季節は秋。暑すぎる夏の季節の後だと言うのもあって気温も涼しく感じるこの季節、そんな時が椎名の担任教師、空野晴太の誕生日なのだ。今年で25になる。
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
昼間、街中の一角、その事に関して、鳥山兎姫は地鳴りのような呻き声を上げ、困っていた。翌日に控えた晴太の誕生日に上げるプレゼントがなかなか見つからないのだ。
渡した事がない事もあって、いったいどれをあげれば正解なのかがわからない。街に出たはいいものの、それらしいものが多すぎて皆目見当もつかなかった。
「あ、兎姫先生……」
「ッッっっ!?!?!」
悩みながら服屋のショーケースを眺めていると、横からそんな声をかけられる。兎姫は内心「ぎくっ」と思い、首をギギギと音を立てながらそこを見てみると、そこには芽座椎名がいた。
「(晴くんの誕生日プレゼントを買いに来たとは言えない…………)あら、芽座さんじゃない、こんにちわ」
「こんちわーー」
一瞬慌てて取り乱しそうになったが、すぐさま冷静さを取り戻す兎姫。椎名と自然な流れで挨拶を交わした。椎名も軽くお辞儀をする。
まだ見つかったのが芽座椎名で良かった。晴太とあって仕舞えば一貫の終わりだった。そう思った矢先だ。
「兎姫先生も晴太先生のプレゼント買いに来たの?」
「なっ!?!!」
さらに突然質問を仕掛けられる兎姫。動揺が隠せない。それでも椎名は続けて………
「ちょうどよかった……私今先生のプレゼント探してるんだけど、先生の好みとか全然わからなくて、幼馴染の兎姫先生ならなんか色々知ってるんじゃない?…よかったら教えてよ」
「え?…あ、あぁそうね…………実は私もよくわからないの……だからあの人にプレゼントは上げた事ないわ」
「ん〜〜そっか」
「!!」
椎名もどうやら晴太の誕生日プレゼントに行き詰まっているようである。兎姫はまるで「だからこそ自分は今年もプレゼントを上げない」と言わんばかりにそう言い返した。
しかし、こう言い返した途端だ。その途端に彼女は閃き、内心でニヤリとした。それはこのプレゼント選びと誰かに見つかってもダメのダブル地獄から抜け出せる方法であって…………
「ハァ……仕方ないわね、私も一緒に探してあげる、一緒につき合ってあげるわ」
「へ?いいの?」
「えぇ、構わないわ、私も丁度あの人を驚かせてやりたいと思ってたのよ……ついでに………そう、芽座さんのプレゼントのついでに私もあげるわ」
兎姫は「やれやれ」といった様子で椎名のプレゼント選びに加わろうとしている。自分の生徒がプレゼントを買いたいというので、仕方なく付き添って「あげる」
(このスタンスなら……まぁ、悪くないわね……!)
兎姫先生はなにかと面倒くさいのだ。確かにこのスタンスなら晴太の誕生日プレゼント選びに積極的ではないというアピールはできる。
そんな兎姫の細かい事情など知らず、というか理解できない椎名は………
「じゃあ決まりだね! 一緒にプレゼント探しに行きますか!」
あっさり承諾した。兎姫は内心で「よし!」とサムズアップをかました。
こうして、天然女子と面倒くさいツンデレ女子のプレゼント選びが幕を開けたのだった。
******
そのまま2人は繁華街の中心を貫く大通りへとやってきていた。通りの左右には大小様々な店舗が軒を連ね、多種多様な品々を商品として陳列している。この場所であれば、なにか気に入った物が目に触れるのではないか、という考えの元、2人はこの通りの端から歩く事に決めたのだった。
そうして歩いてきた矢先、椎名はうなりを上げながら兎姫に言う。
「やっぱこんなに候補があると、目移りするよね」
「それはしょうがないわ、空野先生に似合いそうなのをピックアップしていくしかないわね」
「似合いそうなのね〜〜………晴太先生は赤属性だからルビーの指輪とか?」
「バカね、確かに似合うかもだけど、そんな高価な物買えるわけないでしょ」
椎名の突飛な発想を一刀両断する兎姫。まぁ確かにルビーなんて高価な物は学生が買える代物ではない。
「そうね、じゃあ使用頻度で選んで見たらどう?」
兎姫はそう言いながら手近にあった服屋へと足を運んで行った。椎名もそれの後をつけるように足を踏み入れた。兎姫はさらにそのまま店頭にずらりと並んでいるネクタイを漁りながら、やや顔を赤くして話を続ける。
「例えば……晴く……じゃなかった空野先生はよく赤いネクタイを毎日着まわしているわよね?それと似たようなものだったら、いくらあっても困らないと思うわ」
そんな兎姫の意見に、椎名は口を尖らせて、
「ん〜〜それだったらなんか面白くないな、晴太先生のネクタイは赤だから面白いんだと思う……っていうかそれだと「自分で買え」ってならない?」
「だから、自分では選ばないようなデザインの物や、ワンランク上の素材を使った物を選ぶのよ。それなら気分転換したい時にでも着られるでしょう?」
「なるほど………」
と、椎名は兎姫の意見に素直に感心しながら頷いた。流石は大人の女性。伊達に歳は食ってない。取り立て別に特別な事を言っているわけではないのだろうが、それをすぐに思いついて実行に移せてしまうところがカッコいい。きっとセンスもあるのだろう。
やがて、兎姫は選び取った1枚のネクタイを持ちながら椎名の方へと振り返った。
「そうね、だいたいこの辺りの物が妥当かしら?」
そう言って兎姫がドヤ顔で椎名の前へと差し出した物は………
「……………」
赤い悪魔やドクロがびっしりと詰め込まれ、描かれたものすごく趣味の悪いネクタイだった。それを視認した途端、椎名は言葉を失う。
「え?なに、その微妙な反応………」
兎姫も椎名が作り出した微妙な空気に気付き始めた。そして椎名は言葉を選びに選んで兎姫に言う。
「先生、これ多分、『自分では買わないし高価な物』じゃなくて、『誰も買わないし無駄な高価な物』だと思う」
「えぇ!?いや、カッコいいでしょ……ほら、ドクロだし」
「…………」
椎名は兎姫に聞くのをやめた。この人のセンスは多分やばい。何故そこまでドクロを推すのか意味がわからない。
鳥山兎姫。今年で25歳。
彼女は今まで一度も異性にプレゼントを渡したことがない。それ故に、センスがない。
その後も2人のプレゼント選びは難航していき………
******
「もうシンプルに食べ物で行こう」
「食べ物?」
繁華街を歩く中、椎名が突然宣言した。兎姫はその言葉を聞くなり、頭をかき混ぜるように回転させる。
別に食べ物なら間違いなく好意があるとは思われないだろうし、一応プレゼントは渡せる………これだ。
「そうね、芽座さんがそう言うなら、そうしましょうか……」
また「仕方ないな」と言わんばかりに椎名の提案に乗っかり出す兎姫。彼女は何かと面倒くさいのだ。
椎名は「じゃあ……」と言って、店を選ぶように指を指して………
「一先ずはあそこかな?」
「お土産屋、まぁ良い選択じゃない」
お土産屋だ。そこなら界放市のグルメなものが大抵は詰まっていると推測したのだろう。兎姫は当然ながらに反対する理由がなく、椎名と共にそこへと向かった。
しかし、その店内に来店した直後の事だった。自動ドアが開いた途端…………
「おめでとうございま〜〜す!!あなた方は1万人目のお客様です〜〜!!」
「「!?」」
突然2人の店員にクラッカーを鳴らされた。紙吹雪が舞う中でも全く理解が追いつかなくて………
そんな2人など露知らず、店員は2人にあるものをプレゼントする。
「はいどうぞ!!記念品の『奇跡のたこ焼き』です!!」
「あ、どうも………」
店員から椎名に奇跡のたこ焼き一箱分がプレゼントされた。奇跡のたこ焼きはなかなか見ない代物のはずだが、最近は意外と結構な頻度で椎名の元にやってくる………
「まさかこんな事になるなんて………奇跡のたこ焼き、意外とどこにでもあるわね……」
「これ晴太先生にあげます?……2人の分です、的な感じで………」
「いや、それはダメ、それはあなたがあの人にあげなさい………」
晴太にあげようと言う発想に至った椎名。しかし、一箱しかないため、2人分はあげられない。兎姫はおとなしくてを引こうとしたが………
ここである事件が発生した。
「お?…あれ、椎名と………兎姫ちゃん!?」
不意に背後から聞き覚えのある男の声がかけられる。
「!?」
兎姫が恐る恐る振り返ってみると。そこには………
「お、やっぱそうだ。どうした2人ともこんなところで〜〜」
「あ、晴太先生……こんちわ」
明日が誕生日の男性。空野晴太が普通のスーツ姿で佇んでいたのだった。椎名は軽く会釈する。
(………嘘でしょ)
突如として訪れた最大の逆境に、兎姫は顔を真っ青にしていた。まさかこんな形で鉢合わせてしまうなんて………
そして晴太は徐に口を開いて………
「で、お前ら何しに来たんだ?ここ繁華街のお土産屋だぞ?」
「あ、あんたこそ何しに来たのよ!?」
「えぇ?」
咄嗟のことに質問を質問で返す兎姫。急に兎姫が怒ったものだから、椎名も「これは黙っとこう」と思って口を閉じる。
晴太は何かやばい雰囲気を感じているものの、受け答えするようにその質問に答える。
「いや、プレゼント買いに来たんだよ」
「プレゼント?…可哀想ね晴太先生、自分の誕生日に自分へのプレゼントを買うなんてね」
「え?…………あ、そっか俺明日誕生日だわ……」
「はぁ!?忘れてたのあんた!!」
兎姫との会話の道中で自分の誕生日が明日であることを思い出す晴太。そしてそのまま椎名が持っている「奇跡のたこ焼き」にも気がついて………
「え?…じゃあもしかして椎名、それは俺へのプレゼントか!?」
「ん?……あぁ、はい、一応」
「よぉしよしよし!!明日持ってこいよ〜〜!!」
「何テンション上がってるのよ、キモ」
若干変な雰囲気が漂っている事に気づいている椎名は、困惑しながらも晴太に返事をした。自分へのプレゼントがあると知った晴太は嬉しそうに顔を緩ませる。
しかし、その瞬間、兎姫が怒りの念が詰まった声色で……
「ところで………!!」
「!?」
「誰にあげるの?」
「え?何を……!?」
「だからあんたはなんのプレゼントを買いに来たのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
(えぇぇ!?ブチ切れてるぅぅ!?なんでぇぇ!?)
晴太が誰かにプレゼントをあげると知った兎姫は、嫉妬からか、凄まじい闘気を燃やしていた。何故彼女が怒っているかわからない晴太と椎名は兎に角驚いたし、焦っていた。
そして兎姫はある行動に移る………
「バトルしなさい、空野先生………」
「……え?」
「バトルなさいって言ってるでしょうがぁぁあ!!」
「は、はいぃぃぃい!!!」
「私が勝てば、そのプレゼント……誰に上げるのか教えなさい」
「どう言う案件!?なんで兎姫先生怒ってんだ!?」
「お黙り!!」
「は、はい………」
もはや融通の効かない兎姫。完全に頭に血が上っている。これでは流石にどうしようもないか、晴太は承諾しなければ命はないと思い、そのバトルを引き受ける。その後、3人は場所を変え、繁華街から少し離れた緑溢れる公園へと赴いた。
そこで2人は互いのBパッドを構えていた。
「な、何がどうなってるだ………なんで俺は兎姫ちゃんに怒られてるんだ………?」
「早くバトルの準備をしろ」
「は、はいぃぃぃい!!!」
意味がわからない。自分が誰にプレゼント上げてもいいだろうに、何をそんなに知りたいのだろうか。
しかし、いくら考えても晴太の鈍感な性格では皆目見当がつかなくて………
何度も言うが、鳥山兎姫は面倒くさいのだ。
そして、2人はバトルの準備をし終えると、いつもの掛け声ですぐさまバトルを開始させた。
「行くわよ、ボンクラ」
「は、はい………」
「「ゲートオープン、界放!!」」
椎名が見守る中、怒りに満ち溢れる兎姫と、それに怯え続ける晴太のバトルが開始された。
先行は兎姫。
[ターン01]兎姫
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ、チキンナイトを召喚し、ネクサスカード、白雲に茂る天翼樹を配置!!効果でリザーブにコアを2つ追加し、そのコアで2枚目の白雲に茂る天翼樹を配置!!さらに2つコアを追加!!」
手札5⇨2
リザーブ4⇨2
トラッシュ0⇨5
【チキンナイト】LV1(1)BP2000
【白雲に茂る天翼樹】LV1
【白雲に茂る天翼樹】LV1
「………いきなりですかい……」
いつものパターン。しかし、今回に限っては余りにもオーバーしている。兎姫の場にコミカルな鶏の騎士が現れたかと思うと、背後に白雲を貫く巨大な樹が姿を現し、コアを増やしていく。
兎姫はこのターンだけで既に4つものコアを増加させている。先行のコアステップがないデメリットなど帳消しどころか寧ろ上回る速度でコアを増やしている事になる。
「リザーブのコアでチキンナイトのLVを上げて、ターンエンド」
【チキンナイト】LV2(3)BP4000(回復)
【白雲茂る天翼樹】LV1
【白雲茂る天翼樹】LV1
バースト【無】
そのターンを終える兎姫。まだ晴太のターンは一度も始まっていないにもかかわらず、凄まじいコアブーストを見せつけた。その行為に、彼女の本気度がより強く伺えて…………
「何をそんなカリカリしてんだよ………」
「早くしろ……!!」
「は、はいぃぃぃい!!!」
逆らったら命はない。晴太は怒りに満ち溢れている兎姫に怯え、取り敢えず自分もできるだけバトルを行う事にした。
[ターン02]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ……(こりゃ、逆らったら命はないな………)コレオンを召喚、さらにネクサスカード、十二神皇の社を配置!!………でもって、マジック、エンペラードローを使用!!2枚ドローし、2枚オープン、その中の皇獣スピリットを加える!!」
手札5⇨2⇨4
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨4s
オープンカード↓
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】◯
【コレオン】◯
晴太も勢い良く展開していく。デフォルメされた獅子型のスピリット、コレオンが現れ、背後には古い趣のある神社が現れる。さらにソウルコアを使用し、エンペラードローを使用。その追加効果はどれも成功。晴太は一気に手札を増加させた。
「バーストを伏せ、エンドだ!!」
手札4⇨6⇨5
【コレオン】LV1(1)BP1000
【十二神皇の社】LV1
バースト【有】
「フンッ、何、その程度で終わり?」
「あ、はい………そうです〜〜」
高圧的な物言いをする兎姫。そして肩身の狭い晴太。昔からどうもこうなったら兎姫には敵わない。しかしそれは彼が女心をこの歳になってもわからないのが原因でもあって………
[ターン03]兎姫
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
「メインステップ!!ネクサス2つのLVを上げ、バーストを伏せる!!」
手札3⇨2
リザーブ6⇨2
【白雲に茂る天翼樹】(0⇨2)LV1⇨2
【白雲に茂る天翼樹】(0⇨2)LV1⇨2
(………バースト……)
白雲に茂る天翼樹のLV2効果は、相手がスピリットの効果でドローする度に、相手のスピリットを疲労させるというもの。だが、今晴太が気にしているのはそれ以上にあのバーストだ。
「アタックステップ、行きなさいチキンナイトッッ!!」
小さな剣を掲げ、走り出すチキンナイト。晴太はBPの弱いコレオンで守るわけにもいかず………
「ライフで受ける!!」
ライフ5⇨4
チキンナイトの剣の一撃が彼のライフ1つを切り裂いた。しかし、そんな痛みなど軽いものだ。何せ、今からこれを呼び出せるのだから………
「ライフ減少により、バースト発動!!爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル!!」
「!!」
「効果によりこれをLV1で召喚!!」
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV1(1)BP10000
晴太の前方に燃え上がる熱い火柱。その中でそれを掻き消して現れたのは爆炎をも操る神皇、バゼル。気高い雄叫び、気高く前脚を上げ、その存在を強烈に見せつける。
「……ターンエンドよ」
【チキンナイト】LV2(3)BP4000(疲労)
【白雲に茂る天翼樹】LV2(2)
【白雲に茂る天翼樹】LV2(2)
バースト【有】
そんなバゼルを見ても微動だにせず、兎姫はそのターンをエンドとした。まるでそれを予め読んでいたかのような振る舞い方にも見える。
次は晴太のターン。バゼルの力を発揮させ、攻めに転ずる。
[ターン04]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札5⇨6
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨6
トラッシュ4⇨0
「メインステップ、バゼルのLVを2に上げ、2枚目の十二神皇の社を配置!!……さらにソウルコアを使い、2枚目のエンペラードロー!!」
手札6⇨4⇨6
リザーブ6⇨0
トラッシュ0⇨3s
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】(1⇨3)LV1⇨2
オープンカード↓
【龍神皇ジーク・エグゼシード】◯
【ソウルドロー】×
バゼルのLVが上昇する。さらに背後には2軒目の神社が現れる。そして晴太はエンペラードローの効果で赤属性らしいドロー効果を発揮させる。効果は半分成功。晴太は1枚のカードを手札に加えた。
「さ、手札も増えたことだし……アタックステップと行くか!!バゼルでアタック!!効果でチキンナイトを指定する!!」
手札6⇨7
「っ……チキンナイトでブロック」
やれる事をやり、アタックステップへと移行する晴太。バゼルが地を迅雷の如く駆ける。狙いはチキンナイトだ。
バゼルはサイズの小さいチキンナイト如きが敵う相手ではない。通り過ぎるように前脚で踏み潰され、爆発した。だが、兎姫はまるでそれさえもお見通しだったかのように口角を上げて見せ………
「破壊後のバースト発動!!ミストラルフィニッシュ!!」
「っ!?」
「この効果でカードを3枚オープンし、対象内のカードを好きなだけノーコスト召喚する!!……カード、オープン!!」
オープンカード↓
【兎魔神】◯
【兜魔神】◯
【輝きの神皇ゲイル・フェニックス・オーバーレイ】◯
「なにっ!?」
兎姫のバーストカードが勢い良く反転したかと思えば、続けざまにデッキがオープンされる。晴太は驚愕し、目を見開いた。
それもそのはず、何せそれらのカードは皆対象内のカードなのだから。つまり、全てがノーコスト召喚可能。
「全て成功!!……来なさい、私の兎魔神、兜魔神!!……そして、神をも超える輝き、ゲイル・フェニックス・オーバーレイ!!」
リザーブ5⇨1
【兎魔神】LV1(0)BP4000
【兜魔神】LV1(0)BP3000
【輝きの神皇ゲイル・フェニックス・オーバーレイ】LV3(4)BP20000
脱兎の如く、上空から兎型の異魔神ブレイヴ、兎魔神が現れたかと思うと、その直ぐ隣に兜をつけた異魔神ブレイヴ、兜魔神も地中から飛び出し、姿を見せる。
そして、荒れ狂う竜巻が発生し、それを掻き消して中から現れるのは崇高な輝きを放つ最強のゲイル・フェニックス、名をオーバーレイ。
「兎姫先生すごい………!」
椎名も微かに感激の言葉が溢れる。それもそうだ。あの状況からこんな凄まじい状況をいとも容易く作り上げたのだから。しかも単なる運で来たとは思えないほどに彼女は堂々としている。
「っ……でも、バゼルの効果は終わらない!!…ライフ2つを破壊する!!」
「っ!!」
ライフ5⇨3
バゼルがオーバーレイ達を避け、腰にある刀を口に咥え、刀身に爆炎を灯し、彼女のライフを斬りつける。それは一気に2つ失われた。
「………エンドだ」
【コレオン】LV1(1)BP1000(回復)
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV2(3)BP15000(疲労)
【十二神皇の社】LV1
【十二神皇の社】LV1
バースト【無】
このターンで兎姫のライフを一気に2つ破壊した晴太だが、ミストラルフィニッシュの効果で呼び出されたスピリットとブレイヴの圧倒的な存在感のせいでその動きはどうしても霞んで見えて……
次は兎姫のターン。今、最強のゲイル・フェニックス・オーバーレイが飛翔する。
[ターン05]兎姫
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ3⇨4
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
「メインステップ………この手で塵にしてくれる…!!」
「いやいや、こわいこわい!!」
晴太を潰さんと言わんばかりの兎姫の言動に怯える晴太。このターン、兎姫はオーバーレイの効果をフルに活用し、ある特別な合体を行う………
「オーバーレイに兎魔神を左合体!!さらに兜魔神を右合体!!」
【輝きの神皇ゲイル・フェニックス・オーバーレイ+兎魔神+兜魔神】LV3(4)BP27000
「ダブル合体!?」
晴太はその効果を熟知しているからか、何も驚愕することはなかったが、椎名だけはその異端な効果に驚愕の声を上げて………
オーバーレイの持つ独自の効果、ダブル合体。兎魔神の左手から放たれる光線が、兜魔神の右手から放たれる光線が、それぞれオーバーレイに集約、リンクするこれによりオーバーレイはその才能をさらに飛躍させた。
五町のフォーゼの時とは違い、それはシンボル付きのブレイヴ、つまり今のオーバーレイは実にアマテラス・ドラゴンにも並ぶ3点シンボルとなった。
「さぁアタックステップ!!行きなさいオーバーレイ!!兜魔神の効果でドロー!!さらにBPプラス5000!!そしてオーバーレイ自身の効果でさらにBPプラス5000!!」
手札3⇨4
【輝きの神皇ゲイル・フェニックス・オーバーレイ+兎魔神+兜魔神】BP27000⇨32000⇨37000
「び、BP37000!?」
凄まじくその力を上昇させていくオーバーレイ。兜魔神の効果で手札まで増加させる。しかし、これだけでは終わらない。彼女はさらに兎魔神の効果を発揮させ………
「兎魔神の効果!!疲労状態のスピリット1体をデッキの下に戻し、ターンに一度回復する!!」
【輝きの神皇ゲイル・フェニックス・オーバーレイ+兎魔神+兜魔神】(疲労⇨回復)
「っ!!」
「消えなさいバゼル!!」
「えぇ!?マジィ!?」
オーバーレイが神々しい光を全身から放つと、それを浴びたバゼルは浄化され、デジタル粒子に変換されてしまい、晴太のデッキの下へと帰還してしまう。
しかもそれだけではない。オーバーレイは回復状態となり、このターン、2度目のアタックを可能にした。
「くっ……ライフで受ける……!!」
「ならば受けなさい!!3点分の怒り!!」
「ぐ、ぐぅぅっ!!」
ライフ4⇨1
雄々しく美しい翼を広げ、飛翔するオーバーレイ。そして胸部からエネルギービームを放ち、それが瞬く間に晴太のライフを一気に3つを貫いた…………
「まだ行くわよ!!オーバーレイ!!」
手札4⇨5
再び羽ばたくオーバーレイ。兜魔神の効果でカードがドローされ、またBPも37000という驚異の数値となる。
「空野先生、あなたのスピリットは矮小なコレオンのみ!!これで終わりよっ!!」
「………」
晴太の場でブロックできるのはBP1000という貧弱なコレオンしかいない。しかも、オーバーレイはゲイル・フェニックスの名を持つ事から、独自でも回復効果を備えている。
終わりだ。兎姫がそう思った瞬間だった。晴太が手札から1枚のカードを抜き取ったのは………
「甘いぜ兎姫ちゃん!!……フラッシュマジック、リミテッドバリアを使用!!」
手札7⇨6
リザーブ6⇨2
トラッシュ3⇨7
「っ!?」
「このターン、俺のライフはコスト4以上のスピリットのアタックでは減らない!!そいつはライフで受けるぜ!!」
ライフ1⇨1
晴太の前方にライフバリアとは別の透明なバリアが出現。オーバーレイはそれごと砕こうと翼の一撃を与えるが、そのバリアはまるでビクともせず………
「くっ……しぶといわね、……オーバーレイの効果、2コアを支払い回復させ、ターンエンド」
リザーブ4⇨2
トラッシュ0⇨2
【輝きの神皇ゲイル・フェニックス・オーバーレイ+兎魔神+兜魔神】LV3(4)BP27000(疲労⇨回復)
【白雲に茂る天翼樹】LV2(2)
【白雲に茂る天翼樹】LV2(2)
バースト【無】
カリカリしながらそのターンをエンドとする兎姫。
嫉妬した女は怖い。
だが、彼女の場合は怖いというよりかは面倒くさいと言った方が的確か………
「なぁ兎姫ちゃん、いい加減なんでブチ切れてんのか教えてくれよ………俺もう意味わかんないんだけど」
晴太が兎姫に聞いた。
「知らないわよそんなのぉ!!あんたがプレゼントを誰かにあげようとしてるからでしょうがぁ!!」
「えぇ!?……理由言ってるし……」
これに関しては兎姫は内心『しまった』と思った。しかし、晴太は………
「てか別に俺が誰にプレゼントあげようが俺の勝手だろ?」
「………」
果てしなく鈍感だ。気づくわけがなかった。兎姫は内心ホッとするが………今回の晴太は凄かった………少しだけ頭を捻り、「うーむ」と考え………
……閃いてしまった。そして平然とした顔で咄嗟にそれを口にする。
「……あ、もしかしてそのプレゼントをあげる相手に嫉妬してるとか?」
「っ!?!?!!」
「だったら色々納得するよなぁ〜〜うん」
ズバリ言い当てた。遂に晴太は言い当てた。
来たのだ。ようやくこの時が。20年以上に渡る兎姫先生の恋路に決着が着く瞬間が訪れたのだ。
しかし、突然の事に焦った兎姫は顔を真っ赤に染めながら………
「な、なわけないでしょうがぁぁ!!!」
「えぇぇ!?どんな情緒ぉぉぉぉぉ!?」
全力で否定した。晴太はまさしく正解を言い当てたにもかかわらず、ここで仮に『そうだ』などと肯定していれば何かしらの発展はしたかもしれないというのに………
しかし、それが鳥山兎姫。超クールに見えて、本当はただの超ツンデレガールなのだ。
だが、晴太はそんな兎姫を見て「ニカッ!」と明るい笑顔を向けて………
「はは、まぁ俺はそんな兎姫ちゃんも好きだけどな!!」
「…………は、はぁぁぁ!?!?」
晴太の言葉に、思わず顔が「ボッ!」と音を立てながら顔をまた真っ赤に染める兎姫。なんだそのあからさまに自分に好意があるような言葉は………
「よし!!んじゃ俺のターンだな!!一気に攻めるぜ!!」
「ちょ、ちょっ、と、と、とっっっ。ま、」
晴太の言葉にすっかり落ち着きが取り戻せない兎姫。晴太はターンを進行していき………
[ターン06]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札6⇨7
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨10
トラッシュ7⇨0
「メインステップ!!…コレオンを追加召喚!!」
手札7⇨6
リザーブ10⇨9
【コレオン】LV1(1)BP1000
晴太の場に2体目のコレオンが呼び出される。2体のコレオンは目を合わせるなり、可愛げにハイタッチをした。
そして晴太はさらに呼び込む。自分の持つ最強のエーススピリットを………
「2体のコレオンの効果で神皇スピリットのコストをマイナス2!!2枚の十二神皇の社の効果でさらにマイナス2!!よってこのカード、龍神皇ジーク・エグゼシードのコストは5だ!!軽減も合わせ、1コストで召喚する!!」
手札6⇨5
リザーブ9⇨4
トラッシュ0⇨1s
【龍神皇ジーク・エグゼシード】LV2(4)BP21000
「っ!!」
晴太の場に立ち昇る巨大な火柱。その中で佇むのは最強の午。最強の龍皇。炎の鬣を靡かせ、赤々と燃え滾る翼を広げ、火柱を吹き飛ばし、姿を現わす。
それは龍神皇ジーク・エグゼシード。晴太のエーススピリットだ。兎姫もそれの登場にようやく落ち着きを取り戻せたか、凛々しい表情に戻り、一旦バトルに集中する事にした。
「アタックステップ!!いけ、ジーク!!効果によりトラッシュのソウルコアをジークに置き、オーバーレイに指定アタック!!」
トラッシュ1s⇨0
【龍神皇ジーク・エグゼシード】(4⇨5s)LV2⇨3
事前に召喚コストでトラッシュにソウルコアを送っていた晴太。そのソウルコアがジークに追加され、ジークはさらにLVアップしBPを伸ばす。
さらにそれだけではない。
「ジークのもう1つの効果!!手札にある十冠スピリットをジークの煌臨元に追加して相手のライフに2点のダメージを与える!!」
「くっ……!!」
「俺はビレフトを追加して、効果を発揮させる………ぶちかませ、龍神炎砲!!」
手札5⇨4
「ぐうっ!!」
ライフ3⇨1
ジークの口内から莫大な炎が放たれる。それはオーバーレイさえをも退け、兎姫のライフを一気に2つ焼き尽くした。
「さらにジークは回復する!!」
【龍神皇ジーク・エグゼシード】(疲労⇨回復)
「だけど甘いわね!!BPは私のオーバーレイの方が上よ!!」
ダブル合体している事で、オーバーレイはジークよりもBPが僅かながらに高い。
上空で熾烈な戦いを繰り広げる両者。火花を散らし合い、雷鳴が轟く。だが、このままではBPの不足しているジークは敗北するであろう………
飽くまでも晴太が何もしなければの話ではあるが…………
「それも既に解決してるぜ!!フラッシュマジック、3枚目のエンペラードローを使用!!ジークのBPを3000上げる!!」
手札4⇨3
リザーブ4⇨2
トラッシュ0⇨2
【龍神皇ジーク・エグゼシード】BP26000⇨29000
「っ!?……3枚目!?」
「これでオーバーレイを超えた!!行け、ジークッッ!」
激闘を繰り広げる中、ジークが遂にオーバーレイを捉える。翼を口で咥え、全力でそれを地面に叩き落とした。さらにそこへ向けてこれまでとは比にならない程の炎を放出した。オーバーレイは流石に耐えられず大爆発を起こしてしまう。
飛び散る火花、爆煙の中、ジークは再び地上へと舞い降りて………
「終わりだ……兎姫ちゃん………ジーク、締め括れ!!ラストアタックだ!!」
地を駆けるジーク。目指すは当然兎姫のライフ。兎姫の場にはブロックできない異魔神ブレイヴとネクサスのみ、終わりだ。
「………流石ね、空野先生……………ライフで受ける………」
ライフ1⇨0
兎姫の宣言と共に、前方に現れたジークの前脚を振り下ろす一撃が最後のライフを砕いた。これにより、勝者は空野先生、見事に、勝利してみせた。
「空は……快晴なり!!」
自分で勝利を言わんかのようにいつもの決め台詞を決める晴太。
バトルが始まる前は怒りに満ちていた兎姫は何故か今では気持ちは晴れやかになっていた。晴太の見事なバトルのお陰なのか、はたまた彼が言い放った無神経な一言に内心喜んでいるのかは定かではないが、どちらにせよ怒ってはいない様子に、晴太はホッと肩を撫で下ろしていて………
そして互いにBパッドをしまった時、兎姫は口を開いて………
「空野先生、そのプレゼントとやら、早く渡して来なさい」
「え?」
「早い方がいいわよ」
「あんなに怒ってたのに、急にどうしたんだ兎姫先生?」
満足気にそう言った兎姫。不自然なくらいの怒りの静まり方に、流石に困惑を覚える晴太と椎名。相変わらず彼女の情緒がイマイチよくわからない。
まぁ、考えてても仕方ないか、そう思った晴太は口を開いて………
「そ、そうなの?じゃあ渡しとくか………兎姫ちゃんに」
「………そうそう、早めに………え?」
兎姫の前まで来ると、晴太は小さな箱を彼女の前に差し出した。ついさっきまで余裕そうだった兎姫の表情は再び真っ赤に染まって覚束ないものとなる。
「は!?、ま、まさか私宛てだったの!?」
「え?あぁそうだけど………」
晴太は呑気な声を上げながら兎姫の言葉に受け答えをする。兎姫もまさか自分に来るとは思ってもなかったので、内心はすこぶる喜んでいる。
しかも、
しかもだ。
まだまだこれで終わりではなかった………
晴太がその小箱をゆっくりと開けるとそこには………
そこには………
なんの変哲も無い指輪があった………
そして…………
「ん、兎姫ちゃん、結婚すっか」
「は………………はぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぉぁぉあぁぁ!?!?!!」
何の前振りも無く、突然婚約された。しかもいつも通りの平然とした表情で、こんなローテンションの声使いでプロポーズなどが存在するのだろうか………
しかし、現実は今目の前に怒っている。兎姫は確かに晴太からプロポーズされた。晴太は平然としているが、彼女はもうデッドヒート寸前だ。流石の椎名もこの展開に目を丸くしながら驚愕の表情を浮かべている。
「な、な、な、な、なんで!?」
「あぁん?何が?」
「結婚よぉ!!おかしいでしょうが!!」
「いや、俺達もそろそろかな〜〜と思って」
「何がそろそろよ!!おんのれは何処の戦闘民族じゃ!!!……いつから!?私のこといつからそんな目で見てたのよ!?」
そうだいつからだ。なぜ急にそんな歴戦のカップルみたいな展開になっているのだ。そもそも付き合ってもなかっただろう。意味がわからない。
そんな彼女の言葉に、晴太はまた能天気な表情を見せながら………
「そんな目って、心外だな……普通に子供の時からだけど………」
全然普通じゃねぇぇぇぇぇぇ!!!
そう心の中で絶叫した兎姫。どんだけデリカシーに欠けているのだこの男は。何をどうしたらそこから結婚に行き着くのだ、というか、何で『結婚しよう』なんて羞恥に満ち溢れた言葉を平然とした顔つきで軽々しく口にできるのか………
「で、どうよ、そろそろ結婚しようぜ」
「っ!??!?!?!」
晴太はまた明るい笑顔を向ける。改めて求婚された兎姫。果たしてその返事は………
「す、」
「す?」
その言葉だけを耳にした途端、晴太は突然背筋が凍りつき、自らの身の危険を感じた。それもそのはず、何せ「す」とだけ言った兎姫はこの時、拳を晴太に向かって構えていたのだから………
咄嗟に回避しようと試みる晴太。だが時既に遅し………
「するに決まってんでしょうがぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「何故なのぶへらぁ!!?」
「先生ィィィィ!?!」
全力で顔面を殴られた。凄まじい鉄拳が晴太を襲う。椎名も突然晴太がぶん殴られて仰天している。何故返事はオッケーなのに晴太は殴られているのだろうか………
2人はわからないだらうが、これは彼女の照れの裏返しともとれて………
「あ、あの〜兎姫ちゃん、いや、兎姫様?……何故私めは殴られなければならないのでしょう?」
晴太が殴られてヒリヒリする頬を撫でながら兎姫に言った。
「んなのどうでもいいわよ、ん!!」
「へ?」
「ん!!入れなさいよ私の指に!!その指輪!!」
「あ、あぁあぁ!!なるほどね〜〜」
兎姫が自分の指を晴太に向けて差し出し、指輪を入れることを要求して来た。晴太もようやく理解し、指輪を箱から取り出した。
そして………
遂に………
ゴールイン………
……かと思われたが、ここである問題が1つ発生した………
「あれ?」
「何よ?………」
「あっはは!!指輪全然入んねぇわ!!」
「……………」
指輪が小さくて入らなかった。兎姫の指のサイズを計算していなかった証拠だ。兎姫はこの時点で少しまた腹が立ったが、一旦黙って見た。するとこの鈍感男はどんどんどんどん口が達者になっていき………
「いや〜〜兎姫ちゃんの指意外と太いんだなぁ!!20年以上一緒にいて全然気付かんかった〜〜なっはっはっは!!」
「おんのれは……」
「へ?」
また何かを察した晴太。だが、今度は逃げようと考える暇すら与えられず………
「おんのれはデリカシーっちゅうもんを知らんのかこのボンクラァァァァァァァァァァァァア!!!」
「ぎ、ギャァァァァァァア!!」
「せ、先生ィィィィ!!?」
鬼神と化した兎姫の怒号の雄叫び、晴太の悲鳴と言う名の絶叫、椎名の晴太を案ずる叫びが、その公園に木霊して…………
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翌日の朝のホームルーム、空野晴太の誕生日が訪れた。教卓の上には晴太の誕生日を祝わんと、クラス中の生徒の誕生日プレゼントが置かれていて………
そんな教室から、生徒達に向けてか、晴太の声が聞こえて来た………
「みんな!!ありがとう!!先生は嬉しいぞ!!………っと、後、俺今度副担の兎姫先生と結婚する事になった!!」
ー!!!
その言葉に、椎名以外のクラスメイト達の誰もが驚愕した。しかし、その驚愕もほんの一瞬、生徒達は次々とその朗報に「おめでとう」と、祝いの言葉を彼に送っていく。
教師として、こんなに嬉しいことはないだろう………
「ありがとうみんな!!ありがとう!!……だけどな、人生の先輩として1つだけ忠告させてくれ………」
晴太はために溜めて、受け持った生徒達全員に向けてメッセージを送る………
………それは
「結婚って命懸けだぞ………」
今の空野晴太は………
兎姫に散々やられて、包帯でぐるぐる巻きにされている状態だった。しかも挙句の果てには松葉杖で歩いている。そんな悲惨で痛々しい状態だったのもあって、その晴太の言葉は確かに凄まじい説得力があって……………
「はは……おめでとう、晴太先生……」
そんな中で、椎名は苦笑いしながらも、もう一度晴太に「おめでとう」と祝いの言葉を送るのだった………
〈本日のハイライトカード!!〉
椎名「本日のハイライトカードは【輝きの神皇ゲイル・フェニックス・オーバーレイ】」
椎名「特殊なブレイヴ、異魔神ブレイヴ2つと合体する事ができる特別なスピリット!!高BPのトリプルシンボルで勝利を掴もう……!!」
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〈次回予告!!〉
例年よりも早い文化祭の季節がやって来た。一層賑やかになるジークフリード校の生徒達、しかし、ここでもちょっとした事件が………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「雅治の想い、ギガデス発動!」…今、バトスピが進化を超える!!
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※次回サブタイトル等は予告なく変更の可能性があります。予めご了承ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!