頭まわんない。
「ドイツ艦隊全艦左舷側に向かって接近中!!」
監視係が悲鳴のような声を上げて報告する。
既にシエリアとラクスタルは堅牢な司令塔に移っている。
「前後3つの主砲を左舷側のドイツ艦隊に!残りの副砲は右舷側にいる余りを攻撃しろ!」
ラクスタルは巡洋艦や旧式戦艦であれば副砲でも対処可能と判断した。
「艦長、本当に大丈夫なのか?!」
シエリアが不安そうに尋ねる。いくら語彙を強めていようとやはり恐怖の為か年相応の少女の顔となっていた。
「大丈夫です。グレードアトラスターは絶対に沈みません。」
そして自分を鼓舞するかの様に独り言を呟く。
「この戦いは帝国の威信をかけた戦いなのだ・・・」
◆◇◆ビスマルク◆◇◆
「突入するぞ!総員気を引き締めろ!
砲撃準備用意!」
「砲撃準備用意!!距離7キロ!角度修正完了!」
「撃てェーー!!!」
超近距離から撃たれた4発のうち2発の砲弾は迷わずGAのバイタルパートと左舷側の対空砲が設置してある所に命中する。
「隙を与えるな!間髪入れずに攻撃するんだ!奴に隙を・・・!!」
ビスマルクから命令が発せられた瞬間、GAから閃光が放たれる。
「くるぞ!!」
艦橋の誰かが叫んだ瞬間、ビスマルクが途轍もない揺れに襲われる。
2基の46㎝砲から放たれた6つの砲弾のうち1つがビスマルクの重要区画にブチ当たった。
「グァッ!!!」
リンデマンは衝撃で転び手を打ってしまうも、痛がる暇もない為すぐに立ち上がり状況確認を行う。
「状況は!?」
「重要区画が撃たれましたが火災は起こってません!応急修復を行います!」
リンデマンは舌打ちをするとマイクを持って叫ぶ。
「魚雷だ!全艦魚雷を敵戦艦に向け発射!」
ドイツ艦隊からそれぞれタイミングをずらしながら計6本の魚雷がGA目掛けて進んでいく。
◆◇◆◇◆
パーパルディア皇国
戦艦パールネウス
ついさっきまた、前方のミリシアルの魔導巡洋艦が一隻撃沈された。
既にGAとは目と鼻の先である。
前方のラ・カサミもGAに砲撃を加えようとしている。
「どうしますか艦長?!我々も攻撃した方が宜しいのでは?!」
「どうせ当たったところであの化け物には被害は与えられんよ!返り討ちにあうだけだ!」
そう叫んだ途端、GAのドイツ艦隊側の方から数本ものどデカイ水柱が上がった。
◆◇◆GA◆◇◆
「重要区画、左舷第二高角砲に被弾、火災は確認されてません。高角砲が使い物にならなくなりましたが、それ以外は被害らしい被害は確認できません」
「うむそうか、やはり不沈艦・・・」
そう言いかけたとき、またも悲鳴の様な監視の報告が届く。
「11時の方向より雷跡を6つ!距離500!!接近!」
「戦艦が魚雷だと?!馬鹿な!」
魚雷を持っているのは後方の重巡のみだと勝手に判断してしまっていたラクスタルは大いに焦る。
「面舵いっぱい!!!」
必死にGAは舵を切るが、船体左舷中部と後部に魚雷が命中してしまう。
それと同時に司令塔にも尋常じゃないレベルの轟音と揺れが襲う。
「きゃあああ!!!」
シエリアの悲鳴が木霊する。
「報告します!!重要区画にて火災発生!怪我人の総数は未だ不明、消火活動を行なっています!」
「3番砲塔ターレットに不調を確認、射撃すると歪みが発生する恐れあり!」
「左舷に浸水を確認!!右舷水タンクに注水を開始します!」
次々と流れ込む被害状況にラクスタルは冷や汗を流す。
「前方主砲は継続して左舷ドイツ艦隊を攻撃、他副砲は右舷側の敵艦を撃て!」
◇◆◇◆◇◆◇
「魚雷命中!!火災を確認!」
リンデマンはこのまま逃げ切れると確信する。
「よし、攻撃はそのままに速度を上げてここから離脱する!」
が、そんなに甘くは無いようだ。
「上空に爆撃機を確認!!こちらにやって来ます!」
「第2波か!全艦対空戦闘用意!」
◇◆◇◆◇◆
戦艦パールネウス
「既にミリシアルの巡洋艦は3隻、ムーも破損!しかし敵の攻撃はドイツに向いている、このまま離脱できる!」
ボジロノが希望を見出したその瞬間だった。
目の前を進んでいたラ・カサミの中央部から爆煙が当たり、徐々に陸地に向けて
速度を下げずに進んでいく。
「おっ?!おいおいどうした?!」
ボジロノは困惑した様子でラ・カサミを見る。
そして岩礁に乗り上げたのを見た後、GAを見る、副砲がこちらに向けて旋回していた。
「・・総員敵戦艦に向けて砲撃開始!!!急げーーー!!!」
パールネウスは生き延びる為攻撃を開始する。
◆◇◆◇◆
パーパルディア皇国
ボナンザ3世
ボナンザ3世とは、前々から言っていたドイツ製の量産型装甲艦で前後の主砲は30.5㎝の前装式である。
そんな旧式もいいところの船もパールネウスが砲撃を始めた為、続く様に砲撃を開始する。
艦長のガバナスもこの装甲艦が何処まで
あの化け物に対抗できるか、気が気ではなかった。
艦長はマイクを手に取ると砲術長に繋げる。
「砲術長! あの化け物の前の上のちっこい砲を狙えるか?!」
「こっち狙ってるやつですかい?!」
「ああ、そうだ!」
「あんなの狙えませんよ!」
「無理じゃ無い!当てろ!最後の1発と思って当てろ!」
「そんな無茶な!」
砲術長はブーブー言っていたが、ガバナスは魔信をそのまま切る。
「砲術長、頼むぞ!!」
◆◇◆◇◆
ボナンザ3世
「全く冗談じゃ無い!!」
砲術長は悪態をつきながらも、副砲に当てることだけを考えて測距儀を覗く。
幸いにも敵砲塔はパールネウスの方を向いており、心理的な負担は少ない。
・・・そして。
「角度修正!右に12度、仰角良し!
主砲発射準備完了!」
「ッ テェェーー!!」
ボナンザ3世より放たれた2発の砲弾は、
1発目は第2主砲に当たり跳弾、2発目は・・・見事に副砲に命中、煙が上がり動きを止めた。
「やりました!副砲に命中!沈黙を確認!!
この報告を聞いた艦橋は歓喜に沸いた。
◆◇◆シャルンホルスト◇◆◇
「敵雷撃機!こちらに向かって接近中!!」
リゲル雷撃機はドイツ艦隊にむかっていた。
しかし対空砲等の弾幕で1つ、また1つと雷撃機は落とされていく。
投下された魚雷は真っ直ぐにドイツ艦隊に向かうも回避運動でなんとか避ける。
が、非常に運の悪い事にシャルンホルストのスクリューに魚雷が命中してしまう。
最悪な事は続くもので、速度が急速に遅くなったシャルンホルストはGAに目をつけられ、放たれた46㎝砲弾が多数命中、爆煙を上げて沈んでいく。
もはや轟沈といって良かった。
これによりホフマン艦長は戦死、残った水兵達が海に脱出した。
◇◆◇GA◆◇◆
「くそッ!ここまでやられるとは・・・」
ラクスタルはついさっき副砲が潰された報告を受け悔しそうに机を叩く。
結局ドイツ艦隊にこっ酷くやられ、なんとか一隻沈めたものの、航空機の支援が無ければ今頃こちらがフォーク海峡の海底にいたかもしれない。そう思うとラクスタルは身震いした。
◆◇◆◇
そしてシエリアはというと、絶え間なく続いた砲撃による衝撃に怯え震えていた。
いくら重装甲の司令塔といえど、砲撃によって重く腹の底に響く様な振動が彼女の神経をすり減らしていった。
◇◆◇◆◇
グレードアトラスター第一艦橋
「大方終わったな・・・」
「ええ、」
ラクスタルと副長が疲れた顔で外を眺める。
「敵艦の姿はもうない、残っている雑魚も粗方片付けた、大体安全だろうから
お嬢様をお連れしても大丈夫だろう。」
そういうと、副長がシエリアを連れて来た。
シエリアはかなりのストレスの為か、お腹に手を当てぐったりした様子であった。
ラクスタルはシエリアに双眼鏡を渡すが、シエリアは手に持つだけでなかなか覗こうとはしない。
(・・・まぁ、あんな殆ど戦場に出た事がない人間があんな攻撃に晒されればな・・・)
ラクスタルはシエリアに同情する。
そんな時、シエリアが双眼鏡をある方向に熱心に向ける。
その方向を見ると、僅かながらにうごめく人影を発見する。動きから見るに生存者の様だ。
「艦長、まだ時間がある様なら出来る限り駆逐艦で救助してほしいのだが、可能か?国を守る為に戦った彼らに罪は無い。」
「ほう・・・」
ラクスタルはシエリアの考えに感心する。
その後駆逐艦により各国の兵士は救助され、グラ・バルカスの捕虜となる事になった。その時捕虜は丁重に扱うと伝えたが・・・。