中央暦1643年1月14日
第二文明圏 ムー 商業都市マイカル
海岸に、海軍主力艦隊を一目見ようとする人々で賑わっていた。
軍人の家族らは心配そうな顔で彼らを送り出す。
中には不安で泣き出してしまう者もいた。
戦艦4隻
空母5隻
装甲巡洋艦8隻
巡洋艦12隻
軽巡16隻
補給艦5隻
という大艦隊がマイカルを出港していった。
◇◆◇◆◇◆
バルチスタ海域
200隻を超える大艦隊が、レイフォル沖から南へ向かっていた。
グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊である。
西の新たなる覇者
異界の無法者
絶対なる独裁者
海を渡る暴力
彼らを表現する言葉は数あれど、賞賛の意を含むものは皆無だ。
◆◇◆◇
一方で、ニグラート連合西側の海を北上している大艦隊があった。
神聖ミリシアル帝国を主とした世界連合艦隊だ。
色んな文明の国々が集まった艦隊は、さながら船の博物館といった様相だ。
しかしその中にミリシアルの魔導戦艦は無い、
あるのは地方隊の巡洋艦8隻のみ。
進行速度を合わせると作戦が遅れるというのがミリシアルの主張であったが、聡い者ならミリシアルの意図に薄々気付いていた。
「ミリシアルめ・・、所詮は第三文明圏だとでも言いたいのか・・・」
ヴェロニアの甲板上で、バルスとマータルが連合艦隊を眺めていた。
パーパルディア艦隊は連合艦隊の中でも割と後方に位置している為、全体を見渡すことができる。
「カルトアルパス戦の資料を読みましたが、あの戦闘報告が正しければ、例え150門戦列艦であってもグラ・バルカスにとっては良いマトでしょう。
しかしミリシアルも酷な事を考えるものです。」
(まぁ、戦力外を囮に使うというのも悪くはありませんが)
皇国の頭脳とまで言われるマータルは、カルトアルパス戦の資料、グラ・バルカスの飛行機械の兵器、威力などを調べ、戦術を研究していた。
マータルとしては、対空兵器として風神の矢を沢山並べて弾幕を作るのが効果的としたが、肝心の風神の矢の制作についての技術はアルタラスが保有しており、アルタラスはついこの間まで戦争をしていた国に技術をあげるわけもなく、対空兵器の開発は現在、パーパルディアが独自に進めているが難航していた。
◇◆◇◆◇◆
「しかし、神聖ミリシアル帝国と、第二文明圏のワイバーンを掻き集めた『第二文明圏連合騎士団』500騎が一斉にかかれば・・いかにグラ・バルカスといえど、タダでは済まぬだろう」
「いえ、恐らく連合騎士団は全滅するでしょう」
「むっ、どうしてそう思うのかね?」
「リームとドイツとの戦いでは、約100騎のワイバーンとドイツの飛行機械50機が戦い、ワイバーンは全滅、ドイツの被害はありませんでした。」
「うむ、その様な計算ならば敵は250機程必要になるが?」
「ムーの空母のマリン搭載数が30機、それが5隻で150機、フォーク海峡戦をみるに敵の飛行機械の性能はマリンを凌駕しているのでもしかしたらその数でも足りるのでは無いのでしょうか」
マータルは冷静に敵の戦力について考えていた。
◆◇◆◇◆◇
そんな時、連絡係がバルスに報告に来た。
「ムー艦隊より入電、『偵察機が来る』とのことです」
「そうか、どうやらムー艦隊が迎撃に向かった様だな」
望遠鏡を覗きながらバルスが言う、望遠鏡には次々と発艦していくマリンの姿があった。
が、マリンによる偵察機迎撃は失敗してしまう。
◇◆◇◆◇
「ムー迎撃隊、敵偵察機の迎撃に失敗した模様」
連絡係の報告にバルスは命令を出す。
「ムーともあろうものが不甲斐ないな、
ワイバーンオーバーロードを発艦させよ!敵偵察機を叩き落とすのだ!」
◇◆◇◆
「出撃!」
竜母の甲板上を1体のワイバーンオーバーロードが走り始める。それと同時に甲板にある離陸補助術式の魔法陣の文様が浮かび上がり、空気が変わり合成風が吹き、強力な上昇気流が発生する。
ドタドタと走るオーバーロードは風を掴んだ瞬間、とても優雅に舞い上がる。
竜騎士デニスは前傾姿勢で鞍にしがみつく。
「くっ、速いな!」
ワイバーン、ワイバーンロードを乗り継いで来たデニスにとっても手に余る程の性能、導力火炎弾も今までのよりも桁違いだ。
オーバーロードは既に編隊を組み、偵察機が来るであろう方向に向かっている。
『敵は見えたか?!』
デニスは望遠ゴーグルで索敵している同僚のジオに問う。
『ちょっと待て・・・! 、いた!!』
遠くの方に1つの粒が確認できる、そしてその粒はみるみるうちに大きくなる。
「来たか!『総員配置につけ!火炎弾発射用意!』
オーバーロードが扇状に隊列を組む、
偵察機の方は、先程ムーの戦闘機が手も足も出なかったこともあり、只のワイバーンだと思っているのか、同じ調子で飛び続けている。
『発射!!』
デニスが魔信で叫ぶ。
扇型に広がったオーバーロードは、外側から先に火炎弾を発射し、その後に内側のオーバーロードが火炎弾を放つ。
火炎弾は偵察機を覆い被さるように進む。
炎の壁が迫って来るのを見た偵察機は慌てて反転する。
『それ今だ!撃て!』
隊列の上で待機していたmg15を搭載したオーバーロードが、偵察機に向け連射しながら急降下する。
撃ち出された弾のいくつかが偵察機に命中する。
『各自火炎弾を発射!!』
動きの鈍った偵察機に次々と容赦なく火炎弾が浴びせられる。
遂にその中の1つが偵察機に命中する。
粘性のある火炎弾は瞬く間に偵察機を炎に包み、火達磨となって落ちていく。
『や!やりました!グラ・バルカスの飛行機械を撃墜しました!!』
『やった!ザマァみろ!』
『パーパルディア皇国万歳!!』
自国よりも進んだムーが落とせなかった飛行機を落とした、その事実が皇国艦隊を歓喜の渦に巻き込んだ。
「偵察機を落としただけでこの喜びようか・・・こりゃ本格的な戦闘になったら大変だぞ・・・」
バルスでさえ笑顔になっている中、マータルは深刻な顔で悩んでいた。
次回あたりにはドイツとグ帝の航空戦が書けるかも。