メガネ端正(転生)   作:飯妃旅立

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どうも、バナキナスバナナスと申します。
略してバナナです。

グレイセスの転生モノです。


原作前編
1.目覚め


 目を開けたら、気難しそうな男の顔がドアップにあった。

 

「レイモン。お前の名は、レイモンだ。

 オズウェル家を継ぐ立派な男になれ。いいな?」

 

「あぁぶ……」

 

 そして上手く喋る事ができない。

 把握した。

 これが、転生か!

 

 

 

 

 

 

 

 レイモン・オズウェル。

 それが俺に付けられた名前だ。

ここ、広大な砂漠(ストラタ)のど真ん中に位置するオアシス、首都ユ・リベルテの中でもかなりの実業家であるガリード・オズウェルの甥として生まれ、いずれ家を継ぐ者として丹念な勉強と訓練を積まされている。

 

 決して積んでいるわけではない。積まされているんだ。

 俺は、決して、決して、家を継ぎたいなどとは思っていないのだから。

 

 無論オズウェル家に文句があるわけではない。潤沢な財産に地位はここストラタではなかなか手に入らないものだし、外に出ればむせ返るような熱気が肌を焼く中で、この家は大輝石の技術を用いて作られた冷房のガンガンに効いた涼しい空間であり、快適極まりないのだから。

 では何故家を継ぎたくないか。

 

 とても簡単である。

 

 ――自分より遥かに優秀な弟が来るとわかっていて、誰がふんぞり返って家なんか継ぐかよ!

 

 今はまだ、彼は生まれてすらいないだろう。

 だが、いずれ来る。必ず来る。俺は知っている。

 

 だが、今は雌伏の時だ。

 叔父ガリードは実業家。現時点で政治に向かないとでも判断されれば、即軍に入れられる事だろう。それは嫌だ。冷房の効いた空間にいたい。

 だから、俺がハメを外すのは彼が来てから……ある程度彼が「使える」と判断されて、ガリードの目が彼へと向いてからだ。

 

 そのために今は力を養い、知を蓄え、刃を磨ごう。

 

 いつか必ず――アンマルチアの里でのんびり暮らす為に!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい? 謁見……ですか? 私が」

 

「そうだ。大統領に、お前の顔見せをする事になった。いいか、くれぐれも粗相はするなよ」

 

「はい。それで、日時の程は……」

 

「今日だ。すぐに迎うぞ」

 

「oh…」

 

 今日も今日とて勉学訓練! と意気込んでいたらコレである。

 大統領。このストラタ共和国の国家元首を指す言葉である。

 名を、ダヴィド・パラディ。非常にダンディな黒豹を彷彿とさせる声の持ち主で、また非常にやり手のお方である。

 

 しかし、珍しい。

 こんな急な予定を組むなんて。叔父も大統領も綿密な計画を練るタイプだと思っていたのだが。

 

 ともあれ、支度をしなければならないだろう。

 

 度の入っていないメガネを中指で上げる。髪型良し。唇良し。

 準備万端!

 

 

 

 

 

 

 

 

 青を基調とした、水に溢れた空間。

 この砂漠において権威を示すに最も適しているだろうソレは、視覚的にも涼しさを与えてくれる。

 まぁ、そんなものが無くとも俺の身体は冷えているのだが。

 

「君がレイモンか。そうか……。顔をあげたまえ」

 

「はっ」

 

 片膝をついたまま、頭を上げる。

 目を合わせる。非常に力のある瞳だ。だが、俺だって負けないぞ。

 ここで負ければ、ガリードに用済みの烙印を押されてしまうだろうことは目に見えている。

 

 俺にとってこの国は踏み台でしかないと、それくらいの気持ちで見つめ返す!

 

「……良い目だ。ガリードに似て、目的を果たすためならば努力を惜しまない瞳だな。

 よろしい。ガリード、レイモン君をしばし借りるぞ。何、二人きりで話してみたいだけだ」

 

「……わかりました。レイモン、決して」

 

「粗相はするな、ですね。わかっていますよ」

 

「なら良い」

 

 ガリードは顔を伏せたままだ。

 

 俺は大統領に手招きをされて、一度頭を下げたのちに立ち上がり、彼の後を追った。

 

 

 

 

「楽にしてくれていい。特に政治に関わるような話題でもないのでね」

 

「では」

 

 足を開く。

 手は後ろに組んだままだ。

 

「……先程はガリードに似ていると言ったが、訂正しよう。

 君はガリードよりも遥かに野心家だな。既にやりたい事が決まっている。そんな目をしている」

 

 ……これだから人の上に立つ人間ってのは。

 余程俺がわかりやすいのか、余程この人が見識に優れているのか。

 まぁ、両方なんだろうけど。

 

 とかく、見透かされているなら取り繕う必要もない。

 

「お見通しのようで。であれば、私が叔父に対してどのような思いを抱いているのかも?」

 

「歯牙にもかけていない、といった所かな? この広大なストラタ砂漠でさえ、君にとっては踏み台の一つでしかないように見えるよ」

 

「……御見逸れしました。今までの態度を詫びさせていただきます」

 

 姿勢を()()

 楽にしてくれ、と言われたにも拘らずそれに従わなかったのは、ささやかな反抗と言った所だろうか。くれぐれも粗相はするなよ、と念を押されたからな。いきなり粗相をしてみたわけだ。

 

「中々にユーモアの溢れる子のようだ。あの堅物に育てられたにしては、非常に融通の効く性格のようでもあるな」

 

「生来なもので」

 

「全く、今年で六つの子供の言葉ではないな。気に入った。今までの無礼を許そう」

 

「ありがたく」

 

 どうせ大統領も無礼だなんて思っていないし、俺も無礼を働いたなんて思っていない。

 この茶番劇はただのじゃれ合いだ。多分、俺の性格は先程の謁見で全て見抜かれているのだろう。

 その上でこの人は俺を部屋に呼んだのだ。

 

 であるならば、ガリードにするような演技をしていても仕方がない。

 

「さて……少々真面目な話をしよう。

 これに覚えがあるかね?」

 

 パサッと軽い音を立てて机に置かれたのは、紙の束だ。

 政治的な話をするつもりはないと言っていたのに、真面目な話と来た。

 

「拝見いたします」

 

 断りを入れて、束を手に取る。

 

 あっ。

 

「それは我が国の大輝石(バルキネスクリアス)……大蒼海石(デュープルマル)の精巧なスケッチ画だ」

 

「……ええ、上手く描けたと自負しております」

 

「素直でよろしい。そう、その絵は君が描いたものだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()スケッチ画だ」

 

 確かに、生で見たのは先日ガリードに連れられて見に行ったのが初めてだった。

 だが、生じゃなければ、それはもう何度も何度も見ている。用向きは中の存在。あと炎集め。

 何より俺は大輝石が好きだったから、というかアンマルチア族の技術が好きだったから、それはもう舐めるようにみている。スケッチ画くらいはお茶の子さいさいである。

 

「ガリードは君を軍に入れようとしているようだったが……どうだろう。大煇石の研究員になってみる気はないかね?」

 

 おっと話が飛んだぞ。

 正確に言えば俺が話を聞いていなかった、という方が正しいのだが。

 

 しかし、研究員か。

 

 炎天下の中、大蒼海石の涼しさがあるとはいえ、日中ずっと外で研究?

 しかもあの辺魔物でるのに?

 

 嫌だぁ……。

 

「君は我が国の研究に大いに貢献してくれると信じている。どうかね。なんであれば、ある程度の願いも聞いてあげよう」

 

「六つの子供に何を求めているのかわかりませんが、そうですね……いくつかの条件を飲んで下さるのであれば、引き受けましょう」

 

 くれるというのなら貰おう。

 六つの子供が一丁前に出す条件なんてものを飲めるような国家元首ならば、だが。

 

「いいだろう」

 

「うぇっ」

 

 あ、変な声が。

 いや! そんな事より!

 

 内容も聞かずにいいだろうって……おいおい!

 

「……国家元首として、流石に条件の内容を聞かずに頷くのはどうかと」

 

「君はこの国の事を思ってはいないが、滅ぼしたいと思っているようにも見えないからな。問題ないと判断したまでさ」

 

「……恐ろしい人だ」

 

 一生勝てる気がしない。

 よくもまぁガリードはこの人に反旗を翻そうと思ったな。

 

「それで、条件とは別に……何か欲しいものはないかね? ガリードの事だ、どうせ甥に欲しい物など聞けないだろう」

 

「いえ、聞いてきますよ。聞いたところで叶えるつもりがないだけで。無論、こちらもそれ前提でおりますので、叔父に願うことなど一つもありません」

 

「それはいけないな。悲しい事だ。

 子供はもっと子供らしく欲しい物を言うべきだ。それで、何が欲しいかね?」

 

「……では、練磨道具を。宝石練磨は前々からやってみたい事でしたので」

 

「全く子供らしくない……が、いいだろう。後日、研究員として出向いた時に与える事としよう」

 

「ありがたく」

 

 化かし合いが終わる。

 最後には二人とも肩を竦めて、笑い合った。

 

 全く以て……楽しい時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ると、物凄く険しい表情のガリードに見つめられた。何かを言いかけたようだが、言って来なかった。

 研究員になれば勉学の時間が減る。だが、同時に大統領に知性を認められたという事でもある。

 自分好みに育てたい一方で、有用な大統領とのパイプが出来た事に板挟みになり、結局何も言えなかった、という所かね。

 

 与えられた自室に戻る。

 

 煩わしいメガネを外せば、ようやく肩の力が抜ける。

 

「あー……緊張したわー……」

 

 服を畳んで、そのままベッドにIN!

 手足を投げ出して天井を見る。

 

 いやはや。

 

 あの子が来るまでの間、もう少し好きにやらせてもらおうかね。

 

 




大輝石の中でもグローアンディが一番好きです(

2018/6/23 諸々修正
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