メガネ端正(転生) 作:飯妃旅立
でもこれはいれなければいけなかった。
「へぇ……ここで実際に輝術の研究をしているのね……」
イマスタ、大統領と別れて研究塔に入ると、丁度アスベル達一行の姿があった。
僅かだが水の
「……ライモン、おかえり」
と、普段から極力足音を消しているにも拘らずソフィが俺に気付く。
なんだ? 光子の気配でも察知しているのか?
「ええ、ただいま戻りました。
おや、睡魔球を見ていたのですか?」
「ライモンはこれを知っているのか?」
「はい。
もしこれが武器や輝術に転用できれば、魔物を眠らせて無傷で捕獲する事が出来ますからね。研究の幅も広がります。
もっとも、今はそこにある睡魔球のように設置形態でしか運用はできませんが」
「へぇ~、この目みたいのが……右……左……面白い……ぐご~っ」
「パスカル……だいじょ……すぅ……」
「何二人してふざけてるのよ……いい、かげん……に……」
人間相手にはこのように、効果覿面である、
ちなみに催眠術師的な振り子で眠らせているわけではない。それはあくまでプラシーボ効果というか、自身の周囲に在る
回復術の応用というか、常日頃から大気中の
ので、その範囲に近づかなければ眠る事は無い。
あ、アスベル・ラントも堕ちたな。マリク・シザースも……一番に落ちていたのか。
「……これは叩き起こさにゃならんのか?」
……ま、しばしの休息を、ってな。
どうせ急いだって……事態が好転するわけでもなんし。
ぐっどどりーむ、ソフィ。
「相変わらず人が悪いねぇ、君も」
「貴方に言われては終わりですね、私も」
出て来なくていいぞ、狸め。
彼らが目覚めて、数分後。
俺達はセイブル・イゾレを後にして、ストラタ砂漠へと歩を進めていた。
ちなみに俺も一緒に眠ってしまった事にしてある。
「ねぇねぇライモン! ロックガガンってどこに出るの? 会ってみたいなぁ~!」
「ちょっとやめなさいよ、パスカル。本当に出てきたらどうするのよ」
「ロックガガン……出てきたら、こまるの?」
「そりゃ……だって、ロックでガガーンな魔物よ? 絶対危険じゃない!」
「ガガーン……」
シェリア・バーンズも中々にバ……天然だよなぁ、などと思いつつ、苦笑しながら先導する。
地鳴り的にかなり近いが……さて、俺はどうするかね。
食われるのは、研究者として吝かではない。
だが、俺は生物学者ではないし……中の様子も大体知っている。
なにより、先程セイブル・イゾレを出る前に、かめにんから気になる情報を仕入れているのだ。
なんでも、「モーリスさんがライモンさんを探してたっす!」とのこと。
アイツが俺を頼る。
それは、のっぴきならない異常事態だ。
そして、俺にはその異常事態に心当たりがあった。
「揺れてる……」
「……不味い。砂嵐が……!」
ロックガガンが出現する時の前兆である、砂嵐。
ロックガガンが巻き上げた物、だけではない。奴の通り道に砂嵐が起こるのは、何か原理があるものと見られている。まだ肝心の原理は足元すらつかめていないが。
弓を掴む。
「みんな、あっちを見て!」
シェリア・バーンズの指差す方向。
そこには……懐かしき、超巨大生物の姿があった。
ロックガガン。
ストラタ、否、エフィネアやフォドラを見ても恐らく最大であろうトータス種の先祖。
それが、こちらへ物凄い速度で向かってくる。
「わー、この大きさはあたしでも流石に予想外……っていうか、こっちくるよ!?」
そしてロックガガンはその大口を開け――。
「うわああああああああ!?」
「……行ったか。
全く……なんでもかんでも飲み込むからそうなるんだ。千年生きていたら、食っちゃ悪いモンと良いモンの区別くらいつけろ、亀が」
勿論、俺は絶影で回避している。
近くの砂丘まで退避し、ロックガガンが過ぎ去るのを待っていたのだ。
「……一寸法師……いや、どちらかというと段々飲みか? ふん、マイナーだな」
ああ、そんな冗談を言っている場合ではなかった。
旅のバックパックから、古い地図……むかしかめにんに造ってもらった、ストラタに点在する石柱群の場所が書かれたそれを取り出す。
書き写したものを、40枚。
肩の後ろに差し出せば、それが引き抜かれた。
「傷は?」
「流石に治りました。と、言えたら上出来でしたが……まだ内臓系にダメージが残ったままですね。戦闘は御免蒙りたい所です」
「そうか。走るのは出来るな?」
「無論です」
よし、と立ち上がる。
振り返れば、既にオズウェル家のものではない……俺の私兵としての装束に身を包んだ者達が――ざっと二百名弱。
ふん、ほとんどが残ったか。酔狂な奴らめ。俺の傍にいても、大して甘い蜜は吸えないと思うんだがな。
「モーリスが俺を頼ってきた。
それの意味する所は、強さや知識ではなく、組織力を欲していると言う事だ。
そして奴がそこまで執着するもの。それは、妻と娘。
イライザはアレでいて砂漠の旅には慣れている。問題は、娘……モイラの方だ。
モイラが迷子になったか、魔物に襲われてはぐれたか……なんにせよ、事態は一刻を争うだろう。
捜せ。俺が独立して初めての任務だ。良いか、絶対に救えよ?
お前達も、俺が唯一の友人を失くしてヘコむ姿は見たくないだろう?」
「ライモン様、前置きが長いです。もう行っていいですか? 私もモイラちゃん好きなので早く行きたいんですけど」
「普段ならうるさいとでもいう所だが、そうだな。
行け! 俺も捜索に参加する。良いか、子供が隠れられる石柱群か、魔物の死骸がある場所を重点的に探せよ!」
その言葉と同時に各方向に散っていく私兵達。
「……インスペクトアイ」
モーリスの娘の
だからこれは、単純な望遠鏡としての役割で発動させただけだ。
「……クソが。砂漠なんて吹き飛んじまえ」
だが、砂風と砂丘のせいで、見えない。
……史実の通りなら……ストラタ大砂漠の、西。
「絶影……絶影……絶影……絶影……絶影……絶影……絶影……くっ、CC切れがこんなにも恨めしいのは、モーリスと出会った時以来だな……!」
最近ライシードの宝石造りを疎かにしていた自分が悔やまれる。
CCの増える装備が欲しい所だ。
「……焦るな。将が焦っても、弓兵が焦っても……良い結果は生まない。
……冷静になれよ……」
インスペクトアイで西の砂漠の方を見る。
「ん?」
今一瞬……何か、覚えのある
憶えのある……具体的に言えば、俺の
「俺の
……考えていても仕方がない。
あそこに向かってみよう。
「――絶影」
祈りたい神はいないが……いや、守りたいと思えば、それが強さになる世界だったな。
俺は、親友とその娘を守りたい。
ハハ。
こんな薄っぺらい意思でも、それが祈りとなるのならば――彼女を、救えるのならば。
祈る価値もあるというものだ。
「レイモン! 頼む、頼みたい事がある! 俺の娘を……モイラを、探してくれ!」
「……もうレイモンじゃない。俺は、ライモンだ」
「んなこたどうだっていいんだよ! モイラが、ちょっと目を離した隙に……俺は、俺はッ!」
「モーリスと仲良くしていたレイモンはもういない。俺は旅人ライモンだ。
お前の頼みをタダで聞いてやる謂れはないな」
「ッ……!? てめぇ……、……いや、金は払う。だから……頼む」
「おう、たらふく酒と料理……あ、料理はイライザのでいいな。なんだかんだいってお前の家で食べる事無かったからな、楽しみだ」
「は? 何言って……」
「……お父さん?」
俺の背後から、ひょこりと顔を出す少女。
ソフィと酷似した顔立ちにツインテール。髪色まで似ている。
「……モイ、ラ」
「馬鹿が。俺を舐めるなよ、モーリス。
ほらよ、と投げる。
震える手でそれをキャッチするモーリス。それは、ロケットだ。
モーリスとイライザ、抱かれたモイラ。そんな「幸せ家族」の絵が入れられた……小さなロケット。
中には、色の具墨んだ宝石が入れられている。
「お父さん!」
「あ……ああ……あぁ、良かった……」
モーリスに抱き着くモイラ。彼女を抱きしめるモーリス。
ふん、立派にパパの顔だな。
「……アレは俺のアンタディッドプレイスか。結晶化するなんて知らなかったな……」
そう。
すでにその効果は失われているが、具墨んだ色の宝石は俺の秘奥義の残り滓である。
状態異常を持つ
そのせいか、一点に集められた
となると……アクウェルの体にも俺の
死体を回収……いや、海の藻屑だろう流石に……だが、万が一もあるか。
何も無ければそれでいいんだが……悪い予感というのは往々にして当たるものだからなぁ。
「おい……レイモン! ……ライモン!」
「あ? あぁ、ん? どうした、感動の再会は終わったか?」
「……心から、礼を言う。一度目は俺の命を、二度目は妻を、三度目は娘を……助けられた。
お前には、感謝してもしきれ」
「あー、いい、いい。そういうのは求めていない。お前に感謝されたところで得るモノは何一つないしな。
今回モイラを見つけられたのはお前が俺の
強いて言うならモイラが咄嗟に放ったソレが魔物を後退させたという点で俺が守ったと言えるのかもしれないが……そこに恩を着せるほど俺は厚かましくない。
ただし、お前は俺に依頼をして、俺はそれを達成した。その事実は変わらん。
故に酒と料理を要求する。いつか一緒に飲もうと約束したよな? イライザの料理を振る舞ってくれるとも。
それを果たせ。それが正当報酬だ」
「……はぁ。
わかった。わかったわかったわーかったわーかった!! 待ってろ。てめぇの腹がはち切れるくらい食べさせてやる。
まぁ、イライザが泣き止んだらになるだろうから、遅いぞ。今日は泊まって行け、いいな?」
「良くないな。俺は忙しいんだ。依頼をこなしただけで十二分に時間を使ったのだから、いい加減解放しろ」
まぁ、抜け出すのに一日もかからない事は知っているが。
どうせ大統領に会うワケにはいかん。ガリードも同じ。
だが、
それに……俺の中の光子が、うるさいしな。
「……呆れたぜ。お前さん、自由になってもまだ忙しいのか。ちと生き急ぎ過ぎてねぇか?」
「ふん、やりたい事があるからな。それを終えたら、今度こそゆっくりするさ。
さ、早い所イライザの元へ向かってやれよ。心配、しているんだろ? アイツが泣き止んだ後に食事と酒な。それは忘れないからな」
「……ああ。
モイラ、帰るぞ。お母さんが……痛いくらい抱きしめてくるだろうけどな」
「うん、帰る……」
「俺は宿屋にいる。準備が出来たら呼びに来い。それくらいはしてくれるだろ?」
「はいはい、わかりましたよお坊ちゃん」
「元、お坊ちゃんだ」
肩をすくめる。
モーリスとモイラは、笑顔だった。
GC「強制休暇」
宿屋のライモン
「ミッションコンプリート、ですねー」
「ああ。お前達が周囲の魔物を殲滅していなければ、あそこまで容易には辿り着けなかった。感謝している」
「……うわ、気持ちが悪い」
「大丈夫か? 傷が開いたんじゃないのか?」
「ぞぞぞぞっ! ライモン様が私を素直に心配するなんて……ハッ、偽物ですね!?」
「アンタディッドプレイス。……ふん、やっぱりな。これを避けられない程度には重傷じゃないか、お前」
「……」
「……お前達も、傷だらけだな。捜索を優先して己が身を願みなかったと言う所だろうが……馬鹿が。お前達が死んだら意味が無いんだ。お前達は、俺の所有物であると自覚しろ」
「……」
「だが、助かった。薄っぺらい意思だが、守りたいものを守れた。
感謝する。ゆっくり休め」
「……あの」
「ん?」
「そろそろダイラン様にパナシーアボトルを……」
「あぁ、いいんだよ。コイツはこうやって無理矢理固めないとすぐ働き出すだろう? いつもより多めに
「……それもそうですね」
「俺も、眠る。流石に疲れた。
……お前達も、しっかり休めよ。これから馬車馬のように働いてもらうつもりだからな」
「ハッ! ……おやすみなさい、ライモン様」
「あぁ……冷房、やっぱりいい、な……」
ちょっとした小話
そもそもこの二次創作を始めたのは、「モイラを救いたかったから」です。
はい。
モイラを救いたかったので、原作一本分のプロット組んで、ライモン君を造りました。
なので、この話で一つの節目になります。
章題的には何も変わりませんが、私の心の節目ですね。
そんな小話でした。