メガネ端正(転生)   作:飯妃旅立

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前半研究

後半、ついに……


14.出会い

 十六歳になった。

 

 原則、この年までに軍学校に入らないのであれば、軍人への道は閉ざされる……と、モーリスが言っていた。原則というのは、余りにも秀でた才があれば歳が過ぎていても問題ないという事だ。まぁ、そういう人材は何故かウィンドルに集中しているので、ストラタに現れるという前例はほとんどないらしいのだが。

 ちなみに下は十二歳から門扉を開いている。無論死地に向かわせるような外道を大統領が許すはずも無く、十二から十七までを二年刻みで小等、高等、専攻と分け、専攻の中で自身の進みたい軍部に志願する、という仕組みだ。

 

 もっとも、ストラタ軍になど入る気がサラッサラ無い俺にとっては、さほど興味のある事柄ではないのだが。

 

 ……まぁ、大蒼海石(デュープルマル)の研究所は括り的に「ストラタ国防軍第四情報統括本部大煇石研究本部」という部署に入っているので、既に軍人と言われれば軍人である。何の拘束も無いが。あっても知らん。

 

 早々にガリードは俺を軍に入れる事を諦めているし、大統領もハナからそのつもり。

 モーリスでさえ俺が軍に入るなどとは欠片も思っていなかったらしい。イライザから聞いた。

 

 というわけで、一応、この時点で……家を出る前準備は整ったわけだ。

 後は大蒼海石(デュープルマル)に類する問題の解決、ガリードの未来の弟君に家督を譲ろうと言う気概の確認、そんでまぁ、モーリスとイライザの子の十二歳くらいまでの成長確認か?

 とかく時間しか解決しようの無い事柄を済ませてしまえば、晴れて自由の身。

 アンマルチア族の里に移住する、その日はもうすぐである。断られたらどうしようとかは考えない。

 

 現状確認はこれくらいで。

 この歳でピックアップすべき出来事は、やはりエレスポットに関する事だ。

 

 エレスポットの普及率はかなり順調である。便利である事、そして大統領が使用に言及した事が相俟って、注文が止まない。イマスタとアドルフ、俺で日がな効率化を図っているエレスポットは既に試作段階の半分以下の材料で錬成可能であり、魔導書もほぼすべてを作り上げる事が出来た。

 そもそもの話をすると、試作型一号(モーリスに上げた奴)と試作型二号(ウィンドルに持って行った奴)はセット数16の、所謂最終段階のエレスポットである。

 

 最近の効率化で判明したのだが、エレスポットの中にある原素(エレス)には、アイテム形成に使用する必要原素(エレス)、アイテム形成に失敗した時に生じる余剰原素(エレス)と雑原素(エレス)、そして白原素(エレス)を含む雑原素(エレス)にすら分類されない細々とした原素(エレス)、仮称廃棄原素(エレス)が存在している。

 内、余剰原素(エレス)と雑原素(エレス)は魔導書の稼働に使用しているのだが、廃棄原素(エレス)は全くの未使用だ。結合段階で変異・破損した原素(エレス)がこれになるのだが、どんどん溜まって行くはずの廃棄原素(エレス)は何故かエレスポット内のどこにも見受けられない。

 そこでいくつかの実験や検証を経た所、廃棄原素(エレス)はエレスポット自身の成長に使用されている事がわかったのだ。

 

 変異・破損が起きやすい料理の効果再現時に生成される廃棄原素(エレス)

 これを使用し、成長するエレスポットはそのセット数を増やしていく。

 現在製造している半分以下の材料のエレスポットは、セット数4の、所謂初期段階エレスポット。これに料理を設定し、廃棄原素(エレス)を溜めて行くことでいずれはセット数16の最終段階エレスポットにまで成長する、という仕組みである。

 

 よって、現在販売しているエレスポットは全て初期段階、セット数4のエレスポットになる。今まで出回っていた最終段階エレスポットは数が少ないし、かめにん達の思う「各国の信頼できる強者」達にしか渡されていないはずなので、そこまで問題にはならない……と、思う。思いたい。

 

 兎にも角にも角煮にも、エレスポットの開発はほぼ終了と言える。

 イマスタの母親の尽力によって街の道具屋や宿屋、武器屋でもエレスエナジーの補充が出来るようになったからな。かめにんが「独占売り上げが減るっす……」と嘆いていたが、そこは勘弁してほしい所である。

 

 で。

 

 で、今やっている事が、この”ほぼ”の部分。

 即ち、新たなる魔導書の製造である。

 

「……もう一度ウォールブリッジへ行きたい……というかもう里へ行きたい……辞書。辞書プリーズ」

 

 地下遺跡の装置で散見した言葉。

 主にプロトス1に関する情報だろうアレと同じ単語を抜き出し、それが使用されている魔導書の効果と比較して、他の部分の言葉の意味を返す。

 非常に地味で地道で、途方もない作業だ。

 

「……そもそもアンマルチアって、アマルコルドの捩りだろ……? エム・エルコルド……私は覚えている。だから、基本的な部分はイタリア語の言い替えや捩り……と考えれば、はぁ、なるほど……そうか、ふむ……」

 

 アンマルチアの綴はAmarcian。-ianは○○の人々の意味なので、Amarcの人々。アマルクといえばアマルコルド。エム・エルコルドの訛ったもの。

 フォドラのヒューマノイドが「……チア族」と発言をしていたので、千年前の時点で既に”アンマルチア”という言葉は有ったと言う事になる。

 よって、エム・エルコルドの意味……「私は覚えている」を転じて、「忘れられない一族」「忘れてはならない一族」という意味だと思うのだが、フォドラの民にとってエフィネア開発を進め、追放する形となったアンマルチア族を「忘れてはならない一族」と綴る意味が理解できていない。

 

 あ、アンマルチア族についての話になってしまった。

 今考えるべきは文字の方だって。

 

「でもプロトス1の詠唱含む言語はエフィネアの言葉だしなぁ。アンマルチア族は帰属したと考えれば不思議じゃあないが、プロトス1までこちらに合せるのは何故だ? それとも翻訳機能でもあるのか?」

 

 ……まぁ、有り得ない話ではない。

 というか、あぁ、そのためのウォールブリッジ地下遺跡か?

 エフィネア用に調整するための……そうだ、ラスタ・カナンにあった観測装置や風機遺跡にあった天候操作装置のように、遠隔で情報を伝える技術に関しては凄まじい発達をしているんだ。

 なるほど……ウォールブリッジ地下遺跡でプロトス1の知識情報なんかを書き換えられるのだとすれば、これほど良いリモートコントローラーは無い。自分たちは安全圏で、ラムダ必滅のためにプロトス1を操作……とまでは行かないかもしれないが、誘導できるというのなら、あそこを廃棄しなかった理由もうかがえる。

 

 あ、地下遺跡の話になってしまった。

 今考えるべきは言語の方だって。

 

「待てよ?

 フォドラの記録室の文字を、彼らは読む事が出来たよな……。

 つまりエフィネアとフォドラ、言語は変わらないのか?

 あ、いや、そうか。こちらの言葉はアンマルチア族が広めたもののはずなんだから、変わらないのは当たり前……ということは」

 

 という事は、この魔導書に使われている言語は……所謂プログラミング言語。

 地下遺跡で俺が見たのはコードそのもので、記録の方は別にあるのか?

 そうか、でもそう考えるとこのしっちゃかめっちゃかな記述もしっくりくるぞ……。

 

「……このinizionerという条件の元……Funzionien polmonightをunohnだけpotenziamenireaする……」

 

 丁度近くに会った先制の魔導書を教本に理解を進める。

 これで新しい物が生み出せるかどうかと問われれば、まだ顔を顰めざるを得ない。

 だが、一歩、また一歩とアンマルチアの叡智に近づいた気がする。

 

 ……英知の蔵に辞書とかあったりしてな。

 

 そんな研究で、十六歳は通り過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 十七歳も通り過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 十八歳になった。

 

 新しい魔導書がようやく完成し、十三日に及ぶ貫徹から凄まじい虚脱感と疲労に襲われている俺だが、そんなことをおくびにも出さずに直立不動している。嘘だ。眠い。さっきから口の中でなんど欠伸をした事か。

 

 だが、流石に今日は、今日くらいはしっかりせねばなるまい。

 

 何故なら――。

 

「レイモン。

 今日を以て、お前をオズウェル家の継承者候補から外す。以後、この者が私の次にオズウェル家を引く存在となる。いいな?」

 

「……はい」

 

「ふん。相変わらず何を考えているかわからんな。

 さぁ、義兄となる存在に挨拶をしなさい。……出来るな?」

 

 ガリードの後ろから、これでもかという程に怯えている青髪の少年が現れる。

 ガリードの脚にひしっとしがみつき、煩わしそうにしているものの珍しく困っているガリードに背を押され、少年がよろけながらも前に出た。

 

「ヒュ、ヒューバート・ラント……です」

 

「ほう、君が、ですか。

 ですが、ラント姓を名乗るのは良くないですね。既に君はオズウェル家の養子。であれば、オズウェル姓を名乗る必要があります。でなければ、君の父親に迷惑がかかってしまいますよ?」

 

 出来るだけ、感情を表に出さないように。

 今表に出すとぶっきらぼうになってしまう。

 

「ひっ……あ、その……ヒューバート、お、オズウェル……です」

 

「はい。

 私はレイモン・オズウェル。つい先ほどまでこの家の継承者だった男であり……今は、そうですね、突然現れた義弟君にその座を追われた、しがない男でしょうか?」

 

 ふ、素晴らしいギャグセンスだレイモン。

 部下のアイツに「レイモン様のギャクセンスを越える事は誰にもできませんよ」と言わしめたこのセンスがあれば、怯える子も泣く子も笑顔に――、

 

「う、うぅぅ……!」

 

「……あまり虐めてやるな。

 ヒューバート。お前はこれから、オズウェル家の一員だ。そこな親不孝者と違う、オズウェル家に明るい未来を齎す存在となってくれることを切に願っている。その為の教育であれば、あらゆるものをお前に贈ろう。

 いいな? ゆめ、そこな教育も金も時間も無駄にするような粗忽者に影響されてはいけないぞ」

 

 あ、やっぱりそう思われてたんですね。

 まぁそりゃあそうだ。幼くは神童なんて呼ばれて、少しは期待しただろう甥が、今や怪しげな研究に日を潰す、オズウェル家に対してほとんど益を生まない存在になってしまったからなぁ。

 まぁそれが狙いではあるんだけど。

 

 というか虐めた覚えはないんですけど?

 

「それで、叔父上。今後の私の立場は如何に? このまま追放ですか?」

 

「そのような事をするはずがないだろう。お前にどれほどの金をかけたと思っている。

 ――レイモン。お前はヒューバートの秘書をしろ。教育、戦闘、オズウェル家としての在り方に至るまで、お前の知識をヒューバートに授けるのだ。

 いいか、お前の行っている怪しげな研究や、放蕩癖を教えるなよ。私兵の者にも監視をさせる。ゆめ、忘れない事だ」

 

「……私が、こんな子供の、秘書……ですか」

 

 チラッとヒューバート君を見る。

 君も嫌だよね、俺みたいなのが秘書になるのは!

 

「ひっ……」

 

「何か文句があるのか?」

 

「……いえ、特には」

 

「そうか。

 ヒューバート。レイモンに嫌気が差した場合は、直接私に言う事だ。その場合は此奴を解任し、他の者を秘書に充てる。

 そうなれば晴れてオズウェル家から追放してやろう。せいぜいヒューバートに好かれる性格になる事だな」

 

「ええ、精進しますよ」

 

 

 にこやかに言う。

 言質は取った。

 

 七年と半年後……全てが終わったら、堂々と家を出させてもらおう!

 

 まずは睡眠だ! 眠い!

 




はい、という事で、スピーディに原作開始七年前です(幼少期という意味では既に原作突入)。

以下付録 レイモンのアーツ技
CC1 - CC2 - CC3   - CC4
凍牙 - 鷲羽 - 扇氷閃 - 雹雨
紅蓮 - 衝破 - 龍炎閃 - 三叉槍
落葉 - 陽炎 - 虚空閃 - 交光線
轟天 - 星覇 - 烈火閃 - 星観

絶影や恵み雨なんかはバースト技です。
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