メガネ端正(転生)   作:飯妃旅立

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あんまり原作変わってません。


22.鮎塩焼

 

 無事にウォールブリッジ内部を抜け、ウォールブリッジの対岸、グレルサイドへと向かう道に出た。

 改めて俺とパスカルがその道程に同伴する事を認めたリチャードは、しかし立ち止まってしまう。心配して駆けつけたアスベルと、意を決したようにリチャードへ触れようとするソフィの手を、リチャードは振り払った。

 

 一部始終はこんな所か。

 まぁ、ラムダを滅しうる光子の塊に触れられるなど、恐ろしくてたまらないだろうからな。完全体ではない今は特に。

 

「休みますか?」

 

「……いや、先を急ごう」

 

 アスベル・ラントに「休ませなくていいんですか?」という目線を送るも、首を振られてしまった。あくまで、リチャードの意思を最優先にするようだ。

 

 こちらも肩をすくめて、歩き出す。

 ソフィが何かを考え込んでいるようだが、まぁ、感覚の事だろう。

 どうしてこんなに、嫌な気持ちになるのか、という。

 

 アスベルとリチャードが先導する中、俺とパスカルは最後尾で装置や言語についての話で大いに盛り上がった。といってもパスカルはいきなり話を変えて俺の事を聞いて来たり、ソフィを触りに行ったりしたので、量自体はそんなに多くないのだが。

 それでも、ためになる時間だったといえるだろう。

 

 そして一行は、伝統の湖畔街グレルサイドへ辿り着く――。

 

 

 

 

 

「今は非常事態に付き、許可なきものを街へ入れる事は出来ぬ!」

 

「あ、貴方様はもしや、王子殿下であらせられますか!?」

 

「しょ、少々お待ちください! 公爵様にお知らせしてまいります!」

 

 グレルサイドへ足を踏み入れてすぐの事である。

 パスカルと俺、二人の視線がリチャードへ集まる。

 

「へぇ~、リチャードって王子様だったんだ。偉いんだね~」

 

「あぁ、ウィンドルは王族制でしたね。完全に忘れていました」

 

 はは、と笑う。

 どの口が、と、まぁ。

 この口が、である。胸を張ろう。そして俺はもうレイモンではなくライモンなので、この口でも無かった。

 

「お待たせいたしました! どうぞお通り下さい」

 

 今までの人生で最も早く走った、くらいの速度で帰ってきた兵士は、息を切らせるという無礼をする事無く言い切る。職業人だぁな。

 そうして、ストラタ人でありながら……俺はいとも簡単に、グレルサイドへ入る事ができた。

 

「それでは、私はこの辺りで」

 

「え? 一緒に行かないの~?」

 

「はは、私はあくまでグレルサイドへ来たかっただけですからね。まさかストラタ人が、王子殿下や公爵様との会話に入れるはずもないですし。どうやらあなた方は急ぎのご様子。

 私はアユを食べられればそれでいいので、さっそく釣りに向かいますよ」

 

「そっか~」

 

 むしろここで、パスカルが当たり前のように付いて行ったことが不思議なんだがな。

 ソフィに触りたいから。そう言われれば、そうか。と納得してしまう俺もいるんだが。

 

「リチャード様、アスベル、ソフィ。そしてパスカルさん。

 また縁があったら会いましょう。私の予感では、そう遠くない未来で会えるような気がしますよ」

 

 アスベルとリチャードは頷いて、ソフィは小さく手を振って。

 

「ばいば~い!」

 

 パスカルは、大きく手を振って、俺を見送る。

 グレルサイド西、港へ向かう連絡路に入って――陽炎。

 

 近くの家の屋根に飛び、身をひそめる。

 ターゲットがいないままに飛ぶ陽炎も、大分安定したな。まぁ地下遺跡で散々使っているのだが。

 

「ふぅ……。さて、アユ食ってから……動きはじめますかね」

 

 サングラスを中指で持ち上げ、ストラタ人旅行客の装いを解く。

 着替えるのはウィンドル国の旅人の装い。顔を隠すこの衣装は、街で過ごすにはもってこいなのだ。

 

 今、彼らはデール公と共に今後の戦略を立てている事だろう。

 まずは矢の補充だな。即席矢も作れない事はないのだが、補充はしておいた方がいい。ちなみに俺のエレスポットはセット数16。内1つは矢をセットしてある。アイテム形成もしやすいらしく、どこぞのアイスキャンディーの棒並の確率で生成されてくれるので、重宝している。

 

「決戦は明日か……ふん、目的を果たすためとはいえ、他国の国政に首を突っ込むのはどうかとは思うがな」

 

 俺の目的は、アンマルチアの里へ移住する事だけではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「剣と風の導きを!」

 

 大勢の声がグレルサイドへ響き渡る。

 兵士の行進。始まったか。

 

 その後、出て行く彼ら。

 史実通り山賊と、茂みに隠れる宿屋の息子。

 まだ出るべきではない。

 

「……インスペクトアイ」

 

 光子を使い、目に望遠の役割をするレンズを造り出す。

 

 見たいのは、パスカルの契約だ。

 

 山賊を倒した一行。その頭が去った場所に、風の原素(エレス)を纏った輝石が落ちているのを発見する。

 アンマルチア族の血に反応し、出てくるのは色輝竜・大翠緑竜の使いであるグリムシルフィ。その契約の様子を、原素(エレス)の一つ一つさえも見逃さないように観察する。

 

「……なるほど。管理者権限のようなものか。輝石の中に溜まった原素(エレス)に意思を持たせているのだろうが……そこの仕組みが今一わからん。なんだ、意思を持たせるって」

 

 ヒューマノイドと同じ原理か? 確かヒューマノイドには光子が使われていないはず……だが、それはあの形で、メモリがあるからであって……ん、わからん。

 やはり直接見に行くしかないか。

 

「――陽炎」

 

 さて、先回りしますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に四人が出現する。

 警戒に武器を構える四人。勿論、その視界に俺が入る。

 

「なッ……」

 

「ライモン!?」

 

「やっほー! こんなとこで出会うなんて奇遇だね~!」

 

「……やはり、出会った時からおかしいとは思っていたけど……貴方は何者だい?」

 

 パスカルの天然を無視して、リチャードが俺を睨みつける。

 アスベル・ラントも同様に剣に手を添えていた。

 

「前にも言ったでしょう? 私はしがない旅人ですよ。

 ウォールブリッジの南側の橋を降ろし、門を開けるのですよね? そして、北の橋をあげる……こんな所でしょうか」

 

「さっきリチャードが言ってた事……聞いてたみたい……」

 

「もう一度聞くよ。

 貴方は何者か。僕達の、敵か、味方か」

 

「もう一度言いますよ。

 私はただの旅人です。敵か味方かで言えば、勿論味方ですね。なんせ、北の橋を上げる手伝いをしようとしているのですから」

 

 ちなみに今はストラタ人の装いである。

 陽炎よりも飛距離のある絶影を以てすれば、川べりからウォールブリッジの警邏をする兵士に向かって飛ぶことなどたやすい。

 ちなみに殺してはいないぞ。縛って凍らせて眠らせてあるだけだ。

 

「北橋を……?」

 

「アスベル、ダメだよ。例えどんな目的があったとしても、この戦いに外国人を関わらせるわけにはいかない。これは内乱なんだ」

 

「パスカルさんやソフィもウィンドル国民ではないでしょう?」

 

「うん、あたしはこの国の人間じゃないよー」

 

「……よく、わからない……」

 

 この国の民はリチャードとアスベルだけ。

 外国人、なんて言ってしまえば二人だけになってしまう。

 

「私を信用できないのはわかります。ですからまぁ、昨夜の鮎に誓って、あなた方を裏切らないと約束しましょう。もしこれを反故にするならば、私は一生あの鮎を食せません。

 我ながら恐ろし過ぎる代償ではありますが……どうでしょうか?」

 

「た、確かにあの鮎は美味かったが……そんなものに誓われてもな」

 

「……わかった。ここで問答しているだけ時間が無駄になる。

 ライモン、貴方は北橋を上げる。僕達は中央塔に鍵を取りに行って、南橋をかけ、南門を開ける。ただし、僕達が中央塔に辿り着くまでに北橋を上げられなかったら……」

 

「その時は、そうですね。

 ――セルディク大公の増援を、私が迎撃しましょう」

 

「……OK、それで行こう。アスベル、パスカルさん、ソフィ。先を急ぐよ」

 

「あ、あぁ……」

 

「ん、話は終わった? じゃ、またね~!」

 

「……」

 

「ええ、また」

 

 ここで俺と一線交える時間が惜しいと判断したか。

 やはり暴走しなければ慧眼だな。

 

 さて、それでは仕事をしますかね。

 廊下に出る。

 

「貴様、何者だッ!」

 

「――陽炎」

 

 ――「飛躍弓兵」の称号を入手。

 

 陽炎使い過ぎかな?

 

 

 

 

 

GC「グレイルアユって……」

 

 グレルサイドへ向かう途中。

 

「ねーねーライモン! グレイルアユってそんなに美味しいの?」

「はい、あれは食べたら病み付きになりますよ。主張し過ぎない塩と、ほくほくに油の乗った身。今でも思い出して涎が止まりません」

「僕は食べた事が無いな……そんなに美味しいものなのかい?」

「漁を行っているわけではなく、地元住民の方が釣りで獲ってきているんですよ。私は釣りのやり方まで教えてもらって、もう自分で釣る事も出来ますがね」

「釣りかー、あたしは苦手だなー。すぐ眠くなっちゃうし」

「何、釣り針に引っかからなかったら直接射止めればいいんですよ」

「それはもう、釣りとは言えない気がするな……」

 

 

 

 

GC「グレイルアユって!」

 

 グレルサイドで過ごす夜。

 

「あ、いたいた! おーいライモーン! もしかして今料理中ー!?」

「おや、パスカルさん。ええ、いましがたグレイルアユが焼ける所ですよ。どうです、一緒に食べて行きませんか」

「え、いいの!? 食べる食べる!」

 

「さ、どうぞ。熱いのでお気を付け下さい」

「おぉ~……これ、ホントに自然由来の鮎? 品種改良されてるとかじゃなく?」

「古代種である可能性はありますね。この辺りは外敵が少ないので、進化する必要もありませんし」

「あぁ~、そうかもね。

 よーし、いただきまーす! ふーっ、ふー……はぐっ」

「もぐ……もぐ……」

「はふ……はふっ……」

「ふぃ~、これは……満点でーす! ねね、ソフィ達にも持って行っていい?」

「ええ、構いません。

 が、その前に一つ教えていただけませんか?」

「んん? 何々? 本? 奉……納の魔導書?」

「私、エレスポットの研究も行っていましてね。これはオリジナルの魔導書になるのですが……」

「へぇ~……あ、もしかして教えて欲しいのってここ? この消費エナジー量効率化って付箋が入ってる」

「はい。現状だとアイテム生成時の消費エナジー量が8倍と、使い物にならなくて……」

「んー、これさ、ここの記述余計じゃない? ここをこうして、こっちでこれを囲めば……」

「……なるほど。これで4倍、半分にまで減らせましたね」

「あとは……うーん、うん、後は少しずつ削って行けば、もうちょっとは抑えられそうだと思うよ!」

「はい、ありがとうございます。もう少し頑張ってみます」

「ありゃ!? 話してる間にさめちゃった……ちらっ」

「ええ、勿論。今射ますから、お待ちを……鷲羽!」

「わ、矢が降ってきて……刺さった! すっごーい、それ、どうやって狙い定めてんの?」

「ここら一体にいる一定以上の大きさを持つ魚の原素(エレス)組成を把握しているだけですよ。回復術である程度の場所を掴めば、誰でも出来ます」

「ほっほー、あたしも今度やってみよっと! って、また冷めちゃうね。それじゃ、おやすみ~!」

「ええ、おやすみなさい」

 

 




ちなみにライモンは地下遺跡だろうがウォールブリッジの中だろうが関係なしにサングラスかけてます。
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