よろず短編集   作:龍委員長

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たぶん、どこかで誰かが書いてそうなよくありそうな妄想ネタです。
クロスオーバーではありません。


姉の使命   閃乱カグラシリーズ

くぅ~~~~~~~~ん!

 

文化遺産に指定されている古城で、場所に似つかわしくない嬌声が響く。

 

「両奈! 今は下忍たちの説教中だ。邪魔をするな!」

 

ちらりとそちらに視線を向けると、選抜リーダー 雅緋が後輩に説教をしているところに両奈が飛び込んだらしい。・・・まぁ、いつもの光景。

 

「きゃぁん! もっと叱ってぇ!」

「っ! 両備!! お前の姉をどうにかしろ!」

 

怒鳴りつけても喜ぶだけの両奈に困り果てた雅緋がわたしを呼ぶ。いつものパターン。

 

「はいはい。ほら、とっとと行くわよ。メス豚」

「ぶひぃっ! もっと罵ってぇ!」

 

両奈の首根っこつかんで引きずっていく。その間も両奈は変な声を上げている。

 

・・・ハァ

 

----------

 

「おら、とっとと入れ!」

「きゃふぅん!」

 

両奈の部屋の襖を開けて中に蹴り込む。それでも両奈は相変わらずだ。

後ろ手に襖を閉めて。ため息をつく。

 

「もう、こんなことしなくて良いのよ。お姉ちゃん(・・・・・)

「・・・」

 

わたしの言葉に、困ったように眉根を寄せる姉。

あれは数年前。もう1人の姉、両姫の死が発端だった。

 

~~~~~~~~~~

 

まだ幼かったわたし達の元にもたらされた訃報にわたしも両奈も呆然とした。大人たちの言葉の意味が飲み込めなかったというのが正直なところだった。

理解できたことは、両姫姉さんにもう会えないんだってこと。

 

失望の中、それでも何とか生活を続けていたある日、わたしは野犬に襲われた。まだ忍としての訓練もほとんど積んでいなかったわたしは逃げ切ることもできずに脚がすくんで動けなくなってしまった。

弱った獲物を追い詰めるようにジワリジワリとにじり寄ってきていた犬がついに前脚に力をこめて飛び掛ってきた。

恐怖に目をつむってしまうわたし。

でも、いつまでたっても牙や爪に体を切り裂かれる衝撃は襲ってこなかった。

 

恐る恐る目を開けると、血を流しながら野犬を押さえつける両奈の姿があった。白い肌に深々と突き刺さった牙。そこからとめどなく流れ出る真っ赤な血。

何が起きているのか一瞬解らなかった。その時わたしの胸を支配したのは、両姫姉さんの訃報を聞かされた時の感情に似ていた。また家族を、大事な姉を失う。

 

そこからはよく覚えていない。両奈と一緒に、野犬を追い払ったのは間違いないけれど、具体的に何をどうしたのかよく思い出せない。それくらい半狂乱だったんだと思う。

とにかく、両奈のおかげでわたしは無傷で済んだ。幸い、両奈もそこまでの大怪我ではなかった。

 

「なにしてるのよ、バカ!」

かばってくれたというのに、わたしの口をついて出たのはそんな罵倒だった。

なのにあいつは・・・

 

「両備ちゃん怪我してない?」

なんて笑いながらわたしの心配してきて、目の端に涙を浮かべるわたしの頭をなでながら

「大丈夫。両奈ちゃんは両備ちゃんのお姉ちゃんだから。両備ちゃんの事は何があっても護るからね」

そんな風に笑うものだから、わたしは言葉をなくして両奈の胸に頭をうずめて声も無く泣くだけだった。

 

その頃からだ、どんな些細なことでもわたしに何かあると両奈が前に出て何でもしてしまうようになったのは。

忍学校に入り本格的な訓練を積むようになって、それなりの力を付けてきてもそれは変わらなかった。

 

わたしたちにとっては姉妹の絆。でも他の生徒からは奇異に見えたみたいだ。

 

『りょうなさんは どうして じぶんから きずつこうとするの』

 

当然の疑問だ。忍として一緒に訓練している仲間相手だし、わたしたちの身の上を話すにはちょうどいい機会だった

 

「両奈ちゃんはねぇ、痛くされると気持ちよくなっちゃうのぉ!」

 

・・・・・・・・・

 

重い沈黙だった。わたしも姉が何を言っているのか解らなかった。

 

後で問いただして解った事だけれど、事情を話したら『もう必要ない』と言われる気がしたとか。妹を護る姉であり続けたかった両奈が苦し紛れに考えた理由がこれだったんだ。

 

姉の爆弾発言に呆けていたわたしは周囲の空気がおかしくなるのに気がついた。

まぁ、無理も無いわよね。でも、

 

お姉ちゃんだけに恥ずかしい思いはさせない。

 

そう思ったわたしはとっさに

 

「そ、そうなのよぉ! この変態メス豚がねぇ、痛くしろってうるさいもんだから、盾にしてやってんのよぉ!」

 

わたしたち姉妹はそういう関係にある。そういう事にした。

 

それ以来、被虐趣味の姉と嗜虐趣味の妹。そういうレッテルがわたし達に貼られ、わたしたちは姉妹の関係を変えないために、変態姉妹を演じるようになった。

 

~~~~~~~~~~

 

「両備ちゃん?」

 

つい昔のことに意識が飛んでいたみたい。

 

「まだ続けるの?」

「だめ?」

「・・・だめじゃないけど・・・両姫姉さんみたいになるのはゴメンだからね」

「だぁいじょうぶだよぉ」

 

何度も繰り返したやりとり。

悪い気はしないけれど、目の前で肉親が怪我をするのはやっぱりいい気分じゃない。

それでも、両奈(あね)がやりたいことを無理にやめさせることもしたくない。

だから、

 

----------

 

くぅ~~~~~~~~ん!

 

今日も古城跡地に、似つかわしくない下品な嬌声が響くんだ。




奇行が目立つキャラの行動が実は事情のある演技だった。
てパターンが好きです。

なお両奈の被虐趣味は、エスティバルバーサスやピーチビーチスプラッシュで両姫が生きていた時からのものだと明言されていますが、
閃乱カグラシリーズは直接世界線がつながっているタイトルが1つもなく、全タイトルがお互いにパラレルワールドであることがシナリオライターの先生から明言されています。

なので、子供頃の描写が少ないシノビバーサスの世界線ならこういう可能性もあるのではないか、という妄想です。
いうなればシュレディンガーのメス豚です(笑)
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