大ドイツ国召喚   作:イブ_ib

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今日は調子が大変よろしい


終わりの始まり。

中央歴1642年6月15日

11時28分

レイフォル沖

海中

 

 

ひっそりとUボートが3隻潜航しながら進んでいる。

 

船員の見る潜望鏡にはグラ・バルカス国籍の輸送船団が見えている、どうやら駆逐艦一隻が守っているらしいが、まさか敵がここまで来るとは思っていないようで、形だけの護衛のようだ。

 

「何が起こったか分からないうちに死ぬ。輸送船の乗員には申し訳無いが此処で死んでもらう。」

 

潜水艦の艦長は腕時計を見る。

既に発射管に注水し、あとは発射指示を出すだけだ。

 

 

・・・56

・・・57

・・・58

・・・59

 

11時30分

 

「魚雷発射ッ!」

 

バシューーー・・・・

 

魚雷は吸い込まれるように護衛の駆逐艦に向かって行く。

 

◇◆◇◆◇◆◇

グラ・バルカス帝国海軍

駆逐艦

 

レイフォルで加工した缶詰や食料を本土に運ぶ輸送船団を護衛する駆逐艦の甲板上で2人の船員が話していた。

 

「いやぁ、いやになる程何も起こらないね」

 

「あぁ、全くだ」

 

「海魔ってのがいるって聞いたんだがね、現れないもんだ」

 

「あんな物が現れてたまるかい」

 

1人の兵士は笑いながらタバコに火をつける。

 

「俺はこう・・・化け烏賊に向けて銛をこうバシュッ!・・・・と・・・?」

 

「どうした?」

 

急に銛を投げる格好で言葉が途切れ途切れになった兵士を不思議に思っていると、ポカンとした様子で海面を指差した。

 

 

「あれ」

 

「ん?」

 

海面には二本の線が真っ直ぐこちらに向かっていた。

 

咥えていたタバコを落とす。

 

「え」

 

「あ」

 

声を出す間も無く魚雷は駆逐艦に命中、

油断しきっていた駆逐艦は修理する暇もなく轟沈する。

 

「駆逐艦轟沈!」

 

「よし!全艦浮上、甲板砲で輸送艦を砲撃!」

 

【挿絵表示】

 

 

3隻は浮上し、甲板についてる88ミリ砲で非武装の輸送艦に向けて撃ちまくる。

 

輸送艦隊はバラバラになって逃げるが、ものの数十分で全艦沈められてしまう。

 

「全艦沈没を確認」

 

「よし、戦利品を回収後本国に帰還だ!」

 

この攻撃はグラ・バルカスに対して攻撃がここまで届くというデモンストレーションの意味合いが強く、攻撃後は直ぐにドイツに帰還する事になっていた。

 

船員は笑顔で沈んだ輸送船から浮かんで来た酒や缶詰の入った木箱を回収すると、即座にムー近辺の島に作った補給基地を経由し、ドイツへ帰っていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

ドイツ

ベルリン

総統官邸

 

総統執務室ではテレビが運び込まれ、

ヒトラーと大臣、党幹部はグラ・バルカスの放送を待っていた。

 

確実に方式が違うであろう電波通信を、

ドイツで見れるように繋いだテレビ技師には賞賛の声を贈りたい。

 

閑話休題

 

ともかく「重大な通達事項がある」とグ帝から伝えられているため、少なくともテレビの設置されている都市では皆テレビを食い入るように見ているだろう。

 

 

◆◇

 

シエリアは本来国に返すべき捕虜の処刑を宣言する役割を与えられた。

 

本国からの処刑を全世界に発信せよという、心無い残酷な命令に心を痛める。

 

 

(こんな事をする為に外交官になった訳では無い・・・!これでは暴虐な帝国の道化だよ!)

 

シエリアは祖国である帝国に微かな怒りを覚える、しかしそれでもやらなければならない。

 

 

「・・・捕虜たちよ、今からお前達の処刑を行う。何か話したければ申し出るが良い」

 

 

すると数人が手を挙げる。

 

端から話を聞き、最後の1人であるドイツ兵になった。

 

 

「最後だ、話してみろ」

 

ドイツ兵は息を荒くしながら話し始める。

 

「お、俺には家族がいるんだ、子供もいる。妻のお腹に2人目の子もいるんだ!」

 

「・・・」

 

シエリアの心がチクリと痛む。

 

「あんたら言ったじゃないか!人道的に扱うって言ったじゃないか!何だこれは!?見せしめ?!見せしめの処刑か?嘘つき!お前らは嘘つきだ!いいか?俺たちをこんな形で殺しても、決してドイツはお前たちに屈したりしないよ。

むしろお前達の街が焦土と化すまで戦うだろう。」

 

「・・・終わりか?」

 

「・・最後に家族に愛していると言いたい。」

 

「・・・ッ」

 

◇◆◇◆

 

「帝国に敵対する意思を持つ、全てのものに告げる!捕虜になりながら帝国に従わなかった者達の処刑をこれより行う!

この者どもの末路を目に焼き付けよ!

そして我が国を恐れるのならば降れ!

我が軍門に降れば永遠の繁栄を約束しよう!・・・降らなければ彼らが未来のお前達だ!!」

 

言いながらシエリアの表情は悲痛なものに変わっていく。

 

(殺したくない・・・私は殺したくなんかないんだ!)

思わず目尻に涙を流していた。

 

「構えッ!」

 

処刑人が銃を構える。

(ーー神様、ごめんなさい。ーー)

 

「撃てっーー!!」

 

 

発砲音の後、捕虜達の体が血しぶきを上げ崩れ落ちる。

 

「・・・覚えておくがいい。帝国に逆らう者達は皆こうなるのだ。

お前達が賢明な判断をしてくれると信じている」

 

 

こうしてグラ・バルカスの放送は終了した。

 

執務室では幹部達がグ帝のやり方に怒っているなかただ1人、ヒトラーだけが

口角を上げて笑っていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

街には多数の看板が掲げてある。その内容は魔女の様に醜い顔になっているシエリアがナイフでドイツの領土をズタズタに引き裂いており、上には(野蛮なシエリアに好きにさせるな!)と書いてある、いうものだ。

 

テレビでシエリアが処刑宣言をしていた為、ドイツからプロパカンダの格好の的となっていた。

 

(劣等人種を殲滅せよ!)

 

(滅せよ!グラ・バルカス!団結せよ!ドイツ民族!)

 

(悪党シエリアに聖なる鉄槌を!)

 

(民衆よ!武器を取れ!)

 

数々の標語が書いてある段幕掲げた民衆が松明を持って行進していた。

 

更にラジオからはヒトラーの演説が流れてくる。

 

「奴ら 、グラ・バルカスは我が国の勇敢なる兵士を最も残虐なる方法で殺害した。

そしてグラ・バルカスはドイツ国民が勝利への信念を失ってしまったと主張する。しかし奴らは分かっていない、この愚かな行為が我々ドイツ民族を一致団結させ、結果的に自分達が窮地に追い込まれるということを。

この戦いはこの世界における世界秩序を守る戦い!そしてゲルマン民族の共同体を守る為の戦いである!

愚かなるグラ・バルカスを攻撃せよ!殲滅せよ!撲滅せよ!神は我々に味方している!決してゲルマン民族は負けない!

偉大なるドイツの為!誇り高き輝く未来の為!共に戦おうではないか!!」

 

 

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

 

ドイツはグラ・バルカスへの憎しみを増やしていき戦争に突入していく。

 

◆◇◆◇◆

所変わってパーパルディア皇国

 

パーパルディアでも魔導通信機によって、処刑の様子が放送されていた。

勿論処刑された捕虜の中には皇国兵も混じっていた。

 

 

「〜〜〜〜!!」

 

レミールは皇国兵が処刑されるのを見てショックを受ける。

 

「〜〜なんだあの女はぁ!!!!!!」

 

顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。

 

「絶対に絶対に絶対に!!!ゆるざん!!!アイツだけは絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」

 

激怒の余り暴走しているレミールを他所に、ルディアスは立ち上がり宣言した。

 

「度重なる暴虐を重ねる彼奴らを生かしては置けぬ!あの様な輩は根絶やしにしてしかるべし! 今ここに、パーパルディア皇帝ルディアスの名において、グラ・バルカスに対する宣戦布告、及び殲滅戦を許可する!」

 

王の間は歓声に沸く。

 

しかしこれを聞いたアルデは、

 

(おいおいおいルディアス様は本気か?!未だ皇国の装備じゃ太刀打ちできないぞ!)

 

基本的にグ帝の兵器をドイツの兵器と同一のものと仮定して考えている為、未だ殆どがマスケットにワイバーンロード、地竜のパーパルディアに勝ち目は無いと軍は考えている。

 

アルデはエルトを連れて人のいない会議室に向かう。

 

「エルトはグラ・バルカスに勝てると思っているか?」

 

「いえ、しかし今は兵研にリーム王国で鹵獲した新型中の解析を行っていますし、ドイツにもいくつかの地竜に代わる兵器の購入を打診していますが、それでも即座に戦えはしませんね」

 

「兎にも角にも敵は遠くだから今すぐここに攻めてくるという事は無いにしても、急がねばならんな・・・」

 

軍備についてお互いに頭を悩ます事となる。

 




この作中でドイツやパーパルディアの言う事成す事の全てが自分達に跳ね返ってくるという現実。

挿絵のMMDモデルはTansoku102cm-沼地人氏のモデルです。
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