったせいで呼吸も苦しいが、間に合ってよかった。まったく、文字通りの横槍なんて入ったらモンスターでも怒るに決まっているのに。
「まあ後にしましょう。このモンスターを何とかしなくては」
今は《絵札の騎士団》が取り押さえているが、ストレートではよくて純竜級、長くは持たない。
「門の外に出て、遠距離で仕留めましょう。それが最善手です」
「わ、わかった」
「じゃあ俺からいこう」
返事をした男が外壁から飛び降りる──
『GOWU』
──と、地面が盛大に爆ぜた。
当然降りた男はデスペナルティ。砂に混じって緋色の粉が見える、おそらくはあれを導火線代わりに点火したのか。
「……失敗しましたねぇ。〈UBM〉も個体によって賢さが違うのですか」
自分に攻撃した相手を覚えていたのだろう。獅子らしくない狡猾さだが、こんなことならスキルでヘイト値を下げておいた方が良かったかもしれない。【遊神】になる前に一度〈UBM〉を見たことがあったが、ここまで悪賢くはなかった。完全に誤算だ。残る最善手は前衛をAR・I・CAに任せて、ワタシたちは後衛からサポートに徹することか。爆発的な火力の上昇が見込めない以上ワタシの必殺スキルは無意味か。むしろワタシが脱落するデメリットが大きい。ならばそれ以外で───
「おいジイさん! なんでそんなに落ち着いてるんだよ少しは慌てろよ!」
降りた男のパーティーメンバーらしき別の男から胸倉を掴まれる。どうやらパニックに陥ったらしく、気が動転している。
「アナタこそ落ち着いてください」
「ふざけんな!こっちは相方が死んだんだ。もうキレそうなん──」
『GOWUN』
一際轟いた爆発に唸り声を添えて、突然足場だった外壁が崩落した。ワタシは体を強かに打っただけで済んだが、カレは駄目だ。瓦礫の下敷きになっている。これは本当にAR・I・CAに頼るしかない。
…………そう言えば、何故足場が崩落したのだろう?余波程度なら外壁は耐えてくれるだろうし、まさか…。
『GUROU』
振り向けばそこにいた。
AR・I・CAは一体どうしたのでしょう? ふと疑問を抱くと、機械的に拡声された声が聞こえる。
『悪いねー。さっきの爆発で機体がイカれちゃった。そっちでどうにかしてくれない?』
どうにかする? このワタシが? 無理だ。
『あたしは外様だけどカルディナにはそこそこ詳しいよ。金に溺れる奴、欲深い奴、悪巧みしかしない奴、いろいろ見てきた。爺さんはどれでもないでしょ?』
だからどうした。ワタシが無力なのは変わらない。
『ハッ、無力? 謙遜も度を超してる。能ある鷹が爪を隠しすぎて食い込んでない? そんなんじゃ痛いでしょ。もう出しちゃいなよ、人助けのためにさ』
……まだ、ワタシにも助けられるだろうか?
『どうかな、あたしの
はぁ…………。
「若者に背中を押されるとは、老いましたかね」
いい加減ワタシも覚悟を決めよう。
「先のカレはキレていたそうですが本音を漏らすと、ワタシだってとうの昔から………ブチ切れていましたよ」
店を爆破されたとき、ティアンが死んでいたら。
多分ワタシは立ち直れないだろう。
救いたいなら救えばいい、そう言ったのはああ、ハマチだったか。あの言葉にワタシは救われた。だからワタシもカレが好きなこの街に恩を返───いや、違うな。
ワタシも同じようにこの街が、
なら宣言しよう。
「今この時よりワタシは、神の御言葉を語る
嗚呼、ワタシは偽善者かもしれない。嘘吐きと呼ばれても構うまい。ワタシに偉大なる主ほどの器量はない。
それでも、矮小なる身を【神】と偽ってでも、ワタシに救わないという選択肢は存在しない。ワタシも
「覚悟しろ、勇猛にして邪知持つケダモノよ。ワタシが今から
『GOROOOOOOOOOOWUOOOOO!!』
特典武具? いらない。
名誉? いらない。
欲しいのは誰もを救える力だけ。
さあR・レプロブス。主を投げ捨ててまで戴いたその座から、生きる意地を見せろ。
ワタシは非戦闘職、正面から戦ってワタシの力では勝てる訳も無い。考え方を変えよう。膨大な体力と堅固な防御が抜けないなら、搦め手か。《大神賽》なら状態異常を掛けられるかもしれないが、範囲が広すぎて街に被害が出かねない、却下。原点に戻って《絵札の騎士団》を【ゴルゴタ】で強化して──いや、ダメージが徹るのに最低限ストレート以上なんて、運以前の問題に揃えるカードが足りなくなる。そもそも相手がカウンター特化のこのパターンではあまり良くない。却下。
………カウンター?待て、あの《粉塵》は何を原料にしている?ワタシの力
何か繋がりそうだが、まだ足りない。【遊神】だけに固執しては駄目か。
「見えましたね」
限りなく細い勝ち筋だが、これが一番可能性が高い。
「《
『GUROWO?!』
傘を開くように幾重にも重なるルーレット盤が【マイエルン】を包み込む。
さて、一世一代の大勝負に賭けましょう。ベットは互いの命。申し分ないデスゲーム。
包囲を爆破して逃げ出そうとしたのか、ドンッと腹に響く和太鼓のような爆発音を号砲に、一斉にルーレット盤が回り始める。
ワタシが【マイエルン】に勝つにはこれしかない。ただでさえ地力で負けているのに、その上相手はカウンターまで使える。勝つ方法なんて、『
あのルーレット盤に当たったダメージと衝撃は、ルーレットの結果によって振り分けられる。黒なら敵に、赤ならワタシに。本来のルールとは異なるが、許されるのはゲームのルールすら歪める【遊神】こそだろう。
そして【マイエルン】は衝撃が加わると、
「アナタも止められないのでしょう? そのカウンター機能は」
始まってしまえば【マイエルン】にはどうしようもない。カウンターがカウンターを呼び、それをまたカウンターするサイクル。ワタシのMPが底をつくまで止まらない。そして、爆発の元は【マイエルン】自身の体積から作られた《粉塵》。体積が消失してもなお生存できるモンスター、いや生命などいるのですかね?
だが、ワタシは一度でも負ければ死亡。アチラは何万回耐えるだろうか。
しかしそれがなんだ。必要なら何万回だろうが何億回だろうが勝ってみせよう。ワタシは【遊神】なのだから。
「やはり消費が早いですねぇ」
何分経っただろうか。いくらルーレットに勝っていても
だから、【遊神】
「《トランスファーラック》」
5万以上あるLUCを徐々にMPに
もちろん弊害もある。LUCを移している際は、減った値で計算されてしまう。大抵の〈マスター〉なら問題ないが、【遊神】はLUCあってこそのジョブ。勝率は低下するだろう。
それでも引き下がる訳にはいかない。
ワタシは救わなければならないから。
「《トランスファーラック》《トランスファーラック》《トランスファーラック》《トラン───」
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒………
何度同じ結果を見ただろうか。何回回しただろうか。後どれだけ繰りかえせば良いのだろうか。
確率の収束? 乱数分布? そんな細かい理論はどうでもいい。ただ、終わるまで勝ち続けられればそれで良い。
気が付けばLUCはもう1000を切っていた。もうリアルラックで凌ぎきるしかない。ワタシが【神】であると言ったのに、無性に祈りたかった。縋りたかった。本来十字架があったはずの神父服だけがしわくちゃになっていく。
「ワタシも、弱い人間ですね……」
自分を嘲笑った拍子に気を緩めてしまったのか。
一つ、鮮烈な赤色がやたら目に付いた。
「しまっ──」
音も無く、とてつもない衝撃に体を投げ出され、ワタシの中でパリンと何かが砕けた。
「…………………無謀な賭けでしたか」
『Gorururu』
ワタシがルーレット盤を生成できなくなったせいで囚われていた【マイエルン】が姿を現す。チワワほどのサイズにまでなっていたが、倒せなかったのだからワタシの負けだ。
あくまで
「後は」
『オッケー。もう休んでな。爺さんも疲れたでしょ』
即席の修理が終わったのか、変わらずに超音速で〈ブルーオペラ〉が駆ける。
『GUROOOOOOOOOWUUUUUUUUU!!』
それに怯え、決死の表情で《粉塵》を撒き散らす【マイエルン】を前に、AR・I・CAは
『最後の自爆スイッチを押してくれてありがとう! それじゃあ死んでね!』
「何を言っているかわからない」。獣の顔なのに、そう聞こえた気がした。だがカノジョの発言はこれ以上無いほど正しい。
『最初っから不思議だったんだ。自分を巻き込んで爆発をしてるとき、どうやって防いでるのかなってさ。やっとタネが分かったんだ。あんた、
炎熱に対しては耐性で防げるだろう。だが衝撃は? まさか物理攻撃が無効な訳もあるまい。それならカウンターなんて意味が無い。その分のリソースを攻撃手段やステータスに回した方が有効だ。
なら何故【マイエルン】だけはあの爆発の中で無事だったか。カノジョの言うとおり、自らの攻撃すらカウンターしていたのだ。おそらく《粉塵》は2種あり、一つは攻撃用の威力の高い拡散型、もう一つは防御用の指向性を持った収束型。
『ここでクーイズ! あたしの手元に〈叡智の三角〉謹製のお手軽手榴弾があります!さて、これを投げるとどうなるでしょうか?』
アンサー、《粉塵》に誘爆する。
【マイエルン】が意思でカウンターを止められないのはルーレット盤が証明した。
なら、死力を尽くして
『GURU………GOROWOOOOOOOOOOO!』
考えが至ったらしき【マイエルン】が取り乱して駆けるが、自分で張った致命の罠から抜け出せない。
『おいおいライオンが逃げるなんてみっともないぜ? あたしが華々しく散らせてあげるから感謝しろよ』
そーれっ、と軽い掛け声で手榴弾が投げられる。
初めは閃光だった。
それが膨れ上がりやがて────炎が、爆裂する。
轟ッッッ!!!! 爆風は留まる事を知らず、遂に逃げ遅れた【マイエルン】をも呑み込む。
そして。
『GOW──────』
パンッと微かに弾ける音をワタシたちの鼓膜に残し、【マイエルン】の残り全体積は呆気なく消失した。
【【轟傑獅頭 マイエルン】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【R・レプロブス】がMVPに選出されました】
【【R・レプロブス】にMVP特典【獅轟外套 マイエルン】を贈与します】
おや。トドメを刺したカノジョではなく、ワタシにMVPが回ってくるとは。
「足掻いてみるものですねぇ……」
足元の砕けた【救命のブローチ】を摘まみあげる。コレが無ければ吹き飛ばされて死んでいた。最近は一度たりとも砕けた事は無かったのに、余程運が悪くなっていたのか。
『お、爺さん生きてたんだ。あたしにアナウンスが来ないから予想はしてたけど。で、特典武具はどんな感じ?』
先ほどアナウンスがあったアレのことか。贈与された暖かい色合いのコートを羽織る。毛触りは少し固いが、ゴワゴワしている印象を受けるほどではない。
「性能は悪くないでしょうが、使いませんね」
『ええーもったいない……』
「そもそもワタシはあまり戦いません。今回がおかしいんです。袖元のファーもカードを持つ時に邪魔ですし」
『古代伝説級〈UBM〉倒しといてよく言うねー。あ、誰か来る』
ザクザクと砂を踏み分け接近してきたのは。
「お怪我はないですか!」
「……キミでしたか」
何人かの〈マスター〉と衛兵を連れてきたライモンド君だった。もう少し早ければワタシがこんな無茶をしなくて済んだのに、はぁ……。
「心配しなくともワタシは無事ですよ」
『爺さんが〈UBM〉倒しちゃったしね』
「流石です先生!」
キラキラした瞳で見つめられても、本当に運が良かったとしか言えない。ある意味実力とも呼べなくはないのかもしれないが、呼んでしまうのは戦闘職の人々への冒涜に思える。
「これもお返ししますね」
手渡される金の十字架は、もはやどこか懐かしい。そして無償にありがたかった。我らが崇める天上の主よ、やはり私はまだあなたの所へは届かないようです。けれどワタシにも救える物がありました。
どうか今暫く、ワタシにアナタのご加護を。
《絵札の騎士団》
【遊神】で作られたスキル。トランプを媒介に、MPを消費して兵隊を呼び出す。一度に五枚を引き抜き、出来たポーカーの役に応じて強くなる。ストレートでは大体純竜クラス。
《紅黒大回転》
上同様【遊神】で作られたスキル。ルーレット盤を召喚し、当たったダメージと衝撃を黒なら敵に、赤なら自分に与える。なお、出た数字が大きいほど倍率向上。召喚するのはもちろん、維持にもMPを消費するので長くは続かない。
《トランスファーラック》
【司教】等と同じ教会系のジョブ、【信奉者】のスキル。LUCを他のステータスに移し替える。移している間のLUCは減算されたまま。
それでは
老人に雑魚はいない(作者の勝手な意見)