旧ロウリア王国領飛行場
飛行場といっても翼竜が飛べる程度の荒地だが、そこに皇国に向かう使節団が集まっていた。
「まだあったんだ・・」
ティルは目の前にある巨大な物体、
飛行船を見ての一言だった。
そこにあったのはグラーフツェッペリン号、聞くところによればこの飛行を最後に解体されるそうで、最後の国への奉仕というわけだ。
使節団を乗せたグラーフツェペリン号は悠々とパーパルディア皇国に向かう。
◇◆◇◆◇
パーパルディア皇国はドイツ使節団が空からやって来るということを聞き、
着陸場所を皇都陸軍基地に指定した、
軍事力の差を目の前で見せてやろうという魂胆なのだろう。
竜騎士達も皆、「外交官がワイバーンに乗って来るのか、なんて現場主義な国なんだ(笑)」と思っていたに違いない。
そしてワイバーンロード三騎が、お出迎えと言う名の圧力をかける為にドイツが来るという方向で待っていた。
「ドイツの使節団はまだですかね?」
「さぁな、もしかしたら飛竜が力尽きて海に落ちたかもしれんぞ」
笑いながら飛んでいると、遠くから何かが飛んでくるのが見えた。
「・・・隊長、あれじゃないですか?」
「・・・なんだあれは・・」
謎の飛行物体は徐々にでかくなっていく、どうやら飛竜よりもかなり速度は遅いようだ(大凡100キロ前後)
しかしサイズが凄まじい、ざっと見て250メートルはあるだろう。
まさに空飛ぶ鯨、圧巻の一言に尽きる。
その飛行物体の後ろには、ドイツの国旗が描いてあった。
「これがドイツの物だというのかぁ?!!?」
あまりの大きさに竜騎士の隊長は度肝を抜かれた。
◇◆◇◆◇◆
またも皇都エストシラントは、大混乱に陥っていた、なにせ見たこともない巨大な物体が空から迫ってきているのだから。
それこそ巨大な船がやってきたとかのレベルとは違う、まさに街はこの世の終わりの様な騒ぎっぷりであった。
そしてその様子はレミールの屋敷からもバッチリ見えていた。
「・・なんなんだ、アレは・・・」
てっきりワイバーン数騎でくるものと思っていた為、レミールは完全に肝を潰した。
勿論レミールは飛行船を知っていた、
神聖ミリシアル帝国やムーが保有しているからだ、しかしその形は黎明期のソレであり日本人から見たら鉛筆の様に思えるだろう。
その二カ国を余裕で上回る巨大な飛行船は陸軍基地へ着陸した。
◇◆◇◆◇◆
・・・ピピピッ・・・ピピピッ・・・
そんな時、レミールのブレスレットが鳴った為、近くの魔信を使い連絡を取る。
「レ、レミールだ、どうした?」
「・・レミール様、ドイツ使節団が先程到着した様です・・」
(・・・ありえない・・)
この世とかけ離れた様な乗り物でやってきた事に驚きを隠せないレミールは、
若干震える足取りで馬車に乗り込み陸軍基地へと向かう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
使節団が飛行場で待っていると、馬車が数台やって来た。
「・・やぁ、ドイツ使節団の諸君 よく来たな」
そう言いながらレミールが、馬車から出て来た。
その後使節団は馬車に乗せられ、皇都の様々な場所に連れていかれた。
◇◆◇◆◇
その日の夜 指定されたホテルにて
「どうでしょう、パーパルディアという国は。」
「まぁ、外見は悪くないですな。
しかしレミールという女のプライドがやたらと高いな。」
「私もそう思いました、しかし最初に出迎えた時に少しだけ飛行船を見て怯んでました、うまくいけば・・・」
「そう、うまく飛行船の中に招いて[アレ]を見てもらわなければ。
ドイツとの国力差を知ってもらわないと話にならん。」
使節団の話は続く。
◆◇◆◇◆
「なに?私がこれに乗れと?」
レミールは飛行船を見ながら驚きの声を上げる。
「何故だ?」
「レミール様は前回我々の資料を疑っておりましたよね、ですので改めて持ってきた資料をお見せしようと思っているのです。」
「ほぉ・・・今度はしっかり持ってきたんだな、しかし何故わざわざ中に入れようとする?ここに持って来れば良いではないか?」
「それですと、こちら側が都合の良い資料だけ持ってきたと捉えられかねないのでありのままの情報を見ていただきたいのです。」
「・・・・」
エルトは不安げな表情でこちらを見てくる。
「ふん、良いだろう 案内しろ」
そう言い、レミールは飛行船へ乗船した。
◆◇◆◇◆◇
そしてレミールはドイツが用意したフィルムを見た。
そこには写真と同じベルリンの街、
そしてアウトバーン、he111の生産工場からのロウリア王国へ爆撃をしている時の映像を挟んだ映像を見せた。
「・・・・」
その間レミールは黙り込んでいる。
その間も映写機はムーとの会談の様子を写し、ムーの飛行機よりも洗練されたデザインの飛行機、ムーよりも巨大な戦艦の映像が写される。
果ては第一次世界大戦の塹壕戦、ドイツ以外の旧世界の各国の大都市がこれでもかというほどに写された。
◇◆◇◆◇◆
自分が想像していたよりもドイツの国力はでかい、もしかしたらムー以上の国力を持っているかもしれない。
レミールは信じたくなかった、文明圏外に自国よりも進んだ文明を持っている国が存在する事を、そして恐れたこの国が皇国に向けて牙を剥くことを。
レミールは自分の手が震えている事に気付きテーブルの下にそっと隠す。
「・・・・、我が国についての紹介はこれで終了となります。 レミール殿如何でしたでしょうか?」
ティルは笑みを崩さずにレミールの方を見る。
当のレミールは顔が幾らか青ざめ、直ぐに言葉が出てこないようであったが、
なんとか喉から声を絞り出す。
「成る程・・・わかった、アルタラスとフェンの軍祭の事は賠償しよう、国交の件も皇帝陛下に伝えておこう・・」
◆◇◆◇◆
使節団は予想通りの答えを引き出せた様で、皆笑みを浮かべていた。
隣で様子を見ていたエルトも、何とかレミールがドイツについて理解してくれた様で胸をなでおろしていた。
レミール本人はというと、皇帝陛下にどの様にこの事を伝えれば良いか悩んでいた・・・
前回はあれだけバカだったレミールが、今回はやたらと聡明になっている不思議。
魔王編も書かないといけないし。