Blitzkrieg
中央歴1643年七月五日
事実上壊滅した第四機甲師団に変わり、第2砲兵師団装甲大隊に編入されたモント・セラト軍曹が数台の友軍と共に進軍していた。
「いいかしっかり警戒しろよ、ムーはこいつをぶち抜ける砲を持ってるんだからな」
モントは通信機を使い注意を促す。
「そうはいっても重カノン砲でしょう?隠せるとしても精々1,2台、展開するのも大変ですから杞憂なんじゃないですかね」
砲手のピトー・ケアン伍長が笑いながら言う。
「何事も警戒しておくに越したことは無い!かの英雄の死が流れ矢だと知っているだろう!」
「へぇ、知らなんだ。どこの英雄で?」
「何も知らないんだなお前は……いいか…」
◆◇◆◆◇◆
「敵だ…数は4両」
付近の雑木林に潜む影。
ドイツ軍砲兵大隊第1小隊ランベルト軍曹は茂みからモント達の戦車隊を捕捉していた。
「こちらも4両だが不足は無し…と」
ランベルトは75ミリ長砲身のⅢ号突撃砲に乗り込む。
「しっかりと狙えよ…シャルンホルストの仇と思え……」
距離は600をきっていた。
「テッ!」
DOM!
DOM!
DOM!
DOM!
ハウンド戦車に向かって75㎜砲弾が襲い掛かる。
2両が胴体に直撃し黒煙を吐き沈黙、中1両が砲弾に引火し爆発を起こして砲塔が吹き飛ぶ。
他1両が砲塔上部を掠り、残り1両は外した。
「ああっ!何やってんだよくそっ‼あんなに絶好のチャンスなんかないぞ‼次弾装填急げ!」
◆◇◆◆◇◆
「??あれは…」
二号車車長のバルドメ軍曹は遠くの雑木林に何か違和感を覚え双眼鏡を覗く。
そこには今まさに此方に向け撃たんとするⅢ突の姿があった。
「せn
そう言いかけた瞬間彼はミンチ肉と化した。
「???」
モントの目の前に肉片が飛んでくる、彼はそれが目の前を走っていたバルドメ軍曹の物だと理解するまで時間がかかった。
その直後彼の胃液が急速にこみ上げハウンドの車体を汚し同時に4号車が爆発し攻撃を受けたことを理解する。
「敵…」
そして指示を出そうとした瞬間彼の意識は永遠に途絶えた。
◆◇◆◆◇◆
「に……逃げねぇと!」
二号車の操縦手クレメンスはハウンドから這い出て逃げるも今度は榴弾が撃ち込まれる。
「うわぁぁぁ母ちゃぁぁぁん‼」
彼は爆風で全身を叩きつけられ動かなくなった。
◆◇◆◆◇◆
「何?モント軍曹の部隊が未帰還?」
近くの村の指令テントでは装甲大隊指令のイダン少佐が通信兵の報告を聞いていた。
「もしや敵と遭遇して全滅したんじゃ…」
「いくら何でも生き残りが一人もいないのはおかしいのでは?」
「想像以上の大部隊、まさか大規模反攻作戦の可能性…?」
テントの中にいる全員の背筋が凍る、いくらムー程度の戦力といえど装甲大隊規模ぐらい人海戦術でどうとでもなる。
「偵察機を飛ばせ!今すぐ‼」
イダンは部下に怒号に近い指示を飛ばす。
周辺の基地からは零式観測機*1に酷似したレグルス偵察機が数機飛び立った。
「無事見つけられるでしょうか…」
「わからん、偵察機が上手くやってくれることを期待しよう」
◆◇◆◆◇◆
実際既にドイツはムーと徒党*2を組んで攻め込んで来たのだ。
上空にはスツーカとフォッケウルフが、地上にはⅢ号戦車とⅣ号戦車*3、兵士を載せた装甲車とトラックが正に電撃の如くグラ・バルカスの警戒網をぶち破ってキールセキに向かい侵攻を開始した。
◆◇◆◆◇◆
レグルスに乗ったアルトスはつまらなそうに仕事を行う、前やっていた潜水艦隊の偵察任務よりかは戦線に近いし幾らかやりがいはある、だがやはり乗れるのならばアンタレスに乗って戦いたい。
そんなアルトスを相棒が注意を促す。
「おいきちんと見張りをしろよ、我々は目なんだぞ」
「解ってるって……………おいあれなんだ」
アルトスの目線の先にはゴマ粒大の斑点が見え、地上は砂煙が上がっている。
「ド……ドイツだ…!」
そう言っている間にも敵戦闘機の姿形が確認できるまで迫っている。
「早く報告を「今やってるよ‼」
アルトスは逃げるためスロットル全開で急降下を行い速度を稼ぐも所詮複葉機、フォッケウルフはピタリと付いてくる。
「クソッ!クソッ‼アンタレスだったらあんな奴‼」
アルトスは錯乱気味に喚き散らす。
未だフォッケウルフは撃つことなくいたぶる様に追いかけまわしている。
「早く逃げろよ、何をモタモタしている?」
「逃げる気か?この私から逃げられるとでも?」
朦朧としたアルトスの頭に何者かの声が流れ込んでくる。
「ドイツ野郎は悪魔だというのかッッ‼」
直後13㎜と20㎜各2門の機関銃が火を噴き、レグルスは木端微塵に砕けながら地面に叩きつけられた。
◆◇◆◆◇◆
「大変だ……‼」
通信兵がアルトス機からの報告を見て急いでイダンの元へ走る。
「何てことだ、応援を呼び直ぐに防衛準備を急げ!」
偽装網に土嚢、機関砲、戦車砲を用意するが数が足りない、しかし今ある物で戦わなければならない。
聴測機からは既に計算が済み増援は間に合わないという結果を改めて示しているだけだった。
◇◆◇◆◆◇◆
QUWAOOOO‼
甲高い唸りを上げスツーカは敵陣地へ500キロ爆弾を叩きこみ、付近に止めてあった装甲車が吹き飛ばされる。
「耳がッ!!」
「何だこの数はッ!!」
「お前ら無駄口叩いてないで撃てッ‼」
生き残りのシェイファー戦車がⅣ号戦車に応戦するも弾が弾かれた後めでたく松明の仲間入りを果たした。
イダン少佐の装甲大隊は敢えなく全滅した。
◆◇◆◆◇◆
『こちらリチャード、敵戦車を撃破!』
先程から聞こえてくる無線からは敵の撃破報告しか聞こえてこない。
「流石はドイツの戦車ですね。グ帝の戦車など一捻りです。」
技術士官として乗り込んだラグノフは思わず感嘆の声を漏らした。
空洞山脈を崩した際に鹵獲したハウンド戦車を使いドイツ戦車の威力を調べた際ほぼ一方的に撃破出来る事が解ったムーはドイツ戦車からなる戦車隊を編成し実戦投入した。
既に敵は総崩れとなった今、ムーにとっても狩りと言って差し支えなかった。
◆◇◆◆◇◆
「敵は既に第三防衛線を突破しています‼」
ゴート中佐の部隊はドイツ軍に備えていたが、ほかの部隊同様蹂躙の憂き目にあっていたが遂にエヌビア基地より援軍が目の前まで来ているとの情報が入った。
「戦いの女神は我らに微笑んでくれた…!」
ゴート中佐は涙ながらに呟いた。
◆◇◆◆◇◆
「なんだもう敵はいないのか」
37ミリ砲に蹂躙されたハウンドをみて呟くはハンス・ウルリッヒ・ルーデルその人であった。
「そう焦らなくとも直ぐ敵と会いますよ」とアルフレート・シャルノヴスキー。
「もう少し奥に行ってみよう」
彼を乗せたスツーカはエヌビス方面へ飛んだ。
…そこにはゴート中佐救援のために向かっていたハウンドの群れがあった。
「どうやらツキは此方にあるようだな」
ルーデルは満面の笑みで操縦桿をさげた。
遂に始まりました。