バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第109話「九白小波の本気、機動城塞セントガルゴモン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第10回界放リーグ。その最初の試合は芽座椎名が圧倒的な強さを見せつけての勝利を収めた。

 

その後も1回戦は続いている。今年のシードは4人。『岬五町』『岸田空牙』『ノヴァ・アゼム』『バーク・アゼム』

 

つまりそれ以外の者達がこの1回戦でバトルを行う事となる。

 

今現在はジークフリード校の生徒でありながら、オーディーン校の代表として勝ち上がり、界放リーグへと出場を果たした英次がキングタウロス校の生徒としのぎを削っていて………

 

 

「トドメです……いけぇ!…ジャスティモン…ジャスティキックッッ!!」

 

「ぐっ、うわぁぁぁ!!」

ライフ1⇨0

 

 

赤いマフラーを靡かせる正義のヒーローのような見た目の究極体スピリット、ジャスティモンが飛び蹴りを放ち、キングタウロス校の生徒のライフを砕く。

 

英次の勝利だ。彼の小さな勇姿にスタジアムを囲む観客達は大いに沸いて見せた。

 

そして次は第三試合、英次の義理の姉である九白小波のバトルだ。

 

 

ー…

 

 

晴れやかな晴天下の元、オーディーン校の代表、九白小波と、キングタウロス校の代表であり、尚且つ界放リーグ3連覇を成し遂げた緑坂冬真、ヘラクレスの一番弟子、炎林頂が面と向かって対峙していて………

 

 

「俺の相手は九白最強の女か……不足無しだな、よろしく頼むぞ」

「ふぁ〜〜あ。……さて、英次と一緒に界放リーグに出る夢は叶ったし、どうするかな〜」

 

 

やる気満々の炎林に対し、眠そうに欠伸をする九白小波。彼女のこの大会に対するモチベーションは著しく低い。

 

それは何故か?

 

理由はただ1つ、小さくて可愛い義弟、英次と一緒に大会に出るという夢が叶ったからだ。優勝が狙いの他の参加者とは違い、彼女の目標は既に叶っていたのだ。それ故、燃え尽き症候群的な感じになっている。

 

 

「おいお前!!さっきから何ボサッとしてんだ!!やる気あんのか?」

「無いよ〜〜」

「無い!?」

 

 

炎林が小波にそう聞く。小波の裏もなさそうなきっぱりとした言い方に、思わず驚いてしまう。

 

界放市に住まう者なら、界放リーグの代表に選ばれるという事は栄誉ある事なのだ。それをあんな粗野にしているような態度が彼にとっては信じられなくて………

 

 

「こいつ……良いだろう。お前のその性根、叩き直してやる!!このヘラクレスの弟子である、炎林がな!!」

「ん?なんであんたは怒ってんだ?……まぁどうでもいいけど」

 

 

2人はそう言いながら自身のBパッドを展開する。そのままデッキをセットし………

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

コールと共に、1回戦 第三試合のバトルが開始される。しかし、その温度差は歴然。最初は九白一族最強の刺客、九白小波のターンだ。

 

 

[ターン01]小波

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ………さぁおいでませ、テリアモン!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

【テリアモン】LV1(1)BP2000

 

「っ……九白一族の最強スピリットの成長期の姿か!!」

 

 

小波が早速呼び出したのは……

 

所謂白いもふもふ。主に長い耳のもふもふ感が凄い。

 

炎林は気を抜かずでいるが、当の本人は………

 

 

「あ〜〜やっぱテリアモンは癒しだわ〜〜……この殺伐としたバトルに癒しを与えてくれている!!」

「………は?」

 

 

目の前にいる自分が召喚したテリアモンに夢中になっていて、全く炎林とのバトルに集中していなかった。

 

 

「おいお前!!ふざけるんだったらとっととサレンダーしろよなぁぁ!!」

「うっさいなぁ、せっかくテリアモン成分を補給していたのに………それに適当にバトルしたら叱られるのは私なんだぞ!?」

「いや、知らん!!」

 

 

当然の如く怒鳴りつける炎林。その行いは決して恥じる事はない当然の行い。

 

小波はライバルたちと切磋琢磨し、勝ち上がってきた者達への侮辱にも等しい事をしているのだから………

 

しかし、そんな事も全く意に介さず、独自の考えだけで動く彼女にとって、炎林の価値観は理解できず………

 

 

「まぁ怒られるし、召喚時効果くらい使っておくか……」

オープンカード↓

【リアクティブバリア】×

【ラピッドモン(テイマーズ)】◯

【ドリームリボン〈R〉】×

 

 

召喚時効果もめんどくさそうに使う始末である。一応は成功し、小波は新たにカードを加えた。

 

 

「ターンエンド……さ、私がテリアモンに見惚れている間にあのゴーグル女見たく、さっさとワンターンキルでも決めな〜〜」

手札4⇨5

 

【テリアモン】LV1(1)BP2000(回復)

 

バースト【無】

 

 

「できるか!!」

 

 

ワンターンキルだったらしょうがなかったと言う理由で上から叱られる事はないだろうと考えている小波。

 

しかし、当然のように、あんな事が出来るのは芽座椎名くらいなものである。炎林は小波の奇行に腹を立てつつ、戸惑いながらも、自分のターンを進行していく。

 

 

[ターン02]炎林

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺はホムライタチを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨2

【ホムライタチ】LV2(3)BP3000

 

「あら可愛いじゃない!!」

「うるせぇ!!」

 

 

炎林が召喚したのは尾が炎のように燃えているイタチ型スピリット、ホムライタチ。その効果によりメインステップ中、常時緑シンボルが浮かんでいる。

 

 

「俺はこれでエンドだ!!」

【ホムライタチ】LV2(3)BP3000(回復)

 

バースト【無】

 

 

「全く、早く勝負をつけてくれよ〜〜私も出来る限りは抵抗する姿勢を見せないと怒られるし」

「なんでお前はハナっから負けるつもりなんだぁぁ!!」

 

 

小波はもう既に満足しているため、このバトルの勝敗は気にしていない。だが、適当に負けても九白一族の上部層からお叱りが飛ぶ事から、こうして炎林が自分のデッキのフィニッシュパターンを行うのを待つしかなくて………

 

この少女、九白小波は『可愛いものが好き』……しかし、余りにも度がすぎる。

 

 

[ターン03]小波

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、さあて、どうしたものかな………あっ、モーマンタイ。丁度御誂え向きなのがあるじゃん………召喚、氷楯の守護者オーシン」

手札6⇨5

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨2

【氷楯の守護者オーシン】LV1(1)BP2000

 

「っ……守護者スピリットか……どんだけそのテリアモンが大事なんだよ」

 

 

凍てつく吹雪が小波の場を駆ける。それが過ぎ去ったかと思えば、その場には盾を持つ白いボディのロボットが存在していて………

 

このロボットのスピリット、オーシンは守護者スピリット、コスト3以下のスピリットを効果破壊から守る効果を備えている。小波はテリアモンを守るための布陣を固めたのだ。

 

 

「これでしばらくはテリアモンを眺めてられるな〜〜あ〜〜しあわせ!!」

「早くターンを進めろぉぉぉぉぉぉお!!」

 

「カリカリしなさんな、テリアモンのLVを2に……」

リザーブ1⇨0

【テリアモン】(1⇨2)LV1⇨2

 

 

小波はどこまでもまともにバトルをする気は無いようだ。どう転んでも自分が負けるようにバトルしようとしている。

 

 

「さてと、コアを増やしてやるか……アタックステップ、テリアモンでアタック!!」

 

「っ……ライフで受ける!」

ライフ5⇨4

 

 

テリアモンは長くて太い耳を中心に回転し、小さな竜巻を発生させる。それは炎林のライフまで届き、砕いた。

 

 

「はわ〜〜!!ライフを削るモーションもかわいい!!」

 

 

このタイミングで炎林のライフを減らしたのは、彼にコアを増加させることによって、自分の敗北を近づかせるのが理由である。

 

 

「エンド〜〜早くデッキ回転させろよ〜〜」

【テリアモン】LV2(2)BP5000(疲労)

【氷楯の守護者オーシン】LV1(1)BP2000(回復)

 

バースト【無】

 

 

「良い気になりやがって………良いぜ、この俺の力、とくと味わえ!!」

 

 

小波の無意識な煽りもあって、炎林の怒りはピークに達している。彼の力強いターンが幕を開ける。

 

 

[ターン04]炎林

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインステップ、俺は六分儀剣のルリ・オーサをLV2で召喚!!その効果でホムライタチと自身にコアを1つずつ追加!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨2

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV2(2⇨3)BP5000

【ホムライタチ】(3⇨4)

 

 

剣を携えるスマートな昆虫騎士、ルリ・オーサが召喚されたかと思えば、元々いたホムライタチ共々コアが増加する。

 

 

「さらに2体目を召喚し、さらにコアブースト!!」

手札4⇨3

トラッシュ2⇨3

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV1(1)BP3000

【六分儀剣のルリ・オーサ】(3⇨2⇨3)

【ホムライタチ】(4⇨3⇨4)

 

 

すぐさま2体目が召喚されてまたコアが増える。ただ、彼の熱のこもった言動からはまだこれで終わる雰囲気もなくて………

 

 

「3体目だ!!さらにコアブーストする!!」

手札3⇨2

トラッシュ3⇨4

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV1(1)BP3000

【六分儀剣のルリ・オーサ】(3⇨2⇨3)

【ホムライタチ】(4⇨3⇨4)

 

 

炎林の場には3体のルリ・オーサが並ぶ。このターンだけで実に6個のコアが追加された。1ターンで、しかも第4ターン目でこれほど数が並ぶデッキは数少ない事だろう。

 

 

「LV調整!!アタックステップ!!……翔けろルリ・オーサ!!」

【六分儀剣のルリ・オーサ】(3⇨2)

【六分儀剣のルリ・オーサ】(1⇨2)LV1⇨2

【ホムライタチ】(4⇨3)

【六分儀剣のルリ・オーサ】(1⇨2)LV1⇨2

 

 

小波のライフめがけ、1体のルリ・オーサが羽根を広げ、飛翔する。

 

 

「やぁっとお出ましか〜〜ライフで受けるよ」

ライフ5⇨4

 

 

ルリ・オーサの鋭い剣撃が小波のライフを襲い、それを1つ砕いた。

 

 

「まだまだぁ!!残りのルリ・オーサでもアタック!!」

 

「はいはい、ライフだ受けまーす」

ライフ4⇨3⇨2

 

 

2、3体目のルリ・オーサも1体目同様小波のライフを切り裂く。これで彼女のライフはあっという間に僅か2となってしまう。

 

 

「どうだ舐めプ女、これで少しはやる気になったか!!俺はターンエンドだ!!」

【ホムライタチ】LV2(3)BP3000(回復)

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV2(2)BP5000(疲労)

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV2(2)BP5000(疲労)

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV2(2)BP5000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

散々アタックした炎林はそのターンをエンドとした。

 

しかし、彼からの猛ラッシュを受けても、未だにライフがゼロになっていない事に対し、小波はやや不服そうな表情を浮かべており………

 

 

「早く終わりたいんだけどな〜〜」

 

 

と、やる気のない言葉を呟きながら、再び自分のターンを進める。

 

 

[ターン05]小波

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨6

トラッシュ2⇨0

【テリアモン】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ…………んーーーーエンド」

【テリアモン】LV2(2)BP5000(回復)

【氷楯の守護者オーシン】LV1(1)BP2000(回復)

 

バースト【無】

 

 

「はぁっ!?」

 

 

しかし、彼女の盤面はほとんどと言っていいほど動かず……

 

前のターンにあれだけ派手にライフを奪われたにもかかわらず、反撃する姿勢も、スピリットを召喚し、守りを固めるそぶりすら見せなくて………

 

 

「なんなんだお前は!!なんで反撃して来ない!?」

「だーかーらー…何度も同じ事を言わせるなって、面倒なんだよ、私はさっさと負けて愛しい英次の応援に回りたいわけ!」

 

 

仮にも栄光の界放リーグの代表として選ばれている選手が口にする発言とは思えない。

 

もっと言えば、あの勝負の勝敗に拘る九白一族の最強のバトラーとは思えず………

 

 

「っざっけんなぁぁ!!俺達がどれだけ苦労してこの大会に出場したと思ってんだ!!…お前は他の代表になれなかった奴らの気持ちを無下にしているんだぞ!?」

 

 

小波のその行為に、ただでさえ怒りのピークに達していた炎林はさらに強く彼女を怒鳴りつける。

 

彼の言い分はもっともだ。同じ学園生の並み居る強敵を倒し、ここまで勝ち上がってきたと言うのに、何なのだこの女は……自分の代表としての責務を全く理解していない。

 

 

「もう、うっさいなー……君の価値観を私に押し付けないでくれる?…そんなの私にとってはモーマンタイ。問題無いんだよ」

「な、なんだと……このクソ女!!」

 

 

当然、小波が炎林の声などまともに聞くわけもない。彼女にとって、バトルの勝ち負けなどどうでもいい。

 

勝とうが負けようが、可愛らしいスピリット。最愛のテリアモンさえ眺められればそれでいいのだ。

 

それこそが今の九白一族の最強傑作、九白小波なのだ。おそらく九白の長い歴史上、もっとも厄介な性格をしているのは間違いない。

 

 

「さ、わかったらその4体のスピリットで私のライフを狙って〜〜、それでゲームエンドだから」

「おぉ、わぁったよ………全力でお前の全てを破壊してやる……!!」

「?」

 

 

炎林から僅かながらに違和感を感じた小波。実際、特に大したものではないが、何故だろうか、彼女にしては珍しく若干の危機感を覚えた。

 

そして、心が怒り満ち溢れた炎林のターンが幕を開ける。

 

 

[ターン06]炎林

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

【六分儀剣のルリ・オーサ】(疲労⇨回復)

【六分儀剣のルリ・オーサ】(疲労⇨回復)

【六分儀剣のルリ・オーサ】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!!俺はバーストをセットし、アクセル、煌星第一使徒アスガルディアの効果発揮!!」

手札3⇨1

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨3

 

「!!」

「この効果によりBP12000以下のスピリットを全滅させる!!これでお前のテリアモンは終わりだ!!」

「いやいや、バカか、テリアモンは守護者によって護られる………」

 

 

炎林が使ってきたアクセルカードは赤属性の一掃系効果を持つ強力無比なもの、しかし、それを使われてもなお小波は落ち着いた表情を崩さない。

 

大事なテリアモンは守護者オーシンが文字通り守護するからである……

 

だが………

 

 

「バカはテメェだ!!アスガルディアは破壊したスピリットの効果を無効にする!!」

「?」

「守護者スピリットは破壊されたスピリットを結果として場に残す効果、根本となる効果を妨げている訳ではない!!よって、2体とも場に残らず破壊されるっ!!」

「っ!!」

 

 

ここに来て初めて小波の落ち着いた表情が変わる。

 

思わず愛でる存在であるテリアモンの方へと目を向けるが、その直後、大気を揺るがすほどの大爆発が彼女の場を襲い………

 

テリアモンとオーシンは焼き払われた………

 

 

「…………」

 

 

その阿鼻叫喚しかねない光景に、小波は言葉が出ず暗い表情を浮かべ……………

 

 

「よっしゃぁぁどうだ舐めプ女!!ヘラクレスの弟子を舐めんなよ!!アタックステップ、ホムライタチでアタック!!」

 

 

バトルに勝とうとはせず、頑なに最後までテリアモンを眺めようとしていた小波の目論見を潰したからか、勢いづく炎林。そんな彼の指示に従い、ホムライタチが地を駆ける………

 

 

「………おい」

「?」

「……私のテリアモンに何すんだ?」

「っ!?」

 

 

小波の方から悪寒を感じさせる声色が聞こえてくる。その凄みに彼は思わずたじろいだ。小波はテリアモンを破壊した事に怒りを静かに燃やしていて………

 

炎林は既に虎の尾を踏んでいた事に気付いていなかった。躍起になってテリアモンを破壊せずに普通に彼女の言う通り勝っていたらどれだけ幸福だった事だろうか…………そう気づくのは少しだけ未来の話となる。

 

 

「フラッシュマジック、アルテミックシールド……ホムライタチのアタックはライフで受ける」

手札6⇨5

リザーブ9⇨5

トラッシュ0⇨4

ライフ2⇨1

 

「!!」

 

「そして、アタックステップは終わる」

 

 

まるで別人になった小波が手札から発揮させたのは白のありふれた防御マジック。ホムライタチが体当たりで彼女のライフを破壊した事に反応し、炎林の場に猛吹雪を発生させる。

 

 

「お前のアタックなんてこんなちんけでありふれたマジックでいくらでも止められる。どうした、そんなものか?」

 

「っ………エンドだ……」

【ホムライタチ】LV2(3)BP3000(疲労)

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV2(2)BP5000(回復)

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV2(2)BP5000(回復)

【六分儀剣のルリ・オーサ】LV2(2)BP5000(回復)

 

《手元》

【煌星第一使徒アスガルディア】

 

バースト【有】

 

 

猛吹雪が止み、炎林のターンがエンドとなる。次は完全にブチ切れてグレている小波のターン。

 

 

「テリアモンを破壊した罪を償えよ」

「うっさいぞ!!そもそもお前がテリアモンを召喚しなければ良かった話じゃないのか!?」

 

 

最もな意見である。

 

破壊されたくないのであればテリアモンなんて召喚しなければ良い。だが、この九白小波にそんな常識的な考え方は一切通用しない。自分の考えこそが至高且つ絶対であると心の何処かで認識しているからだ。

 

この可愛いスピリットを見たいがためだけにバトルしている『九白小波』が何故『九白最強』と言われているのか………

 

その理由はただ1つ、テリアモンがやられた時に本気を出すからだ。その本気の本気とバトルしたバトラーの中で未だ勝利を収めた者は誰もいない………

 

 

その真の実力がこのターンで発揮される。

 

 

[ターン07]小波

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ6⇨7

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ7⇨11

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ……要塞都市ナウマンシティーを配置!!」

手札6⇨5

リザーブ11⇨6

トラッシュ0⇨5

 

「!!」

 

 

小波が怒りのままに背後に呼び寄せたのは巨大な城塞を連想させる都市。その本領発揮は配置した直後だ。

 

 

「この効果で手札にある白属性のスピリット、ラピッドモンをLV3で召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨2

【ラピッドモン(テイマーズ)】LV3(4)BP11000

 

 

要塞都市から緑色の金属で出来た装甲を纏う完全体のスピリット、ラピッドモンが現れた。やる気があるのか、その両腕にあるミサイル砲を四方に回転させている。

 

 

「ハッ、今更完全体かよ……その程度じゃ俺はやられねぇ!!」

 

 

炎林はそれを視認するなり少しだけ安堵の表情を浮かべた。ラピッドモンは完全体と言うにはやや体格の小さいスピリットである。小波の威勢の割にには大した事ないと言いたげだ。

 

さらに安堵できる理由として、彼の場には汎用性の高いバーストカード『絶甲氷盾』が伏せられていた。ブロッカーの数もさることながら、確かに小波がこの場を突破するのは難儀するのが伺える………

 

しかし、やはりと言うべきか、彼のその見通しは甘く………

 

 

「お前は塵も残らんと思え………アタックステップ、ラピッドモンで攻撃を仕掛ける!!」

「!」

 

 

何の躊躇いも躊躇もなく、ラピッドモンでアタックを仕掛ける小波。

 

 

「アタック時効果、相手スピリット2体を手札に戻す………散れ、ルリ・オーサ!」

 

「っ!!……この程度……」

手札1⇨3

 

 

ラピッドモンが彼女からアタックの指示を受けるなり、手先の砲手からミサイルを乱射する。読めない起動を描きながら落ちた先は炎林の場。ルリ・オーサ2体に被弾し、それらをデジタルの粒子へと変え、手札へと帰還させた。

 

だが、この程度、どうと言うことはない。自分のライフは残り4。バーストカードもある。次のターンで終わりだ。

 

炎林がそう思っていた直後だ。小波がさらに手札から1枚のカードを引き抜いたのは………

 

それは九白最強と言われるデジタルスピリット………

 

 

「フラッシュ【煌臨】発揮……対象はラピッドモン!!」

手札4⇨3

リザーブ2s⇨1

トラッシュ4⇨5s

 

「!?」

 

 

デジタルスピリットを究極体へと進化させる力、煌臨が発揮される。ラピッドモンが白き光の中で姿形をより巨躯たるものへと変化させていき、さらにそれと共に身体の部分にどんどん重々しい装備が施されていき………

 

 

「ラピッドモン、究極進化………セントガルゴモンッ!!」

【セントガルゴモン】LV3(4)BP16000

 

 

その白い光を弾き飛ばしながら現れたのはスタジアムを見下ろすほどに巨大な体躯を持つ白の究極体スピリット、セントガルゴモン。九白一族の最強の称号を持つ者だけが与えられるというカードであり、代々受け継がれている。

 

その姿はまるで生きた要塞。

 

 

「な………で、でかい……!?!」

 

 

見上げるほど巨大なセントガルゴモンの登場に怯む炎林。しかし、小波はそんな彼が落ち着く間もなくセントガルゴモンの効果を遺憾なく発揮させていき………

 

 

「煌臨時効果、スピリット1体、バースト1つをデッキの下へ!!」

「はぁ!?」

「沈め、3体目のルリ・オーサ………目障りなバーストカード!!」

「ぐっ……う、うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

小波がそう宣言すると、セントガルゴモンは身体のあちこちからミサイルや爆弾等の遠距離兵器を一斉に放出する。その圧倒的な火力に、バーストカードやルリ・オーサが跡形もなく消え去っていく………

 

 

「セントガルゴモンはダブルシンボル。一度のアタックでライフを2つ破壊するっ!! さらに煌臨スピリットは煌臨元となったスピリットの全ての情報を引き継ぐ!! セントガルゴモンでアタック!!」

「っ……だが!!俺のライフは4!!抜かったな九白最強の女、まさかライフ計算もできないとは…………」

 

「フラッシュマジック、ダイヤモンドストライク!! セントガルゴモンを回復させる!!」

手札3⇨2

リザーブ1⇨0

トラッシュ5s⇨6s

【セントガルゴモン】(疲労⇨回復)

 

「………は、はぁ!?」

 

 

小波が唐突に放った1枚のマジック。それがセントガルゴモンのカードを疲労状態から回復状態に戻し、このターン、2度目のアタックが行えるようになった。

 

ダブルシンボルの2回の攻撃。もはや指を折り曲げて数えるまでもないだろう。

 

 

「ら、ライフで………うおっ!?」

ライフ4⇨2

 

 

セントガルゴモンの重たい拳の一撃が炎林を襲い、そのライフを粉々に玉砕した。

 

 

「セントガルゴモンで再度攻撃する。その効果でホムライタチを沈める!!」

「!!!」

 

 

セントガルゴモンは足元でうろついているホムライタチを踏み潰すと、今一度炎林の方へと顔を向け………

 

 

「テリアモンの恨みを思い知れぇぇっ!!」

 

「馬鹿な……ヘラクレスの弟子のこの俺が………ぐ、ぐぁぁぁぁあ!!!」

ライフ2⇨0

 

 

セントガルゴモンは炎林のライフを踏み付け、そのライフを完膚なきまでに粉砕した。無機質なアナウンスが小波の勝利を告げ、それと共に観客達は彼女に声援を送った。

 

 

「くっ………ちくしょう……!!」

 

 

あまりのショックと悔しさに地面に手をつけ項垂れる炎林。だが、小波はそんな彼を見ることもなく、颯爽とスタジアムのバトル場を立ち去っていく。

 

 

「あ〜〜イライラするぅ〜〜」

 

 

その言動と表情からはテリアモンを破壊された怒りがまだ晴れていないのが伺える。

 

少々変わり者だが、本気を出せば椎名や司にも負けると劣らない実力のある九白小波。やはり九白最強の名は伊達ではなかった………

 

 

ー…

 

 

「さぁ〜〜てと、次は僕の試合だ。華々しいデビューを飾ろう。このサクヤモンと………『神のカード』で」

 

 

モニターで小波と炎林の試合を観戦しながらそう口を動かしていたのはミカファール校1年の生徒。余程腕に自信があるのか、自分のデッキを調整するそぶりすら見せず、ただカードを眺めていた。

 

それは世にも珍しい『神のカード』であるのは間違い無くて………

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


椎名「本日のハイライトカードは『セントガルゴモン』」

椎名「九白一族最強の者だけが持つと言われている最強デッキの象徴たるスピリット。その破壊力は他の追随を許さない」


******


〈次回予告!!〉


第10回界放リーグの1回戦も遂に最後の試合となった。その対戦カードは朱雀である赤羽司と、元界放市市長『木戸 相落』の実の孫『木戸 相葉』………相葉は『自分には神のカード』があると豪語するが………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「ロード・バロン……!!」……今、バトスピが進化を超える!!


******


次回のサブタイトルや内容等は予告もなしに変更の可能性もあります。予めご了承ください!!



最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

デジモンコラボやガンダムコラボが発表されました。小説の感想欄に小説意外の話で雑談する事を嫌がる読者様もおられますので、その点のお話はバナナの木の活動報告の『デジモンコラボやガンダムコラボについて』のコメントにて受け付けます。
ですので、一定の摂理は御守りくださるようお願いします!!

ミスやルール指摘等は極力誤字報告やメッセージボックスでお願いします!!

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