「プリンツ・オイゲンに魚雷が命中!」
見張りの報告にヘルマン・クランケは歯軋りをする。
「やはり海戦は向こうのほうが何枚も上手か!」
すると一瞬、艦橋を光が支配した。
「野郎! 余裕綽綽で探照灯を照らしてきやがる!」
目がチカチカするなかクランケは悪態をつく。
月明かり以外何も無い夜の海で探照灯を焚くというのは、自分の位置を曝け出すのと何の代わりもない。
それでも敵陣に突っ込んでこの様なことをするのは彼らが我々を侮っているのか、それともそれ相応の自信があるのか?しかし今はどうでもいい、探照灯を照らしている艦を集中砲撃すれば良いだけの話だ。
「探照灯を照らしているやつを撃て!殺せぇ!殺せぇーー!!!」
自ずとドイツ艦隊の砲弾は探照灯を照らしている艦に集中し、ものの数十分で爆発炎上するのが確認出来た。
しかしもう2隻が突撃してくる。
すると煙を吐いてダメコンを行なっているプリンツ・オイゲンから幾つもの強力な光の帯が敵駆逐艦に直撃する。
恐らく目眩しの効果もあったのだろう、ろくに反撃出来ずに敵駆逐艦2隻は総攻撃を受け轟沈した。
「他敵艦影は確認出来ず、襲撃を乗り越えました。プリンツ・オイゲンもあと数十分程で修理が完了するそうです。」
「そうか、それは何よりだ」
ひとまず危機は去り、クランケは安堵の息をついた。
◆◇◆◇◆◇
数時間後
ビスマルク
「敵戦艦火災を確認!」
「砲撃用意!距離修正!」
「テェ!!」
現在ドイツ艦隊は、ミ帝主力とグ帝主力の戦闘のど真ん中にいた。
ビスマルクの後ろで一隻の駆逐艦が爆散する。
「レーベレヒト・マース!轟沈!」
「ちっ!!」
リンデマンは舌打ちしながら報告を聞く。
「敵艦火災を確認!速力の低下を確認!」
「いいぞ!そのまま吹き飛ばしてしまえ!」
「敵艦の爆発を確認!沈んでいきます!」
「ヨーーシ!ヨーーシ!ヤッタっ!!
あはははは!!」
すっかりテンションが上がってしまったリンデマンを他所に、副長がやって来た。
「艦長、どうやら砲弾が少なくなってきている様です。これ以上の戦闘は危険と判断します。」
「なんだとぉ!もっと弾を持ってくるんだった・・、悔しいが潮時か。
全艦に伝えろ、現時刻をもって作戦を終了。直ちにニグラート連合の港に帰港する。」
リンデマンが艦橋から外を見ると、未だミリシアルとグ帝の方から幾つかの閃光が見えるが、徐々にお互い別々の方向へ離れていく。
4時間にも及ぶ激戦であった。
◆◇◆◇◆◇
ドイツ国
ベルリン
総統官邸
レーダー提督はヒトラーに報告を行なっていた。
ヒトラー自身も老眼鏡をかけて資料を読んでいる。
「バルチスタ派遣艦隊より入電が入りました。」
「うむ、読め」
「グラ・バルカス艦 駆逐艦4隻、軽巡洋艦3隻、重巡1隻を撃沈。 戦艦1隻を大破。 他駆逐艦5隻を小破させました。」
撃沈した戦果の中にはミリシアル艦との共同戦果みたいなところもあるが、ここはドイツ単独の戦果として報告した。
「そうか、なかなかの戦果ではないか。」
ヒトラーも上機嫌だ。
が、途端にレーダー提督の顔が曇る。
「・・・総統閣下。
・・実は、我が軍の損害が・・」
「ん?なんだどうした?」
「プリンツ・オイゲン大破、グラーフ・ツェッペリン中破、グナイゼナウ小破、レーベレヒト・マース・・・轟沈」
「なっ!?」
「その他グラーフ・ツェッペリンの雷撃隊が全滅。戦闘機隊も壊滅的被害を被りました・・・」
「な、なんという事・・なんという」
ヒトラーの手はブルブル震え、老眼鏡を取る。
「・・以下のものは残れ。レーダー、ゲーリング、カイテル・・」
数人を残して他の面々が出て行った後、ヒトラーは渾身の叫びを上げた。
「何だこれは!言っただろうが!愚帝に我々の力を見せつけてやれと!しかし何だこの結果は! 何故全滅する?!攻撃隊の奴らは意気地無しだ!クソッタレだ!」
「何てことを!兵士達は貴方と国家の為に血を流し・・・」
「知らねーよ!結果を出さなければ何もしてないのと同じだバーーーカ!!」」
「いくら総統でも言い方ってもんがあるでしょう!」
「うるせぇ!!俺は総統だぞ!口答えする気か!粛清するぞバーーーカ!!」
「冗談じゃない!そうなる前に亡命してやる!これでもジョギングをしてるんですよ!」
「やめろぉ!こんな男に心酔した私が馬鹿だった!とっととオーストリアに帰れ!」
「なんだとぉ!!」
「何だとは何だ!!」
「何だとは何だとは何だ!」
「もういい!ドイツはグ帝に降伏します!」
「お前が決めるなぁ!!」
「まぁまぁまぁまぁ、とにかくグラーフ・ツェッペリンが沈まなくて良かったじゃないですか」
「何言ってるんだ!お前もお前だゲーリング!!航空隊も愚帝の奴らにやられやがってぇ!!
畜生めぇええええ!!!」
そう叫ぶと手に持っていたペンを机に叩きつける。
「そもそも何だ!この命中率の高い対空射撃は!こんな物を使っているやつは卑怯者だ!クズだ!」
一頻り叫んだ後、ヒトラーは疲れたのか、座席に座りぐったりとうなだれる。
「報復だ・・・」
「は?今何と?」
「報復攻撃だ!現在試作しているジェット機に魚雷を積んで攻撃させろ!あの速さであれば弾は当たるまい!!!これは総統閣下命令だ!!!拒否は許さん!!これを作らなければ制空型の量産も許さん!!!!『音速雷撃隊』だ!!!今こそ奴らにドイツの凄さを見せ付けてやれ!!」
そう叫ぶとそのまま自室へとこもってしまった。