メガネ端正(転生)   作:飯妃旅立

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バトル6割


37.ことう

 闘技島の横の島へ向かうため、アンマルチア族の里を出た後、身支度を整えるという目的でザウェートに寄り、一旦解散した一行。といっても事は一刻を争うため、短時間で済ませることを念頭に、それぞれが必要なものを揃え始めた中。

 

「……」

 

 ヒューバートだ。

 

 俺の後をつけてきた、というワケじゃあない。

 むしろ堂々と、「また離脱されても困りますから」なんて言いのけてついてきたのだ。

 

「どうかしたんですか?」

 

 ぶっきらぼうに。

 

「どうかしたのか、はこちらの台詞なのですが。まさか、今更どこかに行くように見えますか?」

 

「前例がいくつもありますので」

 

 それを言われると痛いな。

 確かに、度々無言で消えている。

 

「どうせダイランさんたちに会うのでしょう。僕も用がありますので、早く呼び出してもらえませんか」

 

「……まぁ、いいだろう」

 

 しっかりと周囲の原素(エレス)を見てから、いつも使うものとは比べ物にならないほどにか細い紅蓮を空に撃つ。

 先の大紅蓮石(フォルブランニル)の一件で、火の原素(エレス)の扱いに向上が見られるな。

 

 一分と数えぬ内に、建物の陰からアイツが現れた。

 原素(エレス)は……問題ないな。エリクシールでも使って全快したか?

 まぁ、アップルグミ一つでもかなりの滋養強壮効果が見込めるしな……この世界、体を治す手段は結構転がっているものだ。すべてが原素(エレス)で出来た世界なだけはある。

 

「ライモン様。それに、ヒューバート。まさかお二人が並ぶ姿をこの目で見る日が来ようとは……私、感涙ですよ」

 

「ウザ絡みをするな。これでも俺は気分がいいんだ。手が滑って第二秘奥義でもぶち込みたくなる」

 

「それは怖い」

 

 まぁ、探させただろうし、この辺でいいだろう。

 それより、一つ。

 

「……お前、呼び捨てなんだな。それなりに意外だが」

 

「あぁ、ヒューバートのことですか? 呼び捨てでいいです、とのことですので。私たちはもうオズウェル家に関係のない身。様付けはおかしいですし、さん付けは嫌がりますのでこういう風に。

 嫉妬しましたかぁ?」

 

 無視する。

 

「命令だ。護衛含め、お前たちはついてくるな。その上で、セイブルイゾレに集結。あとはまぁ、オル・レイユにもだな。命は捨てるな。だが守れ。以上」

 

「……命令、ですか」

 

「ああ」

 

 過保護はいらない。

 世界の中心の孤島に万が一取り残されても事だし、それより気にすべき事がある。

 こいつらに暴星の相手は難しいかもしれないが、有効打が与えられずとも撃退は出来るはずだ。

 

「御意に。それで、ヒューバート。あなたは何の用ですか?」

 

「……」

 

 真剣な顔で。

 どこか、悲痛そうな顔で。

 

 なんだ?

 

「……謝罪を。

 僕がついていながら、ダイランさん達の見て居ないところで、ライモンさんに重傷を負わせました。万が一の時は頼みます、と言われていたのに、この様です。申し訳ありません」

 

 なんだそれは。

 ……何を、というか、誰に、というか。

 ヒューバートに頼むことではないし──ヒューバートが謝ることでも、ないだろうに。

 

「もともと私たちの仕事を、無理な場合だけ、という依頼……いえ、口約束のようなものでしたから、気にしないでください。あとライモン様はそんな怖い目でこちらを見ないでください」

 

「減給だな」

 

「それは甘んじて受けますよ」

 

 ヒューバートがこいつらと接触していたのは知っていたが、まさかそんなやり取りをしているとは夢にも思っていなかった。

 つまり、なんだ。

 俺はヒューバートにとって守る対象にあった、ということか?

 

 ふん。

 

「ウチの部下が、迷惑をかけたな」

 

「……そうですね。これからは僕に謝らせないよう、自分の体を大切にしていただけると助かります」

 

 心配までされていると来た。

 ……いけないな。気が抜けるにもほどがある。

 大紅蓮石(フォルブランニル)の一件は、反省点として今後に生かすとしようか。

 

「そろそろ戻りましょう。遅くなって良いことなどありません」

 

「ああ。お前たち、いいか。くれぐれも命を大事にしろよ」

 

「ブーメランって知ってます?」

 

 うるさい。

 

 

 

 

 

 世界の中心の孤島へ向かう船の中。

 

 船がフェンデルの……大紅蓮石(フォルブランニル)の領域を抜けたため、使えるようになったメンテナンス器具一式を展開。折り畳み式の複合弓を取り出し、油を差す、埃を取るなどといった細々とした事から、動作テスト、弦の張りなどの感覚的な部分までを行っていく。

 次いで、エレスポットのセット料理の見直し、魔導書の組み合わせ、長らくおろそかにしていた宝石の錬磨などを行う。

 

 まだ、その時ではない。

 とはいえ、前哨戦に近いものであるのは確かだ。

 

 準備は入念に行いたい。

 

 ……一応、手紙も書いておくかね。

 

 この先に待ち受ける未来に備えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが世界の中心の孤島……本当に何もない島、なんだな」

 

「リチャード国王はいないようですね。それらしい原素(エレス)が見えません」

 

「何か手掛かりとなるものがあるかもしれん。一応、探索するのも手だろうな」

 

 世界の中心の孤島──。

 

 遮蔽物の何もない空は、羅針帯がよく見える。

 雲は多けれど、透き通るような青空の向こうに水膜と、限りない宇宙が広がっているのだろう。

 

 そしてその一面の水原素(エレス)に染まらぬ、暴星の色。

 

「探索している暇は、ないようですね」

 

 急襲するそれに、しかしこちらから仕掛ける事はない。

 

 降り立つ彼を、そして震える少女を見て、少しだけため息。

 複合弓を展開した。

 

「リチャード!? その体は一体……!」

 

 俺の目には暴風が。

 そうでなくとも、見えるだろう。高密度に圧縮された三原素(エレス)の嵐。暴星では抑えきれぬ、ヒトの身にはあまり余る三つの大煇石の原素(エレス)が噴出を始めている。

 

 にもかかわらず、リチャード国王は歩みを止めず。

 

「リチャード! とまれ! これ以上進むな!」

 

 アスベル・ラントの声は、届かない。

 

「……黙れ。黙れ。ここまで来たのだ。ようやく、ここに来たのだ」

 

 その声色はすでにリチャード国王のものではなく。

 

「邪魔を、するなァァァァア!!」

 

 その姿は──俺の、滅ぼすべき”敵”だった。

 

 

 

「絶影」

 

 リチャード国王が後頭部をガードする。

 

 その顔面を、思いっきり蹴っ飛ばした。

 

 ──同じ場所にしか移動できない技なワケがないだろう!

 

 そんな不便な術技、俺は使用しない。自身の命に関わるものを改良しないはずがない。

 まぁ、今までの木弓では原素(エレス)の伝導率が悪く、敵の後頭部という位置指定で飛ぶ方が楽であったのは認めるが。

 

 この複合弓(ゆみ)であれば、そういう効率も気にしないでいいからな。

 

「ミスティーアーク!」

 

「落葉」

 

 ヒューバートの援護射撃。その弾道など目を瞑っていてもわかる。

 故にリチャード国王から目を離さぬまま落葉で離脱し、マリク・シザースの横に降り立つ。

 既にフリジットコフィンの詠唱を始めている彼の横で、天空へ向けて星観を発射。

 

紫電滅天翔(しでんめってんしょう)!」

 

「フレアショット!」

 

 アスベル・ラントの連続突き。その合間を縫うようにして放たれた炎の弾丸が、連続突きの隙を埋める。

 戦場に散らばる余剰原素(エレス)と結合解除原素(エレス)を星観へと集めつつ、三叉槍で牽制。

 

 マリク・シザースのフリジットコフィンが完成し、それの滑り出しが行われた瞬間に前衛二人が飛びのいた。

 

 追撃。

 それを天空の岩石によって潰し、フリジットコフィンが突き刺さる。

 

「──……よ散れェ! 薔薇のように!」

 

 凍り付いた──かに思われたリチャード国王が、氷を散らしながら爆発的な推進力を以てアスベル・ラントに秘奥義を放つ。

 

「ブラッディ・ローズ!」

 

「ヒール!」

 

 四人で戦う、なんて縛りはない。

 十二分に離れたシェリア・バーンズとソフィが、アスベル・ラントから失われた原素(エレス)の補填を行う。

 

「クラックビースト! せいっ! 断雷牙! 崩爆華! 雷牙、招来!」

 

 一瞬硬直したアスベル・ラントの代わりに怒涛の連撃を行うヒューバート。

 だが、そんなことをすればCC切れは明白だ。

 無論そんなことはヒューバートもわかっていて、そのために残していたのだろう最後のCCでバックステップ。

 止まった連撃を繋げるのは、もちろん俺の役割だ。

 

 絶影。どこからでも一撃入れられるというのはほとほと有用性が高く、少ないとはいえ光子を持つ俺をリチャード国王は無視できない。

 

「アベンジャーバイト!」

 

「ッ、虚空閃!」

 

 弓兵にもかかわらず遊撃、そして頻繁に接近を行う俺のスタイルは、総じて防御力にかける。

 アベンジャーバイトは風の原素(エレス)を用いた高速詠唱・広範囲・高威力と三点セット揃い踏みの優秀な術だ。

 

 まともに食らって、まさか半分も体力を削られるとは思っていなかった。

 リチャード国王……というか、ラムダとの経験値(レベル)差が無視できないほど縮まっている、という事だ。

 

「紡ぎしは大層、幸福をもたらす光の奇跡に名を与うる! フェアリーサークル!」

 

 シェリア・バーンズの回復を受ける。……正直、俺の恵み雨なんかとは比べ物にならない高効率・回復量だ。

 光子の力もあるとはいえ……俺も回復術に着手するべきか?

 

「かわしの極意! トリッピング! さらに百発百中! インサイト!」

 

「それは、ありがたい!」

 

 二つのバフ。

 感覚が鋭敏になり、より深い部分の原素(エレス)にアクセスできるようになったのを感じる。

 さらに、自身の原素(エレス)がより自在に制御できるようになったことも。

 

 ほかの人間がこの術技を受けて同じように感じているかは知らないが、凄まじく有用な術技であると痛感する。神聖術、侮りがたいな。

 

「悪しきよ、滅せよ!」

 

「交光線!」

 

 氷の二連撃。火と風の原素(エレス)の交差矢。

 ヒューバートを介さぬ俺とアスベル・ラントの連携は決していいとは言えないが、一拍遅れて俺が避ければいい話。敵に張り付くスタイルのアスベル・ラントと、直線的な攻撃が多めな俺では微妙に立ち位置が被るのだ。

 

「リヴグラビティ!」

 

「ヴァニッシュフロウ!」

 

 ヒューバートとマリク・シザースによる拘束術がリチャード国王を絡めとる。

 

 膨大な熱量。頭上。

 アスベル・ラントの首根を掴んで自らごと落葉で離脱。

 

「揺り起こせ贖うは我が振るう灰燼の剛腕!」

 

 空を、炎剣が割く。

 

「ブラドフランム!!」

 

 そのサイズ──通常の、五倍はあろうか。

 

 火の原素(エレス)の収縮率、余剰原素(エレス)の一切を生まない制御率、熱量、温度、全てが最高。

 これは──ブラドフランム本人に手伝ってもらっているのか?

 

「──!」

 

 一瞬視界が真っ白に染まる。

 莫大な熱。しかしそれが、一点に収斂されていくのを感じた。

 

「連撃、刹破衝、烈孔斬滅! 点穴、縛態!」

 

 すべてが一点に集まる。

 そして。

 

「燃えろ! 焼き、尽くす! 火龍炎舞!」

 

 その蹴撃が突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GC「ライモンは友達いるの?」

 

「……友達、ですか」

「うん。友達。ライモンにも、いるのかな、って」

「まぁ、いますよ。とても少ないですが」

「……そっか」

「リチャード国王の事ですか?」

「うん。わたしは、リチャードのこと……倒さなきゃ、って思ってる。でも、リチャードは友達……」

「……私も、リチャード国王は倒さなければならないと感じています。そして私は、リチャード国王の友達ではありません」

「……」

「ソフィ。出来ないのであれば──私がやりましょうか」

「……だめ。それは……だめ、だと思う。よく、わからないけど……」

「……ま、私はあなたに従いますよ。最後の手段とでも考えておいてください」

「……」

「ちなみに私は、友達でも……いえ、なんでもありません。それでは」

「……」

 

 

 

「全く、ガラにないことをすると余計なことを口走る……プロトス1を守る事も思考に侵食しているのか?」

 

 

 

 

GC「家族でも」

 

「ライモン」

「おや、マリクさん。何用で?」

「一つ、聞いておきたいことがあってな……」

「はあ」

「お前は、敵が……倒さなければならない相手が、肉親や恋人であろうとも、刃を向けることが出来るか」

「出来ますね。極力、倒さなければならない事態を避けようと徹するでしょうが、それが必須になった段階で手を下します。もっとも、私が向けるのは刃ではなく番えた矢ですが」

「……そうか」

「見下しますか?」

「いや……それくらいの非情さも、必要だろう。特にお前のような立場では、殊更にな」

「立場、ですか?」

「フッ、なんでもないさ。

 ……アスベル達はまだ若い。それが悪いとは言わん。むしろ、オレ達のような煤汚れた人生を歩んでほしくはない。

 だがそれだけではどうにもならん事態が起きることもあるだろう」

「わかっていますよ」

「そうか。なら、いい」

「ええ」

 

 

「……まぁ、貴方が煤汚れているとは思いませんがね」

 

 

 

 

 

GC「コレクション」

 

「ライモンさん……これは?」

「シェリアさん。見ての通り、メガネとサングラスですよ」

「こんなにいっぱい……好きなんですか?」

「まぁ、四六時中かけているくらいには」

「……へぇ、こんな形のも。こんな……へぇ」

「おや、シェリアさん……メガネの扱い方を心得ていますね。知識のない人が扱うと、メガネが痛む原因となるのですが」

「普段からヒューバートに教わっていて、」

「ねちっこくお小言を貰っていたりします?」

「……否定はしません」

「まぁ、物の扱いについては散々教え……られてきたでしょうからね。なんせ、あのオズウェル家の子息だ。ああ、いえ。すみません、貴女にとってはラント家の子息でしたか」

「そんな、気にしませんから……。

 なんでも、口煩いお兄さんがいたらしくて、物を大事にする姿勢はすべてその人に学んだとかで。私は兄弟姉妹というものがいなかったから……アスベルとヒューバートの関係も、ヒューバートとそのお兄さんの関係も、少しだけうらやましく思います」

「……そんなに良いものであったかは……いえ、失言でしたね。申し訳ありません」

「ところで……なんでこんなにたくさんのメガネを持ち歩いているんですか? ライモンさん、サングラスを変えたりして……ないですよね」

「変えてますよ、実は。コレとコレと、あとソレとか。見た目は似ていますけど、フレームの形やグラスの濃度が違うんです」

「……同じに見えますけど」

「まぁ、これについては高位のメガネーではないと判別不可能でしょうね」

「あ、それ。ヒューバートも同じ事を言ってました」

「……そうですか」

 

 ──ダブルメガネーの称号を取得しました。

 

「……要らないですね」

「?」

「いえ、なんでも」

 




ダイラン含むライモンの部下たちは度々減給を食らっていますが、世界水準的に見てもかなりの高給取りです。
ただめちゃくちゃ危険です。ただし好きな時に休日取れます。ライモンが危険な事してない時はみんなでスポーツしてたりします。
スパリゾートは自腹です。
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