メガネ端正(転生)   作:飯妃旅立

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ちょっと遅れましたね。
土曜日は用事あるので1時更新できません。そのつもりで。


11.見つけ

 

 原素(エレス)の中には、生物全般が嫌う原素(エレス)、というものが存在している。

 攻撃術や武技についた特攻、あれの寄せ集めみたいなモンと考えてくれればいい。

 だが、嫌うと言っても「なんか嫌だな」程度の濃度であって、平時の人間くらいの頭があればその空間だけを隔離して近づかない、なんてことは無い。

 追い込まれたり追いかけたりして余裕が無くなっている、もしくは興奮していると無意識に避けたくなるようだが。

 

 とかく、空気中そこかしこ、特に街やダンジョンにいる生物たちから追い出されるようにした「縄張りの区切り」みたいな場所に、その原素(エレス)は集まっているのだ。色は白。

 

 人、それをセーブポイントと言う。

 

「……と言ってもセーブが出来るわけじゃないんだろうがな。死んで試すなんてするわけないし」

 

「ライモン様、独り言は奇特な方に見られますよ?」

 

「うるせえ」

 

 少なくともエフィネアにおいて、火、水、風の三色の原素(エレス)は生物に必要なものである。

 だから、コレの事を敢えて形にするのなら、状態異常を引き起こす原素(エレス)の残りカス、みたいなものだろう。状態異常を引き起こすほどの力は無いが、魔物は寄って来なくなる。

  

 コレをどうにか採取出来れば魔物対策において色々有利になると思うんだが、このしゅわしゅわその場から全く動こうとしない。容器に入れようとしてもふわっと逃げる。多分、容器を形作っている原素(エレス)の間を抜けているんだろう。

 さらに俺自身も生物に含まれるので、このしゅわしゅわがどうも気にくわない。採取できない事への興奮と長く居すぎた事が原因だろうが、なんとも不思議なイラ立ちだった。

 

「失礼ながら言わせてもらいますと、ソレを採取しようなどという考えを起こすライモン様は既に奇特ですね」

 

「護衛のお前まで舌が回るようになったのか。伝染病か?」

 

 とうとう護衛のストラタ兵まで部下(ヤツ)の毒に……。

 いや、元からその気はあったんだが。薄々勘付いてはいたが。

 

「……まぁ、取れんモンの前でうだうだしていても仕方がない。

 そろそろ行くか」

 

「はい。既に乗船代は支払っています」

 

「忘れ物も無かったですよ。流石ですねライモン様」

 

「口調はそっくりだな。見た目全然似てないのに」

 

 護衛はよくいるストラタ兵の青い服。

 部下は未来で俺が来ていたような服を着ている。だから、視覚上の判別は全く難しくない。強いて見分ける方法があるとするならば、過度にツッコミを期待して俺を弄ってくる方が部下だ。

 

 ……それでいいのか部下。

 

「二ヶ月。

 長いと思ったが、早い物だったな。それもこれも、始めの一週間というか二日でウィンドル全土を一周させられた事が原因だと思うんだが、どうだ」

 

「そこについては同意いたしますね。一周させられたり逆走させられたり。情報収集にも駆けずり回りましたし」

 

「立場上、余り言ってはいけないのはわかっているのですが……まぁ、同意を返しておきます。とはいえ、ストラタに帰れば護衛達(わたくしども)は長期休暇に入りますので……特に問題はありませんね」

 

 ずるい。

 ずるいぞお前。

 

「……まぁ、なにはともあれ、だ。

 それなりに楽しかったぞ、ウィンドル。立場上、そこまで頻繁に来ると言う事は出来んだろうが……一日二日であれば、また来たいと思える場所だった。

 次は懸念事項が無い、ただの旅行として来させてもらう。……行くぞ」

 

「御意に」

 

 こうして。

 

 滞りなく、俺のウィンドル小旅行は終わりを迎えたのだった。

 ……ヴィクトリア嬢は、もうすぐあの人が来るから、なんだ、頑張れよ! バリーも応援だけはしておくぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十一歳になった。

 

 大翠緑石(グローアンディ)の研究結果を所長に伝えると、「だろうな」という反応で、やはり予想していたらしい。一応施設長にも意見を求めてみたが、「だろうね」という反応だ。

 そう、少なくとも現時点での不調は奴のせいではない。

 ただの使い過ぎ、フォドラの二の舞である。

 

 モーリスは順調にエレスポットの使い方を心得てきたようで、アイテム・料理のセット共に問題ないようだ。頃合いを見て魔導書も作ってみたいのだが、如何せん造り方がわからない。

 イマスタに「エレスポットの効果を高める書物のような物」を考えてみてくれと依頼はしてあるのだが、難航している様だ。

 

 なお、イライザには再会できた。

 口ぶりからして居住区の西側にいる事はわかっていたからな。というかモーリスに問い詰めれば一発だった。

 ところでこの二人、なんだかとても……仲がいいと言うか、見ていて微笑ましいと言うか、まぁ、くっつきそうだな、感はある。

 

 ガリードは顰め面のまま、多少喜んでいるようだった。

 俺が無事に帰ってきた事……であるはずがなく、ラント領主との繋がりに、だ。

 俺が名を騙っていた部分はまぁなんとか言い訳するだろ。

 

 大統領だけは相変わらず、何を考えているのか全く読めなかった。

 指示されたラントの地図を渡しても、「ふむ」。

 大煇石や国土に関する論文を渡しても、「ふむ」。

 本当、胃に悪い。やめて欲しい。あの人との会話は楽しいんだがなぁ。

 

 そんな感じで、もっぱらエレスポットと大煇石の効率工事、この二つを主軸に頑張っていたら、十一歳になっていた。早すぎる。

 

「で、なんだ。誕生日の俺を呼び出すなんて、プレゼントか?」

 

「おい、本当にそうだったとして、それをお前が言ったらサプライズにならねえだろ。ついでに言うとお前が今日誕生日なのは今知った」

 

「うーん、ウィンドルで会ったあの綺麗なライモン君はどこへ……えぐえぐ、お姉さん悲しい」

 

 そんな誕生日に、俺はモーリスとイライザに呼び出されている。

 大体用件はわかった。わかったから区切らなかった。

 

「本名はレイモンだ。イライザ、モーリス。どうせお前らの結婚報告だろう。

 俺は忙しいんだ。違うならとっとと言ってくれ」

 

「……なんでわかった」

 

「えー! なんでわかったのー!?」

 

 分かりやすすぎるからだよ!!

 夜中に呼び出して、神妙な顔して、「話がある」なんてあからさまだろうが!

 

 別に俺に言う必要はないのに、わざわざ言うのは……あぁ。

 

「軍を辞めるのか?」

 

「お前は……なんつーか、面白みというか……そうやって全部先読みしてると人生つまらなくなるぞ?」

 

「エレスポットはお前が信用できる奴に渡してくれ。アレは軍人の持ち物だからな」

 

 やれやれ、折角出来た軍部との繋がりもパァか。

 遥か未来の弟君のためにコネでも、と考えていたが……どうせあの子は自力で辿り着く。

 余計なお世話だった、という事にしておこうかね。

 

「もー、ちょっとは驚いてくれてもいいのに……」

 

「すでに子供がいる、とかだったら驚くけどな。

 ……なんだ、その目は」

 

 なんだその間は。

 

「まぁ、その、なんだ、来年には生まれる予定だ」

 

「えへへ……」

 

 イライザがお腹を叩く。叩くな。悪影響が出るだろ。

 ……これは十一歳の子供としてどういう対応をすべきだ? 「お盛んだな」は流石にセクハラが過ぎるだろう。しかし俺のキャラで何も知らないフリというのは……。

 いや、ここはノータッチ……いや、しかし、ううん。

 

「……名前は考えてあるのか?」

 

 日和ったなぁ……。

 

「おう。

 男なら、イザリス」

 

「女の子ならモイラだねー」

 

「お前らの名前を合わせただけじゃないか。……あぁ、いや。

 いい感じにハイブリットになって、いい感じに良い子になりそうだな」

 

「お前、それは俺達が単体だと難があると言っているように聞こえるんだが?」

 

「そう言っているつもりだが? 特にイライザ。お前が常識を教えられるとは思わないからな。是非とも教育はモーリスに任せてくれ」

 

「酷過ぎるぅ……」

 

 しかし、イザリスか。

 ……暗黒な魂に出てきそうな……いやいや、なんでもない。

 

「一応、友人として言っておく。

 おめでとう。幸せになれ、馬鹿ども」

 

「おう」

 

「うん……って、馬鹿ども!?」

 

 とっとと安全圏に行って、ぬくぬく幸せを噛みしめやがれ。

 暴星魔物が出てきたら安全は減るんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイモン様。お待たせいたしました」

 

「ああ。気取られてはいないな?」

 

「はい。

 ……ガリード様には、ですが」

 

「あぁ、大統領にはバレているだろうが、問題ない。此処に来るまでに妨害が無いと言う事は、黙認だ。

 それより、候補地を探すぞ。抜けていられる時間はあまりないんだ」

 

「御意」

 

 ここはストラタ大砂漠・西……の、もっと西。

 ストラタという大陸の最西端と言っても過言ではない場所だ。

 

 そんな偏狭くんだりにまで来て俺と部下(コイツ)が何をしているかと言えば、簡潔に言うと土地探しである。

 詳しく言うなら、「ストラタ最大の避暑地・スパリゾートを建設するための土地探し」である。この辺りに適所がある事は分かっているからな。

 最も水の原素(エレス)に富んだ、大蒼海石(デュープルマル)原素(エレス)を引いてこなくても良い場所が必要なのだ。

 

 この辺りには緑があるし、砂漠からの砂や風は標高の高い山が遮ってくれる。

 海風も心地良く、何故人が住んでいないのか、というレベルである。

 

 まぁ、理由はわかっている。

 大蒼海石(デュープルマル)が遠いから、だ。大煇石から抽出できる原素(エレス)は便利だからな。そこを中心として町が発達するのはなんらおかしいことではない。

 それに、こちら側からではフェンデルもウィンドルも遠い。ライオットピークがある以上、反対側に集結した方がいいのだ。

 

「凍牙! ……流石に魔物は多いか」

 

「まぁ、人間がいませんからね。この自然にリゾートを造ろうと言う私達こそ、何の疑いも無く侵略者でしょう」

 

「震天! はは、何の言い逃れもできんな!」

 

 それでもやる。

 資金源という打算もあるが、いずれは「大蒼海石(デュープルマル)に頼らない生活」も出来るのだ、ということを知ってもらいたいがためのリゾートだ。

 普段の生活よりも快適且つ住みやすい空間が大煇石の恩恵無しで造られていると知ったら、全員とは行かないまでもそれなりの数がこの海岸線に移住するのではないかと思っている。

 

 そうすれば大蒼海石(デュープルマル)も安泰だ。今の様に過剰に原素(エレス)を吸われる事無く、ただ必要最低限の原素(エレス)と、”象徴”としてそこにあってくれる。

 ストラタを想ってではない。あくまで大煇石を想っての事だ。

 

「ふむ。

 まぁ、この辺だろうな」

 

「そうですね。海に近く、水の原素(エレス)が豊富で……何より涼しい。ストラタにこんな場所があったとは、驚きですよ」

 

「この国に生まれたのならそれは仕方がないさ。ストラタとは暑い物。それは他国民以上にストラタ人が知っている事だ。

 今更避暑地を探そう、なんて発想は出てこないさ」

 

 ウィンドルの資源を狙っている奴らも、あくまでウィンドルは”資源”であって、そこに移住しようと考えているものはほとんどいない。

 ストラタという国に住まうのは当たり前で、誇りで、常識で。

 だから、奪う事こそ考えれど、この砂漠を捨てようとする者は誰一人としていないのだ。

 

「よし、下見は終わりだ。

 資材と人材を運び込み、建設を開始するぞ。費用は勿論、雇った護衛にはエリクシールの大盤振る舞いだ」

 

「そのために……。

 全く、レイモン様はなんというか……いえ、言わないで置きましょう」

 

「ふん、わかっていたくせに白々しい」

 

 こうして、ストラタ最大級の避暑地の建設が始まった。

 

 




イザリスの混沌……ウッアタマガッ
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