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では本編始まります!
亮輔に作曲を頼んでから数日、穂乃果は走繁く真姫の元へ通っていた。昼休み、放課後、できるだけ時間を作り、音楽室に足を運んだ。
そして今日も、穂乃果は真姫の元へ来ている。
「はぁ。また今日も来たの?言ったでしょ?私は忙しいの、曲を作ってる暇なんてないの」
「そこをなんとか!!私達には真姫ちゃんの力が必要なの!!ね、お願い!!」
「いやよ。お断りします」
そう言って穂乃果を視界から退け、鍵盤に手を置き、旋律を奏で始める。
もはや恒例とも言えるような穂乃果と真姫のやり取り。
鬱陶しくもあるが、そこに真姫はある種心地良さのようなものも感じていた。
元来、友達の少ない真姫は自然と他者との関わりが薄くなっている。
別に、話したくない訳ではないし、友達だって欲しい。
だが、真姫の素直になれない性分も相まってか人付き合いが上手ではないのだ。
本音を言えば、穂乃果ともっと話したいし、曲だって作ってあげたいらしいのだが、そこは真姫ちゃんクオリティのツンデレの為、素直に言えないらしい。
そうこうしているうちに真姫ちゃん帰宅の準備が終わってしまった。
「それじゃあ私は帰るから、ちゃんと音楽室閉めといてよね」
「あ、真姫ちゃん!まってよー!ってもう行っちゃった」
そそくさとスクールバッグを肩に担いで音楽室を出てしまった。
また今日も残されてしまった穂乃果。
「はぁぁ〜また今日もだめだったよ〜でも真姫ちゃん忙しいならなんでピアノ辞めないんだろう」
単純な疑問を抱く。作曲は時間がかかってしまうので断られるのはまだわかる。
でも、忙しいならピアノは弾けないはずだ。否、弾く時間がないはず。
よっぽど無理くり時間を作らない限りは。
自らを忙しいと表現する真姫は、どうにかしてまでピアノを弾く時間を捻出している。
どうしてなのだろう?
と穂乃果は思ったが、当の真姫本人は既に居ないため、頭を切り替え、音楽室を後にした。
音楽室からの帰り道、真姫は少し苛立っていた。
無論、穂乃果の事もあるが、素直になれない自分に対しての方が割合が大きい。
「どうして、素直になれないんだろ…はぁ家帰って勉強勉強。私にはやらなくちゃ行けないことがあるんだから、曲なんて作ってる暇なんてないわ」
何処か自分に言い聞かせるように発した言葉は己のみに刺さり、周囲には届かない。
素直になりきれないのはどうやら周りだけでなく、自分にもらしい。
踏み出そう、踏み出そう。だが、1歩進み切れない。
まだ、壁は厚そうだ、
真姫はまた今日も退屈な家に帰る。
意識は既に、勉強の事に切り替わっていて周りには注意が向いていない。
真姫は気づかない。落し物をしていることに。
「あれ、なんか落ちてる。生徒、手帳…?誰のだろう?あっ、これって…」
真姫の落とした生徒手帳を薄緑の少女が手に取る。
手帳を見て驚く少女。
「これ、届けた方がいい、よね?住所は…あ、載ってた」
その落とし物が、真姫の、また、少女の運命の歯車を動かす事に。
「ここに行けば西木野さんに渡せる」
気づかない。
まだ、物語は動かない。
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「こ、ここが西木野さんのお家…おっきいなぁ」
時は既に夕刻。市街地からそう遠くないとある豪邸の前に少女は立っていた。
豪邸の表札にはオシャレなクラシック朝で〝Nishikino〟と書かれており、その建物が如何な物かをすでに物語っている。
その大きさ、漂う雰囲気に一瞬呑まれた少女はインターホンを押すことを躊躇うが、意を決してインターホンを押す。
ピン、ポーン。と少女の決意とは裏腹に間延びした音が響く。
『はい、どちら様でしょうか?』
声からして既に気品さ溢れる声がインターホン越しに聴こえてくる。
「あ、あの!西木野さんと同じ音ノ木坂学院の1年の小泉花陽って言います!西木野さんの生徒手帳が落ちていたので届けに来ましたっ!」
思わず声が上ずってしまったが、なんとか立て直し要件を告げる。
『そうだったのね、今開けるから、上がっていって』
声の主はそう言ってインターホンを切ると、長い玄関を開けた。
小泉花陽と名乗った少女は、あっけに取られながらも、あれよあれよと、されるがままに遂に家に足を踏み入れた。
「わざわざありがとうね〜はい、これ紅茶ね。熱いから気をつけてね〜」
「あ、お構いなく、だ、大丈夫ですっ」
「あらあら、遠慮しちゃって〜いいのよせっかく真姫ちゃんの生徒手帳届けに来てくれたんだもの、真姫ちゃん帰ってくるまでゆっくりしていって」
そう言って紅茶を出し終えると、台所に戻っていく真姫ちゃんママ。
子が子なら親も親で、真姫の綺麗な赤髪はきっと母親譲りなのだろう。
スラリとした体型に、母としての年齢を感じさせないほどの美貌が赤髪を一際目立たせている。
「それで、花陽ちゃんは真姫ちゃんのお友達なの?」
「い、いえ!とんでもない!西木野さんは頭も良くて、歌もピアノも上手で、高嶺の花みたいな感じ…です…」
最後の方は虫のような消えそうな声で言葉を紡ぐ。
「そう、私はてっきり、真姫ちゃんがお友達を連れてきたのかと思ってびっくりしちゃったわ!真姫ちゃん、小さい頃から勉強勉強ばっかりで、お友達なんて1人も連れこなかったから…」
「勉強、ですか?」
「そう。家は街でも大きな病院を経営しててね、一応真姫ちゃんが跡取りって事になってるの。それで、昔からお医者さんになるって言って勉強してるのよ」
「お、お医者さんですか…なんか大変ですね…」
「勿論、跡を継いでくれたら私達も嬉しいのだけどね…でも私は真姫ちゃんが好きなことをさせてあげたいのよ…」
真姫ちゃんママはそう言って顔に僅かな影を落とす。
自分の娘が跡を継いでくれるのは大変嬉しいことだが、自分の娘だ。
やりたい事を押し殺させてまで、継いでは欲しくないのだろう。
それに、他者との関わりが全くと言っていいほどない真姫に対して引け目を感じている様子だった。
「好きなこと…ピアノ、ですか?」
「そう…ピアノよ。あの子昔からピアノを弾くのが大好きなのよ。私はね、あの子に…」
「ただいま〜ママ〜誰か来てるの??」
真姫ちゃんママの話を遮り、真姫が帰ってくる。
ガチャっとリビングのドアを開けると、ソファに座って紅茶を飲む花陽と目が合った。
「貴方、なんでここに…!」
本来なら交じわうハズのない2つのレールが今交差する。
「私は西木野さんの生徒手帳を届けに来ただけだよ」
「生徒手帳?あれ?確かにない…!」
「あら真姫ちゃんおかえりなさい。ちゃんと花陽ちゃんにお礼言うのよ?お友達でしょ?」
「ママ!?私は友達だなんて一言も、」
「違うの?」
「そ、そんな事、って、痛ったぁーーい!!」
同様する真姫はテーブルの角に足をぶつけてしまい堪らず苦悶の声を上げる。
その姿を見て花陽はクスッと笑った。
「ふふっ、西木野さんて面白かったんだね。」
「わ、笑わないで!」
「ふふっ、ごめんね。でも西木野さん案外話しやすそうで安心した」
普段の学校生活では考えられない真姫の姿に思わず笑が零れる。
これがホントの西木野さんなんだ。
「ねぇ、真姫ちゃん。本当はやりたいんでしょ?ピアノ」
「ママ!?何言って…」
「隠さなくても分かるわ。だって真姫ちゃんのママですもの。いいのよ、たまにはわがまま言っても。ずっと我慢して勉強してたもの。それに、真姫ちゃんがやりたい事を我慢して病院を継いでも、ママ嬉しくないわ」
「ママ…」
思いもよらない母の言葉に固まる真姫。
それを微笑みながら見守る花陽。
「だから、やりたい事やってもいいのよ。勉強なんて学校でも出来るし、大学行ってからでも遅くないわ。だから、我慢しなくてもいいのよ?」
そう言うと、真姫は柔らかい笑みを浮かべ母に向き直る。
「ママ、ありがと…」
その顔に迷いはもう無いようだった。
「あ、もうこんな時間!あの、紅茶ありがとうございました!西木野さん〝また明日〟ね!」
時間がどんどん夜の時間になっていく為花陽は真姫ちゃんママにお礼をいい、急いで玄関に向かう。
ふと後ろから声を投げかけられる。
「花陽ちゃんまた、おいでね」
真姫ちゃんママが優しく声をかける。
その声に花陽は
「はい!また来ます!お邪魔しましたっ!」
笑顔で応える。
その日の深夜。
家中の電気が落ちている中、一部屋だけ電気が付いていた。
一心不乱に聴こえるベースやギター、ドラムの楽器音。
真剣な顔をした亮輔何やら唸っている。
「だぁぁぁぁ!!こうでもねぇ!!あとちょっと、なんか足りねぇ!!」
亮輔は海未に依頼された作曲に取り掛かっていた。
既に7割方出来上がっていて、後はギターのリズムを嵌めれば完成という所まで来ていた。
「あぁぁぁ時間そんなにねぇっつーのに!!これじゃあ明日になっちまうぞ!!!!ん??明日??あっ!!!!!」
独りでに呟いた自らの言葉に何かを感じ取る。
「そうか!!!なるほど!!!間に合いそうだ!!!!」
なにかに閃いた亮輔は、置いていたギターを手に取り再び弾き始める。
「こりゃあ、いい曲作れそうだぜ!!!」
ニヤリと笑いながらギターを弾いていく。
その音色が形を作る曲は確かに明日を向いていた。
こんばんは、くれないです!
読んでいただきありがとうございますっ৲( ˃੭̴˂)৴
いかがでしたでしょうか???
真姫ちゃん、そして花陽ちゃん回でした。
最後ちょろっと匂わせた曲、みなさんおわかりですよね?
ヒントは『明日』です!
引き続き、感想、評価等お待ちしております!!
これからも完結に向けて精一杯頑張らせていただきますので、応援よろしくです、