中央暦1642年4月24日
神聖ミリシアル帝国
港町カルトアルパス
帝国文化館
「では、これよりドイツ国を列強に加えるか審議を行います。」
本日の審議内容はドイツを列強入りさせるか否かというものであった。
レイフォルがグラ・バルカスに滅ぼされた為、空いた席をどうするかという話になり、当初はいっそのことドイツとグラ・バルカスを列強に加えてしまえという意見もあったが、グラ・バルカスを列強にするには些か野蛮である為神聖ミリシアル帝国側は渋っていた。
そんな時にこのシエリアの騒動でグラ・バルカス列強入りは御蔵入りとなり、ドイツ列強入りがほぼ決まったのであった。
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ムー大使が挙手をして意見を述べる。
「我が国にとしては賛成だ、同じ機械文明を持ち、あの様な巨大な戦艦を持ち尚且つあの様なグラ・バルカスとは違い理性的だ。」
「我が神聖ミリシアル帝国もムーと概ね同意見だ。我々はドイツの列強入りを大いに歓迎しよう。」
神聖ミリシアル帝国の大使も同意見。
「・・パーパルディア皇国もドイツの列強参加を歓迎しよう、ドイツの様な国が加われば我らとしても心強い」
レミールも些か不服そうだが、ドイツの列強入りを認めた。
その後もエモール王国も列強入りを認めた。
4列強が認めた事により、それに反対する国はいない、その後は参加国全てがドイツの列強入りを認めた。
「皆さま、我々新参者であるドイツを列強に入れて下さり誠にありがとうございます、我が国は国際の秩序を守るべく邁進していく所存ですので何卒宜しくお願いします」
クラウスが議会に向けて当たり障りのない挨拶をした後、昼休憩となった。
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「これより、先進11ヶ国会議実務者協議を再開します」
朝から席を空けていたリアージュが戻っていた。議長席に立つ彼の顔色はかなり悪く憔悴している様だ。
「本日は朝から欠席しており、ご迷惑をおかけしました。議長国の神聖ミリシアル帝国から皆さまへ連絡がございます。先日、現在グラ・バルカス帝国の艦隊が我が国の西のマグドラ群島に奇襲攻撃を行い、地方隊が被害を受けました。」
第零式魔導艦隊が壊滅した事は伏せ、「地方艦隊が奇襲された」という体制を取った。バレたら国家の威信に関わる嘘なのでリアージュも冷や汗ものである。
「テロ対策として、本港カルトアルパスには、魔導巡洋艦8隻が警備についておりますし、空港基地から空軍がエアカバーを行いますので問題はありませんが、グラ・バルカス帝国が万が一、我が国本土に攻撃を加えた場合の事も考慮し、万全を期するために、本日の夕方までにカルトアルパスから全艦隊を引き上げていただき、開催地を東のカン・ブリットに移したいと思います。
事前に通告していた場所とは異なりますが、ご理解いただきたい。」
一瞬の沈黙の後、モーリアウスが起立した。
「あの無礼な新参者が攻撃してきたからといって、世界の強国会議ともいえる国々が尻尾を巻いて逃げるというのか?堂々と会議をすればよい。
我が国は陸路だが、ここに来ている者たちは、何処もそれなりの規模の艦隊を連れてきているのだろう?そのための、外務大臣級護衛艦隊だろう?魔力数値の低い人族のみで構成された、しかも文明圏にすら属していない国を相手に、強国が多数、戦わずして逃げるのは、情けないと思うぞ。我々は控えの風竜22騎を投入しようぞ。」
「「「おお・・・!」」」
その後、列強のエモール王国が迎え撃つと意思表明した事を皮切りに、トルキア王国、マギカライヒ共同体も参戦を表明した為、カン・ブリッドへの移動は取りやめになったも同然の空気となった。
◆◇◆◇◆
「どうでした?」
ゲオルグは、本国に連絡していたクラウスが席に戻って来たのでどうなったか尋ねた。
「どうやら外務省からは全艦にて迎え撃つ、そして出来る限り列強国数隻を保護してカルトアルパスから脱出しろとの事だ。 恩を売りたいんだろうな」
「とにかく我々は列車で避難する事になりました。艦隊にはその様に伝えておきます」
その後、グラ・バルカス艦隊が目前まで迫っており、最早各国艦隊が避難する事が出来なくなった為、議長国権限で〈臨時連合軍を組織して迎撃する〉案を採択した。
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カルトアルパス港
上空には神聖ミリシアル帝国の戦闘型天の浮舟ジグラント2が何機もの編隊を組み南の空へ向かう。
「マギカライヒ共同体機甲戦列艦隊、出港!」
「アガルタ法国魔法船団、出港!」
「ニグラート連合竜母艦隊、出港!」
中央世界、第二文明圏各国の艦隊が次々と出港して行く。
「パーパルディア皇国第1艦隊、出港!」
第三文明圏の列強パーパルディア皇国の戦艦艦隊が出撃する、今まで戦列艦だった為非常に新鮮な光景だ。
「ムー機動部隊、出港!」
戦艦2隻、装甲巡洋艦4隻、巡洋艦8隻、空母2隻が出港する。
「ドイツ国艦隊、出港!」
戦艦3隻、重巡1隻が出港する。
ブロントら港湾で働く者達、海軍の作業員達は胸を躍らせつつ、強国の艦隊を見送った。
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グラ・バルカス帝国
戦艦グレード・アトラスター
艦長であるラクスタルはこの作戦において今までに無い不安が生じていた。
なんといっても1番の不安はドイツ艦隊の存在である。
これまでの情報局の話によると、ムーの戦艦は我が帝国の数十年ほど前の技術であり、脅威ではないという話であった。
ドイツの方も、得ていた情報がドイッチュラント級装甲艦だった為、そこまで脅威ではないという結果であった。
しかし実際はどうだろうか。GAと技術的に同等の戦艦が、3隻もいるではないか。最初にそれを見た時は艦長、副長とも大いに焦った。いくら航空機の支援があるとはいえ、個々の艦は明らかにGAより劣るとはいえ、1度に3隻もの戦艦を相手にするのはGAといえど相当厳しい。
この事を直ぐにシエリアに報告、シエリアも馬鹿ではないのでゲスタに直ぐに連絡して作戦を変更する様に進言したが、
既に東部方面艦隊が出撃していた事、
何よりゲスタが帝国やGAを盲信していた為に作戦の変更は叶わなかった。
◇◆◇◆◇
「外交屋は何もわかっていない、割りを食うのはこちらなのだぞ!」
ラクスタルはこの世界に来てから連戦連勝で浮かれている祖国に危惧の念を抱く。
上空には東部方面艦隊の攻撃隊が編隊を組んでカルトアルパスへ向かっていた。
◇◆◇◆◇
どうやらミリシアルの航空隊は全滅したらしい。
ビスマルクのリンデマン艦長は、上空の警戒を厳とするとように指示を出す。
「しかし弾の数が心許ないな、これで何処まで戦えるか」
まさか戦闘に巻き込まれるだなんて予想していなかったので、弾は必要最低限しか持っていなかった、艦長の心配はそこであった。
(因みにロウリア戦時に、敵ワイバーンの体当たりを許した事により、対空機銃の増設が行われている)
すると、南西の空から微かな点が多数見えてきた。
「敵機確認!対空戦闘用意!」
けたたましいサイレンの音と共に兵士達が配置に着く。
遂にドイツ艦隊はグラ・バルカス航空隊と刃を交える事となる。