時刻は真夜中、陽の強い光など片鱗も見せず、月の淡い光だけで界放市にある特大のスタジアム、中央スタジアムは照らされていた。
【中央スタジアム】…………と言えば、去年は行われなかったが、界放市で1番の学生バトラーを決める祭典、界放リーグが行われる場所であり、Dr.A、本名徳川暗利が計画の拠点としていた場でもある。椎名と司が乗り込んで行き、彼の野望を阻止したのは界放市民の記憶にも新しい。
しかし、そんな中央スタジアムにまた新たな不穏な影が2つ………
「エニー様、ここは………」
「ここは界放市中央スタジアム。界放市の中心部に位置するスタジアムであり、Dr.Aが拠点としていた場所」
それは黒髪でやや小柄の青年、バーク・アゼムと、その祖先にあたる英雄、エニー・アゼム。エニー・アゼムは今は亡き司の姉、赤羽茜の死体に憑依している。
「我が子孫よ、感じないか?……ここに眠るDr.Aが蓄えていた進化の力を………」
エニー・アゼムは不気味な笑みを浮かべながらバークに言った。中央スタジアムの地下にははDr.Aの研究施設があった。確かにここならそれらが残っていてもおかしくはない…………
「……いえ……何も、流石に2000年の時が経って、あなた様の血の力は薄れているようで、私には到底感じ得ません」
「ふむ、そうか……致し方ないが、それは少し残念じゃな」
エニー・アゼムはこの中央スタジアムから微かにDr.Aが蓄えていた進化の力の残滓を感じていた。今を生きる生物の中で、他にこの力を感じれる者がいるとすれば、芽座椎名くらいであろう。
「我が子孫、妾は確信しているぞ。再びここで激闘が繰り広げられる時、妾は元の力を取り戻す!!」
「っ!?…本当ですか!?」
気が高ぶるエニー・アゼム。それを讃えるようにバークも高揚している。
ようやく。ようやくである。遂にエニー・アゼムは元の力を取り戻す時が来た………今年2年ぶりに開催される【界放リーグ】によって………
そして、皮肉にも再びこの界放市中心スタジアムが椎名達の最終決戦の場となるのだった…………
******
とある日のジークフリード校。その校舎の廊下にて、ジークフリード校最強どころか、界放市最強なのではと、噂される芽座椎名、そしてそのライバルである赤羽司は若き男性教師、空野晴太に連れられ、理事長室にいた。
バトスピ学園 ジークフリード校理事長、龍皇竜ノ字。今年で年齢が62となる大ベテランの伝説バトラーだ。そんな彼が座る前方に、3人は並び立っており…………
「理事長、急に私たちを呼び出して何の用ですか?」
「どうでもいい内容だったら帰らせてもらうぞ」
「おいお前ら! 理事長に失礼だろ!?なんだその粗野な態度は!!」
竜ノ字から発せられる圧倒的な強者のオーラを物ともせずに無神経で失礼な発言をする椎名と司。晴太はそれに対して叱責するも、2人の表情からは反省の色は一切見えない。
しかし、懐の広い彼はそんなものは全く気にするそぶりを見せず………
「ハッハッハ!!いいよいいよ!!学園最強たる者、それくらいの器量がなくては困る………いやはや、君達をここに呼んだのは他でもない、今度行われる【第10回界放リーグ】に参加してもらいたいんだ」
「界放リーグ………」
「………」
【界放リーグ】……随分と懐かしい響きだ。去年はデスペラード校の廃校に伴い、見合わせを兼ねて中止となった。それが等々復活する………
「まだデスペラード校は復校していないがね、【特別ゲスト2人】が加わるため、急遽、例年より遅い開催が決定したんだ」
「ふぅ〜〜ん、ゲストね」
界放リーグは6つの学園からそれぞれ代表が2名ずつ選出され、最強の名を冠するためにしのぎを削る。今年はデスペラード校の2名の代わりに、竜ノ字の言う【特別ゲスト2人】が参戦する様子である………
「どうだい!!参加してみないかい?」
椎名と司に期待の眼差しを向ける竜ノ字。彼ら学園の理事長は毎年のように自分たちの生徒たちが優勝できるかを競っている。2人が出場したらほぼ勝ち確であるため、是が非でも出てもらいたいのだ。
しかし、彼らは………
「いや、私は出ないかな」
「え?」
「あぁ、俺もパスだ」
「えぇ!?」
その理事長からの直々の申し出を続け様にあっさりと断ってしまった。学園のバトラーにとってはこれほど栄誉ある事はないと言うのに………
「ど、どうして」
理事長は何故出ないのかと理由を聞く。
「ん〜〜今はなんかそう言う気分じゃないって言うかさ〜〜……」
「他にやるべき事がある」
「他って………進路とかかい?」
「いや、進路じゃないんですけど、まぁ色々とね」
口を揃える椎名と司。やるべき事とはエニー・アゼムとバーク・アゼムとの決着だ。彼らがいつこの街を襲ってくるかわからない今、界放リーグに参加する訳にはいかなかった………
「そうか〜〜なら仕方ない、代表はいつも通り予選で決めるかな」
「すんませんね、理事長」
「いやいや、詫びを入れる必要はないよ、強要しようとしていたのはこっちの方だからね」
軽く頭を下げる椎名。理事長も流石は長年を生きてきた大人か、ムキになる事はせず、丁寧に言葉を返した。これが同窓生でもある他の理事長達と話すと途端に荒々しくなるのだから、俄かには信じられない。
「いやはや、やはり少し残念ではあるな。なんせ、あの【エニー・アゼムの末裔様がゲスト出場】されのだからね」
「え!?」
「「………っ!?」」
「君達と彼らがバトルするのを見てみたかったな」
竜ノ字のその言葉に耳を伺った椎名、司、そして晴太。【エニー・アゼムの末裔】……普通の民間人が聞けば、感極まりない程に凄まじい言葉である。
何せ、そもそもエニー・アゼムは進化を繰り返す事ができる歴史上の人物として名を馳せている偉人なのだから。
しかし、実際は少しだけ趣が異なる。エニー・アゼムは鬼を滅ぼし、英雄となっている。しかもその際、当時の人間達に進化の力を奪われ、追放、迫害を受けたことにより、人間と言う種族を心の底から恨んでいる。
つまり、【エニー・アゼムの末裔】は危険な存在なのである。そしてそれを知る者は実際にバーク・アゼムや蘇ったエニー・アゼムと死闘を繰り広げた椎名と司、そしてその仲間達くらいなのだ。普通の民間人が知る由もない。
「り、理事長……お言葉ですが、その末裔様のお名前は存じ上げておられますか?」
「む?あぁ、【バーク・アゼム】と【ノヴァ・アゼム】だ。年齢は空野先生と変わらんくらいだと聞いているよ」
「そ、そうですか………」
晴太がそう言い、竜ノ字が質問に答えた。これで3人は確信した。間違いない。今年の界放リーグで参加してくるのはあの時あった2人だ。
赤羽茜の死体を乗っ取っているエニー・アゼムは当然ながらそのままの名前で参加する訳にはいかなかったのだろう。【ノヴァ・アゼム】はおそらく偽名だ。
椎名と司はお互いに顔を見合わせる。そのお互いの表情は何かを決意している顔だ。そして何も知らない竜ノ字の方へと顔を戻して………
「やっぱ参加させてください!!」
「参加させろ」
「おぉ!!そうかそうか!!良かった〜〜期待しているぞ!!」
2人はまた口を揃えてそう言うのだった。このままエニー・アゼム達を野放しにできる訳がないと言う判断からであろう。
竜ノ字もその言葉に大喜びし、高価そうな腰掛けから離れて2人の肩に手を置いた。
「…………」
そんな楽しげな光景を心配そうに見つめていたのは他でもない、晴太だ。彼はまるで何かの悔しさをぶつけるかのごとく、静かに拳を強く、そして固く握りしめていた。
******
放課後、椎名と司は人1人、誰もいない第4スタジアムにて、バトルの特訓、及びデッキの調整を行なっていた。直ぐに訪れるエニー・アゼム達との決戦に備えているのだ。互いにレベルの高い攻防が一進一退と繰り広げられていた。
「まさかお前とデッキを調整する時が来るとはな」
「まぁ状況が状況だからね、私達がやるしかないし…………いけ、デュークモンッッ!!」
「切り崩せ、バロン!!」
彼らがそんな会話をしながらも、椎名のエーススピリット、槍と盾を携える赤属性のロイヤルナイツ、デュークモン。そして、司のエーススピリット、赤き仮面スピリット、バロン レモンエナジーアームズがぶつかり合う。
デュークモンが槍による刺突でバロンを貫こうと試みたいるも、バロンはそれを鮮やかに躱し、反撃の機会を伺っている………
しかし、その時だった………
「そこまでだ!!司、椎名ッッ!!」
「え?………晴太先生!?」
スタジアムのバトル場の傍から晴太が椎名と司のバトルを止めるように姿を現した。椎名と司は一旦Bパッドをデッキごとしまい、場のスピリット達を消滅させた。
「なんの真似だ、空野晴太」
突然の乱入に、司が晴太に問い詰めた。晴太の表情からは確かな怒りが募っている事が伺えて………
「なんの真似もこんな真似もない……お前たちは今年の界放リーグに出るな!!」
「え?」
「なんだと!?」
晴太のとんでもない発言に驚愕する椎名と司。それもそのはず、この晴太は全ての事情を椎名たちから聞いている。理解してはいるはずなのに、何故か彼は2人の参加を止めようとしていた。
「テメェ、どう言うつもりだぁぁ!!…テメェにはバークの事もエニー・アゼムの事も、俺たちが知る全ての情報を余す事なく教えたはずだろ!!何故止める!?」
怒りに任せた司が晴太の胸ぐらを力強く掴む。晴太はそんな司に対し全く臆する事なく目つきを鋭くさせて………
「だからこそだろ?」
「っ!?」
その晴太の研ぎ澄まされた迫力に思わずたじろぐ司。晴太はさらに続けて………
「この俺がいる限りもう2度とお前らに危険な真似はさせない………絶対だ!!」
そう強く言い放った。
ある意味、教師としては当たり前なのかもしれない。今から椎名たちは今一度巨悪と戦いに行くのだ。そんな事みすみす野放しにはできない。
そんな心優しい彼だからこその行動なのだろう。
「まぁまぁ先生、そうカッカするなって、司も落ち着け」
「………」
「椎名………」
椎名がそう言うと、司は腹を立てながらも、掴んでいた晴太の胸ぐらから手をゆっくりと離した。
「先生、ちょうど場所もいいし、久し振りに私とバトルしないか?」
「なに?」
「私が勝ったら、出場を認めてよね」
椎名からの突然のバトルの提案。その声色や表情からは確かな自信と余裕が伝わってきて…………
「椎名、お前英雄と言われるようになってから随分と鼻が高くなったな。お前ごときが俺に勝てるわけなだろう?」
「へへ、いやいや、実を言うと、卒業前にもう一度先生ともバトルしておきたかったんだなこれが」
晴太は少しだけ考えるように顔を下に向ける。そして彼らを止めるためには口よりもバトルの方が適切であるとすぐさま判断し………
「…………いいだろう、相手してやる」
「よし!!約束だよ!!」
晴太のその言葉に椎名はサムズアップを見せる。そして2人はバトル場に立ち、互いにBパッドを展開し、デッキをセットした。司は離れたところでその様子を黙って眺めていた。
「行くよ先生」
「あぁ、お前のその鼻っ柱、へし折ってやる!!」
「「ゲートオープン、界放!!」」
コールと共にバトルスピリッツが幕を開ける。
先行は晴太だ。
[ターン01]晴太
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ、俺はネクサスカード、情熱サーキットを配置!!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨5
トラッシュ0⇨4
【情熱サーキット】LV1
「情熱サーキット?……なんだそれは?」
晴太と椎名のバトル場を包み込むようにサーキットが出現する。初めて視認するネクサスに椎名は疑問符を浮かべる。
「知らないのはお前の勉強不足だ椎名、俺はこれでターンエンド」
【情熱サーキット】LV1
バースト【無】
「まぁいいや、何が来ようと、私は私のバトルを貫くだけだ」
晴太は先行の第1ターン目をエンドした。
[ターン02]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!……ネクサスには、ネクサスだ!!……来い、ディーアーク、D-3!!」
手札5⇨3
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨5
椎名の腰に小さな機械が取り付けられる。
「私はこれでターンエンドだ………さ、先生のターンだよ」
【ディーアーク】LV1
【D-3】LV1
バースト【無】
椎名はそう言いながらターンをエンドとした。
[ターン03]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
「メインステップ!!俺はソウルコアを使用し、マジック、エンペラードローを使う!!…2枚ドローし、2枚オープン、その中の対象カードを全て加える!!」
手札5⇨4⇨6
リザーブ5s⇨2
トラッシュ0⇨3s
オープンカード↓
【エグゼシード・ビレフト】◯
【エグゼシード・ビレフト】◯
エンペラードローの効果は2枚とも成功。晴太は晴太は一気に凄まじい枚数の手札を増やしていく。
「バーストをセットし、エンドだ」
手札6⇨8⇨7
【情熱サーキット】LV1
バースト【有】
晴太はさらにバーストをセットした。そしてこれでエンドとなる。互いに遅めのスタートを切ったと言えるこのバトル。
しかし、ここから一気に加速するのは目に見えていて…………
[ターン04]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
「メインステップ……(手札増加にバースト………そしてあのネクサス………)」
メインステップまでターンを進行したものの、晴太のプレイングに不気味さを覚える椎名。どう考えてもこれは罠だ。必ず何かあると睨んでいる………
(まぁでもここで怖気ついたらエニー・アゼムやバーク・アゼムには絶対に勝てないしな、……行くぞ、私のデッキのスピリット達!!)
心の中でそう誓い、椎名は自分の手札に手をかける。そうだ。ここで怖気つくのは椎名ではない。デッキのスピリット達と共に、真っ向から晴太に挑む………
「来い、ブイモン!!」
手札4⇨3
リザーブ6⇨3
トラッシュ0⇨2
【ブイモン】LV1(1)BP2000
オープンカード↓
【ワームモン】×
【スティングモン】◯
椎名の場に青い竜の成長期スピリット、ブイモンが姿を見せる。そしてその効果も成功。椎名は新たに【スティングモン】のカードを加えた。
「さらに2コストを支払い、スティングモンを追加召喚!!ディーアークの効果で1枚ドロー!!」
手札3⇨4
リザーブ3⇨0
トラッシュ2⇨4
【スティングモン】LV1(1⇨2)BP5000
ブイモンの隣に即座に現れたのはスマートな昆虫戦士、スティングモン。その効果でさり気なくコアが増える。
「そしてもう1枚ネクサスカード、デジヴァイスを配置!!」
手札4⇨3
【デジヴァイス】LV1
椎名の腰に3種類目となる機械が取り付けられた。彼女のデッキが潤滑に回転しているのが伺える。
「アタックステップ、デジヴァイスの効果!!成長期スピリットのブイモンがいることにより、疲労させて1枚ドロー!!」
手札3⇨4
【デジヴァイス】(回復⇨疲労)
「……減りすぎる手札をネクサスで補うか……昔のお前だったら手札の減少なんざ気にせずスピリットを並べて単調な攻撃を仕掛けるだけだったな」
「へへ、私も昔のままの私じゃないんでね!」
椎名のプレイングに対し、沈着な表情を浮かべながらそう評価した晴太。この第4ターン、確かに椎名の成長を感じられるものがある。
「アタックステップは続行!!スティングモンでアタック!!……さらにこの時、フラッシュタイミングでライドラモンの【アーマー進化】を発揮、対象はブイモン!」
【スティングモン】(2⇨3⇨2)
トラッシュ4⇨5
「………」
椎名がそのカードの使用を宣言すると、ブイモンの頭上に黒いデジメンタルが投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合い、新たな姿へと昇華していく。
「轟く友情……来い、ライドラモン!!」
【ライドラモン】LV1(1)BP5000
トラッシュ5⇨7
新たに椎名の場へと姿を見せたのは黒いアーマー体スピリット、ライドラモン。その効果でまたさり気なくコアがトラッシュへと置かれた。
「スティングモンのアタックは生きてる、いけぇ!」
「……ライフで受ける……」
ライフ5⇨4
スティングモンの拳が晴太のライフ1つを粉々に砕く。だが、これは晴太の多くのカードの効果を発揮するためのトリガーとなって………
「椎名、なんの警戒もせず俺のライフを叩くとはな、3年間教えていた身としてはがっかりだぜ………俺は情熱サーキットの効果を発揮!!」
「っ!?」
「カードを1枚オープンし、それが十冠スピリット、又は神皇スピリットだった場合、ノーコスト召喚する!!」
「なに!?」
「カード、オープン!!」
オープンカード↓
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】◯
「っ………よりにもよってバゼル!?」
「効果は成功だ。俺はこいつを……バゼルを呼ぶ!!」
リザーブ3⇨2
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV1(1)BP10000
サーキットを駆け巡った後に晴太の場に現れたのは、爆炎を操る覇神皇、バゼル。登場しただけで熱気が辺りに飛び散る。
「まだこんなもんじゃ終わらんぞ椎名!!バースト発動!!」
「ライフ減少後のバースト………」
晴太が事前に伏せていたバーストが勢いよく反転する。そのカードに、椎名は驚かざるを得なくて………
「2枚目のバゼルだ!!」
「に、2枚目のバゼルだって!?」
「LV1だ、来いよ!!」
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV1(1)BP10000
晴太の場に火柱が立ち昇り、その中から2体目となるバゼルがそれを掻き消しながら姿を見せる。
計2体のバゼルは共鳴するように気高く鳴いた。その行動がより椎名に強い迫力を与えていて………
「さぁどうする椎名!!」
「くっ……ターンエンドだ」
【スティングモン】LV1(2)BP5000(疲労)
【ライドラモン】LV1(1)BP5000(回復)
【ディーアーク】LV1
【D-3】LV1
【デジヴァイス】LV1(疲労)
バースト【無】
突如現れたバゼルにライドラモンを突撃させるわけにも行けない。椎名はそのターンをエンドとした。
次は晴太のターン。並べられたバゼルの力を遺憾なく発揮させていく。
[ターン05]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札7⇨8
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨5
トラッシュ3⇨0
「メインステップ、バーストを新たに伏せ、2体のバゼルと情熱サーキットをLV2へアップ!!」
手札8⇨7
リザーブ5⇨0
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】(1⇨3)LV1⇨2
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】(1⇨3)LV1⇨2
【情熱サーキット】(0⇨1)LV1⇨2
「………っ」
LVが上昇し、より迫力が増していく晴太の盤面。2体のバゼルの前には、椎名の使役する成熟期のスティングモンとアーマー体のライドラモンは弱小で矮小な存在にしか見えなくて………
「アタックステップ!!駆けろバゼル!!狙うはスティングモンだ!!」
「っ!?」
1体のバゼルでアタックを仕掛ける晴太。バゼルには敵スピリットを指定アタックする力があり、今回はスティングモンが対象となった。
腕をバツの字に固め、防御の姿勢に入るスティングモン。しかし、そんなものは通用するわけないか、バゼルは刀を口に咥え、その刀身に爆炎を灯し、スティングモンを一瞬のうちに一刀両断した。
スティングモンは堪らず大爆発を起こす。
「そしてさらにこの時、ライフ2つを破壊する!!」
「くっ……!!」
エグゼシードのお家芸であるライフ貫通効果が発揮される。バゼルは椎名の元まで歩みを進めると、スティングモン同様、刀で椎名を斬りつけようとするも………
椎名も負けてばかりではいられないか、手札のカードを1枚抜き取り、構え……
「効果ダメージが発生する時、私は手札のリアクティブバリアの効果発揮!!」
「っ!!」
「このカードを破棄する事でそのダメージを1にする!!………っ」
手札4⇨3
ライフ5⇨4
バゼルが椎名のライフを斬りつける直後、椎名の前方にライフバリアとは別のバリアが出現し、椎名のライフへの威力を和らげる。
「さらにその後、コストを払うことにより、このアタックの終了時、そのアタックステップを終了させる!!」
リザーブ3⇨0
トラッシュ7⇨10
配置していたデジヴァイスの持つ白のシンボルがここで活きた。ライドラモンを消滅させることなくアタックステップを終了させる効果が発揮できた。
少なくともこのターンは無事でいられるが…………
「バゼルにはまだ隠された効果がある!!」
「!?」
「バトル終了時、俺の伏せられたバーストカードの条件を無視して発動できる!!」
「また………バースト……っ、まさか!?」
バゼルには指定アタックとライフを破壊する効果だけではない。本来ならば罠のように敵がかかるのを待つカード、バーストカードの効果だけを発揮させる力も同時に備えていて………
しかし、椎名はその効果を聞くなり血相を変えた理由はそれではない。察したのだ。あのバーストカードは………
「バースト発動!!3枚目のバゼルだ!!」
「っ……やっぱり……」
「バースト効果だ、召喚する!!」
【情熱サーキット】(1⇨0)LV2⇨1
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV1(1)BP10000
「………3体のバゼルだと……!?」
火柱がまた立ち昇り、その中から3体目となるバゼルが姿を現した。この荒々しい晴太の場に流石の司も驚嘆の声を上げた。
「3体目のバゼルなんて………凄すぎだよ、先生……!!」
「うるさいぞ椎名!!真剣にやれ!」
晴太の圧倒的な戦力差を前にして、椎名はよりバトルに楽しみを見出す中、晴太はそんな椎名を叱責する。
「だいたいお前はいつもいつも………」
「まぁそう言うなって、次は私のターンだな」
「…………ターンエンド」
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV2(3)BP15000(疲労)
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV2(3)BP15000(回復)
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV1(1)BP10000(回復)
【情熱サーキット】LV1
バースト【無】
晴太の生徒を危険な目には会わせたくないという強い気持ちが露わになっていく中、椎名の第6ターンが開始される。
[ターン06]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨11
トラッシュ10⇨0
【デジヴァイス】(疲労⇨回復)
「メインステップ、ブイモンを再召喚!!ディーアークの効果で1枚ドロー!!」
手札4⇨3⇨4
リザーブ11⇨9
トラッシュ0⇨1
【ブイモン】LV1(1)BP2000
ライドラモンの側にブイモンが再度姿を見せる。椎名はディーアークの効果でドローしたカードを視認するなり、少しだけ口角を上げる。
何かを引いたのだ。この圧倒的に不利な局面をも一変させられるカードを………
「さらに私はエクスブイモンをLV2で召喚!!効果により2枚ドローし、2枚捨てる!!」
手札4⇨3⇨5⇨3
リザーブ9⇨5
トラッシュ1⇨2
【エクスブイモン】LV2(3)BP5000
破棄カード↓
【ギルモン】
【ディーアーク】
青き闘竜、エクスブイモンがさらに椎名の場に姿を見せたかと思うと、椎名に手札を入れ替えさせた。だが、これだけでは晴太の3体のバゼルと比べたら見劣りする。
椎名はさらに手札を引き抜いて………
「デジタルブレイヴ、ズバモンを召喚し、エクスブイモンと合体!!」
手札3⇨2
【エクスブイモン+ズバモン】LV2(3)BP8000
黄金の鎧を身に纏う異端なデジタルブレイヴ、ズバモンが場に現れ、直後にエクスブイモンと合体する。エクスブイモンは黄金の鎧を新たに装着した。
「これで準備は整った……デュークモンの【煌臨】発揮!!対象は全色となったエクスブイモン!!」
リザーブ5s⇨4
トラッシュ2⇨3s
「………来るか………」
ズバモンと合体したエクスブイモンが赤き光に身を包まれ、その中で姿形を大きく変化させていく……それは正しく聖騎士の姿だ。
「来い、赤きロイヤルナイツ、デュークモンッッ!!」
手札2⇨1
【デュークモン+ズバモン】LV2(3)BP17000
その光を解き放ち、その中から強固たる白い鎧を身に纏い、赤いマントを靡かせるデュークモンが姿を見せる。ズバモンとの合体の影響から、その姿はいつもよりも刺々しく、右手の槍もビーム状となっている。
「ライドラモンをLV3にアップ!!」
リザーブ4⇨1
【ライドラモン】LV3(1⇨4)LV1⇨3
椎名は仕上げと言わんばかりにライドラモンのLVを最大にする。これで攻撃の準備は整った。デュークモンが戦闘態勢に入り、構える。
「アタックステップ!!デジヴァイスの効果でドロー!!……デュークモン、いけぇ!」
手札1⇨2
【デジヴァイス】(回復⇨疲労)
デュークモンにアタックの指示を送る椎名。そしてロイヤルナイツのデュークモンにはこの瞬間に発揮できる強力な効果があって………
「アタック時効果、シンボル2つ以下のスピリット、回復状態のままのLV2バゼルを破壊する!!」
「っ!!」
「無双の一振り……ジーク・セイバーッッ!!」
デュークモンがビーム状となった槍を天高く伸ばしていき、そのまま1体のバゼルへと向けて荒々しく振り下ろす。バゼルはその中で堪らず大爆発を起こした。
「さらにデュークモンのもう1つのアタック時効果で、トラッシュにあるギルモンのカードを手札に戻して回復する!!」
手札2⇨3
【デュークモン+ズバモン】(疲労⇨回復)
回復し、2度目の攻撃を可能にしたデュークモン。このまま一気に晴太の盤面を大きく瓦解させる予定だったが………
流石に一筋縄ではいかないか、彼は手札から1枚のカードを抜き取り、それを阻止する。
「フラッシュマジック、絶甲氷盾!!」
手札8⇨7
リザーブ3⇨0
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】(3⇨2)LV2⇨1
トラッシュ0⇨4
「っ!?」
「この効果により、このバトルの終わりがお前のターンの終わりだ椎名!!……来い、ライフで受ける!!」
ライフ4⇨2
白の鉄板マジック、絶甲氷盾。それが発揮される。
しかし、晴太はデュークモンのアタックを守る事はせず、自らのライフを差し出した。デュークモンの無双の二振り目が晴太のライフを一気に2つ破壊した。
「まだだ!!ライドラモンの効果!!究極体を持つデュークモンがライフを破壊したことにより、さらにもう1つ破壊する!!」
「ぐっ………」
ライフ2⇨1
ライドラモンが気高く吠える。すると、デュークモンの槍に青い稲妻が落雷し、デュークモンに新たな力を与える。
そして、デュークモンはその力を使い、無双の三振り目で晴太のライフをまたもや砕いて………
「っ………情熱サーキットの効果………」
オープンカード↓
【コレオン】×
ノーコスト召喚が可能となる情熱サーキットの効果は不発。そのままトラッシュへと破棄された。しかも彼のライフは1。ライフ回復がなければもう2度とその効果は使用できなくて………
そしてこの瞬間に発揮されていた絶甲氷盾の効果が適用され、椎名の場に猛吹雪が発生し、そのターンのエンドを迫られた。
「……ターンエンドだ」
【ライドラモン】LV3(4)BP10000(回復)
【ブイモン】LV1(1)BP2000(回復)
【デュークモン+ズバモン】LV2(3)BP17000(回復)
【ディーアーク】LV1
【D-3】LV1
【デジヴァイス】LV1(疲労)
バースト【無】
致し方なくそのターンをエンドとした椎名。そしてその宣言と共に猛吹雪は消え失せ、晴太のターンとなる。
[ターン07]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ3⇨4
《ドローステップ》手札7⇨8
《リフレッシュステップ》
リザーブ4⇨8
トラッシュ4⇨0
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】(疲労⇨回復)
「メインステップ……俺はお前を、お前達の界放リーグへの出場は許可できない!!」
「わかってくれ先生!!…先生がいくら私達を止めたって、界放リーグは始まるし、司の姉ちゃんの体を乗っ取ったエニー・アゼムは人間を滅ぼそうとする!!……私たちじゃないとそれは止められないんだ!!」
「っ……!!」
そんな事は分かっている。分かっているんだ。このバトルが無駄な事くらい。何の意味も無い事くらい………
だが何もせずにいられるわけがない。自分の生徒が世界の危機に立ち向かおうとしているのに、指を咥えて見ている事しかできないのが辛い……
「………ダメったらダメだ!!行かせない!!俺はまた何か大事なものがなくなるのが嫌なんだ!!」
「先生………」
椎名と司を止めるため、晴太は改めて自分のターンを進める。もう2度とあの時の、茜のような大事な人を失うわけにはいかない………そう胸に誓って………
「【煌臨】発揮!!対象はバゼル!!」
リザーブ8s⇨7
トラッシュ0⇨1s
「!!」
2体のバゼルのうち1体が紅蓮の炎に包まれていき、その中で姿形を大きく変化させていく。それは荒ぶり、猛々しく吠え………今、姿を現わす。
「来い、龍神皇ジーク・エグゼシード!!」
手札8⇨7
【龍神皇ジーク・エグゼシード】LV1(2)BP16000
「……ジーク……」
「椎名、お前にこいつを使う時が来るとはな……」
龍神皇ジーク・エグゼシード。それは最強のエグゼシードにして晴太の持つ最も強力なスピリット。これが呼び出されたという事はそれ即ち晴太の本気の中の本気。
しかもこれだけではない。晴太はさらに手札を引き抜いて………
「さらに俺は異魔神ブレイヴ、炎魔神を召喚!!」
手札7⇨6
リザーブ7⇨4
トラッシュ1s⇨4s
【炎魔神】LV1(0)BP5000
「っ!?…炎魔神まで!?」
唸る轟音、凄まじい爆音が響き、炎の歯車の中より異端なブレイヴ、炎魔神が堂々と姿を見せた。
「バーストをセット!!…情熱サーキットのLVを上げ、ビレフトも呼ぶ!!」
手札6⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ4s⇨6s
【情熱サーキット】(0⇨1)LV1⇨2
【エグゼシード・ビレフト】LV1(1)BP3000
小型のエグゼシード、ビレフトも呼び出される。これで晴太の場には3種類の強力なエグゼシードに加え、異魔神ブレイヴの炎魔神と、誰が見ても強力な布陣が完成した………
「そして俺は炎魔神の右にジーク、左にバゼルを合体させる!!」
【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】LV1(2)BP21000
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル+炎魔神】LV1(1)BP15000
炎魔神は両手から光線を放ち、右側はジーク、左側はバゼルへとそれぞれ繋がり、リンクする。
「もう容赦はしない、アタックステップ!!……いけ、ジーク!!効果によりトラッシュのソウルコアを自身に置き、LVアップ!!」
トラッシュ6s⇨5
【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】(2⇨3s)LV1⇨2
ついにアタックを仕掛ける晴太。ジークのLVも追加されたソウルコアで上昇する。これにより強力な効果を発揮できるようになるが………その前に炎魔神の右側の力が働く。
「炎魔神の右合体時効果!!このスピリットのBP以下のスピリット1体を破壊する!!」
「っ!!」
「俺はデュークモンを破壊する!!」
炎魔神が右手の拳を回転させながら射出する。それは一直線に椎名のデュークモンの方まで伸びていき、直撃、デュークモンは吹き飛ばされ、堪らず爆散してしまう。その際に合体していたズバモンが逃げるように飛び出した。
「っ……デュークモンッッ!?」
椎名はデュークモンの爆発による爆風と爆煙を肌で感じながらそう叫んだ。しかし晴太は間も無くジークの効果を発揮させ………
「ジークのもう1つのアタック時効果、手札にある十冠スピリットを1枚煌臨元として追加することにより、お前のライフ2つを破壊して、回復する!!」
「っ!!」
「俺は手札にあるビレフトを追加し、効果発揮!!………くらえ、龍神炎砲!!」
手札4⇨3
【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】(疲労⇨回復)
「っ……ぐ、ぐぁぁぁぁあ!!!」
ライフ4⇨2
ジークの口内から放たれる紅蓮の炎。それが椎名のライフへと直撃し、一気に2つが消し飛んだ。しかもそれだけではない。晴太はさらに手札を1枚引き抜く………
「フラッシュマジック!!エグゼフレイム!!……不足コストはジークより確保!!」
手札3⇨2
【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】(3⇨1)LV2⇨1
トラッシュ5⇨7
「っ!?…それは!!」
「BP15000までスピリットを好きなだけ破壊し、さらにお前のネクサスも全て破壊する!!」
「私のスピリットのBP合計は……15000!?」
「そう、全滅だ!!」
ジーク・エグゼシードが青き炎をその身に纏い、椎名の場へと突進してくる。BP10000のライドラモン、BP3000のズバモン、そしてBP2000のブイモンが容赦なく焼き尽くされていった………
さらに椎名の腰にあるネクサスカードも蒼炎に包まれ、焼却される。
「さらにこのアタックは継続中……ダブルシンボルのアタックで終わりだ、椎名!!」
椎名のライフは2。そしてアタック中のジークも炎魔神との合体によりダブルシンボル化している……これが決まれば終わりだ………
しかし、椎名もただでは終わらない。手札を1枚引き抜いて………
「っ……フラッシュマジック、デルタバリア!!」
手札3⇨2
リザーブ11⇨8
トラッシュ3⇨6
「なに!?」
「この効果によりこのターン、コスト4以上のスピリットのアタックじゃ0にならない!!……ジークのアタックはライフで受ける!!」
ライフ2⇨1
椎名の前方に三角形のバリアが出現する。ジークが前脚で踏み潰す形で椎名のライフを砕こうとするが、いくら踏んづけても椎名のライフは1しか砕かれず………
「これでこのターンのアタックは無意味だ、先生」
「くっ……だが、お前のライフは残り1、そして場には何も存在せず、手札もたった2枚、俺の勝ちは濃厚だ…………ターンエンド」
【エグゼシード・ビレフト】LV1(1)BP3000(回復)
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル+炎魔神】LV1(1)BP15000(回復)
【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】LV1(1)BP21000(回復)
【情熱サーキット】LV1
バースト【有】
デルタバリアの前では少なくともこのターンのライフ破壊は困難を極める。晴太はそのターンを終え、次は椎名のターンとなる………
盤面はゼロ。ライフは風前の灯、手札はたったの2枚。ここからの逆転はほぼ不可能と言える………
しかし…………
「へへ、このバトル楽しいな先生!!………次のターン、私の3年間の集大成を先生にぶつけてやるよ!!」
(……なんだ、なんだこの感じは………圧倒的に俺の方が有利なはずなのに……)
絶体絶命の状況だというにもかかわらず不敵な角度で口角を上げる椎名。そんな勝気な彼女の姿を見た晴太は………
(まだ終わらない……そんな気がする……絶対にこいつは、俺を超える……)
確信してしまった。椎名は間違いなく超えてくる。3年間で強くなった力を自分にぶつけてくる………
何故だろうか、彼は椎名同様にバトルが楽しくなっていた。自然と椎名のバトルに魅せられていた。勝たなければならない大事なバトルだというのに、
椎名があれからどう成長したのか、そしてここからどうやって自分を乗り超えるのか気になって仕方が無い。
晴太はそんな複雑な気持ちに揺さぶられていて…………
「私のターンッッ!!」
そして椎名のターンが幕を開ける。
[ターン08]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ9⇨10
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
リザーブ10⇨16
トラッシュ6⇨0
「メインステップ、ギルモンとグラニを召喚し、合体!!」
手札3⇨1
リザーブ16⇨5
トラッシュ0⇨7
【ギルモン+グラニ】LV3(4)BP12000
真紅の魔竜、成長期の姿、ギルモンが椎名の場に現れると、すぐさま、真紅の飛行物体、グラニも姿を見せ、ギルモンはその背中に飛び乗った。
「アタックステップ!!…ギルモンでアタック!!」
アタックステップに移行し、アタックを仕掛ける椎名。そしてこの瞬間、合体したグラニの効果が発揮されて………
「グラニの効果!!相手のデッキの上から1枚を破棄し、それと同じ系統を持つスピリット1体を破壊する!!」
「っ……!!」
破棄カード↓
【コレオン】◯
晴太のデッキの上からカードが1枚トラッシュへと落ちる。そのカードはコレオン。系統皇獣を持つスピリットカードだ。そして、晴太の操るスピリットは全て皇獣。いずれかのスピリットを破壊できる。
「効果は成功!!コレオンと同じ皇獣スピリットのジークを破壊する!!………いけグラニ、ユゴスブラスタァァァァア!!」
グラニの口から膨大なエネルギーが蓄積されたビームが放たれる。それはジークに直撃し、貫いて爆発させた。一見ギルモンとグラニのコンボでジークを倒し、大金星を挙げたかに見えたが………
それを見越していたかのように晴太はバーストカードを反転させ………
「破壊後のバースト、五輪転生炎!!」
「っ!?」
「この効果によりジークを復活!!蘇れ!!」
【龍神皇ジーク・エグゼシード】LV1(1)BP16000
晴太がマジック、五輪転生炎〈R〉の効果を発揮させる。燃え盛る炎の輪が現れ、その中からグラニによって破壊されたはずのジークが勢い良く飛び出し、場へと復活を果たした。
「これで空野晴太のブロッカーは3体………どうする気だめざし、このままじゃ突破できんぞ」
この光景を前に、司は呟いた。確かにこのままでは晴太の残り1つのライフは破壊できない。
「ジークでブロック!!返り討ちにしてやれ!!」
復活したジークが口の中に炎を溜め込み、ギルモンを乗せているグラニごと破壊すべく、それを放出した。ギルモンとグラニはそれに呑み込まれ………
大爆発を起こした…………
飛び散る爆煙と爆風。
しかし、そこから姿を見せるスピリットが1体………
……それは………
「なに!?………こいつは………」
「BP破壊される直前のフラッシュ、私はフレイドラモンの【アーマー進化】を発揮させ、ギルモンをグラニごと手札に戻し、これを召喚したんだ………」
手札1⇨2
トラッシュ7⇨8
【フレイドラモン】LV2(3)BP9000
その爆煙、爆風の中姿を現したのは赤きアーマー体スピリット、フレイドラモン。椎名が小さい頃から愛用するマイフェイバリットカードだ。
だが………
「今更その程度のスピリット………俺のバゼルとジークの敵じゃないぞ」
そうだ。椎名とフレイドラモンに立ちはだかる壁は、フレイドラモンの力だけでは超えることはできない………
「だけど、可能性がなくなったわけじゃない、フレイドラモンの召喚時効果!!BP7000以下のスピリット1体を破壊する!!」
「!!」
「BP3000のビレフトを破壊だ、爆炎の拳……ナックルファイアッッ!!」
フレイドラモンは登場するなり爆炎をその拳に纏わせ、殴りつけるように炎の球として射出。その炎の球はビレフトに直撃し、それを焼き尽くした。
それを見届けた椎名はまた少しだけ口角を上げて………
「そしてこの効果で破壊した時、カードをドローする!!」
「っ………!!」
フレイドラモンのドロー効果に全てがかかったこの状況…………
晴太は「ハッ」となって気づき、衝撃を受けた。それもそのはず、今の椎名の言葉、盤面の状況はあの日、椎名達の入学試験で椎名とバトルした時と状況が瓜二つなのだ。
晴太は懐かしさから、自然と笑みが溢れて………
「おいおい、まさかそれで逆転する気じゃないだろうな?たった1枚で」
「へへっ、そのまさかですよ先生、このドローは奇跡を起こしますよ!」
あの時と同じ言葉を晴太は咄嗟に口にした。椎名も同様にあの時と同じ言葉を使った………
そうだ。
いつだってそうだ。
いつだって椎名のドローは奇跡を起こしてきた………
そして今回もそれは起きる………
「カード、ドローッッ!!」
手札2⇨3
カードをドローした椎名。これで手札はグラニとギルモンを含め3枚。この状況で晴太のエグゼシードに戦いを挑みに行く………
「行け、フレイドラモンッッ!!」
椎名の指示を聞くなり、高い脚力を活かして宙へと飛び上がるフレイドラモン。必殺技である「ファイアロケット」の予備動作だ。
「だがどうする椎名!!俺はまだバゼルでブロックが可能だぞ!!」
そう言い張る晴太。しかしその表情は既に憤怒はしておらず、椎名同様にバトルを楽しんでいるのが確かに伺えて………
それに対し、椎名はまた楽しげに口角を上げ、最後の最後、この大一番で引いてみせたカードを使用する………
「フラッシュ【チェンジ】……デュークモン クリムゾンモードの効果発揮!!」
手札3⇨2
【フレイドラモン】(3⇨2)LV2⇨1
リザーブ5⇨0
トラッシュ8⇨14
「っ!!」
「この効果により、シンボル合計3つまでスピリットを好きなだけ破壊する!!…バゼルとジークを破壊だ!!」
紅蓮の炎の龍が椎名の場に現れたかと思うと、すぐさま飛び立ち、晴太のエグゼシード軍団を次々と焼き尽くしていく。
ジークとバゼルは忽ち大爆発を起こし、晴太の場はアタックもブロックもできない炎魔神だけが残った………
(…俺はバカだ……今わかった……下の世代の子達に俺や茜と同じような思いをさせないために教師になったって言うのに、俺は自分で椎名達に同じ思いをさせようとしていたんだ…………)
紅蓮の炎の龍に焼き尽くされる盤面。フレイドラモンが目を付け、最後のライフを砕こうとする最中、晴太は心の中でそう思った。
そうだ。自分はあの日、界放リーグで茜と決着をつけられなかった。ここで椎名が参加できないようにしたら、つまりそれは椎名に自分と同じ思いをさせることになる………晴太は激しく、猛烈に反省して………
「渾身の爆炎……ファイアァァロケットッッ!!」
「っ!?」
椎名がそう言うと、フレイドラモンはその身に激しく炎を纏い、晴太の最後のライフめがけて急降下する。晴太は椎名とフレイドラモンのその姿に、赤羽茜とウォーグレイモンの姿を重ね、嬉しさと悲しさから一筋の涙が頬を流れた…………
「ごめんな、椎名………俺はライフで受ける………」
ライフ1⇨0
そしてそのアタックを受け入れ、フレイドラモンの渾身の爆炎が、彼の最後のライフを粉々に打ち砕いた………
これにより、勝者は芽座椎名。実に3年、ついに彼女は空野晴太を超えてみせた。
「楽しいバトルだったよ、先生!!」
椎名は晴太に向けて「ニカッ」と明るく笑いながらガッツポーズを見せつける。その様子を見た晴太は流れた涙を拭い、椎名の前まで行き………
「俺の負けだ、お前の先生になれた事を………俺は誇りに思うッッ!!」
「……先生」
ありふれた溢れんばかりの言葉を椎名へと送った。それを聞いた椎名は嬉しそうに頬を緩ませる。
「参加は許可してやる………でも、無理はすんなよ………」
「あぁ、わかってるよ!!……ありがとう!」
晴太の教師人生の中、及び生涯を通しても、この芽座椎名程に衝撃的なバトラーは今後、現れない事だろう。晴太はそんな椎名を教師として育てる事が出来た事を何よりの誇りとしていて………
その光景をただ1人眺めていた司もそれをクールな表情で尚且つ鼻で笑いながらも、それを微笑ましく見つめていた。
だが、ここでまた1つ問題が発生する。晴太はその事を思い出したように口を開き、声を上げ………
「あっそうだ椎名………」
「はい?」
「界放リーグに参加するんだったらお前、次のテストで赤点は取れんぞ」
「…………へ?」
晴太の言葉に呆気にとられる椎名。そうだ。当然の事だが、界放リーグは成績が芳しくない生徒は参加できない。筆記試験で赤点が出ればいくらあの芽座椎名と言えども参加するのは不可能だ………
「良し!!今から俺がお前の成績に赤点をつけられないように、みっちり勉強を見てやろう!!」
「え?……いやいや、いいよんなの!!」
「なぁに言ってんだ、遠慮しなくていいって!」
晴太からの突然の提案に、椎名の頭の血がサァーっと流れていく。バトルは兎も角、普通の勉強は嫌だ。今まで何度も言われてきているが、椎名は勉強が苦手だ………
「よし!!そうと決まれば教室に戻るぞ!!」
「え!?いや、ちょ!」
晴太は椎名が逃げられないように首根っこを捕まえて、椎名を持ち上げて連れ去ろうとする。
「司!!助けてくれッッ!!」
「こればかりはお前の問題だ、お前がどうにかしろ」
「バカァ!!」
「バカはお前だ」
咄嗟に司に助けを求めるが、司は助けないし、助ける理由もない。涼しい顔のままそれを断る。
「さぁ行くか!!先ずはレポート100枚だ!!」
「うわぁぁぁぁ!!!こんな事だったらもっと勉強しとくんだったぁぁぁぁぁぁあ!!」
3年間学業を疎かにしていたツキが回って来た。今日この日は椎名の悲痛な叫びがずっと続いたのだと言う…………
〈本日のハイライトカード!!〉
椎名「本日のハイライトカードは【フレイドラモン】」
椎名「私のマイフェイバリットであるフレイドラモン。指定アタックと効果破壊、そしてドローの効果は何度だって私を助けて来れた」
******
〈次回予告!!〉
冬休み、椎名は晴太に呼び出され、学園に行くことに………そしてそこで遂にあの人物と邂逅することになる。……次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「奇跡の邂逅、芽座椎名VS一木花火!」……今、バトスピが進化を超える!!
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※次回サブタイトルや内容等は変更の可能性があります。予めご了承ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!