第108話「開幕、最後の界放リーグ」
界放市。日本に存在する最大のバトスピ都市であるこの街では、年に一度、界放市の6つの学園の代表者をバトルさせ、優劣を競う催しが存在する……
それがこの今年で10回目を迎える『界放リーグ』だ。
去年はデスペラード校が廃校と化したため、様子見も含めて開催はできなかったが、今年、『エニー・アゼム』の祖先達の参加により、2年ぶりの再開が行われることとなった。
ー…
界放リーグの開催地、界放市。そのど真ん中に位置する広大な中央スタジアムにて、溢れんばかりの人々と轟音のような歓声が密集していた。スタジアム内ではその催しを祝うようにジェット機や風船が飛び交っている。
いよいよ、第10回界放リーグの開催なのである。2年ぶりということもあって、界放市の大半の人間が胸を踊らせていた事だろう。
だが、そんな彼らよりも胸を踊らせていたのは他でもない選手一同だ。スタジアム裏にて開会式での入場行進を待つ選手達の様子は………
「姐さん緊張するっス〜〜!!」
「うるさいぞ五町、後姐さんって呼ぶな」
「ハイ姐さん!!」
薄暗いそこでは、ジークフリード校の代表である岬五町と芽座椎名の様子があった。
五町にとっては初めての界放リーグ。緊張するのも無理はないが、椎名から見てその言動や行動は明らかに緊張感に欠けているようにしか見えない。
しかしそれが岬五町と言う人間と言えるのかもしれない。ある意味で『大物』と言った意味合いで………
ー…
「うぉぉぉぉお!!遂に!!遂に来たのだな我がライバル赤羽司!!お前と決着をつけるこの日が!!」
「黙れ空牙」
「なぜ黙らなければならない!!青春はもうすぐ終わろうとしているのだぞ!!黙る必要などない!!」
別の場所ではタイタス校の代表である岸田空牙と赤羽司の様子が見えた。
岸田空牙。タイタス校三年生であり、椎名達と同じ年の少年である。普通の市民ながら仮面スピリットであるクウガを扱う。後超の字がつくほど暑苦しい。
司がタイタス校の代表になったのは、ジークフリード校から最も距離が近いためであるが、誤算だった。この男をすっかり忘れていたのだ。正直彼は少しだけ後悔している。
ー…
そして遂にその時が訪れる。
開会式の入場行進だ………
《タイタス校3年、岸田空牙君》
「よっしゃぁ行くぜぇぇぇ!!青春だぁ!!」
無機質な音のアナウンスに早速名を呼ばれたのは空牙。裏からスタジアムへと歩き出した。やはり言動が暑苦しい。
《同じくタイタス校3年、赤羽司君》
「………」
司も名を呼ばれ、歩き出した。先に行った空牙とは違い、一言も喋らず、冷静沈着な印象を与える表情を浮かべていた。
その後も『ミカファール校』『オーディーン校』の順で入場行進は行われた。だが、そのオーディーン校には意外な人物が1人いて………
《オーディーン校3年、九白小波さん》
「ふぁ〜〜ぁ、寝み」
最初に歩み寄ってきたのは現在の学生の九白では最強で尚且つ最高傑作とも言われている九白小波。その本気を見たものは数少ない。
彼女はこんな催しに興味があるわけではない。寧ろ面倒だと言って参加は先ずしないだろう。しかし、今年に限っては参加しなければならない理由があった。
それが次に入場する彼だ。
《同じくオーディーン校2年、九白英次君》
「!」
その名前がアナウンスされた途端。司が少しだけ目を見開いてそこへと振り向いた。
そこにはあの英次がいた。おそらくジークフリード校でのバトルはせず、司同様にオーディーン校に自ら足を踏み入れて代表を勝ち取ったのだろう。大抵の九白一族からは落ちこぼれ扱いを受ける英次がそこに自ら足を入れたのは並大抵の勇気ではなかった事だろう。
その事を司と裏口で待機している椎名は思っていて……
「いや〜〜お姉さん嬉しいわ〜〜あの英次がオーディーン校に来てくれるなんて〜〜そんな事言うもんだから一緒に大会出るために久し振りに本気出しちゃったじゃない」
「はは……今回はよろしくお願いします。小波義姉さん」
英次のその強張った表情には確かな決意が感じられる。
見てもらわなければならないのだ。自分の今の強さを………『あの人』に……
ー…
その後はさらに『キングタウロス校』が入場する。その次のデスペラード校は現在なくなっているため、飛ばされる。
そして次はいよいよ『ジークフリード校』だ。
《ジークフリード校1年、岬五町さん》
「うぉぉ!!すっごいい!!ヤッホォォォ!………スタジアムキターーー!!!」
名前を呼ばれると共に五町が飛び出していくが、その様子に先程言った緊張の文字は無く、子供のようにはしゃいでいた。
そんな彼女の内心は憧れの姐さん、芽座椎名に良いところを見せたい気持ちでいっぱいだ。今年の界放リーグはそれだけで出たところもある。
《同じくジークフリード校3年、芽座椎名さん》
「よし……行くか……」
椎名がゆっくりとスタジアムに入場する。
足を踏み入れた途端、会場からは轟音のような歓声や声援が送られる。世界を救った芽座椎名の登場なのだ。当然と言えば当然か………
だが、椎名がそんな中でも目に映り耳に入って来たのは真夏と雅治だった。誰よりも大きな声で自分を応援してくれている声が聞こえてきた。椎名はそれに応えるように若干頬を緩め、手を挙げた。
ー…
これにて今年の参加する全ての生徒達がスタジアムにて集められた。
だが、選手はこれだけではない。一部の人間にしか知らされてはいないあの人物達が堂々と登場する………
《スペシャルゲスト………アゼム一族、『バーク・アゼム』『ノヴァ・アゼム』》
勢い良く噴き上がる煙。そこから姿を見せたのはあのバーク・アゼムと、司の姉である赤羽茜の体を乗っ取っているエニー・アゼムだ。ただし、エニー・アゼムの名前はこの時代では不都合だったのか、今回はノヴァ・アゼムと名を偽っている様子である。
そんな2人がジークフリード校の横へと配置された。椎名の横にはエニー・アゼムが来る。
「久しいな小娘。其方らの命運も今日で終わりじゃ」
「減らず口は相変わらずなんだな、ノヴァ・アゼム……」
対戦前から小声で言い合い且つ睨み合い、火花を散らす両者。だがその1つ前では………
「ん?……あ、あれ、あんたあの時の仮面スピリットの!!」
「っ!?……あの時の小娘か……」
「そうっスよ!!あん時の小娘っス!!」
バークと五町が久し振りの再会を果たしていた。因みに、五町はなんの事情も知らない。あのバークとノヴァがまさかこの世界を破滅に導こうとしていることなど思ってもいないだろう。
「成る程〜〜あんたエニー・アゼムの子孫だったんスか!!そんならあの強さも納得っスね〜〜でも今回は私のフォーゼが勝つっスよ!」
「………馴れ馴れしくするつもりはない」
「またまた〜〜そんなお堅い事言って〜〜」
自分の事を友達のように接してくる五町に呆れるバーク。彼のこの大会での目的は赤羽司に勝利し、バロンを手に入れる事………
ただそれだけが目的なのだ。位置は遠いが、彼は司を鋭い視線で睨みつけていて………
《開会宣言、タイタス校3年、赤羽司君》
「へいへい」
大会ならばあって当然の開会宣言。今年は一昨年の界放リーグで2位だった司だ。1人持ち場を離れ、スタンドマイクが設置されている場所へと赴いた。
司は手慣れた手つきでマイクのスイッチを入れ、それを口元に近づけ………言った………
「せんせー………俺が芽座椎名に勝って優勝する……以上」
ーは?
司のあっけらかんとした宣誓に、いや、突然の勝利宣言に唖然とする会場。いったいどれだけ勝つ自信があるのか………
だが、すぐさま怒号の声と声援のような歓声が上がる。怒号と言うのは司ではない別の誰かを応援している者達の声。声援は司を応援する者達と笑う者達の声が混じったものだ。
司は元の場所に戻る時に椎名の方を向き、ドヤ顔で見つめた。まだ勝負などしていないと言うにもかかわらずだ。
この男、最初からエニー・アゼムの一族達との戦いなんて興味はない。彼が興味があるのはただ一つ『芽座椎名との決着』…………
「へへ、司の奴言ってくれるじゃん……でも、勝つのは私だ」
椎名も思わずそう口にした。彼女もまた司とのバトルを楽しみにしていた。
(………奴め……既に我は眼中にないと言うのか……低俗な一族の分際で……!!)
だがすぐその付近でバークは怒りの心で溢れかえっていた。今すぐにでも司を八つ裂きにしてやらんと言わんばかりのオーラを噴き出している………
《開会式は以上となります。第一試合の選手以外の皆様は速やかにご自身の控え室へとお戻りください》
無機質な声のアナウンスがそう告げると、巨大なモニターにトーナメント表が映し出された。
今年の界放リーグは例年とは少し違う。1回戦は4人がシードとして不戦勝となる。そして余った8人で1回戦を行い、残った4人と合計8人で2回戦を行うのだ。
そして、映えある1回戦の第一試合は………
「私か……」
「姐さんいいな〜〜1回戦目で!!私シードっスよ!?お預けっスよ!!」
「うるさいぞ五町」
一昨年同様、所詮は椎名の出番のようだ。シードのため1回戦を見送ることになった五町は残念そうな声を上げる。
「え〜〜っと、で、相手は…………」
「僕さ!」
「「?」」
椎名が気になる対戦相手を確認しようとした直後だ。椎名と五町の背後から声をかける人物が1人………
その生徒はミカファール校の制服を着ている。そして何よりも超絶的な美男子であった。百人に聞いたら間違いなくそう答えるだろう。
「誰だあんた」
「よくぞ聞いてくれた!!僕の名は嵐を呼ぶ美男子!!ミカファール2年の『模手最 的(もても てき)』!!……いぞ、お見知り置きを、レディ達」
「なんか胡散が臭そうなのが着たっスね」
「模手最?……なんかどっかで聞いた事あるような………」
自己評価の高い男、模手最的の自己紹介に椎名は何処かで聞いたような、又は見たような事を思い出そうとしていた。しかし、その後直ぐに考えるのを諦めてしまうのだが………
「貴女が噂の芽座椎名さんか………噂通りの美しい女性だ。どうだい、界放リーグが終わった後でも2人で夜の街へと洒落込みませんか?」
「嫌だ」
挨拶も束の間、突然椎名をナンパする模手最的。だが椎名はそれを聞くなりどうでも良さそうに目線を逸らしながら即答で断りを入れた。
「ふむ、この美しい僕に一目で見惚れては来れないか。だがそれが良い。その私に向ける冷ややかな態度。それこそ私が求めていた至高の女性!!」
「ちょっとぉぉぉぉぉ!!あんたさっきから聞いてたら好き勝手に言ってくれるっスね!!ウチの姐さんはあんたみたいな胡散臭い男に興味はないっスよ!!」
「まぁまぁ落ち着きなさい、小さき者よ。せっかく見た目は可愛いのだ。美しい僕や椎名さんを見習って精進するがよい」
「誰が小さき者だぁぁぁぁあ!!!私はずっと姐さんを見習ってるっス!!」
椎名がナンパされてるとわかった途端、居ても立っても居られなくなり、五町は模手最的に詰め寄るが、彼の気持ち悪いナルシストな言い回しに激怒してしまう。
「うるさいぞ五町」
「だって姐さん〜〜あいつキモイっス!!」
「わかったから、下がってろ。もう他の奴らはみんな控え室に帰ったぞ」
見かねた椎名が五町を引っ張り戻す。そして対戦相手である模手最的の前へと赴くと………
「おいあんた。生憎だけど、私は恋愛なんて興味ないぞ。どうしても語りたいなら私とのバトルで勝ってから語るんだな」
「ふむ、成る程。界放市を救った英雄である貴女らしい発言だ………いいでしょう、僕の実力。見せちゃいます!!」
椎名に言われ、ようやくバトルに対する姿勢を見せる模手最的。だがそのナルシストっぷりは取れない。
「姐さん勝ってくださいっスよ〜〜!!」
「はいはい」
五町は最後に言い残すと、速やかにスタジアムの裏口を通って自分の控え室へと向かった。
椎名と模手最的はその後直ぐに広大なスタジアムのバトル場へと足を運び、踏み入れる。
そして、椎名と模手最的がBパッドを展開した。その時だ。少し下の方で椎名を呼ぶ声が聞こえてきたのは………
「おい椎名!!」
「っ……晴太先生!?……なんで」
バトル場の直ぐ下にいたのは他でもない、椎名達の担任の教師、晴太だった。椎名は意外な人物の登場に少しだけ驚く。
「なんでってお前、俺が審判兼連絡役としてここにいるからに決まってるだろ?」
「全く、どんだけ心配なんですか………」
晴太は椎名達のバトルをできるだけ近くで観戦したかった。それで頼み込んだ結果。この役回りとして他の観客よりも間近で見る事が可能になって………
「つべこべ言うな!!全力で行けよ!!」
「はいはい」
「はいは一回!!」
「は〜〜い」
どこまでも熱血な晴太。椎名はまた違う意味でめんどくさそうに受け答えする。
そして改めて展開させたBパッドの上にデッキを置いて、起動させ………
「ふっふ、余談は済んだかな?」
「あぁ、もうお腹いっぱいだ」
「それは良かった。では、今から貴女を魅了させる魅惑のバトルスピリッツをご堪能いただこう!!」
「「ゲートオープン、界放!!」」
伝統ある界放リーグ。記念すべき10回目となる今回の第一試合が幕を開けた。熱狂の歓声がこだまする中、先行は模手最的でスタートする。
[ターン01]模手最
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「美しい僕のメインステップ、僕は美しい光楯の守護者イーディスを召喚!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨3
【光楯の守護者イーディス】LV1(1)BP1000
模手最的が華やかな手際で呼び出したのは、黄色の麗しい天使型スピリット。金色の盾を所持するイーディス。
「美しい僕はこれでターンエンド!!……どうだい?場持ちの良い守護者スピリット。これで次のターンから僕の場は美しい天使達で埋め尽くされる!!」
【光楯の守護者イーディス】LV1(1)BP1000(回復)
バースト【無】
イーディスのような名称に『守護者』と入るスピリットには、自身を含めたコスト3以下のスピリットを効果破壊から守る効果を備えている。
これにより、シンボルが残りやすく、次ターンからより強力なスピリットを呼ぶ事が可能になって来るのだが…………
「あぁ、そうだな………ただし、次のターンがあればの話だけどね」
「え?」
その椎名の言葉に僅かばかりの殺気を感じ、身震いする模手最的。
界放市を救った英雄、芽座椎名のターンがいよいよ幕を開ける。
[ターン02]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ、私はズバモンを召喚!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨4
【ズバモン】LV1(1)BP3000
椎名が手始めと呼び出したのは金色に輝く鎧を身に纏う成長期ブレイブ、ズバモン。スピリットではなくブレイブということもあって、他のデジタルスピリットとは一風変わった印象を受ける。
「アタックステップ!!ズバモンの【進化:全色】発揮!!緑の成熟期スピリット、スティングモンに進化!!」
【スティングモン】LV1(1⇨2)BP5000
ズバモンがデジタル粒子に変換され、椎名の手札に帰還したかと思えば、新たに緑のスマートな昆虫戦士、スティングモンが出現する。その効果でさり気なくコアが増加する。
「アタックステップは継続!!……スティングモンでアタック!!効果でコアを増やし、LV2にアップ!!」
【スティングモン】(2⇨3)LV1⇨2
さらにスティングモンにコアが追加され、LVか2へと上昇する。そしてこの時、さらに発揮されるアタック時効果が存在していて………
「【超進化:緑】発揮!!……スティングモンを完全体スピリット、パイルドラモンに進化!!」
【パイルドラモン】LV2(3)BP10000
スティングモンが0と1のデジタルコードに巻かれていく。それは膨らんでいき、やがて破裂すると、中からは新たに進化した姿、赤い頭部、4枚の羽、腰に2つの機関銃を所持する完全体スピリット、パイルドラモンが現れる。
「に、2ターン目で完全体!?」
「この程度で驚くな、まだまだ序の口だって……召喚時効果でコスト3のイーディスを破壊する……デスペラードブラスター!!」
「!!」
パイルドラモンは登場するなり、腰に備え付けられた2つの機関銃をイーディスに向けて連射する。イーディスは盾を構え、その弾丸を受け切った。
「だから言ったでしょう?…守護者のイーディスに効果破壊は効かない!!…美しく疲労状態で場に残る!」
【光盾の守護者イーディス】(疲労)
盾を構えたことにより、疲労状態になるが、パイルドラモンのデスペラードブラスターから身を守ったイーディス。だが彼は甘い。
何せ、椎名の本当の狙いはイーディスを破壊することではなく、疲労させることなのだから………
「パイルドラモンでアタック!!効果でコアを2つ追加し、ターンに一度回復する!!」
【パイルドラモン】(3⇨5)LV2⇨3(疲労⇨回復)
パイルドラモンは一瞬鮮やかな色に光輝く。それはコアブーストと回復を同時に行った証。このターンは2度目のアタックが可能となった。
「そして本命のアタックだ、いけぇ!」
「ふふ、回復したとはいえ、高々シンボル1つのアタック。いいでしょう、この僕の美しいライフを捧げましょう!!」
ライフ5⇨4
未だ余裕の表情を見せる模手最。気持ち悪い言い回しを述べながらパイルドラモンのアタックをライフで受けた。
パイルドラモンの強靭な拳の一撃が彼のライフ1つを粉々に砕いた。
「もう一度だ。パイルドラモンでアタック!」
【パイルドラモン】(5⇨7)
再びパイルドラモンでアタック宣言を行い、さり気なくコアを増加させる椎名。さらにこのタイミングであるカードを1枚引き抜く。
「フラッシュ【チェンジ】…インペリアルドラモン ドラゴンモード!!対象はパイルドラモン!!」
【パイルドラモン】(7⇨4)LV3⇨2
トラッシュ4⇨7
「なに!?…デジタルスピリットを対象にチェンジ効果を!?」
「だからそのくらいで一々驚くなって………パイルドラモン、究極進化!!…来い、インペリアルドラモン ドラゴンモードッッ!!」
【インペリアルドラモン ドラゴンモード】LV2(4)BP13000(回復)
パイルドラモンが高密度な光に包まれ、その中で姿形を大きく変化させていく。
その体はより巨躯たるものになり、背には巨大な赤い翼、砲手が出現。やがてその巨大な竜は光を弾き飛ばし、姿を現した。その名はインペリアルドラモン ドラゴンモード。パイルドラモンが進化を遂げた青と緑の究極体スピリットである。
「【チェンジ】の効果により回復状態のままアタックを続行!!」
「くっ!!…ライフを捧げましょう!」
ライフ4⇨3
ドラゴンモードの巨大な前脚から繰り出される鋭い爪の一撃が模手最的のライフを1つ切り裂いた。
「ドラゴンモードは回復状態、3度目のアタックだ!!」
すかさずこのターンの3度目のアタックを行う椎名。直後に手札のカードをまた1枚引き抜き………
「最強の進化コンボはこれからだ!!フラッシュ【煌臨】発揮!!対象はドラゴンモード!!」
【インペリアルドラモン ドラゴンモード】(4s⇨3)
トラッシュ7⇨8s
「!?」
突然の椎名の煌臨宣言。上空に激しい雷鳴を鳴り響かせる異次元の渦が現れたかと思うと、ドラゴンモードはそこに吸い込まれるように中へと向かい、姿形を大きく変形させていく。
「インペリアルドラモン、モードチェンジ!!……現れよ、ファイターモードッッ!!」
手札4⇨3
【インペリアルドラモン ファイターモード】LV2(3)BP15000
その異次元の渦から再び姿を見せたのはドラゴンモードではなく、竜型から人型へと形を変えたインペリアルドラモン。名をファイターモード。
「な、なんだ………なんだこの化け物は!?」
ファイターモードの圧倒的な存在感、強者のオーラに呑まれてしまい、怯え、怯み、たじろぐ模手最的。
だが椎名はそんな彼の様子など伺うこともなくアタックを継続させ………
「煌臨スピリットは煌臨したスピリットの全ての情報を引き継ぐ……ファイターモードでアタックを続行!!」
「くっ……また僕の美しいライフを捧げよう……!!」
ライフ3⇨2
ファイターモードは腕に装着された砲手を模手最的に差し向け、そこからレーザービームを放出。そのライフを難なく貫いて見せた。
「……へ、へへ……終わり……まだ僕の美しいライフは健在……」
ファイターモードが攻撃を終えたその様子を視認するなり、安堵の表情を浮かべる模手最的。
だが、まだ終わりではない………
椎名はファイターモードの効果を発揮させる。
「ファイターモードのアタック時効果!!」
「!?」
「相手のライフを減らした時、さらに2つのライフを破壊する!!」
「はぁ!?」
椎名がそう宣言すると、ファイターモードは胸部にある竜口を開口させ、そこに分解した砲手を取り付け、エネルギーを限界まで蓄積させる………
「行けファイターモード………超然の一撃……」
「ちょ、ちょっと待っ………」
「ギガデスッッ!!」
模手最的の有無を聞かず、効果の発動を宣言する椎名。ファイターモードはついに胸部の竜口から莫大なエネルギーが詰まった弾丸を彼のライフへ向け、放つ。
「う、うぁぁぁぁっ!!!?」
ライフ2⇨0
それは瞬く間にライフへと直撃し、一瞬にして全てを破壊する。噴き上がる狼煙は椎名の圧倒的な強さと勝利を見せつけるには十分すぎるものがあって………
唖然とし静まり返る観客達………しかし、爆煙が晴れ上がり、模手最的が無様でみっともない格好で横転している様子を視認してからは椎名が勝利を収めた事を理解していき、一瞬のうちにまた轟音のような歓声を上げた。
『1ターンキル』
僅か一度のターンで勝負を決める事を総じてそう呼ばれる。しかし、それを行えるデッキ、及びカードバトラーは滅多にいない。今の芽座椎名がどれだけ常識を逸した強さを秘めているのかが伺える。
模手最的が弱すぎるのではない。芽座椎名が余りにも強すぎるのだ。
「フンっ、それくらいでないと困る!!」
控え室でその試合をモニター越しで眺めていた赤羽司はそう嬉しそうに感想を述べた。
ー…
「ま、悪く思うなよ〜〜」
無様でみっともなく倒れている模手最的にそう告げ、余裕のある表情を浮かべながらスタジアム裏にゆっくりと歩みを進める椎名。
(バーク、エニー・アゼム……どっからでもかかって来い!!……この大会で決着をつけてやる!!)
心の中で打倒エニー・アゼム達を志す椎名。その意思は鋼のように固い。
第10回界放リーグ。椎名達の最期の界放リーグはまだまだ始まったばかりである………
〈本日のハイライトカード!!〉
椎名「本日のハイライトカードは【スティングモン】」
椎名「緑の成熟期スピリットスティングモン。アタック時と召喚時でコアを増やすことができる。そのターン中にパイルドラモンに進化が可能だ」
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〈次回予告!!〉
続々と1回戦の勝者が決まっていく中、注目の一戦が幕を開ける。それはかの有名なバトスピ 一族、九白の最高傑作と言われる少女、九白小波。そんな彼女の本気とは………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「九白小波の本気、機動城塞セントガルゴモン!!」……今、バトスピが進化を超える……!!」
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※次回のサブタイトル及び内容は予告なく変更の可能性があります!!予めご了承ください!!
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
遂に最終章です!!おそらく後10話とちょい程度で完結だと思います!!