ムー国侵攻
グラ・バルカス帝国の15センチ榴弾砲は次々と火を噴き、その巨弾がアルーの街に降り注ぎ、破壊の限りを尽くす。
コーリーが双眼鏡を覗けば、敵塹壕に突撃する戦車隊、それを勇敢にも大砲で迎え討とうとするムー国兵士が見えた。
しかし結果は帝国軍による圧倒的な蹂躙であった。
第二砲兵師団の歩兵達は、トラックに乗り込みアルーの街に乗り込む。
既にアルーの敵は第四師団で殲滅されており、後は速やかに制圧するだけであった。
◇◆◇◆◇
「他にいるのはこれだけか?!」
第2砲兵師団の1部隊の隊長が、ある住宅に隠れていた一家を外に連れ出した。
「お・・・お願いします・・命だけは」
一家の父親が酷く震えた声で喋る。
「そちらが何もしなければこちらも何もしない。他の奴らは知らんが、我らの部隊は国際条約をきちんと守るから心配するな」
そう言いながら、武器を持ってないのを確認すると、トラックに詰め込む。
第四師団の奴らに見つかったら何をされるか分からない。
その後第2砲兵師団は、捕虜や民間人を危害を加えぬよう収容所へ入れた。
◇◆◇◆◇
しかしムーが手に入れた情報は、第四師団の方であった。
ムー国
首都オタハイト
国会
「それでは此度のグラ・バルカス帝国による侵攻について。
会議を開始いたします」
「攻めてきたグラ・バルカスは想定通りアルーの街へ攻め込みました。
この戦闘によりアルー守備隊は全滅し、
アルーの街は敵の手に陥ちました。」
その発言の後に、陸軍省大臣が声を荒げる。
「話によれば奴等は我が臣民を殺戮し、捕虜も処刑したらしいではないか!」
使用している兵器等の文明に合わぬ野蛮な行為に、ムー国各要人が憤慨する。
「それで、陸さんは勝てる見込みがあるのかい?」
海軍大臣は、陸軍総司令官に問う。
「分からん、が、防衛線は既に構築している。」
ムーは、グラ・バルカスがレイフォルを滅ぼした時からもしもに備えて防衛線を敷いていた。
1、アルーの街 想定・レイフォル侵攻
2、キールセキの街
想定・神聖ミリシアル帝国侵攻
3、コラ・カーコ要塞 想定・魔帝侵攻
という風に、攻めてくる敵の具合に合わせて装備を変えている。
「捨て石、ですか。」
「流石にアルーの街まで最新兵器はまわせんよ。」
「兎に角、アルーが陥ちた今、キールセキで敵を食い止めなければなりません。」
「やはり戦車隊を連れて行くのか。」
「ええ、出し惜しみは無しです。それにミリシアルとドイツに援軍を要請したほうがよろしいでしょう。」
「ううむ、そうか。わかった」
首脳部は、侵略者を叩き出す為奔走する。
◆◇◆◇◆
ムー国
西部航空隊
リュウセイ基地
最前線に近いこの基地で、マイラスはとある機体を説明する為来ていた。
目の前にあるこの機体の特徴は、なんといっても滑らかな液冷エンジンであろう。機体は見慣れたマリンであるから違和感が凄いことになっているが。
リュウセイ基地の兵達に向け、マイラスが解説する。
「このマリン改ですが、我が国の星型エンジンから、ドイツの戦闘機に使われている液冷エンジンに換装したものです」
「ドイツのエンジンを?」
「整備性はいいのか?」
パイロットや整備兵から質問が投げ掛けてくる。
「整備性においては悪くなったと言わざるを得ません。しかし、換装した機体の最高時速は520キロを記録しました」
それを聞き、パイロット達に衝撃が走る。
今までのマリンは380キロが限界であった。それが140キロもアップしたのだ、驚かない訳がない。
「そして翼に追加でドイツの7.92㎜機関銃をつけ、攻撃力が増加しました。」
これによりマリンは、多少ではあるがアンタレスに対抗し得る戦闘機になった。
その日のうちから慣れる為の慣熟訓練が行われたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆
中央暦1643年2月10日
ロウリア総督府
竜の酒
そこで今日もまた酔っ払いが話をしていた。
「おいおい、聞いたか?グラ・バルカスが列強のムーに攻め込んだって話!」
「ああ、知ってるさ。陸と海からの同時侵攻とはね」
「お陰でマイカルは甚大なダメージを負ったそうじゃないか。それに首都も爆撃を受けたって!」
「これはもうムーは陥ちたな」
「それはまだ早いんじゃないか?風の噂ではミリシアルが出兵するんだとか」
「それなら何とかなるか?」
「ま!此処は1番戦場から遠いんだ。
戦闘に巻き込まれる事はねぇだろ!」
「なんだってドイツがいるからな!」
「そうそう!ドイツ様々よ!」
笑いながら酔っ払い達はドイツ製ビールを飲んだ。