世界会議①
そして一年が経った。
ドイツはミリシアル帝と国交を結び
イルネティアは滅び
ついにこの日を迎えた
中央暦1642年4月22日
◇◆◇◆◇
「第1文明圏トルキア王国軍、到着しました!戦列艦7、使節船1、計8隻!」
『了解、第1文明圏エリアへ誘導せよ』
港に着いた船を、港湾作業員が適切に誘導していく。
「トルキア王国・・アガルタ法国・・
ここら辺は代わり映えせんな・・・」
この港の責任者であるブロントは、管理局の窓から港湾を眺めながら呟く。
「第3文明圏 列強 パーパルディア皇国軍が到着しました! 戦艦3、戦列艦5!」
列強であるパーパルディア皇国が近くの文明圏外であるドイツの言いなり状態であるのは公然の秘密であった。
そんな話題の渦中である皇国の戦艦を見てブロントは驚いた。
なんとムーに匹敵する戦艦があるではないか!。
「やっとこの戦艦パールネウスの航海も板についてきたな。」
「はい、全く慣れぬ仕様でしたが他2隻の戦艦の航海も問題ないレベルになりました。」
艦橋ではレミールとエルトが話していた。
聖都の名を冠したこの艦は、ドイツ海軍が保有していたが旧式な為、練習艦に回された後に皇国に売り出されたシュレスヴィヒ・ホルシュタインだった。
その他はドイツが製造した前弩級戦艦レベルの回転砲塔の戦艦を2隻、(イギリスのデヴァステーション級に類似)
これは皇国に限らず第三文明圏の国々に売り出している。(もちろん馬鹿高い)
その他の戦列艦は元々皇国が保有しているものだ。
(パーパルディアがあんな戦艦を持ってるなんてな・・・、こりゃムーも焦るだろう・・・)
なんて考えていた時であった。
『な!なんだあの船は!』
『あれは船なのか・・・?』
『グラ・バルカス帝国国旗を掲げた巨大な船が一隻、そちらに向かっています!』
しばらくすると、余りにも巨大な城のような船が港内に入って来た、これには魔導戦艦を見慣れたブロントでさえ絶句した。
『グラ・バルカス帝国到着、戦艦・・一隻・・・のみ・・』
グラ・バルカス帝国軍の誇る全世界史上最大の戦艦『グレードアトラスター』
全長263.4m
全幅38.9m
満載排水量72800t
出力 150000馬力
これには、ホルシュタインに乗っていたレミールもただひたすら口を開けて驚愕するだけであった。
◇◆◇◆◇◆
「・・・長!ブロント局長!!」
部下が凄まじい勢いでブロントを揺り動かす。
「やめろやめろ!なんだ一体!」
「ドイツです!ドイツ国が到着しました!凄まじいですよあれは!!」
ブロントは沖合の方に向けて双眼鏡を覗いた。
刮目せよ。
これが我がドイツ艦隊である。
◆◇◆◇◆◇
『ド!ドイツ国到着!戦艦3隻!重巡1隻!』
監視員が震える声で報告する。
戦艦ビスマルク
戦艦シャルンホルスト
戦艦グナイゼナウ
重巡洋艦プリンツ・オイゲン
まさに、これでもかと言わんばかりの戦艦達だ、しかもその艦の全てが他国の戦列艦を圧倒している。
4隻の軍艦が列を成して入港していく様は圧巻としか言いようが無かった。
「グラ・バルカスとドイツ・・一体この世界はどうなっていくのだろう・・・」
ブロントの呟きは、ドイツ艦隊を一目見ようとする人々の騒めきに消されていった。
◆◇◆◇◆
「これより、先進11ヵ国会議を開催します。」
帝国文化会館国際会議場で、会議の開始を始めるアナウンスが流れる。
先進11ヵ国会議は世界の行く末を決める会議として、ほとんどの国が注目する会議である。
1週間の間行われるこの会議は参加しただけで、大変な誉であり、常時参加国は、
○神聖ミリシアル帝国(中央世界)
○エモール王国(中央世界)
○ムー(第2文明圏)
○パーパルディア皇国(第3文明圏)
である。
そして今回からパーパルディア皇国の要請でドイツ国を常時参加国にすると、今回の会議で認められる予定である。
◆◇◆◇
ドイツ外交官のクラウスとゲオルクは、末席に座り会議を高い位置から見渡すと、エルフや獣人、鬼の様な生き物もいる事から、つくづく異世界に来たと痛感する。
すると中心近くに座っている青白い肌をし、頭に角が生えており、そして身長は2メートルという大男が挙手した。
「エモール王国のモーリアルである。今回は何よりも先んじて、皆に伝えなければならないことがある。火急の件につき、心して聞いてもらいたい」
多種族に対し、差別的な体質である竜人族のエモール王国の代表が、殊勝な態度を取った。
「・・・先日、我が国は〈空間の占い〉を行った」
「・・・占い?」
「占いなんて事を大真面目に話すかね?」
ドイツ外交官にとっては占いとはオカルト的なもので、こんな場でそんなことを話したら普通は笑い者になる、そんな認識であった。
しかしこの世界において竜人族の秘儀『空間の占い』は、的中率98%以上の実質未来予知である為、各国の代表は息を飲んで聞き入る。
「結果、古の魔法帝国 ・・忌まわしきラヴァーナル帝国が近いうちに復活すると判明した」
その言葉を聞いた各国の代表は、段々と顔を青くし、次第に空気が凍りつく。
クラウス達はイマイチその意味がわからなかったが。
会場がざわつく中、モーリアウスは構わず続ける。
「空間の位相に歪みが生じており、いつ何処に出現するか正確には分からなかった、しかし4年ないし25年後までの間に出現すると考えている。今後、我らは不必要な争いを避け、軍事力の強化を行い、世界で協力してラヴァーナル帝国に備えるべきである」
クラウス達は占いという自らの常識では不確定な物で会議が動いてる事に困惑し、レミール含め各国の代表達は真剣な顔でお互い頷いていたが、ただ1人だけ様子が違った。
「くっ、くっくっ・・・ッハァーーーハッハッハッ!!!」
「どうした?」
「気でも触れたのかな?」
突如哄笑を始めた女性にクラウス達は辛辣なことを言う。
いきなりの事に会場内の視線が彼女に集まる、その視線は例外無く非難の色に満ちていた。
「ああ、いやいや失礼、私はグラ・バルカス帝国外務省、東部方面異界担当課長のシエリアという。魔帝だかラヴァーナルだか知らんが、過去の遺物を恐れるとは、その現地人のレベルに唖然としている所だ。そもそも、占いなぞ、そんなものを国際会議で発言する神経が私には理解が出来ないよ。」
いきなりとんでも無いことを言う女である、モーリアウスは勿論エルトやレミールでさえ豆鉄砲を食らった鳩の様な顔をしている。
ただ、クラウス達に至っては占いについては心の中で同意していた。
「誰かと思えば第二文明圏の文明圏外のグラ・バルカス帝国か。同じ新参者のドイツの様におとなしく聞かずに下品な笑い声といい、第二文明圏を好き放題に侵略するといい、下品極まる感性だな」
レミールがそう発言したが、後者については完全におまいう案件である。
「おや、パーパルディアとかいう国は
ドイツの言いなり状態になっていると噂で聞いたのだが。
未だ列強とかいう所にいるのか?調べた所我々が滅ぼしたレイフォルと似たような文明だったらしいが、片や滅亡、片や操り人形、そんな国が列強として崇め奉られているとは・・・世界会議、底が知れるな」
「なんだと!!」
レミールは真っ赤になってシエリアに怒声を浴びせる。
「レミール様、一旦落ち着きになられて!」
エルトの必死の制止の最中にもシエリアは挑発を行う。
「このような場で大声で怒鳴り散らすとは、やはりこの世界の列強言えどもモラルはこんなものか」
「何を!?貴様のような蛮族にはわからないだろうが、エモールの空間の占いがどの様なのか分からないような奴が知った様な口を聞くな!!」
レミールとシエリアの壮絶な口喧嘩に、エルトはオロオロする。
「なんとまぁ、凄い会議だな」
「ええ、正に乱世といった所でしょうね」
暫くしてからエルトや議長、進行役の活躍もあって事態は収束した。
その時、ムーの外交官が手を挙げ、発言権を得る。
「我が国はこの場において、グラ・バルカス帝国に対する非難声明を提示します、同国への懲罰的処置として、2年以上の交易制限を発議します。理由は第二文明圏イルネティア王国への大規模侵攻です、ここ最近彼等はやり過ぎだ。」
そこに神聖ミリシアル帝国の大使も手を挙げる。
「確かにグラ・バルカス帝国は現状でも情勢を悪化させ過ぎている。このままでは世界秩序を崩壊させる恐れがある。
我が国はグラ・バルカス帝国にムー大陸全土からの即時撤退を求める、でなければ軍事介入せざるを得ないだろう」
すると、レミールもバスに乗り遅れるなと言わんばかりに挙手をした。
「我が皇国も非常識極まりなく、世界秩序を崩壊させる危険性のあるグラ・バルカスを放っていくことは出来ない。皇国としても有事の際には皇国軍本軍を派兵する事も厭わない」
どんどん列強国からの非難声明が出て来るが、当のシエリアは悠然と構えていた。
「1つ。勘違いしているようだから伝えておこう。我が帝国がこの会議に参加したのは国際協調などという生温い馴れ合いをするためでは無い!近隣地域の有力国の代表者が一堂に会するこの機会に通告しに来たのだ!」
シエリアは机を殴りつけると、高らかに宣言した。
「グラ・バルカス帝国帝王グラルークスの名において、貴様らに宣言する。
我らに従え。
我が国に忠誠を誓った者には、永遠の繁栄が約束されるだろう。ただし、従わぬ者には、我らは容赦せぬ。
沈黙は反抗とみなす!まずは尋ねよう。今、この場で我が国に忠誠を誓う国はあるか?」
ほとんどの国が絶句する。
「あの女、正気かね?」
「信じられませんね、世界を敵に回すなんて」
クラウス達も呆れた様子だ。
「いきなり何を言いだしたと思えば!
全世界に対して宣戦布告だと?!
新参者の蛮族が身の程を弁えろ!!!」
またしてもレミールがブチ切れる。
「やはり今すぐ従属を誓う国はいないか、まぁ当然だろうな、しかし帝王様は寛大だ。我が国の力を知った後でも構わない。その時はレイフォルの出張所まで来るがよい。
まあ、かなり自国が被害を受けた後になりそうだがな。
では、現地人ども、確かに伝えたぞ!!」
グラ・バルカス帝国の外交団は会議途中で退室し、カルトアルパス港から去って行った。
その日の先進11ヶ国会議は波乱のままに終了した。
開催日数、残り6日。
レミールVSシエリアの舌論!これが書きたかった!
これを書きたいがためにパーパルディア皇国を生存させ、もっというならばこの二時小説を書き始めたようなもんです!
満足!