メガネ端正(転生) 作:飯妃旅立
ウィンドル国・バロニアに着いた。
イライザとは早々に別れ、宿屋へ。イライザはそのままグレルサイドまで歩いていくらしい。正直、多少なりとも情が湧いているだけに心配だ。
だが部下を護衛に就かせる、なんて事が出来るわけもない。
ちなみに俺に付いている護衛と部下は別々で、護衛はストラタ軍兵、部下は私兵である。
「……ふむ」
しかし、気になる事は気になる。
どうせ二ヶ月も滞在するのだ。その内の始まりの数日くらい、他者との良縁を守ったってバチは当たらないんじゃないか?
それに……。
「……ウォールブリッジ。今なら入れるはずだしな……ということは」
上手く行けば、アンマルチア族の遺跡……ウォールブリッジ地下遺跡へ入れるかもしれない。
となれば……行くしかないよな!
「レイモン様、
「バロニアを出るからだ。ウォールブリッジを通ってグレルサイドへ向かう。護衛の奴らを撒きたい。二時間ほどで良い。協力しろ」
「……また”研究”ですか?」
「ほう、言うようになったな。
そうだ。研究だ。文句は無いだろう? それと、この国ではライモンと呼べ」
俺の私兵は、俺が度々”研究”と称してストラタ砂漠各地に点在する遺跡の調査をしている事を知っている。かめにんに調べてもらっている奴だ。
例の熱線装置がある遺跡はオル・レイユの東側だが、レベル帯を考えても今の俺では無理がある。それはもう少し大人になってからだな。そもそも開くかどうかわからんし。
だが、ストラタに或る遺跡はそれらだけではないのだ。
各地にある石柱群。トラップの様にせり上がる赤壁、明らかに人の手が加えられた岩石。
それらは全て、アンマルチア族の痕跡……もしくは、遥か過去にこの地にあっただろう王国の名残だと考えている。
それを調べるのは、いわば趣味だ。趣味100%だ。
それでも部下たちが黙認してくれているのは、余程俺が楽しそうだから、らしい。聞いた話だから確実ではないが。
「わかりました。撒くのは……ウォールブリッジに着いてから、でよろしいでしょうか?」
「素晴らしい。俺の考えを先読みできるなら、お前はいずれ俺の影武者を任せられそうだな」
「謹んで遠慮させていただきます」
……前は無言で付き従うだけだったこいつらが、こうやって冗談交じりにも口を出してくるようになったのは、まぁ嬉しい事だ。
そしてそういう奴らには、俺は羽振りを惜しまない。
既に研究員として給料も得ている。そろそろオズウェル家からの給金を、俺からのものに切り替えても良いかもしれないな。
「それでは、頼んだぞ。
あぁ、楽しみで仕方がない」
……あ、イライザの事は忘れてないぞ。
そう、そっちが主目的だからな!
道中の敵は問題なかった。
ウィンドルが温暖な気候であるためか、ストラタよりも外皮の柔らかい生物ばかりなのだ。その分素早かったり毒をもっていたりしたが、遠距離で仕留める俺には関係の無い事。
そうして辿り着いたウォールブリッジ。
一応道中でイライザの事を聞いたのだが、収穫は無し。なんだ、追い越してしまったか?
「少年、一人か?」
ウォールブリッジの前に立つウィンドル兵が尋ねてきた。職業熱心大いに結構。だが今は誤魔化されてくれ、頼むぞ。
「はい。ウィンドルの観光をしているんです」
「……見た所十を数える程だと思うが、保護者はいないのか?」
「一人で行くのに意味があるんです。親がいると、それに頼ってしまいますから」
心の中のモーリスが、「お前が親に……頼る??」という、なんともふざけた顔をしていたので弓で射ておいた。
ちなみに隣には所長もいたので纏めて覇道滅封だ。出来ないけど。
「へぇ、偉いんだな。
おっと、後ろが詰まってるな。少年、観光は構わない。が、一応言っておく。
ヘンな場所には入るなよ? それと、トイレは今見えている一番奥、右側の基部を曲がってさらに右だ」
「ありがとうございます。割と我慢してました」
「ハハ! それじゃ、達者でな! 君は外国人だが、剣と風の導きがある事を願っているよ!」
……いや、いや。
いやはや……。なんだろう、国土とか大煇石って、性格にも影響するのかな。
イマスタやモーリスは砂みたいにカラッとした性格。ガリードや所長、施設長や宿屋は水と砂を合わせたドロっとした性格。イライザはサラサラ人の心に入ってくる水みたいな性格だった。
そして今のウィンドル兵は、風の様に爽やかな性格だ。
そういえば彼らと敵対するセルディク公も、毒仕込みなんかは確かに粘質だけど、有り方は竜巻のようだったな、と思う。
「……とすると、俺は……」
……まぁ、俺の性格はストラタに育てられたものじゃないしな。
強いて言えば、コンクリートのような、ひどく脆いものなのだろう。
そんなことより。
「右手、ね。
いやぁ、ラッキー」
右手といえば、地下遺跡へのワープがある方じゃないか。
トイレなんか嘘だ……が、一応行っておこう。タイムリミットは二時間。
めいっぱい楽しむためにな!
「っ……慣れない感覚……だ……ぉぉぉおお……」
初めてのワープに若干酔いを覚えていた俺だったが、視界に入ってきた光景にその全てが吹き飛んで行った。
薄い、靄のような緑。浮遊する石柱群。
まるで鼓動を繰り返すかのように明滅を続ける床。
間違いない。
アンマルチア族特有の、いや、フォドラの民特有の色彩。
「……やべぇ、興奮する」
取り繕う意味も無い。
外とは空気中の
「……だが、魔物は湧いている、か。全く、どうしたらこの中で生きていられるんだ」
……いやでも待てよ?
此奴ら……古代種である可能性が高くないか? アンマルチア族がこの遺跡を創って、放置してからの云百年か。俺は生物学に関してはてんでさっぱりだが、非常にレアな魔物なんじゃ。
確かここにいるラプトルやリザードは、ケイヴラプトルとリザードという名前で……フォドラにそいつらの原種が、他地域に亜種や変異種がいるんだよな。
なら、やはりコイツらがエフィネア産における最初の種か。
どうする? 持ち帰ってみるか? 奴らは大体20lv。足場が狭い以上囲まれたら不味いが、遠くから狙い撃ちをする分には問題ない……と思いたいが。
「……いや、遺跡を傷付ける可能性を考慮しろ。……弓は突発事象に弱い。銃とは違うんだ」
特に風の
やはりここは、できるだけ戦闘を避ける方向で行くべきだ。
「……やっぱコレだよな。風の
自身に水の
この一年で随分とモノにしたそれで、周囲を浮遊する石柱群をとびとびに移動する。
これ、落ちたらどこへ行くかわからないからな。
慎重に、だ。
「……見つけた!」
そして、それが見えた。
情報を映し出す機械のようなもの。
浮遊する石版の端末。
間違いない。あれが中心部だ。
「……さて、俺に操作が出来るかどうか……」
後はそれが、一番の問題だった。
「……そう言う考え方も……」
ある程度操作は出来た。流石に彼女の様にぱちぽちーっと、では無理だったが、なまじコンピューターというものになれているだけあってか、少しはわかるのだ。
だが、ここに残っている情報はほとんどない。
というのも、ここは主にプロトス1に関する情報のみを記録・管理し保存するためだけの場所のようで、しかしそれもある意味納得と言えるかもしれない。
ここは、ラムダの逃げ延びてきた地点のちょうど反対側だ。プロトス1自体はアンマルチアの人達にとってどうでもいい存在……というか、兵器以上の価値は見出していなかっただろうし、ラムダと対消滅してくれるのならばそれも結構と考えていたと思う。
だから、プロトス1を守るための施設ではないのだ、ここは。
プロトス1を再構成するための……対消滅や分滅保全が間に合わなかった場合、フォドラの設備が無い状態でプロトス1をもう一度造り出すための施設であると考えられる。
だからこそ、あの時一番にプロトス1の姿が映し出されたのだろう。
「……なら、ここに……光子が、補充用の光子が用意されている可能性は無いか?」
プロトス1を形作る光子という、
どんな形にもなれ、分裂しようが時間が経とうが関係なしに存在し続ける埒外の粒子だ。
何より、ラムダに対して絶対の特攻性を持つ粒子でもある。もっとも、ラムダの攻撃もまた光子に対して絶対の特攻性を持っているのだが。
「……再構成。再装填……んん、アンマルチアの言葉はよくわからん……英語に統一しろ英語に」
流れる単語から共通の物を抜き出し、それを消したり付け加えたりして、それによって何が起きるかを見て意味を知る。
逆引きのようなものだ。字の読めない字引き。
「再生……再生を願うは我が真なる祈りなり……光よ形を宿し、具現せよ……」
……ダメか。
そりゃそうだ。俺に光子は無いのだから。
でも、アプローチはこれで合ってる気がするんだよな……。
「再生じゃないな……再誕? んん……いや、まずは集めないといけないか。
光よ集え……あぁ、いや、接続してないんだから、俺が言っても意味は無い。打ち込めばいいのか?
光……うぉぉぉ、アンマルチア語で光ってなんていうんだ……きゅぴーん☆とかか……」
タイムリミットがあるだけに焦る。
でも大事な事なのだ。暴星対策は、弱くてもいいから無くてはならない。
教官とかヴァニッシュフロウ以外暴星特攻ついてないからすんごい疲れるんだよな!
くそっ、どうにかして……どうにかして光子を獲得したい!
「光……いや、俺の場合光子から働きかけるより、
……意思に答え具現せよ……違うな」
時間だけが過ぎて行く。
そろそろ不味いな……。
「
要は俺とこの装置に繋がりが出来ればいい。
そのバイパスさえつながれば、何とかなりそうなのに……流石に端末に腕を突っ込むわけにもいかないよな……。
――エレスポットからレアメタルが出現しました。
「え。
……あ!」
そのアナウンスが実際にあったわけじゃない。
ただ、腰に付けているエレスポットが急にずっしり重くなった事と、レアメタルしかセットしていなかった事で、脳が勝手にそう判断したんだ。
そして素晴らしいタイミングだ。そうだ、あるじゃないか。
アンマルチア族、ひいてはフォドラ由来の技術を用いて作られた、不思議な壺が!
「エレスポット……接続ポートに直置きでいいか? いいだろ。イケるイケる!」
端末のポートにエレスポットを置き、その首を掴む。
そして今まで散々調べていた言葉を使い、打ち込む。
「『光、集める、光、送る、願う』……あー、『ラムダ、必滅』!」
文法とかはよくわからない。
ただの単語の羅列。だが、彼女の適当なキー打ちで何とかなった所を鑑みるに、例え彼女が天才だからだとしても、ある程度許容範囲は広いのだと願う!
果たして――。
理屈(暴論):
1.プロトス1はフォドラ由来の技術。全身を光子で構成しているが、武器や防具の類いは光子ではなかった。
→この事から、プロトス1及び光子技術は他の物へ伝播し、力を伝えたり馴染ませる事が出来そう。
また、作中通りの施設であれば、その際の武具はフォドラ由来、もしくはアンマルチア族由来の物である可能性が高い。
2.エレスポットは恐らくアンマルチア族の技術。前話でも考察したけど、恐らく輝石技術の副産物と思われる。
3.よってプロトス1を再構成、ないしは失った光子を充填する場合、アンマルチア族由来の素材を身に付けながらでの事になる可能性がある(ここが特に暴論)。
4.機械にエレスポットを「プロトス1が身に着けている武具」であると誤認させると同時に、プロトス1が他者の