時は遡って中央歴1640年2月、ナチスの調査隊はある場所の調査の為へ派遣された。
クワ・トイネ公国
リーン・ノウの森
深く、そして潤いのある森。地上には柔らかい木漏れ日が届く、澄んだ川が流れて小鳥のさえずりが聞こえる。
しかし木々が入り組んだこの森は、地元住民の案内が無ければ永遠に彷徨ってしまうだろう。
まさに信ずる者は寛容に受け入れ、しかしその聖域を犯そうとするのなら容赦無く襲いかかる、そのような感じであった。
調査隊はこの森に住むエルフ達の案内で聖地『神森』まで進む。
そして一行は、草がドーム状に生い茂った奇妙な半球の前に着いた。
「この中には、この神森を魔王軍から守った太陽神の使者の空飛ぶ神の船がいくつか置いてあります。私達の祖先は今では失われた時空遅延式魔法を使いこの先に保管しました」
ミーナというエルフが説明しながら、半球に手をかざし封印を解いている。
半球の中は明るく、トンネルが奥が見えなくなるほど続いている。
「着きました。ご覧ください。これこそエルフが現代まで守って来た神器、『神の船』です!」
ドイツの調査隊はそれを見て仰天した。
なんと目の前に数機の零戦が転がっていたのだから。
「航空機だと?!」
「この国籍マークは日本でしょうか?」
「機体番号が漢字だ。じゃあこれは日本の・・・」
「見た事無いな、この機体は」
因みに零戦が実戦投入されたのは1940年から。それ以前の1939年に転移したドイツには分からなくても無理はなかった。
「奥の方にはその神の船よりも大きなものがあります。見てみたらいかがでしょう」
そう言われ、ミーナの後をついて行くと、其処にはJu88にソックリな双発機が置いてあった。
「ミーナさん、こいつはなんですか?」
「この神の船は、太陽神の使者達が海に潜る海魔を攻撃する時に使われた物だと伝わっております」
(潜水艦を攻撃するのか?・・・)
この機体は対潜水艦攻撃を考えて作られた『Q1W 東海』であった。
◇◆◇◆◇
そんな事があったのがおよそ2年前。
その間数機を神森から拝借して、修理を行い飛行可能な段階にまで進んでいたが、この零戦の解析を突如として急ぐ事となった。
そう、グラ・バルカス帝国との戦いである。
グ帝の戦闘機の報告を見てみると、この日本の戦闘機の特徴と酷似していた為、性能も似たような物と推測したドイツ空軍は、これを用いて模擬空戦を行う事となる。
因みに東海の方も解析され、ブローム・ウント・フォス BV 138にKMX(日本海軍が開発した航空機用磁気探知機)の複製品が搭載された。
◇◆◇◆◇◆◇
中央暦1642年10月3日
ドイツ近海
海中の目標を検知した機械はブザーを鳴らして検流計の針を揺らす。
「着色信号弾、自動投下確認」
落とされた信号弾は海面を真っ赤に染める。
哨戒機は信号弾を確認すると、反転し再度目標を感知し信号弾を落とす。
信号弾の位置で自動で動く目標に向けて対潜爆弾を投下する位置を割り出す。
「それ!投下!」
海中に沈んでいった爆弾は数秒後に大きな水飛沫となった。
その後、目標に仕込んでいた緑の塗料が浮き上がってくる。
「目標、撃沈しました」
「今回は順調だな・・・。実戦では編隊を組んで行動した方が良いかもな」
そんな時、哨戒機に連絡が入った。
◇◆◇◆◇
グラ・バルカス帝国第二潜水艦隊所属、シータス級潜水艦『ミラ』は、見つけたドイツ駆逐艦に魚雷を発射し、沈んでいくのを確認した後、帰路についている途中であった。
「この攻撃によって我が帝国の矢がこのドイツにまで届くという事が明らかになった。我が帝国は圧倒的に強い!近い将来、世界は我々に跪く事になるだろう!」
艦長の演説に帝国兵の士気は最高潮だ。
そして各帝国兵の手にはブランデーが注がれたグラスが握られており、ソナー員でさえ酒を持っていた。
「この酒は我が帝国の勝利の前祝いだ!グラ・バルカス帝国万歳!」
「「「グラ・バルカス帝国万歳!」」」
そう言った瞬間哨戒機の放った対潜爆弾が直撃し、船体が砕け海水が流れ込み、艦長乗員諸共水圧で潰れ、爆圧は逃げ道を求めて海上に向かって駆け上る。
「・・・! 敵潜水艦の撃沈を確認!」
観測係が海上から大きな水柱が上がり、油膜や、潜水艦と思われる部品が浮いてくるのを確認した。
この戦闘によって、この機体は評価されドイツ近海の哨戒に使われる事となり、
後にグラ・バルカスの潜水艦はドイツでの行動が大幅に制限される事となる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
中央暦1642年12月28日
カルトアルパス
『トルキア王国、戦列艦21隻到着!』
『パーパルディア皇国竜母打撃群10隻到着!』
『アガルタ法国魔法船団17隻到着!』
「んん〜ん」
「すごい光景ですね・・・」
「凄いよなぁ」
若手社員の呟きに、ブロントが頷く。
「奴等に神罰を下す時が来たのですね。
中央世界、第二文明圏、第三文明圏それぞれの列強があつまって。
それこそグラ・バルカスも鎧袖一触、相手にならんでしょう」
「ああ、それにこの世界連合の他に別働隊として西部方面隊が随伴する。
主力艦隊のうち3艦隊もグ帝討伐に加わるらしいぞ。 それと!あのドイツもその別働隊に加わるそうだ!」
別働隊の情報が1職員に知られているというのは防諜面で不安になるが、これも世界1であるが故の慢心なのだろうか。
「なんと!皇帝陛下が本気になられたのですね!」
「ああ、それにしてもこのような大艦隊はラヴァーナル帝国戦でしか結成されないものと思っていたが。
相手はグラ・バルカス一国とはいえ西方の国々を配下に収めていると聞くし、言うなれば『世界大戦』だな」
軍属であれば、グ帝の強さを見に染みて理解しているが、市井の人々は、
「此度の敗北はグラ・バルカスの奇襲戦術によるものなのでは?」
と認識しており、このブロントもその1人であった。
カルトアルパス港には尚も第二文明圏の軍艦が入港していた。