メガネ端正(転生) 作:飯妃旅立
捏造設定あり。
都合よくフェンデル軍の小隊が闘技島を訪れているとのことで、それに紛れ込んでフェンデルに潜入する算段となった。
ストラタ軍の密偵に手引きしてもらい、そこを糸口にするようだ。
面々は船に乗り込み、ライオットピークまでの時間を思い思いに過ごす――。
「……そうか。それを俺に言って、なんになる?」
「……いえ、差し出がましい発言をしました」
「いくら気安い言葉を使うとはいえ、俺とアイツは上司と部下。任務に私情を挟むなよ。死ぬぞ」
「それでも……いえ、なんでもありません」
「ふん、じゃあ下がれ。……余り踏み入った情を持つな。疲れるだけだぞ」
「……はい」
ライオットピークに着いた。
知り合いがいると言って、少しだけ別行動をとらせてもらう。
ヒューバートとマリク・シザースには鋭い視線を向けられたが、知った事ではない。
「どこへ行く気ですか」
ライオットピーク、観客席側から本部側へ行く廊下。
そこで、とうとう呼び止められた。
ヒューバート。
「旧友に会いに行くのですよ。これでも世界中を旅していましてね、各国に友達がいるのです。七百人くらいいますよ」
「とぼけないでください。旧友に会いに行こうという人が、何故グミやパナシーアボトルを補充するんですか。わざわざ
「はて……複合弓ですか。私はこの木弓しか持っていませんが……。あと、アイテムを補充したのは単純に足りなかったからですよ。ストラタで買い忘れましてね」
「……だから……いえ、いいです。では、僕も貴方の旧友とやらに会わせていただきたい。まだ貴方がフェンデルのスパイでないと断ずことが出来ているわけではありませんからね。もしかしたら、僕達を全滅させるための手立てをフェンデルに相談しに行くのかもしれない。
やましい事が無ければ、僕の同行を許せると思いますが?」
一瞬、逡巡。
すぐに答えは出る。
「わかりました。一緒に行きましょうか。
ですが、私の旧友の友人たちは少々手荒な歓迎を得意としていましてね……心してください」
歩み始める。
俺の後ろ――ではなく、横に、ヒューバートは並び歩き始めた。
その事に多少の苦笑を覚えつつ……闘技島本部を目指す――。
歓声が響く。
ここ、ライオットピークには、表の闘技場とは別にもう一つの闘技場……裏というか、地下闘技場、のようなものがある。
こちらは所謂違法賭博闘技場。何処の国にも属さない自由地域だから違法も何もないのだが、表の闘技委員会にすら良く思われていないという意味で、違法なのだ。
そしてここに集う戦士は皆、表で言う力試しが目的……というわけではなく、各国における”自国で処理したくない罪人”や”罪を犯した軍人”、”国家秘密を握ってしまった傭兵”などが放り込まれる、実質の処刑場。
明らかにレベルの違う魔物と戦わせてその様子を楽しむ場合もあれば、罪人同士を争わせて賭博をするといった悪趣味極まるものまで、様々。
だが、共通して言える点は、往々にして――。
『さぁ、次の挑戦者は経歴不詳、年齢不詳、罪名不詳の不詳コンビ! 登録名は……あー、サンオイルスターレッドとサンオイルスターメガネ! よくわからないが、果たしてコイツラは死なずにここを抜け出すことが出来るのかァ~!?』
その生は、保証されていない、という事だ。
「凍牙ァ!」
「断雷牙!」
降り注ぐ雷の中を、氷の礫が駆け抜ける。
着弾したソレは対象を即座に凍らせ、後から射られた矢によって粉々に砕け散った。
「ギャアッ!?」
「鷲羽、扇氷閃!」
上空に射た矢が頭頂を避けて第六頸椎へと突き刺さり、想像を絶する痛みに悶絶する左腕と右足を更に縫い止め、そこに氷の矢が飛来する。
ゴ、と無骨な衝突音を上げて、額から血を流して泡を吹き倒れるソイツに目もくれず、次の相手に弓を向ける。
「雷牙、招来!」
振り回す両刃剣が風の
少しでも仰け反れば、すぐさま両刃がその肢を切り裂き、矢が頭を貫く。
「行動不能にするなど考えてはなりません。首を切りなさい。相手は必死の狂戦士。生命活動を終えるその時まで戦い続けます」
「……わかっています。先程は切っ先が逸れただけです」
「それなら良いのですがね。ッ、衝破!」
一瞬、背中合わせになった時の会話。
そしてすぐにまた敵影。
休みなく繰り広げられるこれを、既に一時間は行っているだろう。
終わりなき戦い、という事は無い。しっかりと、抜け出せるようにはなっている。それは恐らく、闘技島としての矜持なのだろう。
『強い、強い! サンオイルスターレッドのよくわからない武器が広範囲にダメージを与えて、サンオイルスターメガネの弓が確実に全てを仕留めて行く! 連携、ここに極まれり! あと残酷! 見ていて清々しい程に残酷な殺し方が痺れるゼ! もっと盛り上がれーぇィ!』
「……下劣な。虎牙破斬! 崩爆華!」
「裏の世界などこんなものですよ。いつかは全て潰したいと思えど、必要悪であるのも事実。何より、潰すメリットがありません。私には関係の無い事ですし、ね。龍炎閃!」
「ハッ! セイ! 関係の無い事、ですか……貴方がこんなに頑張るのですから、それほど旧友とやらが大事なのだと思っていたのですが」
「私が大事にしているワケではありませんよ。交光線」
弓から撃ち放たれた周期的変化をする光の矢が、真正面にいた大男をぶち抜いた。
一瞬の静寂。
『オォーッ! 挑戦者、ついに全ての
「……ライモンさん」
「今までの敵は全て一度も勝ち上がれずに、しかし死ななかった”程度”を評価されて駆り出された雑魚なんですよ。怪我を治癒してもらう事も、病を収めてもらう事も出来ず、寄る老いと死に怯えながら戦い続ける者達です。
彼らはこの終わりない戦いから逃れたい。死を望んでいます。殺せといったのは、そう言う意味も含まれているのですよ」
「……非道な」
「さて、ここからが本番です。私はここの次……つまり、一度でも勝ちあがった事のある者達と戦わせられる勝ち上がり戦にいるだろう、とあるストラタ軍人を助けるために来ました。彼の者が出てきたら、全てを欺いて逃げますよ」
「わかりました」
対面の檻が開く。
そこから出てきたのは――いつも、俺の護衛をしてくれていた、あのストラタ軍人。
一発目から大本命だ。
「陽炎」
「ッ、空破絶掌撃!」
陽炎で飛び、首根を掴み、観客席より少し出っ張った所で実況をしている男が乗ったゴンドラに向けて――大牙。
男が実況する暇もない速度でゴンドラに突き刺さった矢は、消える事無く俺達の足場になる。
突きの動作と共に文字通り飛んできたヒューバートと元護衛の胴体にしっかりと縄を巻き付け、少し上空に向かって大牙を撃つ。引っ張られるヒューバートと元護衛。
「任せたぞ! 追手を殲滅したら俺もすぐ行く!」
「! わかりました! 気を付けてください!」
「ふん……誰に物を言っているんだ」
警報と共にぞろぞろと出てきたライオットピークの猛者達を眺めながら、複合弓を握りしめる。
気分の高揚をしっかりと噛み砕きながら、弓を正鵠に構えた。
「最近、まともに本気を出していなかったからな……鬱憤を晴らさせてもらおう。景気よくな!」
この程度の敵に後れを取る程――鈍ってはいないぞ。
「……ライモンさん、結局あのストラタ軍人はどういう罪でここにいたんですか?」
「冤罪、という奴です。ガリードの差し金か、はたまた他の誰かか……。レイモン・オズウェルを
「……それは」
「ストラタ国内で処刑すれば、必ず大統領の目につきますからね。レイモン・オズウェルとやらが誰かは知りませんが、あの人は私の旧友ですので、助けた次第です。
ストラタ軍人である貴方はこれを国に報告しますか?」
「ここからどんな形であっても抜け出す事が出来れば、罪は無くなるのでしょう? 冤罪で掴まっていた人の罪が無くなったのです。それ以上、報告する事は見当たりませんね」
「……多少は融通が利くようになったじゃないか」
それは誰の影響かね……。
少なくとも、俺ではないのだろうが。
バッバババッバババッバババッバババッバッバードゴッ
死んだ魚介を浸食するぜ! サンオイルスターメガネ!