メガネ端正(転生)   作:飯妃旅立

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地味な伏線(なってない)回収


30.しこみ

 ここの遺構はそう大したものではない。侵入者を防ぐと言うか、妨害するための遺構であるが、クリアできないものではないのだから。

 そうして、なんなくそれらを攻略した一行は大蒼海石(デュープルマル)へと辿り着く。

 

「すっごーい! これがストラタの大輝石、大蒼海石(デュープルマル)なんだねぇ。初めて見たよ~。でも、ちょっとくすんでるねぇ」

 

「リゼット、話は伝わっていますか?」

 

「あぁ、聞いてるよ。大統領の許可があるのなら、調査は構わない」

 

「……所長は?」

 

「あそこでふんぞり返ってる」

 

 すぐ近くにいた研究員の知り合いに一応許可を取って、パスカルを放す。

 余計な知識は要らないだろう。俺達が積み上げた十数年なんぞ、彼女の前には数秒で事足りる。

 

「パスカルさん。基部に破損部位があります。直していただけますか?」

 

「副……ライモン? 何を言って……」

 

「あ、ホントだ。明らかに壊れてる部分があるねぇ。じゃ、ちゃちゃっと直しちゃいますか!」

 

 そう言って取り出したるは、ドリルとハンマー。

 その大雑把な工事も確かに見たい。見て、盗みたい。

 

 だが、優先事項はもう一つの方を向く。

 弓を取り、背後へ強く引いていく。

 

「……ライモン?」

 

「時間を稼ぎます。パスカルさんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 原素(エレス)を矢に集中させる。

 エレスポットの原理。記憶と複製、再現。

 元となる矢の原素(エレス)組成を記憶し、それを八倍にして滞空させ、さらにそれを八倍、もう一度八倍にして、結合を行っていない同じ原素(エレス)組成の巨大な塊を造り出す。

 

 そしてそれを、思い切り打ち放つ!

 

「大牙ァ!」

 

 弓から放たれた矢に引きずられるようにして目に見えない原素(エレス)塊が刺激を受け、その形成を開始する。矢は構造が単純なため、形成に失敗する事はほぼほぼない。

 そうして形成の終わった矢は、極太の矢となって、元の矢と同じ速度で突き進む。

 

「なッ!?」

 

「陽炎!」

 

 さらにはその矢へと飛び乗り、遠方から来るソレに向けて突っ込んでいく。

 原素(エレス)を吸い取るのは、未来の為に甘んじて受け入れよう。

 だが、極力抵抗させていただく。ここにいる彼らを守るなどという崇高な気持ちは持ち合わせていないが――俺の信用に役立ってもらうぞ、リチャード陛下。

 

 早くも俺を視認したらしい陛下殿は、迎撃の為だろう、剣先に風の原素(エレス)塊を溜め、こちらにそれを向けている。

 悠長な事だ。

 

「……ふん、ミサイルは……再加速するものだと、教わらなかったか?」

 

 極太の矢の上で、弓を構える。

 進行方向とは逆向きに。

 

 番えるは、超高密度に圧縮した火の原素(エレス)

 

雁金(かりがね)!」

 

 それはいっそ、清々しいまでの――火力。

 地上で使うには被害が甚大すぎる、超広範囲にまで届く爆発力を、推進力として使用する!

 

 本当に悠長な事だ。

 お前がその顔を驚愕に染め、原素(エレス)塊を放とうとしているその切っ先に――、既に、俺の矢は届いている。

 これぞ、ライモン流加速式大牙。本来は対ロックガガン用に造り出した術技だが、まぁ、相手も人間であって人間ではないようなものだ。

 問題は無いだろう。

 

 爆発と着弾で黒煙が立ち込める。

 

「……やって、ないんだろうな」

 

 その言葉に返事をするかのように、黒煙を切り裂いて風の原素(エレス)塊が射出された。その程度であれば避けるのは簡単だが、その隙にデーモンに乗った陛下殿は大蒼海石(デュープルマル)の方向へ飛んで行ってしまう。

 最初から歯牙にすらかけられていない。幾匹かのデーモンを落としたにもかかわらず、それを気にする素振りも無い。まぁ、こいつらに関してはいくらでも生み落せるんだったか。

 

「……すまない、大蒼海石(デュープルマル)。仕込みはしたが、それはお前を守るためのものではない。所長のように親を気取る程思い上がったつもりはないが……お前の生気が無くなっていくのを、俺は見逃す。

 ……すまない」

 

 大蒼海石(デュープルマル)付近で戦闘が始まった。

 恐らくアスベル・ラント達が抵抗しているのだろう。

 

 だが、それも束の間……デーモン種、ディス・パテル二匹の相手をしている間に、陛下殿が大蒼海石(デュープルマル)に手を掛けたのが見えた。

 その原素(エレス)が、吸収されていく。

 

「……すまない。

 すまないな、リチャード陛下殿。流石に十七年研究チームにいて……仕掛けの一つも作っていない程、俺は楽観的ではない。

 爆ぜろ」

 

 ボンッ! と……リチャード陛下殿が爆炎に包まれた。

 先程、パスカルに見逃してほしいと伝えていたソレ。

 

 フェンデル産の、火の輝石。

 

 大蒼海石(デュープルマル)の膨大な水の原素(エレス)の中にあっては鎮静化していたそれだが、取り出され陛下殿の風の原素(エレス)に触れる事で、一気に着火・爆発まで持っていくように調整して於いた。

 

 爆炎の中、大蒼海石(デュープルマル)のほぼすべての原素(エレス)を吸い取ったのだろうリチャード陛下殿と、目が合った気がした。

 親指を(Thumbs)下に向け(down)(&)そのまま首を(You’re)横に掻っ切る動作(dead)

 

 流石に遠すぎて表情はわからないが、恐らく不快にそれを歪めている事だろう。

 だが、こちらに向かってくるということはなく、そのまま飛び去ってしまう。

 

 後に遺されたのは、色を失った大きな煇石。大煇石とは最早呼べない、残り滓。

 

 さて、彼らの元に戻るかね。

 

 

 

 

 

 

 

「しかし……いったい何が起こったと言うのだ」

 

 ソフィが蹲っている。恐らく、俺と同じく……ラムダを、リチャードを滅せと騒ぎ立てる光子に、必死で抵抗しているのだろう。全身が光子だからこそ、その影響は俺より強く、深い。

 個人の意見を言わせてもらうならば、友だからと、仲間だからといって弓を鈍らせる事はない。それが親しいものであればあるほど、非道を行うのならばこの手で処断する。

 とはいえ、アスベル・ラントもソフィも”優しい”からな。

 俺とは対極の存在であると言える。彼らの出す答えは、俺とは違うものになるだろうことはわかるさ。

 

大蒼海石(デュープルマル)原素(エレス)を吸収されました」

 

「お手上げ。こうなったらあたしにももうどうにもできないよ」

 

「……なんてことだ。大煇石がなくなったら、我が国の将来はどうなるんだ?」

 

 悲観的なリゼット。まぁ、未来を知らぬ者ならば、当然の反応か。

 

 ザリ、と後ろで砂を踏みしめる音がした。

 

「遅いおかえりだな、()()()

……わざわざ基盤部に爆弾を仕込み、節約工事の裏で余剰原素(エレス)を溜めこむための輝石タンクを造っていたお前は、こうなる事を予見していたんじゃないのか。……いや、節約工事すらも……」

 

「これはこれは、所長。お久しぶりです。私はもう、副所長ではありませんので、その呼称は不明確かと。

 そして、爆弾を仕込んでいた……というのは、全く覚えがありませんね。確かに余剰原素(エレス)を溜めこむためのタンクは作っていましたが、こんな突発的異常事態に対するものではありませんよ? 勿論、節約工事も同じです」

 

「……そういうことにしたいのか」

 

 ……あぁ、そうだよ。

 

「リゼット! 嘆くな、どこぞの馬鹿が置き土産に遺した装置がある! 十七年分の余剰原素(エレス)だ、ユ・リベルテ全土に回すとしても、二週間は持つ! 一週間だ。一週間で……大蒼海石(デュープルマル)を復活させるぞ!

 なんのための研究チームだ! なんのための数十年だ! 俺達の底力を見せつけろ!」

 

「所長……はい! お前達、すぐに計測にかかれ! なんとしてでも復活させるぞ!」

 

「「おおーッ!」」

 

 問題はなさそうだ。

 爆発で陛下殿はタンクに気付かなかったようだしな。節約工事をした分、史実よりユ・リベルテが使用する水の原素(エレス)量も少ない。

 その間にすべてを解決すればいいだけだ。

 

 ――「影の副所長」の称号を入手。

 

 ……今か?

 なんで今なんだ。

 

「……副所長。早く、原因を取り除いてこい。お前ならばそれが出来るんだろう?」

 

 あぁ。

 まだ……仲間だと、思ってくれてるって事か。

 そりゃまた、頑固な事で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒューバート!? お前、どうしてここに……」

 

「状況が変わったんです」

 

 流石にここで離脱は出来ない。ので、仕方なく他の面々と共に大統領府へと入った。

 勿論サングラスはつけたまま。

 

 執務室へ行くと、そこにいたのはヒューバートと大統領。

 ヒューバート、大統領は代わる代わる言う。状況が一変したと。

 

 ラント周辺から王国軍が撤退した事。それはウィンドルの大煇石、大翠緑石(グローアンディ)から原素(エレス)が失われた……正確に言えば、リチャード陛下殿がその原素(エレス)を全て吸収し、失踪した事によるものであるという事。

 今王都では混乱が起きており、それを鎮める為に王国軍は動けない事。

 

「解決すべき問題はふたつだ。

 ひとつは、大煇石が失われた事への対処。

 そしてもうひとつは、リチャード陛下の目的と行方を判明させる事だ」

 

「閣下、一つ目の問題は、既に動き始めています。

 なんでも大蒼海石(デュープルマル)の余剰原素(エレス)を保存していたようで、二週間程度であれば持たせることが出来ると、大蒼海石(デュープルマル)の研究所長から託っております」

 

「ほう? それは確かに僥倖だが……先を見据えれば、なるほど、そのために報告の手間も惜しんで君達に任せたというわけか」

 

 ほう? と大統領が俺を見るが、手振りすらしない。

 マリク・シザースの前でそういう行動はやめていただきたいのだが。

 

「こうなるともう、国同士で角突き合っている場合ではなさそうだな」

 

「二つの大煇石がこうなった以上、残る一つも狙われると考えた方が自然です。リチャード陛下は次に、フェンデルへ向かうでしょう」

 

 少しだけ、拳に力が入るのを感じた。

 ようやく、か。

 

「アスベル君に頼みがある。

 リチャード陛下の追跡を引き受けてはくれないだろうか」

 

 アスベル・ラントにリチャード陛下殿の追跡を頼む。

 それは、フェンデルへ向かえという事であるし、パスカルの力を以て調査、防衛を頼みたいということでもある。

 

「わかりました」

 

 渇いていた舌や咥内が潤ってくるのを感じる。

 ふん、夢を前に唾液が分泌される、か。とんだジャンキーだな。

 

「そしてヒューバート。君もアスベル君たちに同行しろ」

 

「大統領!? し、しかし僕は」

 

 大統領はヒューバートの選出したものをラントの後任にしてよいと言う。王国軍が実質不能になっている今、ヒューバート程の采配が無くても大丈夫だろうしな。

 ストラタ軍の将校が旅に同行するのだ、ストラタ側としても他国の者だけに任せきりというわけではなく、しっかりとリスクを追っている言い分にもなる。

 それでも不安だと食い下がるヒューバートに、大統領は少々笑いながら一言。

 

「なに、不安が残るのならば君がしっかりすればいい。そうだろう?」

 

「……ああもう、わかりました!

 ……よろしく頼みますよ、にいさん」

 

「ああ……よろしく」

 

 俺は返事を、しない。

 

 

 

 

 

 

 

GC「狸たち」

 

 アスベルとヒューバートが戦っている最中

 

「大統領閣下とも繋がりがあったとはな。一介の研究者……いや、副所長殿ならば、当然か?」

「誰の事を話しているのか、主語がなければわかりませんよ?」

「フ、そうか。しらばくれるのならば、そういうことにしておいてやろう」

「ええ、その方が身のためです」

「……」

「……」

「……ところで、どう見る、この試合」

「アスベルが勝つでしょうね」

「それはアスベルの実力を見て、か? それともヒューバートが勝ちを譲るつもりだからか?」

「ヒューバートさんが弱いから、です」

「ほう?」

「今の未熟さでは、アスベルには勝てませんよ。勝ちを譲って兄を立てるなどと考えている時点で戦闘者としては三流だ。相手を試す事が出来るのも、相手と隔絶した実力がある場合だけですから」

「辛辣だな。ヒューバートに何か思う所があるのか?」

「いいえ? 特には」

「……それは本心のようだな」

「しかし、暑いですね……凍牙。ふぅ……」

「大気中に含まれる水の原素(エレス)がこれほど少ない砂漠で、よくそんなほいほいと氷を形作れるものだな。その辺りからもお前の実力が垣間見えるが」

「あぁ、これはそんな難しい事はしていませんよ。通常、術技に使う原素(エレス)は攻撃の為に射出するものですから、維持が非常に困難で、だから周囲の原素(エレス)を使って形成補助をする必要があるのですが、攻撃に使わずに保持にのみ努めれば、自身の原素(エレス)組成から水の原素(エレス)だけを抜き取って形成するだけでいいのです」

「だが、そんなことをすれば結局水分不足になるのではないか?」

「あくまで抜き取るのは水の原素(エレス)ですよ。水分ではない。もっとも、確かにやり過ぎれば生命活動に必要な水の原素(エレス)さえも抜き取ってしまうので危険ですが、回復術によって補充、もしくは海に出て水の原素(エレス)を回収してしまえば問題はありません。なんならエレスポットからも吸収できますよ。エレスポットは原素(エレス)貯蔵庫としても優秀ですから」

「ほう? エレスポットを持っているのか。それは軍人の持ち物なんだがな。お前は軍に居た事があるのか?」

「ええ、研究チームはストラタ軍所属ですからね」

「……ところで、自身の原素(エレス)からの形成についてだが……」

「ちょ、ちょっとアスベル!? ヒューバートが怪我したって……なんで……って、タイヘン! 今治すから、じっとしていて!」

「教官、ヒューバートとアスベル、喧嘩したの?」

「ム……いや、あれはじゃれ合いのようなものだ。気にしなくていいぞ」

「なんだったらソフィもヒューバートさんの所へ行ってあげてください。多分、顔をひきつらせながら喧嘩ではないと言ってくれますよ」

「……うん、わかった。行ってみる」

「一応私も向かいましょうか。治癒術が使える事ですし。

 どこぞの、治癒術も使えない攻撃一辺倒の術師さんとは違うのです」

「余計なお世話だ」

 

 

 

GC「練磨道具」

 

 サブイベント、マーレンの練磨道具探しを終えて。

 ライモン、マーレンの二人。

 

「……あの」

「はい?」

「レイモンさん……です、よね? ヒューバートのお義兄さんの……」

「いえいえ、私はライモン。旅人です」

「そう言う事にしなければならない、ということですか。わかりました。私も元軍人ですから、受け入れます。

 ですが、謝罪とお礼だけは言わせてもらえませんか?」

「……謝罪とお礼、ですか」

「はい。

 この練磨道具……もう、ボロボロになってしまったけれど、元は貴方がヒューバートに買い与えてくれたものだと聞いています。

 ヒューバートからは、こうも聞いています。『使い込んだ程度でボロボロにしてしまうようならば、それは大切にしていない証拠です』と、そう言ったそうですね。

 私は……乱暴に扱ったつもりはありませんけど、大切なこれをこんな風にしてしまった時点で、確かに大切にしていたとは言えないのかもしれません。ですから、謝罪します。ヒューバートの思い出の品を、こんなにしてしまって……ごめんなさい」

「……やれやれ。私は何も言っていませんが、恐らくその男はこう言ったのだと思いますよ? 『道具の機嫌を無視して酷使したのならば、それは使い込んだとは言えません。単純に壊しただけです。ですが、どうしても道具は使えば劣化します。道具に寄り添い、技術を十全に使い、ケアを怠らなかったとしても、いつしか壊れる事でしょう。それは仕方がない。ですから、出来るだけそこに至らぬよう、ゆめ、大切に扱う事を心掛けなさい。それは毎日使っても五年は保つでしょう。もしこの一年や二年で壊れてしまうようならば、それは大切にしなかった証拠です』とね」

「……ヒューバート、端折りすぎ……?」

「黙って渡す、などという不器用な結果にならなかったのは良かった。ですが、言葉が足りませんね。自分がされてきたことだと言うのに、どうして克服できないのか、不思議でなりません。

 ……と、思っていると思いますよ、その男は」

「……はい」

「マーレンさん。練磨道具の耐久年数は大体五年です。ですから、それはお守りとして。

 捨てる事は無い、どこかへ飾っておけばいい。その上で、新しい練磨道具を買って、是非とも夢を追いかけ続ける事を提唱しますよ」

「……ありがとうございます」

「以上でしょうか?」

「あの、お礼も……あって」

「あぁ、そうでしたね。しかし礼を言われる事など……」

「私がこの夢を見つける事が出来たのは、ヒューバートが思いつめたような顔で握っていた宝石が要因なんです」

「……あぁ」

「神珠ウォライズ。今思い出しても美しい宝石。

 あれ、お義兄さんが磨いたもの、なんですよね」

「らしいですね?」

「ありがとうございます。私はあれを見たからこそ、この道があるのだと知りました」

「……捨てる神あれば拾う神あり、ですかね……」

「はい?」

「いえいえ、なんでもありません。まぁ、そのお礼は多分、その男に届いていると思いますよ。私は知りませんが」

「……本当にありがとうございました。ヒューバート共々、お気をつけて」

「ええ、こちらこそありがとうございます」

 




熱いからか、自転車のタイヤがよくパンクする……ゴムノビール。
上記理由により遅れました()
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