神聖ミリシアル帝国
帝都ルーンポリス
アルビオン城
皇帝ミリシアル8世の提案に、ベルーノは驚きの声を上げる。
「?!!、帝国の技術の一部をパーパルディアに提示するというのでございますか?!」
「うむ、現在パーパルディアはドイツの技術を吸収して軍備を増強しておる。このままではいずれパーパルディアはドイツの衛星国の様になってしまう事だろう。それだけは避けたい。そこで予は旧式のマーキュリー級魔導戦艦・グラファイト魔導巡洋艦の輸出及び技術提供を行いたいと思っている。」
「マーキュリー級ですか・・、確かに老朽化しておりますし問題ありませんが、それでもムーのラ・カサミを上回る性能ですので下手をすれば列強の順位が
変わってしまう恐れが・・・」
「しかし今のうちに手を打たなければ後々厄介な事になる。」
「・・分かりました。では段階的に技術を提示する事にいたします。」
神聖ミリシアル帝国はパーパルディア皇国に、魔導戦艦に魔導巡洋艦、完全な状態のイクシオン対空魔光砲に基本的な魔導エンジンの設計図等の基礎的な技術を提示する事を決定した。
◆◇◆◇◆◇
ムー大陸出兵前
パーパルディア皇国
デュロ工廠
そこでは、バルチスタ海戦によって実用性を証明した対空ガトリングの量産が始まっており、他には試作型の魔導エンジンを積んだトラックが試験を行っている。
そんなデュロのとある研究棟で数人の男達が会議を行なっていた。
「第5回 新型鉄兜 開発会議」
現在の皇国軍の装備は、18世紀のイギリスの戦列歩兵を思わせる三角帽子とコートである。
この様な装備では砲弾の破片が頭に当たっただけで御陀仏となってしまう。
当初はドイツ軍のヘルメットを使用する事を考えていたのだが、皇国のプライドからそれは見送られてしまった。
ならば1から作るしかないという事で、
兜をイメージしたヘルメットの作成に取り掛かることとなった。
そして試行錯誤の結果、ブロディヘルメットに酷似した皿型のヘルメットを採用する事となった。
◆◇◆◇◆◇
時はムー国出兵へと戻る。
皇都エストシラント
パラディス城
「壮観だな」
「そうですな」
皇帝ルディアスは、ルパーサと共にエストシラント沖に集結するムー外征艦隊を眺める。
艦隊の中には戦列艦の姿は無く、兵を輸送する客船の周りには外輪式の蒸気フリゲート艦に、魔導エンジンの外輪フリゲート艦、ドイツ製の装甲艦、グラファイト魔導巡洋艦、そしてミリシアルから輸入したマーキュリー型戦艦を旗艦にしたムー外征艦隊がエストシラント沖にいた。
「これ程の大戦力ならば、あのグラ・バルカスなど敵ではないだろう。我が皇国軍が敵を蹴散らしムーの救世主となるのだ。」
ルディアスはどうやらムーを救い、列強順位を出し抜く気でいるらしい。
「グラ・バルカスとの戦いで世界は変わる、いずれパーパルディアはムー、ミリシアルさえも超えてこの世界に平和と秩序をもたらす存在となるだろう。」
「・・・陛下」
「勿論、ドイツさえも超えてな」
エストシラント港は臣民達が割れんばかりの拍手喝采で見送っており、花吹雪が舞っていた。
◆◇◆◇◆
場所は変わってデュロ工廠。
ここで魔導エンジンの他にも魔導蒸気エンジンを使っての火砲牽引車の製作をしていた。
目指すは完全国産の名の下に、ボイラーからネジに至るまで全て国産で作り上げた。
研究員がボイラーにある魔法陣に並べられた魔石に火炎魔法を唱え、火は勢い良く燃え上がる。
「よし、火炎魔法の発動を確認。
しばらくしたらボイラーが動くだろ。」
待つ事数分。
ボイラーから煙が上がり、ギアを入れるとゆっくりとだが走り出した。
「おお、成功した。」
「後は魔導砲をしっかり引っ張れるかだな」
他の研究員が話している間も、操縦係は四苦八苦しながら動かしていた。
「何だこれ、舵の利きがクソ悪いぞ。」
「そろそろ曲がらないと壁にぶつかるぞ」
「わかってるよ」
「おい!危なくないか?ブレーキをかけろ!」
「かけてるのにブレーキの力が全然ない!」
既に壁は目と鼻の先にある。
「危ない!逃げろ!」
操縦係の必死の操縦も虚しく、牽引車は大通りの壁に激突してしまった。
幸いなのは速度が4キロしか出ておらず、死傷者がいなかったと言うことか。
翌日、ドイツの新聞の朝刊にこの事故が一面を飾っていた。
見出しは
「人は過ちを繰り返す」