中央歴1639年4月30日 クワ・トイネ公国 政治部会
先日26日、ドイツ国がロウリア海軍を殲滅した時の様子を説明する為パンカーレが呼ばれていた
「ーー以上がクワ・トイネ沖海戦の戦果報告になります」
「・・では何かね、ドイツはたった4隻で4400隻を殲滅し、かつ飛竜100騎を撃墜したと言うのか?それも無傷でか?」
「いえ、ドイツ艦2隻が飛竜による攻撃で外装に損傷を受けているので被害はゼロではございません」
「しかし、こんなのは被害の内に入らないのではないのかね?」
その様なツッコミが入り、パンカーレは困った顔をする
「しかし・・・ まぁいい、この戦いによってロウリア王国海軍は壊滅したんだ、あの規模を再建するには20年はかかるだろう、 軍務卿、陸の方はどうなっている?」
話が陸の方に移り、パンカーレは胸を撫で下ろす
「はい、現在ロウリア側地上部隊はギム周辺に陣地を構築しております、海からの侵攻作戦が失敗した為、ギムの守りを固めてから再度侵攻してくるものと思われます。電撃作戦は無くなったと見ていいでしょう」
続いて軍務卿は手元に用意した、諜報部と西部防衛隊からの報告を読みながら答える。
「ドイツの動向ですが、城塞都市エジェイに一個師団、数にして1万人の派兵の許可を求めてきております」
「1万人か・・ 何にせよ援軍を送ってくれるとは有難い、よし、外務卿今すぐにドイツ軍に来てもらう様にサインしよう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ロウリア王国 王都ジン・ハーク
ハーク城
ロウリア王国34代大王ハーク・ロウリア34世は、将軍パタジンの戦闘結果報告を聞き、呆然としていた
先日のクワ・トイネ沖海戦で謎の巨大艦が現れ、飛竜100騎が全滅、海軍に至っては4400隻全てが沈められ壊滅すると言う信じられない報告だった
「この度の海戦、何故我らは負けたのだ?」
「はっ、僅かな生き残りからの報告が余りにも荒唐無稽な内容の為、現在原因の再調査と報告の信憑性の確認を急いでいる最中でございます」
報告書によれば
[飛竜は爆音と共に黒い霧に包まれると身体が裂ける様に落ちていき、敵艦に近づいた者は敵船についてるバリスタの様なもので叩き落された]
と書いてあった、
(の様なものってなんだ??)
余りにざっくりとした表現にパタジンは困惑する
・・・・・
「いずれにせよ被害は事実だ、今後この様な事があっては困るぞ・・・」
「はっ!海戦の敗因が判明するまで
海軍の積極的な進出は控えます、ただ陸上部隊は数が物を言います!現にギムは既に陥落済みでございます、以降の作戦は万全を期しておりますゆえ、陸上部隊だけでも公国を陥落させる事は容易にございましょう、陛下におかれましては戦勝報告を大いにご期待くだされ!」
「パタジンよ、此度の戦はそなたにかかっている。期待を裏切ることのない様に頼むぞ」
「はっ!ありがたき幸せ!」
その夜、ロウリア王は想定外の敗戦に苛まれ、眠れない夜を過ごした
◇◆◇◆◇ 中央歴1639年5月13日 城塞都市エジェイ◇◆◇◆◇
西部方面師団 将軍ノウは援軍で来たドイツ軍の司令官を迎える準備をしていた
ドイツ軍の1万人は兵力としてはエジェイに公国軍3万人が駐屯しているため、まぁ悪くはないだろう
(因みに途中で拾ってきた200人の避難民というお荷物まで持ってきていた)
(・・・まぁ このエジェイは我が軍だけで押し退ける、ドイツ軍に手伝ってもらうほどでもないわ)
◇◆◇◆◇◆◇◆
コンコン
ドアがノックされ、3人ほどが入室する
「ドイツ国防軍、歩兵師団団長のシュミットです」
ノウが着ている宝石入りの服程ではないが、それなりにしっかりとした身なりだ
(こやつがドイツの派遣軍の将軍か、
まぁ新興国としては妥当ななりだな)
「これはこれは、よくおいで下さいました、私はクワ・トイネ公国西部方面師団将軍ノウといいます、この度の援軍に感謝いたします」
とまぁ社交辞令である
そのままノウは高圧的に続ける
「甚だ心外ながら我が国はロウリアに侵略され、彼の国に一矢報いようと国の存亡をかけて立ち向かっております。
我らの誇りにかけてロウリア軍は我らが退けます。
ドイツの方々はどうぞ安心して、
あなた方の基地から出ることなく後方支援をしていただきたい」
ノウはドイツのプライドをへし折るつもりがありありと現れていたので、側近たちは外交問題にならないかヒヤヒヤしている、現にドイツ軍の何人かは明らかに不快な顔をしてこちらを眺めてる
そんな中シュミットは口を開く
「わかりました、我々は後方の陣地で精鋭なる貴軍らの戦いを眺めてる事としましょう、そのとっても素晴らしい戦いを詳細に報告させる為に通信兵をエジェイに入れてもよろしいか?」
「どうぞどうぞ、御好きにしてください」
必要最低限の情報交換と挨拶を交わし、会談が終了した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
野営地に向かう車の中でシュミットとほか二人が話し合っていた
「まったく、蛮族とはいえあそこまで低レベルとは!」
「そうカッカするな、奴らの好きにやらせればいい」
「しかし、この距離からとなれば榴弾砲での砲撃でしょうかね?」
「そうだろうな、まぁ、あの城の規模から
見れば陥ちる事もそうそうあるまい」
◇◆◇◆◇◆◇
数日後
ノウは焦っていた
ロウリア軍2万がエジェイから5キロの所に布陣している、兵力からすればただの先遣隊なのだが、こちらから攻撃して
ロウリア軍本隊が到着する前に戦力をすり減らすことだけは避けたい、それにロウリアの敵騎兵が300名程やって来ては昼夜問わず城外で怒声を上げるという挑発行為を繰り返している事だ、
この挑発行為に見張りの兵は神経をすり減らし、士気は下がっていった
そしてその日の夜もロウリア兵の怒声が
司令室まで聞こえていた
「ぬぅ・・・ロウリア兵め、卑怯な真似をしおって。突っ込んでくれれば戦い用があるのいうのに、どうするべきか・・・」
ノウは苛立っていた
すると、側近が入って来た
「将軍!ドイツ軍のシュミット殿が来ていますが入れますか?!」
「・・・こんな時間になんだ・・まぁ良い、入れていいぞ」
◇◆◇
「やぁノウ殿、こんな夜分遅くに申し訳無い、何せ外が喧しくこっちまで聞こえるもんでね」
流石に怒声はドイツ軍の野営地には聞こえないだろう、完全な嫌味であると理解したノウは多少不快感を表しながらも話す
「こっちも国の存亡がかかってる戦いでな、安易な考えで行動して被害を出したく無いからな」
シュミットはそのまま窓際に手をかけて外を眺める
「しかし、こんな状態では兵もまともに休めないのではないのかな?」
「フン、アイツらを始末出来るのならとっくの前に始末しとるわい」
「こんな時間まで騒いでる悪い子は
お仕置きしなくてはなりませんなぁ、
将軍もそうお思いでしょう?」
「そうだな」
(コイツは何をいってるのだ?)
「もうそろそろでお仕置きされる筈ですな」
そう言うとシュミットは懐中時計をだして時間を確認する
「あと数分といったところか・・・
ノウ将軍も空を見ようではありませんか、ほらこんなに綺麗な星空ではないですか」
「ハァ、こんな星空など見馴れておるわ」
シュミットが何をしたいのか全くわからず困惑するノウであったが・・・
ヒュルルルルル
ヒュルルルルル
ヒュルルルルル
突如遠くから聞こえる怪音にノウは
混乱する
「・・・3・・・2・・・1 」
「おっ おい!なんだこの音は!」
ズドドーーンン!!!
先程までロウリア騎馬兵がいたと思われる所から土煙が吹き上がり
眼下では兵達が突然の出来事に右往左往している
「これで今夜はぐっすり眠れるでしょう、兵達もしっかり休みを取らないと体力が持ちませんよ?、では私はこれで」
そう言うとシュミットは部屋から出て行ってしまった
ノウは何が起きたのか理解出来ず口をあんぐりと開けたまま突っ立っていた
◆◇◆◇◆◇
ロウリア王国東部諸候団野営地
「何?威嚇に向かった騎兵が時間になっても帰ってこない?」
「はい、他にも数名の兵を調査に出させたのですがいずれも帰還していません」
「エジェイの兵は見つけ次第攻撃していると言うわけか・・・ 」
「しかしだからと言って全員が全滅するとは・・・」
「むぅ、 暫くは威嚇を控え 本隊が合流するまで待機していよう」
このまま野営地にいるだけでは良い報告義務が提出出来ず、下手をすれば死にやすい突撃隊に配置換えさせられるかもしれない、しかし悪戯に兵を出して消耗するよりはマシだと考えたようだ
ロウリア王国軍本隊が合流するまでの数日間エジェイ近辺では久しぶりの静寂が訪れたと言う