メガネ端正(転生) 作:飯妃旅立
専門用語?多目です。
回復術がどのようにしてPTメンバーを癒しているか、について話したことがあっただろうか。
簡単に言えば、治癒術師が対象者の
光子を使用した治癒術はまたプロセスが違う様なのでここでは割愛するが、ここで前提として分かって欲しいのは「
さて、十二歳になった俺とイマスタは、今尚魔導書に苦戦している。
モーリスとイライザの娘が生まれただとか、エレスポットの注文がようやく出てきただとか(これは嬉しいが)、スパリゾートの開発が順調だとか、そういう話は置いて於いて。
まず、基本的な所からおさらいしようと思う。
「イマスタ。エレスポットがアイテムを生成する仕組みを、簡潔に頼む」
「うん。
エレスポットは周囲の
亀車や他の乗り物では自然
言葉を区切るイマスタ。
一応補足説明をすると、
また、乗り物に関しては「人間の走行速度」以上のものだと無理という事がわかっている。軍用魔物なんかに乗った時ではいくら粘ってもアイテム形成はされなかったそうだ。検証者モーリス。
「集めた
この世の物品は全て
でも、形成が成功するかどうかは運次第。簡単な組成のものならすぐに、且つ簡単にできるけど、複雑な奴だと一週間以上かかったりする」
さらに、複雑な奴は使用エナジーも多い。高CPU使用率のアプリケーションを使うPCが多く電力を消費する、みたいなものだ。それで壊れると言う事は無いが、負荷はかかっているという事である。
ちなみに生物の組成は登録できない。ただし、生物であったモノは登録できる。
要は生き物というのは常に組成が変わっているもので、無論身体の大部分は変わらないが、何を食べた、どこで過ごしただとかで微妙な差異が出てくる。
エレスポットはそういう差異に弱い。その時に設定した組成以外は創る事が出来ないのだ。
あと、大きすぎるってのも理由の一つだな。エレスポットはあくまで携行できる壺。あまり大きい物は形成出来ない。
生物であったモノ、つまり死骸や身体の一部であれば、その組成が変わる事は滅多にないので、基本的には対応可能、という話である。ただし、何々というモンスターのどこ、という指定は難しいようで、何々という系統モンスターのどこ、という大まかな括りでないと設定は出来ない。
死骸や身体の一部もまた、大きすぎると設定不可である。
「ありがとう、イマスタ。
ついでに、エナジーについての説明も頼む」
「ん。
エレスポットが稼働するには、エレスエナジーが必要。これはアイテムの形成に必要な
エレスエナジーは、
「あぁ、問題ないな。流石はイマスタだ。
じゃあ、次は俺の番だ。一旦座ってくれ」
「うん」
コルクボードに張り付けてあった「エレスポット:アイテム形成に関する図説」を剥がしながら、イマスタが席に戻る。
今度は俺が、「エレスポット:料理の効果発揮プロセスに関する図説」を貼り付ける。
「エレスポットにはアイテムの外に、料理を登録する事が出来る。
料理そのものに効果があるのは知っているな?
それはある意味、食した者の糧になった
「質問。レイモンの好きな料理は?」
「マーボーカレーだ。何処へ行くにしても、最も頼りになる料理だからな。
続けるぞ。
エレスポットに料理の組成を登録すると、特定のある条件下においてのみ、料理の効果を再現してくれる。指定される条件は戦闘開始から何秒経ったか、だったり、仲間の傷がどれほど深刻になったか、だったりと様々だ。
この条件指定については未だ謎が多いが、俺の推測として『戦闘で発生する余剰
既に理解している事だろうに、律儀にもノートを取るイマスタ。
もしここにいるのがイライザだったら、ノートに書かれているのは落書きだった事だろう。
「戦闘に於いて、術技を使用した際などに込められた
人間側が得意とする余剰
エレスポットの指定する「戦闘開始から○○秒経過」や「○○ヒット以上」、あと「戦闘時間○○秒以下」なんかはこの余剰
他にも色々条件はあるが、代表的な物で許してほしい。
「そして結合解除
これはダメージによって戦闘者・魔物が失った
「○○のHPが○○%以下」や「誰かが戦闘不能」、さっきの「○○ヒット以上」も半分はコレに該当しているんだろう。
状態異常に反応するのは、状態異常に関する
とにかく、この際に出てきた結合解除
戦闘中、戦闘後の違いはほとんどない。あるとすれば、溜まって行く途中で反応しているか、溜まった後に反応しているかの違いくらいだ。
ちなみに料理の再現に使用するのも溜めた
「ここまではいいか」
「うん。
――おじさんも、大丈夫?」
「……あぁ、まぁ……理解は出来る……と、思う」
そう。
こうやっておさらいをしていたのには、理由がある。
エレスポット開発は極秘事項。俺とイマスタ、俺の私兵しか与り知らぬ話である。販売は俺が行っているので俺が関わっているのは知られていると思うけどな。
だが、それだけでは立ちいかなくなると言うのも事実。私兵は俺の部下だし、イマスタは年端もいかない少女だ。
誰か、俺の部下ではないもので且つ信用が置けて、自衛もある程度こなせる者を巻き込みたかった。
そこで白羽の矢が当たったのが、コイツである。
「アドルフ。疑問は先延ばしにするなよ? 聞きたい事があったらすぐに言え」
アドルフ・ラント。
此度のウィンドル遠征で俺が手に入れた、一番の品。
ガリードに引き渡すのは止めた。奴に渡したのはラント領主からの感謝状のみだ。
「……いや、なんというか……俺の二回り以上年下の子供に、教えられているというのがな……」
「なんだ、そんな事か。
気にするな。イマスタも俺もことエレスポットにおいては専門家だ。だが、他の教養には欠ける。総合的に見ればアドルフ、お前の方がはるか上の大人だ。それは俺もイマスタも認めている事だぞ」
「うん。ウィンドルの話、面白い」
イマスタの認め方はちょっと違うようだが。
「……そうだな、ま、新しい人生の始まりだ……識者から授業を受ける、なんて贅沢、感謝しないとだな……」
アドルフは流石次期領主候補だっただけあって、頭がいい。どこぞのマモレナカッタ人とは大違いだ。まぁ、彼も領主候補としての訓練を積んでいれば、どうなっていたかはわからないが。
「よさそうだな。
じゃあ本題に入るぞ」
「エレスポット:料理の効果発揮プロセスに関する図説」を剥がし、近くの机に丸めてあった「エレスポット:魔導書作成に関する図説」を貼り付ける。
本題はコレである。勿論アドルフにエレスポットの知識を覚えさせると言う意味では前の二つも本題なのだが、俺とイマスタでは思いつく事の出来なかった新しい風を取り入れる為に、風に因んでウィンドル出身のアドルフを呼んだのだ。嘘である。新しい風云々は後付けだ。
「続けて俺が説明するぞ。
魔導書というのは、効果的には料理に似ている。が、違うのは発動条件だ。
魔導書をエレスポットにセットすると、その効果はセットした時点から発揮される。外すまで、な。
つまり、この書物自体にとんでもない量の
「理論上?」
「ああ。
魔導書はまだ開発に至っていない。そのための外部知識として
一応、イマスタと俺の研究によって、さっき言った事だけはわかっている、というのが現状だ」
つまり、全然わかっていないのである。
私兵を使って三国を探させている(と言ってもフェンデルは余り行けていない)が、それらしきものは見つからず。やはり生成されていないというのが有力だと思っている。
「造る……に、おいて、何が問題なんだ?
素人の耳にゃ、
「
「武器の
だが、本の状態の時点で膨大な
あるいは、フォドラにおける煇石造りの知識があれば、話は違ったのだろうが。
少なくとも俺達に、エレスポットに設定できるほど小さな書物へ埋め込める装置の開発技術は無い。
「効果を持たせる、というのも至難。料理では到達しえない効果が理想形だけど、問題はどうやってエレスポットにその効果の指向性を持たせるか。そこの変更方法を私達は知らない」
コードプリセットは持っているが、コードの記述方法は知らないのだ、俺達は。
それを知っているのなら、恐らくこの世の全てを造り出す事だって可能だろう。
あるいは、星の核の複製でさえも。
「ほー……八方塞がり、ってわけだ。
んじゃ、もう一つ聞いてもいいか?」
「ああ。現状の俺達ではこれ以上の発展は無理だ。お前が頼みの綱なんだ」
「武器に使用されている
――……。
……ん?
……うん。
「採用だ。挑戦あるのみ」
「流石は大人。かっこいー。あこがれるー」
外にいる部下に合図。入ってきたソイツに、適当な武器を持ってくるように言う。
ちなみにここはイマスタの家である。
「効果の方はどうだ? 何か思いつかないか?」
「いや、そっちについてはさっぱりだ。俺はその効果とやらを体験した事はねえし……。
だが、その設計図の文字や話を聞いている限り、エレスポットという物自体お前達が一から考え出した、ってワケじゃないんだろう? だったら、世界のどっかに魔導書があるんじゃないのか?」
「その可能性はとうの昔に考えて、探させている。が、一向に見つかる気配が無い。ついでに言うと、既存の物だけで満足しては、量産が出来んだろう。生産方法を考えるべきだ」
「ふむ。
……んじゃあ、イマスタの嬢ちゃんが持ってる設計図、だったか? それみたいに、魔導書に関する設計図がどっかにあるんじゃないか?」
一瞬の空白。
一瞬の間。
そしてイマスタと俺、二人同時に顔を見合わせる。
「古い本……記述内容は難解……」
「魔導書という名前、あれも魔法の本……」
「「お硬い本!」」
そうだ、あの時に気付くべきだった。
エレスポットの錬成。その時に、千切られたページを必要とした。
それはつまり、エレスポットというものが発明された際、既にあの石化した本はあったと考えるのだ。
「……必要な犠牲だよな、イマスタ」
「うん。後で偽物をおいておけばバレない」
「お前ら、なんか不穏な言葉吐いてねぇか?」
研究に犠牲はつきものである。
生物であれば俺もまだ躊躇するが、石なら別だ。
「レイモン様、武器を購入してきました」
「丁度いいところへ来た。
私兵団を集めろ。少々危険に打って出るぞ」
「はい?」
いやはや、流石である。
流石ウィンドル人。良い風が吹きまくっている!
「……まぁ、いいか。いずれは人の為になる、って話なら」
アドルフが何かを納得しているが、いやぁどうでもいい!
さぁ、すぐに作戦を練ろう。
破壊しないように、且つばれないように。
あの本を運び出すぞ!
星の核の複製方法も気になっていたんですよね。複製した、ということだけはわかっていたんですが。
んで、これくらいしか理屈は思い浮かびませんでした。