バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第98話「語られる歴史、VS絶対なる幻龍神!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椎名、司、雅治、真夏の4人は司の父親である紅蓮に連れられ、赤羽一族の石像の前にあった地下への階段を下りていた。薄暗いため、先頭にいる紅蓮がライトで前方を照らしている。

 

が、直ぐにそんなものは必要なくなる。

 

 

ー!

 

 

「な、なんやここ」

「なんでこの場所だけ明るいんだ?」

(………進化の力がそこら中に溢れている……?)

 

 

その最深部であろう広大な場所に到着した。そこはライトなど必要ない程の鮮やかな色の光に満ちている。他の者はわからずでいるが、椎名だけは咄嗟に理解した。この光は進化の光。オーバーエヴォリューションによってデッキに発生する光そのものだ。何故か常にそれがこの空間に漂っている。

 

 

「ここは進化の間(しんかのま)……大昔の赤羽一族がエニー・アゼムの勇姿と栄誉を称えるために作られた場所だ」

「奴は本当に教科書通りの英雄なのか?」

「まぁそう焦るな司、今から語ってやるよ」

 

 

紅蓮はいつものおちゃらけた態度を一変させて自分の知る全てを語る。エニー・アゼムや2000年前の情報を………

 

 

「エニー・アゼム。知っての通り教科書で習うくらい有名な2000年前の人間で、渡来人だ。彼女は確かに英雄だった。鬼を滅ぼし、人々を救った…………だが、その後に彼女を待ち受けていたのは人間達からの迫害と追放」

 

 

ー!

 

エニー・アゼムの迫害、追放。その言葉に一同はたじろいだ。

 

 

「人間達は彼女の力を妬み、奪った」

「おいまさか、その奪った力っつうのは……」

「そう、進化の力だ。だからこそ今の人間達はオーバーエヴォリューションが可能となった。そして大昔の赤羽一族はエニー・アゼムからバロンを奪い、その力を一族の者に吸収させた。長い年月をかけて司、お前の体の中にバロンが宿り、何らかの作用によって復活した。敵としても最善のタイミングだったろうよ」

「も、もうなんのこっちゃ……」

 

 

鬼に似た強い進化の力を持っていたエニー・アゼム。彼女は鬼を滅ぼした後に、その力に嫉妬、恐怖した人間達から激しい差別及び迫害と追放を受け、さらには自らの進化の力の大半を奪われた。

 

それが後々の【オーバーエヴォリューション】だ。人間達は皆これを一度だけ使える可能性を秘めているのはこの昔話が原因なのだ。

 

そして大昔の赤羽一族はそのデッキのカード、バロンを奪った。それが今になって司のもとに宿り、復活したのだ。紅蓮の言う何らかの作用とは、おそらくジョーカーの進化の力。あの時、強大で危険な進化の力を御した司は偶発的にバロンをこの世に蘇らせた。

 

 

「まぁ要するにエニー・アゼムの人間に対する恨みは相当なもの。彼女ほどの力ならばこの世に誰かの肉体を借りる形で復活することくらい用意だったろうよ」

「フッ、結局ここに来ても答えは同じか……奴らとのバトルに勝つ、それだけだ」

 

 

バーク・アゼムが何故自分のバロンを狙っていたのかを理解した司は強気な態度でそう答えるが……

 

 

「ちょっと待ってくれおじさん、じゃあこのカード、パラディンモードはなんなんだ?…エニー・アゼムはこのカードを自分のカードって言っていたんだ」

 

 

椎名としては疑問に残ることもあった。それはエニー・アゼムが狙っていたインペリアルドラモン パラディンモードのカード。それを紅蓮に見せつけながら問い詰めた。

 

紅蓮はしばらくそのカードを眺め、見つめるが……

 

 

「………んーーー…いや、俺の知る限りだとエニー・アゼムがそんなカードを使っていた記録はないな…彼女はアームズと名のつく仮面スピリットしか使わないはずだ」

「……」

 

 

紅蓮でもパラディンモードの正体は分からずでいた。芽座一族である六月でも知らないとなると、とうとうわかるのはエニー・アゼム本人くらいか………

 

椎名の頭の中にそう過ぎった直後………

 

……その瞬間だった。5人の目の前に巨大な黒い靄が出現したのは。それはまるでこの光に満ち溢れた空間を塗りつぶすかのように………

 

 

「5日振りじゃの、芽座椎名、そして赤羽司……!!」

「っ!!……エニー・アゼム!!」

「っ……あれが!?」

 

 

その中から現れたのは他でもない。赤羽茜の姿を象ったエニー・アゼムだ。

 

 

「本当に茜さんの身体を………その身体から離れろ!!」

「元より死人だ、奪おうと妾の勝手だろう?」

「無茶苦茶言いやがる女だね、エニー・アゼム様は……いくら愛娘の姿借りてても、俺はヒステリックな女は嫌いだね」

 

 

茜の肉体を動かしているエニー・アゼムに対し、雅治が言うと、それを当然のような理屈を立てるエニー・アゼム。そんな彼女に紅蓮は少々呆れていた。まぁ彼としても大昔の人間が復活した事に実感が湧いていないのかも知れない。

 

 

「さぁ芽座椎名……今ここで決着をつけようぞ、其方の持つパラディンモードを今ここで妾の手中に……」

 

 

エニー・アゼムがそう言うと、椎名は黙りながらも懐から自身のBパッドを用意する。

 

が、その前に聞きたいい事があって………

 

 

「このカードはあんたにとってなんだ?」

 

 

椎名がエニー・アゼムにパラディンモードのカードを見せつけながら問い詰めた。

 

エニー・アゼムは少しだけ口を閉じた後に直ぐ答える。

 

 

「………………そのカードは妾の創り出した【14番目のロイヤルナイツ】……共に戦った芽座一族に祝いとして創り出し、譲渡した物だ。そこには妾の進化の力が詰まっている……だからこそそれを取り返し、真の力を解放しなければならないのだ」

「………それは本当か?」

「本当じゃ」

 

 

エニー・アゼムの答えに、椎名はいささか疑問を拭えきれない。

 

これは椎名の女の勘だ。何故だろうか。何故かエニー・アゼムは嘘をついているような気がする………そんな予感がしていた。

 

しかし、やる事は理解している。パラディンモードのカードをエニー・アゼムに渡すわけにはいかない。やる事はただ一つ……バトルあるのみだ。椎名はそう思い、自身のBパッドを展開すると………

 

 

「ここは危険だ、みんなは戻っててくれ」

「椎名っ!!」

 

 

1人エニー・アゼムに挑もうとする椎名。また仲間達を突き放すような態度で言葉を放った。

 

 

「なんであんたあたしらを突き放すんよ椎名!!…自分だけ危険な所に残ろう言い張って!!」

「そうだよ、僕達は今まで一緒に戦ってきたじゃないか!!」

「だからこそだ」

「っ!?」

 

 

「だからこそ私はみんなを守らないといけない。たとえ私が私じゃ無くなったとしても……!!」

 

 

真夏と雅治を黙らせるようにまた強く言い放った椎名。その目線は常に敵であるエニー・アゼムの方を向いている。

 

……が、そんな椎名に詰め寄っていく人物が1人………

 

真夏だ。

 

真夏はその手を椎名の耳まで伸ばし………

 

 

「しい〜〜〜なぁ〜〜っ!!」

「っ……痛てててててて!?……ちょちょ!耳千切れる!!」

 

 

詰め寄った真夏が怒りのままに全力で椎名の耳を引っ張った。まるで椎名を引き留めるかのように、説教するかのように……そして、元の椎名に戻そうとするかのように、現に椎名は久し振りに昔のようなコミカルな表情を見せている。

 

 

「アホかあんたは!!…誰もそんな事望んでないっちゅうねん!!」

「!?」

「どんなに世界が平和になったって、どんなに時代が変わったって、椎名が椎名じゃ無くなるだけであたしらは嫌なんや!!」

「………真夏……」

「だからあたしらにあんたの近くに居させろや!!あんた青春の最後をそんな形で終わらせる気やないやろな?」

「…………!!」

 

 

真夏の必至な想い。

 

それは今椎名を心配する世界中の人間達の代表と言っても過言ではない。

 

そんな想いが椎名の心を再び強く惹きつけて………

 

 

「………うん……わかった………見ててよ真夏!!必ず勝つからさ!!」

「っ……椎名……!!」

 

 

約2ヶ月振りに明るい笑顔を見せて笑った椎名。真夏も雅治も、ひょっとしたら司も、こんな笑顔をずっと待ち望んでいた。

 

椎名は不思議と肩の重荷が軽くなるのを感じた。自分にはこんなにも頼っていい仲間がいるんだと心から感謝している。そんな彼らを紅蓮は微笑ましい笑顔で眺めていた。

 

 

「……茶番は終わりか?……ここから生きて帰れると思うなよ?」

「帰るさ!!帰って明日も学園に行く!!…真夏達と一緒に!!」

 

 

そう強く言い放ち、意気込む椎名。

 

エニー・アゼムも自身のBパッドを展開し、デッキをセットする。

 

そして、真夏達が見守る中、大昔の赤羽一族がエニー・アゼムの勇姿と栄誉を称えるために作った広大な進化の間にて、バトルスピリッツが切って落とされる。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

コールと共にバトルが開始される。

 

先行は椎名だ。

 

 

[ターン01]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》

 

 

「メインステップ、私はネクサスカード、デジヴァイスを配置してターンエンド!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨3

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【無】

 

 

椎名の初手はデジタルスピリットを全力でサポートする小さな機械を腰に取り付けてのエンドとなった。

 

 

[ターン02]エニー・アゼム

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「妾はエイプウィップを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5s⇨0

トラッシュ0⇨4s

【エイプウィップ〈R〉】LV1(1)

 

「緑?…今のあんたは紫じゃないのか?」

 

 

エニー・アゼムが初手で呼び出したスピリットは緑属性のエイプウィップ。4本の手を生やした猿型のスピリットだ。彼女は以前、ゾディアーツと呼ばれる紫のスピリット群を使用していた事から違和感を感じる椎名。

 

 

「前も言ったろう…次なるは妾の力の一端を見せるとな!!…召喚時、コア1つをリザーブへ、さらにソウルコアを使用しての召喚の場合、さらにコアの墓地へと2つコアを追加!!」

リザーブ0⇨1

トラッシュ4⇨6

 

「……一気に3つもコアを……!?」

 

 

貧相な見た目の猿、エイプウィップが遠吠えを上げると、エニー・アゼムのリザーブとトラッシュにそれぞれコアが追加された。

 

 

「妾の番はこれで終わり」

【エイプウィップ〈R〉】LV1(1)BP1000(回復)

 

バースト【無】

 

 

多量のコアを増やし、そのターンをエンドとするエニー・アゼム。次は椎名のターン。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ……私はブイモンを召喚!!……効果でカードをオープン!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

【ブイモン】LV1(1)BP2000

オープンカード↓

【ギルモン】×

【ライドラモン】◯

 

 

小さな青い竜が椎名の場に現れる。そしてその召喚時効果も成功し、椎名は新たにアーマー体スピリット、ライドラモンのカードを手札へと加え、さらにそれを発揮させる。

 

 

「さらにライドラモンの【アーマー進化】発揮!!対象はブイモン!!」

手札4⇨5

リザーブ1⇨0

トラッシュ3⇨4

 

 

椎名がそう宣言すると共に、ブイモンの頭上に黒い瓢箪の形をしたデジメンタルが投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合い、新たな進化を遂げる。

 

 

「轟く友情……ライドラモンを召喚!!」

【ライドラモン】LV1(1)BP5000

トラッシュ4⇨6

 

 

椎名の場に新たに現れたのは黒いボディの獣型のアーマー体スピリット、ライドラモン。登場するなり大きく、それでいて気高く雄叫びを上げて椎名のトラッシュにコアの恵みを与えた。

 

 

「………エンドだ」

【ライドラモン】LV1(1)BP5000(回復)

 

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【無】

 

 

「っ……椎名らしくもないな、もうターンを終えるやなんて……」

「あのバカはエニー・アゼムのバトルを見極めようとしてんのかもな、仕掛けるなら次のターンからだろう」

 

 

アタックを行う事なくそのターンを終える椎名。その様子に疑問を抱く真夏に対し、司が冷静な口調でそう言った。

 

実際は司の言う通りだった。相手はどんなに力を隠し持っているか未知数なエニー・アゼム。彼女のバトルをこの序盤の数ターンで見極める必要が確かにあって………

 

 

[ターン04]エニー・アゼム

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨8

トラッシュ6⇨0

 

 

「メインステップ、妾は2体目のエイプウィップを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ8s⇨1

トラッシュ0⇨3s

【エイプウィップ〈R〉】LV2(4)BP4000

 

「っ!?…2体目!?」

 

「当然ソウルコアを支払う、よってコアを3つ増加!!」

リザーブ1⇨2

トラッシュ3s⇨5s

 

 

エニー・アゼムは前のターンで存分に増えたであろうコアをさらに増加させるために2体目のエイプウィップを召喚。そのコアが増していく。

 

これで増えたコアは合計6個。椎名のライドラモンと比べても実に3倍の速さでコアが増加している。

 

 

「………妾の番はこれで終わり」

【エイプウィップ〈R〉】LV1(1)BP1000(回復)

【エイプウィップ〈R〉】LV2(4)BP4000(回復)

 

バースト【無】

 

 

だがしかし、エニー・アゼムはまたもやそれだけでそのターンを終えてしまう。

 

彼女の不気味なコアバーストが続く中、椎名の第5ターンがスタートする。

 

 

[ターン05]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨7

トラッシュ6⇨0

 

 

「メインステップ……(あんなにコアを増やして何がしたいのかはわからないけど、ここは全力で私のバトルを押し通す!!)……ブイモンを再召喚し、効果発揮!!」

手札6⇨5

リザーブ7⇨3

トラッシュ0⇨3

【ブイモン】LV1(1)BP2000

オープンカード↓

【マグナモン】◯

【スティングモン】◯

 

 

そう思考し、椎名はライドラモンの【アーマー進化】で手札に戻っていたブイモンを再度場へと呼び出し、効果も成功ささる。今回はその中の対象カード、【スティングモン】を手札に加えた。

 

 

「さらに2コスト支払い、スティングモンを召喚!!」

手札5⇨6⇨5

リザーブ3⇨0

トラッシュ3⇨5

【スティングモン】(1⇨2)

 

 

ブイモンの追加効果だ。ブイモンのすぐ横に颯爽とスマートな昆虫戦士、スティングモンが現れ、その効果でさりげなくコアを増やした。

 

 

「もう出し惜しみはしない!!アタックステップ!!デジヴァイスを疲労させてドロー!!…ライドラモン、スティングモン…いけぇ!」

手札5⇨6

【デジヴァイス】(回復⇨疲労)

【スティングモン】(2⇨3)LV1⇨2

 

 

アタックを仕掛ける椎名。2体のスピリットが地を駆ける。スティングモンがまたさり気なくコアを増やした。

 

そんな椎名の行動に対し、エニー・アザムが取った行動は…………

 

 

「妾のライフ、もらうがいい!!」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

ライフの減少を宣言。スティングモンの拳の一撃と、ライドラモンの頭角が突き刺さる体当たりがそれぞれ1つずつ彼女のライフを破壊した。

 

 

「…………ターンエンドだ」

【ライドラモン】LV1(1)BP5000(疲労)

【ブイモン】LV1(1)BP2000(回復)

【スティングモン】LV2(3)BP8000(疲労)

 

【デジヴァイス】(疲労)

 

バースト【無】

 

 

攻めるには攻めたものの、エニー・アゼムから発せられる違和感と不気味さが拭えぬまま、そのターンをエンドとした椎名。

 

次はまたエニー・アゼムの番だ。

 

 

[ターン06]エニー・アゼム

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨10

トラッシュ5⇨0

 

 

「妾のメインステップ………罠を伏せる………遂にこれを呼び出す時が来たか……」

手札5⇨4

 

「?」

 

 

エニー・アゼムのメインステップ。ここで言う罠とはバーストカードのことだ。彼女の場に裏向きで伏せられる。

 

彼女は怪しげで不気味な表情をこれでもかと前面に晒し出しながら言った。まるでこのターンで一気に勝負を着けると宣言しているかのように………

 

……これは……

 

……今から呼び出されるソレは……

 

……エニー・アゼムという超常な存在が持つ力の一端に過ぎない……彼女の持つ進化の力と言うのは、椎名達が持つそれとは比べ物にはならない。それがいま証明される。

 

 

「………照覧あれ!!全てのスピリットの頂点に立つ絶対なる神よ!!…龍神を象り、今こそ地上に天罰を下せ!!………絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン!!召喚!!」

手札4⇨3

リザーブ10⇨0

トラッシュ0⇨10

【エイプウィップ〈R〉】(1⇨0)消滅

【エイプウィップ〈R〉】(4⇨0)消滅

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】LV1(5)BP50000

 

 

ー!

 

 

進化の力による光に満ち溢れていた進化の間に暗がりの悪雲が立ち込める。そこから稲光と共に姿を見せたのは、絶対なる幻龍神。

 

名もアマテラス・ドラゴン。この世界においては歴史の教科書でも習う程に有名な伝説のスピリット。だがそれは飽くまでも仮説の塊。その全貌はほぼ謎に包まれているが、ただ1つだけ言えることがある。

 

それは……

 

そのカードがバトルスピリッツというカードゲームの中で最強の僕であるという事……

 

 

「あ、アマテラス・ドラゴン!?」

「うそやん……本物?」

「フッフ、いや、これは妾の進化の力で作り上げた謂わば模造品じゃ」

「模造品って……」

 

 

当然の如く驚嘆し、驚愕する椎名達。そう、これはエニー・アゼムの進化の力で作り上げた言わば偽物。

 

だが、その圧倒的な効果。他を寄せ付けない無敵の効果はそのままであり………

 

 

「アマテラス・ドラゴンの召喚時!!全てのスピリットを破壊する!!」

「っ……なにっ!?」

「その咆哮、神光は全てを無に帰す……!!」

 

 

圧倒的な存在感と重圧を放つアマテラス・ドラゴンは登場するなり、気高く透き通るような咆哮を神光と呼べる後光と共に放つ。それを聴いた者、見た者は忽ち分子レベルで崩壊していく。

 

椎名のスピリット達も例に溺れず、一瞬にして細かく散って行った。椎名はただそこから巻き起こった風圧を受け止めることしかできず………

 

 

「……これがアマテラス・ドラゴンの力………私の場が一瞬にしてゼロに……」

「緩くはないぞ……アタックステップ!!……行くがいい、アマテラスよ!!」

「っ!!」

 

 

そのままアタックステップに直行するエニー・アゼム。アマテラス・ドラゴンがその細長い身体をくねらせながら椎名のライフへと迫りいく。

 

場のスピリットカードを失った椎名にこのアタックを守る手段があるわけもなく………

 

 

「……ライフで受ける……」

 

 

と、宣言するしか出来なかった。

 

 

 

「ならば受けるがいい、3つ分の痛みを!!」

 

「っ………う、うぁぁぁぁっ!!!」

ライフ5⇨2

 

「「椎名!!」」

 

 

アマテラス・ドラゴンの口内から放たれる神々しい天上の力を携えた熱線が椎名のライフを襲う。そのライフは一瞬にして大半が粉々に砕け、気づけば残り半分以下の2となってしまう。

 

これがスピリット全滅効果以上にアマテラス・ドラゴンの恐ろしい特徴、それはトリプルシンボル。一度のアタックで3つのライフを破壊できる………

 

真夏と雅治が咄嗟に椎名の名を叫ぶ………椎名も流石にあれだけのダメージを受けて無傷なわけがないか、膝をついていた。

 

 

「………妾の番はこれで終わりじゃ、さぁ立て虫ケラよ、まだまだこれからじゃ……」

「っ………上等……!!」

 

 

椎名は驚異的な強さを持つアマテラス・ドラゴンを前にしても怯まず、臆さず、再び膝を伸ばし立ち上がった。

 

 

「……妾の番はこれで終わり」

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】LV1(5)BP50000(疲労)

 

バースト【有】

 

 

自分の他とは違う進化の力を見せつけ、そのターンをエンドとするエニー・アゼム。確かにこの時点でオーバーエヴォリューションの原点の力と言える。

 

が、次はそれにも屈しない精神を持つ芽座椎名のターン。勢いよく、そして堂々とそれが開始される。

 

 

[ターン07]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ8⇨9

《ドローステップ》手札6⇨7

《リフレッシュステップ》

リザーブ9⇨14

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ……ギルモンを召喚!!」

手札7⇨6

リザーブ14⇨10

トラッシュ0⇨3

 

 

スピリットの神と呼べるアマテラスを前に椎名が呼び出したのは真紅の魔竜成長期の姿ギルモン。

 

 

「さらにマジック、ブルーカードを使用!!…カードを4枚オープン!!」

手札6⇨5

リザーブ10⇨9

トラッシュ3⇨4

オープンカード↓

【エクスブイモン】×

【ティーアーク】×

【マリンエンジェモン】×

【デュークモン】◯

 

 

椎名が使用したのはデジタルスピリットを進化させるブルーカード。今回はギルモンと同じ赤一色のスピリットが該当する。

 

よって召喚されるのは………

 

 

「よし、赤きロイヤルナイツ、デュークモンをLV3で召喚!!」

リザーブ9⇨3

トラッシュ4⇨5

【デュークモン】LV3(6)BP18000

 

 

青色のカードがギルモンの身体を潜り抜ける。ギルモンはその中で白い鎧と赤いマント、左手に巨大な盾、右手に槍を持つ赤属性のロイヤルナイツ、デュークモンに進化を遂げた。

 

 

「来たかデュークモン……最早妾の力は其方程度では止められはせんぞ!!」

 

「ごちゃごちゃ言うな、アタックステップ!!…デュークモンでアタック!!さらにフラッシュ、その効果でトラッシュにあるギルモンを手札に戻し回復!!」

手札5⇨6

【デュークモン】(疲労⇨回復)

 

 

召喚したてのデュークモンでアタックを仕掛ける椎名。その効果で回復状態となり、2度目のアタックを可能にした。唯一のスピリットであるアマテラスは疲労状態。エニー・アゼムはライフで受ける他なく………

 

 

「妾のライフ、もらうがいい!!」

ライフ3⇨2

 

 

デュークモンの聖なる槍の刺突がエニー・アゼムのライフを1つ貫いて見せた。

 

が、これは同時に彼女の伏せていたバーストの発動条件でもあって………

 

 

「妾の罠を発動!!…絶甲氷盾!!…ライフ1つ回復、さらにアタックステップは終了!!」

ライフ2⇨3

リザーブ1⇨0

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】(5⇨2)

トラッシュ10⇨14

 

「……っ」

 

 

エニー・アゼムのライフが瞬時に回復すると共に、フィールドに猛吹雪が吹き荒れる。椎名はアタックステップ、及びこのターンのエンドを迫られた。

 

 

「っ………ターンエンド」

【デュークモン】LV3(6)BP18000(回復)

 

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【無】

 

 

椎名がエンドの宣言を行うと、すぐさまその猛吹雪は収まり、視界を確保させた。

 

次はもう一度エニー・アゼムのターン。彼女の持つ強力無比極まりないスピリット、アマテラス・ドラゴンが今一度動き出す。

 

 

[ターン08]エニー・アゼム

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨15

トラッシュ14⇨0

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】(疲労⇨回復)

 

 

「妾のメインステップ………」

 

 

メインステップの開始直後、エニー・アゼムはその4枚の手札の内1枚を見つめ、すぐさまそれを抜き取る。

 

そのカードは椎名達をまたもや驚愕させるには余りにも十分なものであって………

 

 

「妾は……2体目となる絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴンを召喚!!」

手札4⇨3

リザーブ15⇨1

トラッシュ0⇨10

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】LV1(4)BP40000

 

「なにっ!?」

「2体目のアマテラス・ドラゴンだと!?」

 

 

悲鳴をあげるように空気が震撼し、雷が鳴り響く。そんな中、2体目となるアマテラス・ドラゴンが現れ、最初の1体目の横に並び立った。

 

今まで……

 

今まで伝説のカードといえばそれただ1枚しか存在していなかった。こればかりは盲点だった。想定外の出来事に誰もが呆気に取られる。

 

 

「召喚時、スピリット全てを破壊する!!…この時、最初のアマテラス・ドラゴンは自身の能力によりその効果を受けない!!」

「……っ」

「よって破壊されるのは其方のデュークモンだけ……くたばるがいい!!」

 

 

2体目のアマテラス・ドラゴンが最初の1体目と同じく透き通るような甲高い咆哮と神光とも呼べる後光を解き放つ。同格の神である最初のアマテラスはそれを弾くが、デュークモンはそう言うわけにはいかない。

 

……しかし、守れないと言うわけでもなく……

 

 

「くっ……手札のグラニの効果!!1コスト支払いデュークモンと合体するように召喚!!…さらにこのターン、デュークモンは効果で破壊されない!!」

手札6⇨5

リザーブ3⇨2

トラッシュ5⇨6

【デュークモン+グラニ】LV3(6)BP24000

 

「なに!?」

 

 

椎名が勢い良く手札から抜いた1枚のカードは赤のブレイヴカードグラニ。音を超える速度でデュークモンの前方に現れたかと思うと、その力を存分に発揮させるように赤い光を解き放ち、それを相殺。デュークモンを破壊から護った。

 

 

「……神の力を退けるとはな……じゃが、まだ妾のターンは終わってない!!…アマテラスにコアを追加し、今一度罠を伏せる」

手札3⇨2

リザーブ1⇨0

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】(2⇨3)BP20000⇨30000

 

 

2体目のアマテラスの効果はほぼ不発に終わったが、エニー・アゼムのターンが終わったわけではない。バーストを伏せ、アマテラスのBPを調節すると、そのままアタックステップへと直行する………

 

 

「アタックステップ!!……2体目のアマテラス・ドラゴンで攻撃!!その戦闘力は40000!!」

 

 

コアが4つ置かれたアマテラス・ドラゴンで攻めるエニー・アゼム。

 

桁外れのBP。桁外れのシンボル数。

 

余りにもカードのスペックに差があり過ぎる。あのロイヤルナイツのデュークモンでさえも霞んで見えてしまう。

 

が、椎名も負けてはいられない。手札のカードをさらに切り、このターンを凌ぐべく動き出した。

 

 

「フラッシュマジック、デルタバリア!!」

手札5⇨4

【デュークモン+グラニ】(6⇨3)LV3⇨2

トラッシュ6⇨9

 

「……っ」

 

「この効果によりこのターン、コスト4以上のスピリットのアタックじゃ私のライフはゼロにならない!!…それはライフで受ける!!………う、うぅっ!!」

ライフ2⇨1

 

 

椎名の前方に球体が3つ現れたかと思うと、それらは電磁を発して繋がれていき、三角形の壁を形成。それは砕かれながらもアマテラス・ドラゴンの口内から放たれる神々しい天上の力を携えた熱線から椎名のライフを辛うじて守り抜いた。

 

 

「これは私のライフに関係する効果、アマテラス・ドラゴンにも適応される………」

 

「……しぶとい……まぁ良い、妾の番はこれで終わり。次の番で其方の最後じゃ」

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】LV1(3)BP30000(回復)

【絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】LV1(4)BP40000(疲労)

 

バースト【有】

 

 

2体の神を従え、そのターンをエンドとするエニー・アゼム。今、彼女はこのバトルの勝利を確信していた。

 

それもそのはず、伏せているバーストカードは2枚目となる【絶甲氷盾】……さらに手札には【3枚目の絶対なる幻龍神アマテラス・ドラゴン】までもある。

 

万に1つあっても負けるわけがない。その確固たる自信が今の彼女には確かに存在していた。椎名もこの時点で何となくそれを予想しており………

 

 

(……このターンが最後だ……あるのか、私のデッキにこの状況をひっくり返す切札は………?)

 

 

そう思考を巡らせていた。敵の残りライフは3つ。ブロッカーはBP30000のアマテラス・ドラゴンが1体。バーストもある。

 

デュークモンだけではまず間違い無く勝てない。

 

………しかし、

 

 

(……ある……たった1つだけ残された手が……)

 

 

1つだけ……たった1つだけこの状況を覆せる可能性のあるカードを椎名は思い出した。それはA事変の時、散々繰り返した進化の力によって生み出され、勝手にデッキに入っていたカード。

 

使う機会もなかったが、今、ここが使い時であると椎名は見た。

 

今も昔もこれからも、椎名はバトルに迷ったりはしない。明日も真夏達と学園に通うため、椎名はそのカードをドローする事に全身全霊を注ぎ、全てを懸ける。

 

 

[ターン09]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

 

 

「ドローステップ………ドローッッ!!……よしっ!!」

手札4⇨5

 

 

強く意気込みドローを行う椎名。そのドローした運命のカードはまさしく狙っていたそのカード。久し振りに椎名はポーカーフェイスを忘れ、僅かながらに口角を上げた。

 

その様子をエニー・アゼムは余裕の表情で眺めていた。勝てるわけがない。この状況をどうにかできるわけがない。そういった考えから来るものであって………

 

そして椎名は今からそのエニー・アゼムの余裕を崩す。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨13

トラッシュ9⇨0

 

 

「メインステップ!!ギルモンを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ13⇨10

トラッシュ0⇨2

【ギルモン】LV1(1)BP3000

 

 

真紅の魔竜、成長期の姿であるギルモンが今一度椎名の場に現れる。

 

そしてここからだ。ここからが真打の登場である。

 

 

「私はこのブレイヴカード、断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソードを召喚!!…その際にギルモンを消滅!!」

手札4⇨3

リザーブ10⇨4

トラッシュ2⇨6

【ギルモン】(1⇨0)消滅

【断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード】LV1(3)BP5000

 

「っ!?……なんだ!?」

 

 

ギルモンが不足コストにより消滅し、トラッシュへと送られた直後……

 

椎名とデュークモンの前方に悍ましくも禍々しい剣が切っ先を地へと向けて現れた。それは滅龍の力がこれでもかと凝縮された一振りの魔剣。

 

その存在にエニー・アゼムはおろかアマテラス・ドラゴンさえも驚愕し、怯えているように見える。

 

 

「なんだその剣は……!?」

 

「これは私の進化の結晶……みんながいたからこそ生まれたカードだ!!…このカード共にあんたを討つ!!」

 

 

椎名はエニー・アゼムに対してそう強気な態度で言い放つと、メインステップを再開する。次はブレイヴらしく合体だ。

 

 

「グラニとの合体を解除し、断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソードをデュークモンに合体!!」

リザーブ4⇨3

【グラニ】LV1(1)BP6000

【デュークモン+断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード】LV3(6)BP28000

 

「っ……デュークモンが黒く変わっていく……!?」

 

 

グラニとの合体が解除されると、デュークモンはその地へと突き刺さったジャッジメント・ドラゴン・ソードを抜き取るべく、盾と槍を解除して素手を露わにする。

 

デュークモンがその手で魔剣を地面から引き抜くと、その魔剣に宿る黒い力が身体全体を巡っていく、その作用のせいか、赤いマントは消滅。代わりに漆黒の翼が新たに生え、純白だった白い鎧も黒く染まった。その姿はとてもではないがデュークモンとは言えない。

 

魔剣同様に悍ましくも禍々しくなったデュークモンに対して真夏を始めとした誰もが驚愕した。しかし、その姿を仲間内で誰も非難する事はなく………寧ろ椎名の新しいカードの登場を喜んでいるようであった………

 

 

「アタックステップ!!……デュークモンで合体アタック!!…効果でトラッシュにあるギルモンを手札に戻し回復!!」

手札3⇨4

【デュークモン+断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード】(疲労⇨回復)

 

 

魔剣を荒々しく構え、黒い残像が残る程の速度で翔けるデュークモン。目指すは当然エニー・アゼムの残り3つのライフだ。

 

 

「フッ、いくら強化されたとはいえ、所詮は戦闘力28000!!30000のアマテラス・ドラゴンで返り討ちにしてくれる!!」

「………っ」

 

 

そう言いながらコアが3つ置かれている唯一のブロッカー、アマテラス・ドラゴンにブロックの指示を送るエニー・アゼム。アマテラス・ドラゴンは神の如く透き通る咆哮を上げながらデュークモンへと迫る。

 

激しくぶつかり合う両者。アマテラス・ドラゴンの方が圧倒的に体格が上だが、デュークモンはスピードでそれを翻弄する。アマテラス・ドラゴンの熱線をこれでもかと何度も回避し、何度も魔剣で撃ち返していた。

 

 

「所詮は虚仮威し!!…終わりじゃ、パラディンモードは貰うぞ!!」

 

「いや、まだだ。まだ私のバトルスピリッツは終わらない!!フラッシュマジック、レッドカード!!」

手札4⇨3

リザーブ3⇨1

トラッシュ6⇨8

 

「!?」

 

「この効果によりこのターン、デュークモンのBPを3000アップ!!よってBP31000!!」

【デュークモン+断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード】BP28000⇨31000

 

 

椎名の叫びと放たれた1枚のマジックカード。それが魔剣を握るデュークモンに更なる力を与えた。デュークモンは漆黒の翼を広げ、アマテラス・ドラゴンよりも上空へと飛び立ち、魔剣の切っ先をアマテラス・ドラゴンへと向けながら急降下する。

 

アマテラス・ドラゴンはそれを迎撃しようと熱線を何度も何度も放つが、全て魔剣に吸われるように消滅していく。

 

………そして……

 

 

「神をも穿つ一撃……ジャッジメント・スラストッッ!!」

 

 

その魔剣から繰り出されるデュークモンの刺突はアマテラス・ドラゴンを完全に捉え、貫いた。アマテラス・ドラゴンも流石に耐える事は出来なかったか、甲高い呻き声を上げながら上空で遂に大爆発を起こした。

 

 

「……おぉ、あのアマテラスを倒すとは……なんて子だ……」

「それが椎名やでおじさん!!…どんな不可能も可能にする……それが芽座椎名のバトルスピリッツや!!」

 

 

この光景を前にそう呟いた紅蓮に対し、真夏がそう答えた。

 

そうだ。いつでもどんな時でも、どんなに劣勢でも、どんな強敵が目の前に現れても椎名は必ず逆転して見せた。そして今回も………

 

 

「回復したデュークモンで再度アタック!!」

 

 

魔剣を今一度構え、今度はエニー・アゼムのライフを狙うデュークモン。エニー・アゼムの場はもはや疲労状態のアマテラスのみ。

 

このアタックはライフで受ける他ない。

 

 

「妾のライフ…貰うがいい………っ」

ライフ3⇨1

 

 

魔剣を荒々しく構えたデュークモンの横一閃の一撃がエニー・アゼムのライフをまるで紙切れのように一気に2つ切り裂いた。

 

これで残り1つ。椎名の場にはまだアタックしていないグラニが存在する。これで終わりだ………

 

と、思われたが、詰めが甘かったか、エニー・アゼムが事前に伏せていたバーストカードが発動される。

 

 

「妾の罠、絶甲氷盾を発動!!…ライフを1つ回復させ、アタックステップを終わらせる!!」

ライフ1⇨2

リザーブ5⇨1

トラッシュ10⇨14

 

「………っ」

「嘘だろ!?」

 

 

今一度発動するエニー・アゼムの絶甲氷盾。ライフが瞬時に1つ復活すると共に、椎名の場に猛吹雪が発生。ターンのエンドを迫られた…………

 

 

「………ターンエンド」

【デュークモン+断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード】LV3(6)BP28000(疲労)

【グラニ】LV1(1)BP6000(回復)

 

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【無】

 

 

ターンのエンドを宣言する椎名。その瞬間に猛吹雪も収まる。その様子にエニー・アゼムは笑みを浮かべて………

 

 

「フッ、はっはっはっは!!!…所詮はこの程度か!!……これで妾の番、妾は3枚目のアマテラス・ドラゴンを召喚し、勝利を収める!!」

「…………」

 

 

そう強く言い放ち、手札のアマテラス・ドラゴンを椎名達に見せつけるエニー・アゼム。

 

終わりだ。

 

1体倒すだけでもあれだけ骨が折れるというのに、3体目のアマテラス・ドラゴンなど対処のしようがない。

 

ただ……

 

飽くまでも【次のターンが存在していれば】の話ではあるが…………

 

 

「ジャッジメント・ドラゴン・ソードのアタック時効果……このターンの終わりに、私はもう一度自分のターンを行う……!!」

「………っ!?……もう一度自分の番を……!?」

 

 

デュークモンの持つ魔剣からこれでもかと言わんばかりに悍ましい闇が放出されていく。その様子は椎名のエクストラターンが発生している証拠。

 

そう、その魔剣の真の力とは時をも壊す超越的な力。バトルスピリッツのルールさえをも覆す力だ。その驚愕の力に、流石のエニー・アゼムも驚きを隠せないでおり……

 

 

「……もう一度私のターン!!」

 

 

魔剣から放出された闇が上空を包み込み、椎名のエクストラターンが幕を開ける。

 

そしておそらくそれがこのバトル最後のターンとなるであろう。

 

 

[ターン10]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

【デュークモン+断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ……そしてアタックステップ……!!」

「……っ」

「トドメだデュークモン!!」

 

 

メインステップを丸投げにし、デュークモンで即座にアタックを仕掛ける椎名。デュークモンがまた黒い残像が見える程の速度で翔ける。

 

対するエニー・アゼムの場は疲労したアマテラスのみ。身を守るものは何もなく………

 

 

「馬鹿な……芽座椎名は神をも超えるとでも言うのか!?………っ」

ライフ2⇨0

 

 

そう言い残し、減少の宣言をするまでもなくデュークモンの手に持つ魔剣の縦一閃が彼女のライフを一瞬にして斬り裂いた。

 

唯一彼女の場に残っていたアマテラス・ドラゴンは悲鳴のような呻き声を上げながら光の粒となって散って行った。最後まで残っていたのは絶対なる神ではなく、魔剣を携えた椎名のエース、デュークモン。

 

これにより、椎名の勝利に終わる。見事に神のカードを壮絶なバトルの末、打ち破り、大逆転を収めて見せた。しかし、アマテラス・ドラゴンが完全に消えた直後、気づけばエニー・アゼムの姿は既に見当たらず………

 

 

ー覚えているが良い、芽座椎名!!そしてその仲間達!!もうパラディンモードには頼らん!!……じゃが近い将来、必ず妾は真の力を取り戻す!!その時が其方らの最後じゃ!!

 

 

そう強気な声だけが聞こえてきた。結果的にはエニー・アゼムは一時逃亡したと捉えられるか………

 

椎名は鋭い目つきをエニー・アゼムがいた場所に向けていた。まるでいつでもかかって来いと言わんばかりに…………

 

 

「椎名!!」

「椎名!!」

「………っ!」

 

 

そんな時だ。椎名の勝利を祝うかのように仲間達が彼女の元に集結した。

 

 

「次は僕達も戦う!!僕達でこの世界を護ろう!!」

「そやな!!椎名だけに良いとこは譲らんでぇ!!」

「俺は俺で、勝手にやらせてもらうぞ、少なからずバロンも関わっているのがわかったわけだしな」

「………みんな………あぁ、一緒に頑張ろう……!!」

 

 

椎名は……

 

決して1人ではない。

 

この3年間で培ってきた仲間達がいる。頼り甲斐があって、掛け替えのない存在がいる。椎名はそんな仲間達と強い絆がある事を再確認したのだった…………

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


椎名「本日のハイライトカードは【断罪ノ滅刃ジャッジメント・ドラゴン・ソード】」

椎名「赤のブレイヴ、ジャッジメント・ドラゴン・ソード。合体条件が限りなく限定されるけど、アタックした瞬間にエクストラターンの効果を付与してくれる最強の1枚だ!!」


******


〈次回予告!!〉


エニー・アゼムの脅威は一時去った。どこへ消えたかも検討がつかない椎名達は普段通りの日常を送ることになる。そんな時、椎名の目の前に現れたのは………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「岬 五町、宇宙キターーー!!」今、バトスピが進化を超える?


******


※次回サブタイトルは大きく変更する可能性があります。


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

次回からは皆さんお待ちかね?…の日常回です。頑張って10話分くらいはやろうと思っています!!

そして次回は早速新キャラ【岬 五町】の登場です!!少しだけネタバレしますと、彼女は椎名達の2つ下の後輩で、使うデッキは………アレです。

何はともあれ、次回も楽しみにお待ちください!!

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